機動戦士バイファム   作:EINGRAD

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第二話 居住

『外宇宙航行練習艦ジェイナス、航海日誌、記録者艦長代理スコット・ヘイワード。ここの所の忙しさから記録が途切れてしまった。西暦2053年。僕ら13人は両親が囚われている人工衛星タウト星へと辿り着いた。ロディとカチュアが敵に捕まってしまうアクシデントがあったけど、異星人・アストロゲーターの反体制派であるレジスタンスのジェダさん達による反乱もあって無事にカチュア達も救出されたし、僕たちもタウト星へと入港出来たんだ。だけど、そこに僕たちの両親はいなかった。ジェダさんから既にアストロゲーター、ククトニアンの軍によって彼らの本星であるククト星へと移送されたと聞かされたんだ。だが、再び合流したローデン大佐によって増援部隊が救助して地球へと帰還していると聞いたんだ! 僕たちは決断した、両親の居る地球に帰ろうって。だけどタウト星へと攻めて来たククトニアンの軍隊との交戦によってローデン大佐が負傷してしまい後方へと帰還が決まった、だけど不幸中の幸いな事に、ジェイナス号の地球帰還の護衛を担当して貰う事になった』

『航海日誌、西暦2053年※※月××日、ジェイナス号は地球への帰還でワープ航行を行い、イプザーロン恒星系から太陽系へと超光速航行を完了した。しかし冥王星よりも遠い太陽系辺縁部にある筈のワープの指標である灯台が無くなっていたんだ。光学観測により地球と他惑星の位置関係を観察し、最適な軌道計算を行ったんだけど、どうにも嫌な予感がする』

『航海日誌、西暦2053年※○月×△日、地球から地球連邦軍の戦艦が接触してきた。見た事の無い形だったけど僕にはよく分からない。けどケンツがジェーン年鑑に載っていない船だって騒いでいた。艦載コンピューターのボギーにも質問してみたけどUNKNOWN・識別不能って回答しか出てこなかった。やはり何かが起こっているんじゃないか? 嫌な予感は続いている』

『航海日誌、西暦2053年※○月×◇日、ローデン大佐とも話をして、指定されたスペースコロニーへと針路を取る事が決められた。ボギーとも相談してプログラムを実行し、今日無事に軌道に乗る事が出来た。現在は地球の月軌道へのアプローチに入っている。入港したら長い間勤めてきた艦長の代理も終了だ。この神経をすり減らす大役も終わるとなると寂しく感じてしまうのはおかしいだろうか。後、前艦長のお宝はロディとバーツと3人で山分けにすることにした。以上」

 

 地球の月軌道上には重力の均衡が保たれたラグランジュポイントが存在し、それぞれにコロニー群、サイドが存在しサイド1からサイド7までが開発されていた。

 地球から最も遠いコロニー群は月の裏にあるサイド3であり、地球を挟んで正反対の位置にいるのがサイド7である。

 サイド7は長らく開発が行われて居らず、新規開発が始まったのはつい最近であり、現在はたった一基のコロニーであるグリーンノアしか存在して居らず、実質連邦宇宙軍の秘密開発基地として軍の関係者と家族が植民している状態であった。

 そこに入港したのが地球文明と連続しているが異なる歴史を歩んだ世界の恒星間航行が可能な外宇宙練習艦のジェイナス号と外宇宙駆逐艦のレーガンであった。

 勿論民間人の目に触れる可能性のあるメイン宇宙港ではなく、隔壁で隔てられた軍事区画にある軍港側からコロニーのシリンダーの中心軸に設けられた仮設の桟橋に接舷している為に与圧されており無重力状態で浮遊している。

 ここで問題となったのが乗組員達の扱いだった。

 先進科学技術を利用出来るだけの人間ならともかく、それを運用する事の出来る人間と、原理を理解しそれらを生産することすら可能な人間がいるのだ。

 彼らが無秩序に情報や技術をばら撒かれても困るし、彼らの身分を保障し安全を担保することが困難なのだ。

 その為に未だに民間人が少ないサイド7に隔離したのであった。

 現在のサイド7は一応完成しているが、コロニー内部にコロニー建設時に使用する耐圧隔壁が残されており、民間人が暮らす一般区画と軍事区画が分けられている。

 検疫を受けた後、上陸希望者は軍事区画の寄宿舎に集められ、ジェイナス号の13人もそこに姿があった。

 彼らの場合、全員が未成年であった為に一時的にローデン大佐を保護者として説明を受けることになった。

 基本、自由が与えられる事となったが当分の間、軍事区画の内部での生活馴致と時期を見ての民間区画へと移動が確認された。

 ジェイナス組の乗組員は未就学児も含めた全員が学業の途中であり、避難生活中での学業の遅れから全員に家庭教師が付けられ、同程度まで回復してから民間区画の一般学校への通学を行う計画であると告げられた。

