坑道作戦の最大の難点は振動が地上に伝わり警戒される事だ。
幸いな事にアッグの掘削能力は非常に高く、余程硬い岩盤でなければ時速1キロメートルにも及ぶ。
その分掘削時に出る騒音と振動は大きく、誤魔化しが効かない。
よってより大きい音と振動が出る行為、長距離砲撃による地雷原潰しを装って基地の周囲に入念な榴弾攻撃を行う手筈になっていた。
この基地の位置は先だって攻撃した基地から50キロほど離れた位置に存在していた為、前進基地からガンタンク部隊を元敵基地跡地に移動させて護衛部隊と共に砲撃陣地を形成した。
それと基地攻略部隊の主力兼囮部隊としてBポイントの基地に地上から近付くMS部隊が編成された。
砲撃による音と振動で地下からの侵攻を誤魔化して、目の前に脅威となる対象を配置する事で注意を反らす事を目的していた。
幸いな事に敵基地自体は平地に設営されていたが、10キロメートル離れた場所に高い木々が生えた森林が有り夜間に夜陰に紛れて坑道部隊が掘削作業を開始する手筈になっていた。
それまでに周辺区域を封鎖し、偵察用の部隊の出入りや監視装置の有無を確認して存在がバレる事が無いように隠蔽は充分に行われた。
敵に目隠しをした状態で掘削部隊は隧道入口予定地点に移動し、両腕がドリルになったEMSー05アッグが1機と連邦軍特務隊が保有していた地底戦用ジムⅠ(珍しいジムコマンドを改造した機体で、両腕と頭部に合計三つのドリルを装備している。コロニーの外壁に穴を開ける事を目的として開発された非人道兵器。両腕のドリルはオプションで取り外してビームつるはしを装備出来る)が見る見る内にMSが移動出来るトンネルを掘削して行く。
轟天號かマグマライザーの様な凄まじいスピードで事前にCGで測量した通り地底50メートルを真っ直ぐ敵基地に向けて地面を掘り進めて行く。
主力兼囮部隊は敵基地から5キロ程離れた位置で臨戦態勢で布陣していて、敵に対して睨みを効かせている。それに加えて50キロメートルの位置からガンタンク部隊による着発榴弾の釣瓶打ちが行われ、激しい振動と轟音が周辺地域に満ちていた。
それらは完璧に仕事を果たしていて、MS壕の中で周囲を睨んでいるARVは攻撃の為に待機している連邦軍の機動メカ、MSの動きに集中していて地下での動きには気付いた様子は無かった。
この時、志願して参加を果たしたロディ・シャッフルは愛機のバイファム7号機を駆って地上1キロの高度を保ちながら敵基地を中心に旋回を続けていざ事が始まれば直ちに敵基地に乗り込む準備を整えていた。
彼の機体はスリングパニアーを装着したFAM-RV-S1バイファムに核融合炉を搭載した改造機であるが、武装はビームガンと主翼に吊した対空ミサイル、そして連邦MSが標準装備している盾を左手に構えている。
格闘戦を含む地上戦では盾があった方が圧倒的に優位に立てる事が多く、連邦のマークが入ったガンダムとジムが装備するガンダリウム合金製の盾を新たに装備していた。
適宜補給の為に基地に帰還しながらロディは出撃を繰り返し、その時を待った。
予定時刻、坑道に敷かれた電線から伝えられた坑道部隊は予定の位置に到着した事が全部隊に周知され、作戦開始までのカウントダウンが始まった。
ロディは緊張しながらその時を待ったが、事前に不審な動きをしては敵に感づかれる可能性がある為にジリジリとした時間を過ごす事となった。
残り10秒となった時、緊急通信でロディの機体にアムロから連絡が入った。
『ロディ! 避けろ!』
理由は分からなかったが反射的にスロットルを踏み込み操縦桿を引き倒すと機体は一気に錐揉みして降下したのだが、今までいた空間に更に離れた森林の中からビームの軌跡が通り過ぎた。
「敵の増援かっ!」
一気に地面近くまで降下したバイファムは敵の方向に向けて針路を向けて盾を構えながら突撃する。
すると離れた位置に隠れていた敵ARVがスラスターを噴かせて森林の上に飛び上がる。
見た事の無い機体に警戒しつつ複雑に進路を変えて敵機に向けてロディはエネルギーガンを構えた。
「見た事の無い機体だ。敵機の情報が欲しい所だが」
すると音声入力された機体搭載コンピュータが最適な答えを返してくる。
『ARV-I デュラッヘ、敵軍指揮官専用機です。性能は未入力です』
「サンキューボギー。強敵って事か」
ロディはペロッと唇を舐めると太ももに力を込めて耐G姿勢を取る。
