6年後の宇宙世紀0085年、アムロ・レイとロディ・シャッフルは士官学校の卒業式を迎えていた。
アムロは普通にこの世界の地球連邦軍士官学校を卒業していたのだが、別世界の地球連邦から来ていたロディの士官学校入学には些か問題があった。
現在、宇宙駆逐艦レーガンに乗っていた乗員達はこの世界の地球連邦の庇護下にあったが、この世界の軍組織に組み込まれた訳では無かった。
勿論、無償では無く重力制御技術を始めとした超科学の提供と技術指導を行う事で対価を払い、来たるべき未来に本来所属する世界への帰還を計画していた。
その為には、出来るだけこの世界に『縁』を作りたくなかった。
なので乗員達には現地女性との恋愛や婚姻を行う事を禁止していたし、ジェイナス号の子供達も身柄は確保していた。
そんな中、ロディは軍に志願したいとローデン大佐へと相談していたのだが、彼をこの世界の連邦軍に所属させる事には前述の様に不都合があったのだ。
しかし彼らは駆逐艦に搭乗した乗組員しか居らず、とてもじゃないが自分達だけで士官学校の真似事は出来ない。
なのでこの世界の連邦政府と交渉を行い、現地の士官学校に入学し授業を受ける事で元の世界の授業の単位を得る事が出来る仕組みを作った。
勿論授業内容を把握して単位取得に値するかどうか評価してからの話だが。
そして宇宙世紀世界での卒業資格を得る事で暫定的に元の世界の士官待遇を与えて置いて、元の世界に戻ったら正式に士官として採用する事としたのだ。
そこでロディとアムロは一緒に志願して中学生相当の士官学校幼年学校に入学して上等兵となり卒業して伍長に昇進した後、半年間の現場研修後軍曹に昇進し士官学校へと入学した。
卒業後の階級は士官候補生(准尉相当)として任地へと配属されるのだが、ロディは駆逐艦レーガンへの配属が決まっており、新品の軍服に身を包んだロディはサイド7の1バンチであるグリーンノアへ移動し、軍区画に係留してあるレーガンへと向かった。
「申告します! 地球連邦宇宙軍所属ロディ・シャッフル准尉、恒星間航行用駆逐艦ロナルド=レーガンに着任致しました」
「うむ。地球連邦宇宙軍地球帰還艦隊司令ローデン大佐だ、君の着任を歓迎しよう。よく頑張ったね」
「ありがとうございます」
同時刻、同じくグリーンノアの係留区画に居るペガサス級宇宙揚陸艦ホワイトベース艦橋にてアムロ・レイ准尉が着任の挨拶を行っている。
「申告します。連邦宇宙軍所属のアムロ・レイ准尉です。只今よりペガサス級揚陸艦ホワイトベースに着任致します」
「うむ。艦長のパオロ・カシアス大佐だ。辞令は受け取った。本日ただいまより貴官はホワイトベース所属のMS隊の特殊実験部隊への配属が決まっている、くれぐれも事故の無いように任務に励み給え、ただし気負いすぎないようにな」
「はい、ありがとうございます」
イプザロン星系へと遠征を行う予定は宇宙世紀0087年、実質2年に満たない時間だがUC世界の地球圏は初めての他の太陽系へと足を踏み入れる事になる。
◇ ◆ ◇ ◆
Pi-i!
暗闇の中、狭いコクピットにパイロットスーツ(UC側に合わせてノーマルスーツと呼んでも良いのだが)を着て座り込んだ彼はコクピットのコンソールに設置されたレトロ感満載のトグルスイッチをパチパチと入れて行く。
このご時世にグラスパネルのタッチセンサーで無いのは、敢えてアナログの機械部品にする事で誤操作の防止と頑丈さを兼ねていた。
ここで彼は切り替えスイッチを捻り、STOP/START/TEST、STOPからTESTに切り替えた。
バックライトが点き、正面のグラスモニター兼タッチパネルに文字が浮かび上がる。
「チェンジディレクトリー、ActiveからTestディレクトリーを選択」
:CD Active → Test change.return.
「シミュレーションプログラム起動、Takeoff~Contact.フルボイス」
:Simulation Program Auto.execbat.
彼は設定を選択すると両手で操縦桿とスロットルを握りしめ、フットペダルへ脚を載せる。
しっかりと手応えを感じると、ふと苦笑を漏らす。
「昔はこのペダルに脚を届かせるのも苦労したってのにな」
Pi-i!