 

「と云う訳で、暫くはこの基地内で生活をして貰います。レクリエーション施設は自由に使用して貰って結構です。インターネットで情報を扱うのであれば図書施設にパーソナルコンピューターが有りますので」

「それは良いんですが、えっと。質問よろしいですか」

 

 説明係として経理員と情報員の二人から今後の予定等を聞いていたが、ジェイナス組代表としてスコットが重大な関心事を口にする。

 

「僕たちは戦乱の中を両親に会いたい一心で頑張ってきました。地球に帰還すると決めたのも両親達は先に地球に帰還したからだと伺ったからなんです。ですから、その」

「そうでしたか。ふむ、ローデン大佐、構いませんね」

 

 スコットの言葉を聞いた情報員は保護者であるローデン大佐へと確認を取るが、苦い表情をしながら彼はそれを肯定する。

 

「致し方ない、引き伸ばしても意味はないですからな」

「そうですね。私たち地球連邦が外恒星系からの訪問を受けたのは、あなた方が初めてです。ファーストコンタクトはあなた方であり、それ以前には一切存在しません」

「そんな、やっと会えると思っていたのに。どうにかならないんでしょうか」

「残念ながら、そもそも君達がこの地球に現れた仕組みさえ我々は理解していない。今後、時空間超越技術を学習し研究すれば原因は掴めるかも知れませんが、現在に於いてはどうにもなりません」

「そう・・・ですか」

「説明は以上になります。質問があれば何時でも受け付けますので、インターホンからどうぞ」

 

 そう言って彼らが退室すると、扉からワッとした鳴き声や慟哭が聞こえてきた。

 

      ◇ ◆ ◇ ◆

 

 現在サイド7に接舷している宇宙船だが恒星間航行、つまりワープの技術を有し、人工重力を制御出来る高度技術の塊である宇宙船が2隻。

 そしてそれが搭載する高度に進化した実戦経験済みの高機動宇宙機であるラウンドバーニアン・RVが10機近く存在していた。

 連邦政府としてはこれらの技術は是非とも欲しい、それには調査解析し、再現出来るかリバースエンジニアリングを実施し、技術の確立、理論の習得、試作、量産、技術の普遍化と云うプロセスを経る必要があった。

 最終的には外宇宙へと乗り出す為の超光速航法技術の習得を目指すのだが、技術的に一番再現の可能性が高いのがラウンドバーニアンであり、そして目下最優先で解析が進められている物が基礎技術であろう重力制御システムの取得である。

 現状の地球連邦の技術レベルでは地球の重力圏からの離脱には膨大なエネルギーが必要であり、百キログラムの品物を宇宙へ上げるのに数百トンの燃料と再生回数の限られているロケット本体が必要だった。

 その為に大気圏離脱だけでも重力制御技術は大幅なコストダウンを可能にし、技術的制約が軽くなれば宇宙開発も格段に低コストで大規模な事が可能になるのだ。

 そして人工の大地であるスペースコロニーも遠心力を用いた疑似重力を用いてコロニー内壁に人類の生存圏を作っているが、これは容積に対して面積が小さいので無駄が多いと言える。

 もしも巨大な筒を造り、内部に階層を設けて重力制御で生存圏を作り出せれば、人の住める範囲は一気に数十倍になる。コロニー1基で数千万人の生存が可能な所、数億人に拡充出来る。

 構造を強固にして恒星間航行エンジンを付ければそのまま移民船として使えるのだ。

 とは云え、今は技術の習得を最優先に、再現可能な物を作り上げる段階であった。

 幸い、ラウンドバーニアンの再現自体は順調に進んでいた。

 用いられている技術が既に違う形で存在しているのだから、手直しをするだけで済むのだ。

 エネルギー発生装置である主機は、酸素と水素の化学反応の差異に発生する電気を取り出す「燃料電池」で既に作業用のスペースポッドの主機として実用化されていたし、制御用コンピューターも通常のノイマン型コンピューターであったし、四肢の制御も機械化された義肢の技術が流用可能だった。