デュラッヘは地球の機動兵器を参考に製作された高い機動能力を有する高機動機である、左腕に盾を固定し右腕にビームガンを構えてロディの頭上を取ろうと更に飛翔する。
ARVには珍しく固定武装は装備していないがその機動性は蚤の跳躍にも劣らない速度と距離で有り、空中で軌道を変える事もお手の物なので狙いが定まらない様に激しい機動を行いながら近付いてくる。
「くぅっ、高いか。うわっ!」
『迂闊だぞ! ロディ』
空中戦のセオリー通り高所を占有しビームガンを撃ってくるデュラッヘに地上付近を飛んでいたロディは苦戦を強いられたが、突然入ったアムロの声に我に返る。
主力兼囮部隊から分派したアムロの所属する小隊が高空を跳ぶデュラッヘにビームライフルで攻撃している。
素早い動きで照準を翻弄し見事避けきったデュラッヘは急激に降下して森林の中に隠れた。
だが消えた場所からは既に移動しているようで追撃を撃っても手応えは感じられなかった。
バイファムに積んだ戦術コンピューターは敵機の予想移動領域を表示していてロディは可能性の高い方角へと砲身を向けるが、予想を裏切る箇所から飛び上がったデュラッヘは素早く射撃して直ぐに地上へと降下する。
幸いに敵の攻撃は一部盾を掠ったが、本体に対してダメージは無くロディは機体をダッシュさせて敵の攻撃から回避行動を取る。
『ロディ、無事か』
「ああアムロ。だが奴さん神出鬼没で、狙いが定まらないんだ」
『任せろ、ニュータイプの勘って奴を見せてやる』
「本当に使えるんだ。それって」
『何だ、信じてなかったのかよ』
「いや勘が良い奴だなとは思っていたけどな。ニュータイプとか言われると眉唾もんじゃね?」
『言えてる。さて、そこっ!』
♪ピロリロリン!
アムロが操縦するMkⅡはおもむろにビームライフルを構えると未だに姿を見せない敵に対して撃つ。
デュラッヘが飛び上がったと同時にビームライフルが盾に命中しバランスを崩す。
余計なベクトルが掛かったのか地上に向かって螺旋状に落ちて行くデュラッヘに向かってロディはバイファムを追撃させた。
追走するようにガンダムMkⅡもスラスターを噴いて地上スレスレを跳ぶように追い掛ける。
『ロディ気をつけろ。敵はまだ沈んじゃいない』
「ああ、分かってる。敵は…凄腕のエースパイロットだと思う」
森林の中、敵の痕跡を探しながら低空飛行を行い警戒を怠らない。
だがデュラッヘの暗藍色の機体は森林の暗がりに溶け込み存在を感知させない。
「畜生、どこに」
---バカメ!
突然ロディの脳裏に稲妻が走り右前方からのプレッシャーが押し寄せた。
ロディは反射的に操縦桿を引き急制動を掛けると本能に導かれるように右前方に向かって引き金を引き絞る。
バイファムのビームガンから放たれたビームは敵機が構えていたビームガンに命中し、それを弾き飛ばした。
敵機は狼狽えたように後退ると飛ばされたビームガンと自機の位置、そしてビームガンとビームライフルを構えるバイファムとガンダムMkⅡを見比べる。
《【おのれ地球人! 我らの故郷に土足で侵略して来るとは】》
「これは、敵機と混信しているのか?!」
『ああ、みたいだな。戦術コンピューターが自動翻訳している』
「だったら。降伏しろククトニアン。もう、基地は堕ちた(筈だ)。」
《【何だと】それは出来ない相談だな地球人》
「英語だって? 貴方は地球の言葉が話せるのか?」
《敵の言葉を理解するのは士官の義務だろう。それに私の母親は地球人だ。イプザロン星系に地球人が侵略してこなければ、私は生まれなかったがな》
「ククトニアンと地球人のダブルだって? だったら猶更」
《地球人パイロット、キサマらの名前は》
「ロディ・シャッフル中尉」
『アムロ・レイ中尉だ』
《そうか私はシド・ミューラァ少佐。ククトニアンの軍人として降伏などしない。そもそもこの戦いは地球人から始めたのだぞ》
「信じられないかも知れないが、君達が叩いた地球はイプザロン星系を侵略した地球とは別世界の地球だぞ。パラレルワールドなんだ」
《そんなSFみたいな事がある訳有るか。嘘もいい加減にしたまえ》
「信じられないとは思う。だがククトニアンが地球に侵攻した際に地球側に重力制御技術も無い未開の原住民だと云う証拠は掴んでいた筈だ。上層部は知っているんだよ」
《だとしてもだ。今キサマらはこの地に立っている。倒すべき敵に違いはあるまい》
「分からず屋め」
