機動戦士バイファム   作:EINGRAD

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第二十話 先制

 ジーン中尉の率いる攻撃隊はシャアの艦隊近くの宙域で体勢を整えて突撃の準備を進めていた。

 ジーン機の周りに突撃隊形の鏃の陣でロケットモーターをアイドリングして真空の宇宙空間なのに漏れ出たエネルギーで周りが五月蠅い程である。

 

「ジーン中尉、その新型モビルアーマー強そうで良いですね」

『ああ、対艦用に開発されていたMAだが戦場では必要無しと云う事で中止になっていた奴なんだがスーパーザクが開発されて攻撃専用機の需要が出来てから対艦用途に使えるんじゃ無いかって再開発された曰く付きの奴でな。MA-04X2ザクレロ改だ』

 

 金色のビームコーティングに大きな複眼、巨大な2つの鎌を備えたスタイリッシュなそれは正面に備えたメガ粒子砲が凶悪な印象を与えるシャークマウスは敵対した相手に与えるプレッシャーが強い。

 背後に備えた巨大なロケットモーターが与える強大な推力はMSよりも二倍近い質量の機体を蹴飛ばされた様な勢いで加速する事が可能である。

 そして攻撃機に標準で装備される様になった待機用の設備。

 

『それに機体が大きくなった恩恵で待機室が一畳から四畳半に広くなったんだ。最高だよ』

「なんと羨ましい」

『より大型のミサイルを搭載出来る様になったから対要塞攻撃が強化されてな。それから対になった大鎌で近接戦闘も可能。加えてMSを搭載して移動出来るから燃料の節約にも使える、長距離侵攻作戦には便利だな』

「攻撃隊には…おっと、隊長、制空戦闘隊が動き出したぜ」

 

 モニターを眺めるとアポリー隊(アンディー中尉)とロベルト隊(リカルド中尉)のザクⅢとギラ・ドーガが編隊を組んでタウト星の岩石部分へと接近する。

 直ぐに接近は感知されたのか衛星のスリットから迎撃ビームが撃ち出されるが構わずに接近すると出入り口の装甲板が開いて中から足の無い宇宙専用機ARV-Bルザルガが10機ほど出撃してきた。

 ジーンは開口部が開ききり2機目が出てきた時点で声を上げた。

 

『全機、突撃!』

『Yes Sir!』

 

 鏃の様な形で待機していたスーパーザクとザクレロの編隊は推力を全開にして噴射炎を後方へ噴出しつつ最大加速で開口部へと突撃を開始した。

 立体的な雁行形の編隊は機体の斜め前方からの噴射炎に影響を受ける事無く前方へ向かって突進し、瞬く間に艦隊から開口部へと接近する。

 10機全部が開口部から出撃してきたルザルガも途中で管制からの指示が有ったのか針路をジーン達の攻撃隊に変更しようとするが、アンディー中尉とリカルド中尉のザクⅢからの指揮により指揮下のギラ・ドーガ達は進路を妨害する様に射撃の弾幕を張る。

 

「させるかよ。全機敵機を攻撃隊に近づけるな」

 

 仕方なく応戦するルザルガ達の放つビームガンからバラ撒かれる中威力のビーム片はギラ・ドーガの右肩のシールドで弾く事が出来るが、ルザルガの左腕に内蔵装備された固定部装のビーム砲から放たれるビーム弾はギラ・ドーガが左腕に装備している盾でも弾けないので少々大きく回避しつつメガ粒子によるビームライフルで応戦する。

 流石の宇宙専用機だけに高機動で回避するルザルガに苦戦する制空隊のMSだったが、攻撃隊に対する迎撃行動を阻止する事に成功した。

 

「見えたっ! フォックスワン、ファイヤー!」

 

 突進してきたザクレロとスーパーザクから放たれた高威力の大型対艦ミサイルは狙い過たず開口した状態の装甲扉の内側に飛び込み内部で致命的な爆発を起こした。

 当初の予定では装甲扉の開閉機構が壊れて敵要塞へと飛び込む突破口とする予定であったが、内部の兵器に誘爆したのか一区画毎吹き飛ばす爆発を起こして大きく外壁が捲れる被害が発生した。

 

「ヒュー、凄ぇ」

 

 攻撃した本人が一番ビックリしながら直ぐに現場から遁走するべく艦隊への帰還ルートを目指したが、残念ながらルート上に複数の敵影が散見された。

 残念ながら現在の速度で選択出来るルートでは回避は無理であった。

 ディスプレイに表示される選択可能な針路からそれを見て取ったジーンは覚悟を決めると隊内無線で部下に告げる。

 

『強行突破を掛ける! 全員俺に続け。ザクレロの底力を見せてやるぜ』

「うぅおおおおおっ! やってやるぜ」

 

