宇宙世紀0086年1月初旬
サイド7の1バンチコロニー・グリーンノア周辺宙域に地球連邦宇宙軍所属の強襲揚陸艦ペガサス級ホワイトベースの姿があった。
その艦には前方に張り出した二つのカタパルトデッキを兼ねたモビルスーツデッキがあり、左舷側にはRX-78 ガンダム1機とRX-178 ガンダムMkⅡ1機が駐機しており、右舷側にはFAM-RV-S1-2 バイファム改の姿があった。
この世界の連邦軍にもRVをリバースエンジニアリングして再生産したFAM-RV-S1T トゥランファムが少数採用されているので整備士達の手を煩わせるようなことは無い。
現在ホワイトベースはMSとRVの飛行訓練の為に訓練宙域に指定された場所へ移動中である。
モビルスーツデッキの前方にある巨大なハッチは閉じられたままだが、MSデッキは既に真空にされており、いつでも出撃が可能な様に準備が進んでいた。
その内部ではMSとRVの最終整備が行われており、それぞれのパイロットは自機のコクピット内部で整備兵達と相談しながら確認作業を行っていた。
右舷側のバイファム改の脱出ポッド兼コクピットに座って各種チェックをしている青年は成長したロディ・シャッフル少尉。
幼年学校と士官学校を卒業して駆逐艦レーガンに配属され、アップデートされた愛機バイファム7号機の担当パイロットとして嘗ての愛機を受領して見て格段に増えたエネルギーゲインにビックリしたものだが、今は多少じゃじゃ馬になったこの機体に愛着を持って接している。
そこにブリッジから呼び出しが入った。
「はい、了解しました。演習前のブリーフィングの時間か」
ロディは無重量状態のコクピットから飛び出しエアロックを目指した。
エアロックとは小さな部屋の入口出口の扉を両方閉めて部屋の中の空気を出し入れして片方から出入りすると云った物である。
そして『床・FLOOR』と書かれた方の床に一歩足を踏み出すと、確かな重力を感じていた。
そう、とうとう連邦も重力制御技術を解明し、工業的に量産する事が可能となったのだ。
現在新造艦の全てと既存艦も順次重力発生パネルを敷く工事が進んでいる。
同じ頃左舷側のモビルスーツデッキはロディの演習相手であるアムロが多少機械オタクの気が出ているのか、コンソールでプログラムチェックのみならずメカニックの方にまで手を出している。
「あれ、父さんこの中継器の設定ってこれで良いんだっけ?」
「レイ技術士官だ。それは閾値で切り替わる様に、そろそろミーティングじゃなかったか?」
「いけね、ちょっと行って来る」
「アムロ、5分前行動だぞ。まったくいつまでも娑婆っ気が抜けなくていかん」
すーっと空中を滑る様に遠ざかって行くアムロ・レイを見ながらテム・レイ博士は作業を続ける。
連邦のMSの開発を統括する立場ではあるのだが、最新の試作機であるRX-178ガンダムMkⅡと改造に改造を重ねたRX-78ガンダムは非常に手間の掛かる代物で、新造品でトライアンドエラーのMkⅡと改造しすぎで全ての癖が頭に入っている技術者はレイ博士のみと云う初代ガンダム、現在の連邦の誇る最高峰のMSの整備には手を抜けないと博士自らが調整に参加しているのだ。
何故旧式のガンダムも準備しているかと云うと、未だに一線級の能力を保っているからだ。
史実のガンダムで例えるとRXー78GP-1ガンダムフルバーニアン並の機動力が外付けされており、ジェネレーター出力も新型のミノフスキー=イヨネスコ型核融合炉を積んだお陰でビームライフルの出力もビグザムのIフィールドなら打ち抜いてしまいかねない程である。
ただ、次世代量産型MSのアーキテクチャーであるのはあくまでガンダムMkⅡであり、ガンダムは現在のGM-79 ジムの改造技術の手本となっているに過ぎない。
そんな今まで自分達が育て上げてきたモビルスーツ達の姿を見て、感慨深く思ってしまうテムであった。
「しかし、私の作ったガンダム達が太陽系の外、銀河の宇宙(うみ)へ漕ぎ出すとは感慨深い物があるな。『銀河へ向かって、翔べよガンダム』か。はは」
◇ ◆ ◇ ◆
さて、初期の演習に参加していたRVだが、バイファムの他にもFAM-RV-5 ネオファムやFAM-RV-S1T トゥランファムもあった筈だが、現在はバイファムだけがその姿を見せている。
流石にケンツ・ノートンやカチュア・ピアスンの様な若年層を軍事関係に参加させるのは無理があった事、そしてバーツ・ライアンもまた自分の道を歩いていたからだ。
そこで現在のロディ以外の13人の姿を見て見よう。
とは言え、いつ元の世界の地球に帰還出来るか分からなかった為、全員の所在地はサイド7に限定されている。
この狭いサイド7の中であれば防諜体勢も整っており、付近にはルナツー連邦宇宙軍基地要塞が有る為だ。
まずは最年長であるスコット・ヘイワード。
彼は現在サイド7にある大学に通っており、経済学を習っている。
最初は法曹界を狙っていた様だが、この世界と自分達の世界では常識から違う事や憲法からして異なる為に何処の世界でも通じる経済学を選んでいた。