 特徴的なラウンドバーニアも円形の360度回転するドラムに角度を変えることの出来る燃料噴射式ロケットモーターが付いているだけである。

 勿論それらを組み合わせて造る機体の制御方法も必要だが、基礎情報はネオファム、バイファム、トゥランファムの姿勢制御コンピューターから抜き出して編集すれば済んだ。

 何よりラウンドバーニアンの有利な所は、背中に背負ったスリングパニアーによって空を飛ぶ事が出来た。

 これにより行動半径の増大と迅速な行動が可能になり、以後、これにより空を飛べない人型兵器は欠陥品扱いされてしまう要因になってしまった。

 以上の事により、先行生産としてRVトゥランファムの再現機の生産を開始していた。

 そんなこんなで元の歴史では運命の始まった宇宙暦0079年が始まった。

 

 サイド7では駆逐艦レーガンに乗船していた軍人はともかく、練習艦ジェイナス号の13人は民間区画の居住区へと移動していた。

 高校生のふたりは宿舎から一般校へ通学していたが、中学生以下の11人は保護者が割り当てられてそれぞれが生活を始めていた。

 その中のロディ・シャッフルとフレッド・シャッフルの兄弟二人は連邦軍工廠に勤める技術将校であるテム・レイ技術士官の元で生活を始めていた。

 テム・レイは軍事区画にあるモビルスーツ開発部局に所属し、連邦軍が推進するV作戦のモビルスーツ3機種の開発主任者として連日働いていた。

 なので家に寄り付く時間は短く、保護者としての責任を務めているとは言い難いのだが、ロディとフレッドはそれほど不満を持っては居なかった。

 何しろ兄弟二人が引き離される事無く、生活は出来ている。

 尤もフレッドには少しばかり不満が溜まっている様子だが。

 宇宙世紀0079年1月中旬、或る日の朝、フレッドが朝起きて朝食の準備をしていたが、時間になっても兄とこの家の一人っ子のアムロ・レイが起きてくる様子が無かった。

 

 アムロ・レイ♂15歳、家の中ではランニングシャツと柄パンだけで過ごすラフな性格をしているが、機械工学に精通し、天才的なテムの血を引く優秀な少年である。

 ロディ・シャッフル♂15歳、厄介になっている手前だらしなくしてはいないが、コンピュータープログラムに詳しく、ラウンドバーニアンの設定やジェイナス号の航海プログラムの解析や適合処理を熟して行く内に高度なプログラミングも熟す程になっていた。

 

 いつまで経っても部屋から出てくる様子の無い二人に腹を立てたフレッドはフライパンとお玉を持ったまま二人が過ごす部屋に突撃した。

 アムロの部屋の中は電気基盤や制御装置、電圧計測器、モーター、コードの束が散乱していて足の踏み場も無い状態で散らかりまくりだが、何とかベッドの上は物が少なく、その上にアムロとロディが雑魚寝で転がっていた。

 冷たい瞳でそれを見下ろすフレッドはお玉とフライパンを振り上げると彼らの耳元で打ち鳴らした。

 

「ちょっと二人とも起きてよっ! 今日は軍港区に出かける予定でしょ」

「うわっ何だよフレッド、昨日はさっきまで駆動モーターの制御プログラムの調整に苦労してたんだぞ」

「ふあーぁ、おはようフレッド」

 

 寝ぼけ眼で起き出したアムロとロディは目をシバシバさせて床の障害物を器用に避けながら扉から居間へと歩いて行く。

 

「もうっ、ふたりとも妙に仲が良いんだから、一緒に悪い事ばっかりして」

 

 ちらっとロディがジェイナスから持ってきたアレな本を一瞥し、何かどことなく幼馴染み女子風な言葉を吐いてフレッドは嘆息する。

 今は馴染んでいる二人だったが、最初からこうではなかった。

 この家に住んでいた内向的な性格をしているアムロ・レイであったが、テム・レイが連れてきたロディ・シャッフルとフレッド・シャッフルに対しても余り好意的な態度では無かった。

 その日、軍事区画での検疫と事情聴取が済んだ後、保護者となった技官のテムが緊張するロディとフレッドを伴ってサイド7の民間エリアにある自宅へとエレカに乗って向かう。

 