『ハロー、アイム バイファム。パイロット ネーム プリーズ』
「あっと、ロディ・シャッフル准尉だ。よろしく頼む」
『OK.Warrant Officer』
「今からシミュレーションモードで起動する。本体に対するフィードバックは無いかと思うが注意して置いてくれ」
『Yes.System allgreen.』
シミュレーションモードでバイファムを立ち上げると、コクピット正面のメインモニターが艦内整備ブロックの風景を映し出した。
整備性を兼ねているのだろうか、重力制御を切って無重量状態になった格納庫内を整備兵達が工具箱を握りしめて命綱を伸ばしながら行き来している。
既にカタパルト発進状態に入っているらしく空気は抜かれて真空状態になっていた。
ロディは通信機のスイッチを入れると艦のフライトオペレーターへと連絡を試みた。
《Examine date link》
・管制官・
「情報伝達試験を開始する、オーバー。」
スピーカーから流れてくる音声は実際の声さながらの物で、ロディは緊張感を増す。
「Main trans engine No.1,2 on No.3,4 off No.5,6,7,8 on.」
・ロディ・
「メインジェネレーター、ナンバー1と2を起動、3と4は停止、5、6、7、8を起動しました。オーバー。」
《Confirmed,Round Vernian》
・管制官・
「こちらでも起動を確認した、オーバー。」
【Hello,I'm VIFAM!】
・VIFAM-comp・
「こちらVIFAM制御用メインコンピューターです、オーバー。」
《OK.VIFAM, your number is 7. instrument recorder on.》
・管制官・
「バイファム了解した。君の出撃番号は7番だ、行動記録用のアプリを起動したぞ、オーバー。」
「Permission to sortie?」
・ロディ・
「出撃許可を求める、オーバー。」
《Emission granted. GOOD LUCK,VIFAM 7.》
・管制官・
「出撃を許可する。バイファム7号機、幸運を祈る。」
ロディはバイファム7号機を整備ロックから外してカタパルトへと足を踏み出した。
電磁カタパルトの踏み板に足を載せる前に機体の状態チェックを搭載コンピューターと共に行って、出撃前にちゃんと武器を保持しているか確認した。
また持っているだけでは武器を使用出来ないのでちゃんと装備状態になっている事を確認してエネルギー回路が開通している事も確認した。
カタパルトの踏み板に足を載せて射出体勢を取ると、警告音と共にGが掛かり背中側に身体を押しつけられる。
◇ ◆ ◇ ◆
暫く宙域を直進していると宙間レーダーに反応が出た。
調べるとメインモニターに光点が浮かび上がっていた。
敵味方識別信号を確認し、レーザー測距器の数字を読み上げる。
「Two aggressors in sight R5866.」
・ロディ・
「有視界内に敵機2機確認。距離5866m、おくれ!」
ロディの通信を受けた管制官は直ぐに全艦に緊急警戒態勢を発令する。
艦橋内のライトが自然光から赤いセロファンを通した様な赤い色が支配した光景に変わる。
《All stations on red alert!》
・管制官・
「全部署に緊急警戒発令。」
【ECCM on No.2 Javelin 3.2.1 fire!】
・VIFAM-Comp・
「対電子妨害装置起動。2番ジャベリン(対空ミサイル)3、2、1、発射!」
ロディが警戒態勢を取ると艦載コンピューターが事前にプログラムしていた通り自動でECCM(対電子妨害装置)を起動し、敵によりバレッジが掛けられたレーダー周波数に対する対処を行う。
それと同時に急激に接近する敵機に対してオートで増設された対空用の小型ミサイルを自動発射していた。
◇ ◆ ◇ ◆
戦闘が終わりバイファムを戦闘モードから警戒モードへと変更する、帰還する為に軌道要素を拾い出し、余計な回転ベクトルをバーニアで打ち消し、加熱部所のクールダウンを実施してから母艦への帰還ルートへと入る為にメインバーニアを噴かした。
このバイファムは元のFAM-RV-S1ではない。
UC世界の小型核融合炉技術により水素燃料電池と同じくらいの大きさで数倍のエネルギーゲインを持つ小型の発動機、ミノフスキー=イヨネスコ核融合炉に載せ替えていた。
つまり敵のARVと同じく熱核反応炉を有している為に稼働時間の延長を図っており、また地球圏での戦訓を元に小型ミサイルを搭載したミサイルポッドを増設していた。
これによりビーム銃の威力上昇と発射間隔の短縮を可能としていた。
実際は冷却が追いつかなくなる為に冷却剤用のタンクも増設しているのだが、余りに機体重量が増加してしまうとラウンドバーニアンの高機動性能が低下してしまう事から思い切った改装は行っていないが、稼働性能は跳ね上がり正に機動戦士バイファムに相応しい性能を得ていたのだ。
暫くするとバイファム7は母艦との着艦シーケンスを行うべく、データー通信を確立した。
《VIFAM7 this is control,over.》
・管制官・
「バイファム7号機、こちら管制室、オーバー。」
「This is VIFAM 7,read you five five braking into landing speed」
・ロディ・
「こちらバイファム7号機、感度良好。当機は着艦速度へ減速中、オーバー。」