根が正直な彼は元々持っていた気弱な部分を逃避行で身に付けた度胸で覆い隠し、堂々としたキャンパスライフを過ごしていた。
そして女性陣最年長のクレア・バーブラントも同じく大学に通い、教育学部を専攻していた。
これも潰しが効く職業であるが、彼女の脳裏には同じジェイナス号に乗り込みながらアストロゲイターの攻撃で亡くなったMrs.ロビンソンの姿があったのかも知れない。
特にスコットと恋仲である訳では無いが、幼馴染みとして親しくしている。
そして一時はFAM-RV-5 ネオファムに搭乗していたバーツ・ライアンだが、現在は日本料理店で板前の修業中である。
寿司職人では無い。フラットフロッグもいない事だし。
彼が板前を選んだ切っ掛けは定かでは無いが、子供の可能性は無限大である。
◇ ◆ ◇ ◆
宇宙世紀0084年当時、敵の本陣へ切り込もうとした時に問題になったのはMSのスペックの低さである。
当時の連邦軍の主力MSはGM-79Bジム改であり、最初の量産機であるGM-79ジムに耐G装備であるリニアシートと全天周囲モニターをセットにした脱出ポッドを組み込んだ高機動型であったが、新規生産分とGM-79ジムからの改造機はそれでも性能はMS-06FZに劣る位の物であり、今後これを主力にして行く訳には行かず次期主力機を急ぎ選定して生産する必要があったのだ。
とは云え、連邦制MSの開発はほぼテム・レイ博士が主導しており、配下の技術者も育って来ては居たが不十分に思えたのでフランクリン・ビダン技術士官をリーダーとしヒルダ・ビダン技術士官をサブリーダーにした量産機開発計画を発動した。
当時、RX-78 ガンダムを大幅に改造した試験機があった為、それを開発母体にしようと考えたのだが、ほぼ間を開ける事無くRX-178 ガンダムMkⅡが完成した為に開発母体をガンダムMkⅡに変更し検討を重ねた。
その結果、ガンダムMkⅡの採用した新機軸ムーバブルフレームの特徴である部位毎の交換が容易である点を利用してガンダムMkⅡのメイン推進装置のバックパックと手脚の部位をGM-79Bジム改に取り付けて性能のアップを図る事とした。
勿論、手脚の構造はムーバブルフレームと駆動装置を簡素化し、装甲もチタン系合金にした物に改造し、バックパックを大型化する必要があった事から心臓部であるミノフスキー=イヨネスコ核融合炉を高出力小型化した新式に変える必要があったが。
そうして完成したのがGM-86R ジムⅢである。
既存機の改良によってアップデートする事で資産を無駄にせず、また中長距離に長けた攻撃力を増設したミサイルポッドで加味する事で大幅な戦力の増強に成功した。
これを連邦軍上層部と装備庁に申請した所、見事に採用を勝ち取った。
ただし、2線級の戦力のアップデート手段と中長距離の攻撃機としてだった。
これに対してフランクリン・ビダンはぬか喜びの後に込み上げてきた激怒のまま開発局局長に怒鳴り込み説明を求めたのだが。
「まぁ、この計画書を見たまえ」
「これは・・・テム博士!」
そう言って局長が手渡してきたのがテム・レイ博士が提出していた次世代MS量産計画の計画書だった。
そこに提示されていたのは指揮官用の高級量産機の量産型ガンダムMkⅡと先行簡易量産機のRGMー88X ジェダ、そして本命の量産機であるRX-178 ガンダムMkⅡを参考に装甲材質を改良されたチタン合金セラミックスを採用し土星エンジンの末裔のメイン推進器を積み敵ARVの意匠を参考にシンプルな構造にして低コストを実現し量産性を上げたRGMー89 ジェガンの構想があった。
「あの人はいつの間にこんな物を・・・」
「まさに天才科学者だな。これが実現出来れば敵ARVよりも全ての点に於いて優れたMSが出来る。だが、間に合わなかった時には君達の計画を前面に押し立てて行く事になる。君達のGM-89R ジムⅢもRX-178 ガンダムMkⅡを参考にしているのだろう?」
「ええ・・・まぁ。このRGMー89 ジェガンには劣りますが。中長距離ならば戦力になるでしょう。コストもジェガンより低いですし」
「では開発計画を進めてくれ給え。Xデーまで余裕はないんだ」
「了解しました。」
震える声で答えると、フランクリンは悔しさとテムに対する畏敬の念に震えながら局長室を辞して開発室へと戻った。
と云う訳で宇宙世紀0086年まで進めてしまいました。
第五話志願でモビルスーツやラウンドバーニアンに乗りたいと言っていた彼らは士官学校幼年学校から士官学校は首席では無いですが無事卒業して配属されています。
ロディはともかく、アムロはコネと言っても……。
さて、バイファムの13人のバーツの現在は…声優ネタです。
他の子達は学生ですので…今度書きます。
後、昔から初代ガンダムのオープニングの歌詞で「地球圏の話なのに何でこんな歌詞を付けてるんだ~、銀河とか関係ないじゃん」って箇所があったので、いっその事事実の事にしてしまいました。
昔から気になってたんですよね。
作品名:翔べ!ガンダム
著作者名:渡辺 岳夫
作品コード:055-8244-0
ではでは。