「済まんな、家にはロディ君と同い年の息子が一人いるんだが、母親は地球から出る気が無くて別居中なんだ。私も仕事が忙しくて滅多に家に帰れないんで本当は保護者の資格は無いと思うんだがな。息子も機械工学や電子機器オタクであんまり社交的では無いから、まあ上手くやってくれ」

「はあ、何かあった時の連絡先は」

「軍の方に連絡を入れてくれれば良い。忙しくて手を回せなくとも最悪、軍の方で世話役をまわしてくれる筈だ。軍事機密が多くてな、連絡を取れない事があるんだ」

「分かりました」

「さて、ここがこれから君達の住む事になる我が家だ。予備の鍵は渡してあるな」

 

 テムが家の玄関扉に鍵を差し込むと鍵は掛かって居らず顔を顰めた。

 

「不用心だなアムロの奴。まあ良い、ようこそ我が家へ」

「失礼します」「失礼しまぁす」

「アムロ、いるかアムロ」

「なぁに父さん」

 

 テムが呼びかけると二階からアムロ・レイ、15歳のミドルハイスクール生が降りてきた。

 家の中で気を緩めているのか、ランニングのシャツに柄パンのラフ過ぎる格好だった。

 

「おおアムロそこにいたか。こちらが今日から家に住む事になるロディ・シャッフル君とフレッド・シャッフル君だ。仲良くやるんだぞ」

「・・・どうも、アムロ・レイです」

「ロディ・シャッフルです」

「えっと、フレッド・シャッフルです」

「よろしく、じゃあ僕は続きの作業があるんで」

 

 そのまま素っ気ない態度で自室に戻っていった。

 

「まったくアムロの奴。済まんなああ云う奴だ、気楽にやってくれ」

「はい」

「では私は仕事の続きがあるので失礼させて貰うよ。部屋はー、まあ余ってる部屋で適当にやってくれ、あ、私の部屋には機密書類があるから入らないでくれたまえよ」

「分かりました」

 

 そう言うとテムは職場にトンボ返りで戻っていった。

 それを見送ったロディだったが、勝手に家の中をうろつくのも悪かっのでアムロの部屋に顔を出した。

 

「えっとアムロ君」

「どうなってんだこれ。制御装置に繋いでもモーターの制御回路が反応しないじゃ無いか。電気信号は出てるのに」

 

 イライラした声でアムロは腐っていた。

 彼は薄暗い自室の中で作り掛けの自作ロボットのキットを作っていたのだが、アムロが繋いだ電子制御機器と中央制御装置の接続が上手く行ってなく苛立ちを顕わにしていた、それを見かねたロディが声を掛ける。

 

「それって受信側のOSがTRONじゃないかな?」

「え?」

 

 ロディが受信側の電子機器に付いているタグを読むとアムロに言った。

 

「ほらやっぱり、機械制御系のOSはTRONの場合が多いんだよ。そのままだと反応しないから制御プログラムの出力をTRONにする様に書き換えてやればいけると思うよ」

「へー、僕はあんまりそっちは詳しくなくて」

「うん、俺はちょっと自信があるんだ。ところでこれって何を作ってるの? 機械の方はそれなりにしか知識がなくってさ」

 

 ロディが一抱えほどある手足の生えた丸いボディーをしたロボットを指さすと、アムロは真ん中を走る線の部分から開くとコンピューターのモニターとキーボードかそこに付いていた。

 

「あ、うん。ロボットの自作キットが売ってるんだけど、改造して機能アップさせてるんだ、ハロって名前を付けてる」

「へー、凄いじゃん」

「機械的なのは好きなんだけど、プログラムはまだ勉強中でさ」

「じゃあプログラムの方は手伝うよ」

「え、良いのかい?」

「これからこの家に住まわせて貰うし。迷惑料代わりにさ」

「迷惑だなんてそんな、思ってないよそんな事」

 

 何やら気が合ったらしいふたりは趣味の話を始めたのだが、残されたフレッドはしなきゃならない事が全然進まない事に腹を立てたのか、声に力を込めてツッコミを入れる。

 

「兄さん、ピコピコで遊ぶのは良いけど、先にすることが有るんじゃないの?」

「うっおフレッド。ああそうだったな、アムロ君」

「アムロで良いよ」

「じゃあアムロ、俺は隣の部屋を使って良いかな」

「構わないよ。何か部屋が一杯空いているから何処を使っても良いさ」

「だってさフレッド。ああ、こっちはフレッド、俺の弟さ。因みに彼女持ちです」

「へぇ、リア充だ」

「だよなぁ」

「もう、兄さん!」

 