 ジーンは両方の大鎌を振りかぶるとザクレロの鼻先を敵機の中心に向けてロケットモーターの出力を全開まで振り絞った。

 その加速力はスーパーザクをも上回り、後続を引き離しつつ見る見る敵機に近付いて行く。

 急速に近付く金色の機体に脅威を感じたのか、ルザルガはビームガンをバラ撒きつつ左腕のビーム砲を撃つ。

 ザクレロの金色の塗装は耐ビームコーティングであり、蒸発する事によって機体に対するダメージを肩代わりする事が出来る。

 時折命中するビーム片を物ともしないでザクレロは高機動を誇るルザルガに接近した。

 ジーンは機の前方シャッターを開けてメガ粒子砲の開口部を露出させると、照準を定めて引き金を引く。

 

『ロックオン!!』

 

 開発当初は拡散ビームを搭載していたザクレロだったがエネルギーCapの技術的進歩によりより進歩した高出力のメガ粒子砲を搭載しており、光速近くまで加速された重粒子のビームがルザルガに突き刺さる。

 三日月型の爆発の閃光が輝き、ルザルガは爆炎に消えた。

 動揺したルザルガの僚機は挙動が妖しくなる、その内の1機にザクレロは近づき右腕の大鎌を振るってルザルガの左腕を切り飛ばす。

 そのルザルガは撃墜こそ免れた物の煙を引き戦場から脱落して行く。

 有効射程に居るもう1機は後続のスーパーザク達のバラ撒くチャフとダミー人形、そしてザクマシンガンに幻惑されて泡を喰って待避に掛かった。

 

『よし、敵の穴を抜けて帰還するぞ。遅れるなよ』

 

 ザクレロの目立つ金色の機体は格好の目印となり、後続のスーパーザク達も後れを取る事無くシャアの艦隊へと帰還を果たした。

 

 ◇ ◆ ◇ ◆

 

 その頃、ホワイトベースを中心としたククト星降下艦隊は静止衛星軌道よりも外側に集結し、ククト星の周回をしつつ降下地点の偵察と策定を進めていた。

 因みに降下要員であるペガサス級は艦の上面を惑星側に向けて背面飛行の様な姿勢であり、護衛のサラミス級は敵を警戒する為に艦の上面を外軌道側に向けている。

 地上の走査にレーダー、電波探知機を用いている為であり、様々な波長の電波を用いている為に地上の地形や敵の配備状態を雲の有る無しに関わらず走査しきっており、また逆に雲の配置から天気予報も行っており現地での気象状況を把握する為に情報収集は怠らなかった。

 勿論このような大量の電子走査が行われれば地上のククトニアンにも逆探知されてしまうのだが、あまりにも大っぴらに広範囲に大規模に探られていたので妨害が出来る範囲を超えており地上に居るククトニアンに多大なるプレッシャーを掛ける事に成功していた。

 惑星の衛星軌道上は無重量状態であるが、これは衛星軌道上を地上に落ちないスピードで落下し続けているのであって惑星の重力圏下に於いては自由落下しているのと同様の状態である。

 もしも軌道上で一点に留まる事が出来たら、惑星からの距離に応じた重力が作用するので艦船の惑星側に人が立つ事は出来ないのだが無重量状態の今はマグネットブーツで甲板の上に立つ事が可能だった。

 ロディとアムロはホワイトベースの右舷カタパルトの先端に立って頭上に輝くククト星を見上げていた。

 高度に進歩した惑星が星間戦争の最中に破滅的な核攻撃で深刻なダメージを負い、4000年に渡る自然回復作業の果てに自然溢れる惑星にまで回復した。

 クレアド星での地質調査で判明し軍には開示されていた情報である、レーガン艦長のローデンから地球連邦にも情報は流されていて人の業の深さが実感される光景なのである。

 大陸上には緑が溢れ、大洋が日の光を反射して輝いて、ここが戦場である事を感じさせない。

 

「ここがククト星か。ここに地球人の捕虜が」

「ああ、ロディの目的がひとつ叶ったな」

「だがまだ来ただけだよアムロ。囚われた地球人の中に僕たちの家族が入っているかも知れないって考えると、居ても立っても居られないんだ」

「焦るなよ。1時間後には地上だ。焦りは禁物だ、ロディがやられたらフレッドになんて言えば良いんだ」

「そうだな。そんなに焦っている様に見えたかな?」

「自覚してないのが怖いんだよ。さて、そろそろコクピットに戻らなくちゃな」

「了解」

 

 ◇ ◆ ◇ ◆

 

 地上降下艦隊が間隔を開けた隊列を組む傍ら、少し離れた地上降下部隊が艦隊からバリュートを装備したMS部隊を吐き出していた。

 主流は連邦軍のジムⅢとジェガンの部隊だが、少数ながらコロニー軍連合のMSA-002マラサイとMSA-003ネモの姿も見える。

 この超高高度からの空挺降下はMSだけが選抜されていて、RVは装備が対応していない事からペガサス級と降下カプセルに搭載されていて降下後の制空任務を担う事になっている。