《You're right on the glide slope.》
・管制官・
「侵入角度は正常だ。オーバー。」
「Read you.」
・ロディ・
「了解した。オーバー。」
【One minute and counting.】
・VIFAM-comp・
「着艦まであと1分。秒読み進行中。オーバー。」
{Welcome home VIFAM 7.I'm mother arm computer.}
・Mother-comp・
「お帰りなさいバイファム7。私は当艦のメインフレーム、現在は主着艦用アームを制御しています。」
「Hello,M.A.C.」
・ロディ・
「こんにちはメインフレーム、着艦アームをよろしく。」
【Coming in contact with mother arm. 5.4.3.2.1.CONTACT】
・VIFAM-comp・
「着艦用アームとの接触まであと5、4、3、2、1、接触を確認しました。」
「CONTACT.」
・ロディ・
「着艦アームとの接続を確認した。オーバー。」
《Confirmed Round Vernien.》
・管制官・
「バイファム7号機、こちらも確認した。」
「着艦を確認した。バイファム7、シミュレーションの状況を終了、シミュレーションモードから待機モードへ切り替えてくれ」
『バイファム7了解。お疲れ様でした。』
ロディはシミュレーションによる疲れか、そっと息を吐いて手足を伸ばす。
「しばらく振りの愛機は緊張するなぁ。これからもヨロシクな」
『Me too』
◇ ◆ ◇ ◆
外宇宙駆逐艦レーガンと外宇宙練習艦ジェイナスはイプザロン星系から超光速航法によって地球へと帰還を果たした。残念ながら別時間線世界であったが。
だがそれは空間跳躍航法(ワープ)を使用した訳では無い。
恒星間航行用の超光速航行には数種類の方法が考えられているが、別世界の地球から宇宙世紀世界に齎された超光速航法は重力制御に深く関わる移動方法であった。
この世界の空間ではアインシュタインが解明した特殊相対性理論により光の速度は常に一定であり、例えば自らが光速で移動し正面から別の天体が光の速度で相対しても、観測される速度自体は常に光速で一定であり、観測された相手はドップラー効果により相対速度により圧縮若しくは引き延ばされた波長の光が確認出来るだけなのである。
これは光の媒体として宇宙にエーテルと呼ばれる存在が満ちていると考えていたローレンツ博士が考案したローレンツ方程式によって圧縮が計算されるのだが、それでも光の速度は一定である。
光とエネルギーと質量の関係性は常に一定であり、アインシュタイン博士が導いた公式から、 e = mc^2 で表される。
ここから光の速度を計算するべく公式を変換すると c = √e / m と成る。
つまりe:エネルギーは一定として、重力制御つまり物質の見かけ上の質量を変化させる事でその範囲空間内ではc:光速度、m:質量は変動する。
なので範囲空間内の見掛け上mを2分の1にした場合にエネルギーはエネルギー保存の原理から変動しない為、c = √e / 1/2 =√2e と成るので光速は 約1.414 倍にまで引き上げられるのだ。
実際にはそこに未知の係数が掛かる為にそこまでは上がらないのだが、恒星間航行時に範囲空間内の質量の見掛け上の重量を大幅に下げる事で光速度の変更を行う事が出来る。
ただ、この場合の範囲空間は発生装置からの距離内で効果を発揮する為、加速する事で効果範囲が進行方向に対して少なくなる、つまり通常空間から非通常空間への変更が追いつかなくなりそうなのだが、又此れとは別の原理になるのだが、通常空間に於いては認識される方向は3次元のみであるが量子空間では3+n次元の空間が折り畳まれており、これが量子の不確定性理論に繋がっている。
観察者が存在している通常空間である3D空間からは+n次元に存在する円運動=振動運動する量子の位置は3D空間から確定するまで不明である。
これは量子がビッチリと詰まり身動きが取れなくなっているブラックホール内の物質が絶対零度になっていないのは+n次元方向に振動しているからだ、と推測されている。
そして、量子通信の原理である分裂した量子の片方の回転方向を特定すると光の速さでは届かない距離に存在する片割れの量子の回転方向が同時に確定される現象から、量子1個の大きさは3+n次元に於いては宇宙全体の大きさに匹敵すると導き出される。
実際にそれが可能かと云うと、何らかの存在が調整を入れているかの様に制限されてしまうのだが。
しかし3+n次元方向への影響を設定する事で超光速空間の広さを任意に設定出来るので、超光速航行用の宇宙船が基点からの効果範囲(数百メートルが現実的)内に存在する事が可能なのである。
残念ながら宇宙戦艦ヤマトの様なワープ(空間を湾曲する事で通常空間上の2点間の跳躍)技術は実用化されていない為、通常空間を書き換えながら地道に目的地まで超光速で移動するのが別世界の地球から齎された超光速航法の概要である。
※超光速航行を行える様な設定を約四十年間に渡ってこねくり回して、何とか捻り出せた代物がこの設定です。拙いフィクションと思って笑って許して下さい。因みに重量制御技術に関しては全く理屈が思い浮かびません。誰かよろしくお願いします。
使用楽曲:HELLO,VIFAM
アーティスト:TAO
JASRAC楽曲:09970665
歌の台詞部分だけ借りました。