 そんな感じで共同生活を始めた彼らだったが、大きな混乱もなく学生生活を続けていた。

 とは言え男所帯にウジが湧くと言われる様に生活のあちこちが汚れも溜まり洗濯物も蓄積していったのだが。

 元々アムロの近所に住んでいた幼馴染みの少女が世話を焼きにレイ家に入り浸っていたのだ。

 

「アムロー、入るわよ」

「お、お邪魔しまーす」

 

 首にバンダナを巻いた少女、隣家のフラウ・ボゥとボゥ家に引き取られたペンチ・イライザが合鍵を開けて入ってきた。

 ずかずかと上がってきたフラウは台所や洗濯物を一瞥すると、一応の及第点を与えていたがそれらはほとんどフレッドの努力の賜物である。

 

「アムロ! 今日は軍港区に出かけるんじゃなかったの。準備してないじゃない」

「うるさいなフラウは。行く準備なら出来てるさ」

「本当? んー、あ、靴下が片ちんばじゃないの、恥ずかしい」

「そんなの気にすんなよ」

「おはよー、えとフラウさんも今日は軍港へ行くんでしたっけ?」

「おはよう、入り口までね、ペンチちゃんを連れて行かなきゃ。エレカ一台じゃ足りないし」

 

 サイド7は人工の大地を持つ開放型のスペースコロニーで、上に湾曲する大地には三つの窓が開かれており、その先には巨大なミラーが広がっていた。

 ミラーは太陽光をシリンダーの内部に導く役割を持っているが、1日毎に開閉する訳ではなくミラーは小さな区画に分割され、それぞれに稼働用の装置が付いている。

 でなければ回転ベクトルに大きな変動が発生し、下手をしたら回転軸が変動してしまうリスクがある。

 1Gを得る為に最適な回転を維持しているコロニーは内側に人工の大地が広がっている。

 このサイド7の1バンチコロニー、グリーンノアには自然を模した凸凹が設計されている、大地の基部は小惑星から採取した岩石を特殊加工した強靱なコンクリートで出来ているがその表層は人工的に作製した「土」が積み重なっており、植物の繁茂を助けていた。

 岩を砕いて細かい砂にしただけでは生物の生存環境に向かない為に、宇宙という無機質な資源から有機的な土を創り出したのだ。

 その土の上にはポツポツと家屋が建っているが、その数は少ない。

 前以て都市計画として道路と上下水道、そして電気の回線が設置されているので、今後どう言う都市に成長するかはある程度決まっている。

 景観は各コロニーで特色が出てくる物だが、ここは未だ新興住宅地の色合いを強く残している。

 民間区画と軍事区画を隔てている灰色の隔壁には出入り用のゲートが数カ所あり、人の出入りはそれ程多くはない。

 軍港の中に入っていったのは四人、ロディ、アムロ、フレッド、ペンチである。

 IDカードをぶら下げて歩くと連邦軍のモビルスーツ開発拠点である建物が見えてきた。

 現在連邦はラウンドバーニアンの現物とムンゾ自治区改めジオン自治区から情報開示と現物の提供があったモビルスーツ、ザクⅡの現物を元に新たな量産型モビルスーツの開発を急いでいた。

 ラウンドバーニアン・トゥランファムのリバースエンジニアリングにより既に量産型トゥランファムの増産に入っていたが、RVの動力源が燃料電池で最高出力がザクに比べて低い点が問題視され、ジオンよりも高性能のMS、具体的に言えばビーム兵器を運用出来るMSを欲していた。

 駆動装置はRVを手本に、脱出装置を搭載し、熱核反応炉を搭載したMSを3種類を実験的に設計した。

 設計者はテム・レイ博士、連邦の持つ材料工学と冶金工学を駆使し無敵の合金ルナ・チタニウムを装甲に持つガンタンク、ガンキャノン、ガンダムの3機種だ。

 現在は設計図に基づき実機の組み立てに入っていて、コンピューター上の存在から現実の存在へと姿を変えつつあった。

 コンピューター上ではシミュレーションにより明らかにザクⅡよりも高機動な物に仕上がっていたが、未だに機動性ではRVに負けていた。

 よってRVの操作に長けた人間、ロディとバーツがアルバイトでバイファムとネオファムの仮想実機を操作し、比較実験として同い年のアムロがガンダムの操作を行っている。

 アムロ自身はコンピューターゲームによりロボット兵器の操作には慣れていて、アーマードコアとかバーチャロンの操作は中々のレベルになっていた。

 今回、シミュレーター上の仮想戦場は宇宙空間に設定されていて、ミノフスキー粒子の散布は無し、ガンダムが1機でアムロが搭乗、僚機に先行量産型のGM(ジム)が2機、こちらはパイロット候補生のジョブ・ジョン上等兵とリュウ・ホセイ伍長が搭乗していた。