 連邦軍のサラミス級から吐き出されたジムⅢの中には若手士官のジェリド・メサ少尉とカクリコン・クルーラー少尉が操縦する機体が混じっていた。

 隊列毎に間隔を開けてポジションを取るMSは目標の敵基地制圧の為、大気圏内突入後そのまま敵基地上空から奇襲を掛けるべくジェネレーター出力を暖めており刻一刻と近付いてくる戦いの瞬間に備えていた。

 

「おいジェリド聞こえるか?」

『なんだカクリコン、機体の調整の最中なんだが』

「まあ焦るなよぉ。柄じゃ無いぜ」

『そうかよ。で、用事はなんだ』

「気晴らしだよ、気晴らし。緊張しすぎて失敗したなんてバカみたいな真似はしたくないんでな」

『なんだ、貴様の方が緊張してんじゃ無いか』

「うっせ。それより貴様がご執心の美少女の方はどうなってんだよ」

『…どこでそれを訊いた?』

「へっ情報通の俺に隠し事なんて通じないぜ。で、どうなってんだよ」

『お前こそどうなんだよ』

「俺の方はアメリアと充分に仲良くヤってるさ。でぇ? どうなんだよ」

『べ、別にちょっと気になっただけなんだからな。知ってるのは遠くから見た後ろ姿と名前だけだし』

「なんだ、顔を見ていないのか?」

『想像力を掻き立てられるよな。翠の短髪で…カミーユって言ったな』

「ほぅ、女性らしい嫋やかな名前だな。何時何処でであったんだ?」

『ちょっと前に空港ですれ違っただけだ。カミーユと言う名前が聞こえて振り返っただけだから後ろ姿しか見えなかったんだが妙に気になってな。後になってから動悸がちょっと乱れて、これが恋かと』

「ふーん、そーなんじゃねーの。童貞坊やかよ」

『Zaz… ほぅ興味深そうな話をしてんじゃ無いの』

「げ、モンシア大尉」

『あ、これは』

『レクリエーションだろ。分かってるぜぇ。だけどよぉコールサインを見落としちゃぁいけないよな?』

『「あっ」』

『罰として無事に帰還出来たら徹底的に扱いてやるからな、忘れんなよ』

「「Sir! イエッサー!」」

 

 ◇ ◆ ◇ ◆

 

 少し離れた場所にそれぞれ集結した集団は予定時刻になり逆噴射をして軌道エネルギーを損失し地表に引かれて高度を下げていった。

 ペガサス級強襲揚陸艦は元々が大気圏突入能力を有しており、艦底部を惑星側に向けて降下を開始した。

 艦を擦る薄い大気の渦が外板を叩き、次第にそれが熱を帯びてくる。

 高温になった空気が発光して直ぐに艦の後方へ置いて行かれる。

 大気圏上層部の熱圏、中間圏へと落下を続けショックウェーブを後方へ曳きながら成層圏へと突入した。

 ペガサス級は機体そのものを耐熱素材としているが、今回同時に大気圏に突入した艦艇の中にはアーガマ級も存在しておりこちらは大気圏突入に向いた構造をしていなかった。

 その為に後方エンジンブロックに断熱圧縮による高温ガスを遮温する為の風船状のパラシュートの先端から低温ガスを噴出する事で艦に掛かる熱を遮断する仕組みになっていた。

 ペガサス級、アーガマ級共に重力圏内での浮遊飛行システムとしてミノフスキークラフトシステムを持っていたが、ミノフスキー粒子による電波障害が地球側にしか害が無い事が知られていたので現在は重力制御システムに換装されている。

 成層圏でバリュートを切り離したアーガマとペガサス級各艦は重力制御によって高度5000メートルまで降下した後に編隊を組んで基地予定地へと向かった。

 搭載されていたMSとRVは既に上陸準備を始めており、準ペガサス級アルビオンは上甲板のカタパルトを展開し始めてスリングパニアーを展開したRVのFAM-RV-S1Tトゥランファムが姿を現していた。

 飛行はMSには実現が難しく、現在に於いてもRVの独占状態だった。

 スリングパニアーのエンジンを噴かしてトゥランファムはカタパルトから出撃していった。

 艦隊の周囲を飛行して哨戒任務に就いているトゥランファムの数は4機編隊が2編成ほど確認出来た。

 目的地は敵基地から200キロメートルほど離れた平地を予定されている。

 平地は平原となっており、河が側を流れて海に繋がっている。

 その地点にペガサス級各艦は着地し、すぐに格納庫からMSの展開を始めた。

 敵基地方面の空き地は直ぐに工作部隊のMSによって整地されて砲撃陣地を形成し、そこにホワイトベースから出てきたガンタンクとガンタンク量産型がゾロゾロと定位置について行く。

 無限軌道を駆動して位置を調整すると肩の主砲2門の角度を上げ、その姿は目標地点に向けてにらみを効かせているようだった。

 

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