 仮想敵はバイファムにロディ、ネオファムにバーツが搭乗している。

 因みにバーツ・ライアンはカイ・シデン宅に引き取られ、ケンツ・ノートンはハヤト・コバヤシ宅に引き取られていた。その他は追々説明予定。

 シミュレーションのシチュエーションは単純に編隊を組んだそれぞれが正面から接近する状況だ。

 連邦側はカメラセンサーが優れたジムをツートップにした逆三角形のフォーメーション、これは幾ら高性能機だからとは言え民間人をトップに据えるのをリュウが忌避した為だ。

 リュウの操縦するジムは腰にバズーカを固定しザクマシンガンを構え、ジョブのジムはビームスプレーガンを構えている。

 二人は最大射程でザクマシンガンとビームスプレーガンを乱射するが、RV2機は乱数回避パターンでこれを避け、レーザードガンで的確に反撃する。

 直ぐさま至近距離を弾が過ぎて行くことに危惧した2機のジムは教本通り盾を構える。

 それを狙っていたバイファムとネオファムはすかさず接近すると盾の陰からはみ出している脚部を狙い攻撃する。

 盾を構成するルナチタニウムは流石に一撃では破壊出来ないが、超硬スチール製のジムの脚部は一撃で吹き飛ぶ。

 バランスを崩した所を背後からの連射で素早く仕留め、ロディとバーツは二手に分かれてアムロのガンダムに接近する。

 アムロは先に接敵したロディのバイファムを狙いビームライフルを連射、ヒラリヒラリとラウンドバーニアを用いた予想しがたい回避パターンに翻弄される。

 モビルスーツは姿勢を変えることでアンバックを用いて燃料の節約に努めているが、ラウンドバーニアンは両肩部に2基装備されているラウンドバーニアを適宜回すことで姿勢を変えずに自在に動ける。

 燃料消費は多いが、モビルスーツよりも軽量なラウンドバーニアンは比較的な意味で長時間駆動出来るのだ。

 その蝶の様な動きに集中したガンダムは後方から接近したネオファムに気付くのが遅れた。

「貰いっ!」

 

 バーツがビームガンを撃つと背中のランドセルに直撃し爆散した。

 

「やられたっ!」

 

 アムロが思わず叫ぶとロディがツッコミを入れる。

 

「アムロ、後ろにも目を付けないとダメじゃないか」

「そんな器用な事」

「って云うか後方にもカメラは付いているんだから、バックミラーみたいに表示するか、警告をならせば良いじゃん。バイファムには付いてるぜ」

「ガンダムにも接近警報は付いてるけど、突然警告音が鳴るだけで事態を把握するのに時間が掛かるんだ」

「だからさ、バイファムは『後方より敵機接近』とか報告されるから、そっちにも音声出力を付ければ良いんだよ」

「出来るかな」

「便利だよ、『OKグーグル』とか『アレクサ』とか人工知能で応答する家電が30年位まえから売ってるし」

「ふーん。じゃあ親父に聞いてみるよ」

「声がボギーと一緒だと混乱するからボーカロイドのデーターを使うと良いと思うよ。ハツネミクとかコヅミレイの音声データーあるし」

『よーし、次は地上戦のシミュレーションを走らせるぞ。用意は良いか』

「「「はーい」」」「「了解」」

 

 




 と云う訳で第二話をお送りします。
 銀河漂流バイファムはテレビ版で没になった、ククトニアン地球侵攻作戦を採用しました。
 よって銀河漂流バイファムのタウト星でロディが捕まった話から分岐しました。
 オリジナル展開が嫌いな人にはすいません。
 テレビ版最終回から繋げるのはちょっと難しかったので勘弁してください。
 後、両作品の主人公は一緒にいる設定にしました。展開が面倒なので、BL展開では無いですよ、念の為。
 第三話までは予約投稿で投稿しました。
 予定では週一投稿で土曜日の午後十一時になります。
 それほど長い展開にはしないつもりです。
 ではでは、第三話で会いましょう。 
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