ロディが再度照準を定めると、突然轟音が鳴り響いた。
「な、なんだ」
思わずロディが視線を逸らすと隙を見たデュラッヘは空中へと跳躍する。
「しまった」
『ちっ、逃げられたか』
デュラッヘはガンダムMkⅡの射線をバイファムに隠れるようにして遮り、直ぐに姿を消した。
「アムロ、基地の方が気になる。撤収しよう」
『そうだな。分かった』
時刻を巻き戻す。
坑道作戦『金庫破り』がタイムリミットを迎えた。
基地の周囲を鉄柵と地雷原で囲み、塹壕によってARVを待機させ外周に対する対策を取ったBポイントの敵基地。
しかしてその中心部は敵司令部の建物と俘虜収容施設を配置していたが、比較的敵戦力は配備されていなかった。
事前に敵配置を偵察し、測量によって味方を巻き込まず敵に対して奇襲を仕掛けられる位置を特定していた坑道組はEMSー05アッグを先頭に後続が詰めていた。
兎に角白兵戦力が高い機体が選別され待機していた。
予定時刻になるとアッグは口吻部に設置された溶断ビームで天井を破壊しながらダブルドリルを回転させながら地上へと飛び出した。
不意を突いた突撃に敵ARVは背を向けたままの姿勢で射撃武器も外周に向けられたままだったのだ。
最初に飛び出したゾゴックは肩に装備したガンダリウム合金で強化した山なりブーメランを連続で射出しながら基地外周で最も遠い位置にいたARV-Jギブルに肉薄する。
左右にいたARVは背中に突き刺さったブーメランによって損傷を受けて身動きが取れず、中央のギブルは振り返る前にゾゴックの放った右腕の伸びるアームパンチを喰らって左半身が崩壊した。
ゾゴックは続けて身動きの取れない左の機体に左腕のアームパンチを喰らわせて沈黙させた。
右の機体はゾゴックが振り返り頭部の無い胸部に設置された巨大なモノアイを赤く光らせると本能的な恐怖を感じたのか思わず後退る。
そこへ後続のズゴックがアイアンネイルで胴体を穿ち、周囲の機体に対しても攻撃を敢行、後から出てきたガルスJもアームパンチで白兵戦を制し、たちまちの内に敵の機体を殲滅して行く。
活躍したのはレストアしたジオン製の旧式MSだけではない。
連邦軍最新鋭の量産型MSであるRGMー89ジェガンも坑道から飛び出しビームライフルで敵機を仕留めて行く。
思わず塹壕から姿を現したARVらは外に待ち構えていた主力兼囮部隊の狙撃部隊、スナイパージム、ザクⅠスナイパー、ヒルドルブ等によって狙撃を受けて撃ち抜かれてしまう。
敵基地の敵対する機動兵器を撃破すると、続けて陸戦隊が坑道から姿を現して敵司令部の建物と捕虜収容所に突撃して行く。
電撃作戦で敵に対応を取る暇も無く制圧して行くと収容所に収容されていた民間人の解放に成功したと連絡が入る。
直ぐに坑道から人員運搬用の軍用トラックが姿を現し収容所に乗り付けた。
護衛の陸戦隊が銃を構えて周囲を警戒する中、民間人達、女性や子供が多い集団はようやく安心した表情を浮かべるが、陸戦隊が促してトラックに乗り込んで行く。
幸いにして健康状態は良好な様子を見せていた。
基地はほぼ制圧したと云っても周囲は未だに地雷原に囲まれている事に変わらない事から来た時と同じように坑道へと待避して行く。
作戦は順調に消化されていった。ここまでは。
突然地球軍の司令部に警報が走った。
通信兵が有線の電話機の受話器を取り情報部からの連絡を受けていた。
「なにっ! よく聞こえない。もう一度頼む」
『敵の地上部隊が接近中だ。間違いなく新型機を含んだ正規軍の部隊が近付いているぞ。接敵まであと数分だ』
「何で今まで気付かなかった!」
『ここは敵地だぞ。我々が感知していない抜け道の可能性が高いが、情報収集中だ』
「くそっ、了解した。司令」
「ああ、聞こえていた。直ちに迎撃部隊を向かわせろ。敵の射程に入る前に…」
情報を聞いた指揮官が直ちに対応を取ろうと指示を出すが、その時遠距離から大口径ビームが飛来し敵基地の周辺に着弾した。
通常のビームでは有り得ない破壊力で地面を抉り、クレーターを作る。
地響きで周辺に土塊が飛び散り指揮官が思わず口を噤む。
「何だ今の攻撃は」
「情報を解析、出ました。ARV-Mディゾの大型ビーム砲による砲撃だと思われます」
「敵の新型か。捕虜になっていた人員の輸送に支障は無いか?」
「今の衝撃で坑道の一部が崩落したとの報告がありましたが、大丈夫です。現在後方へと移動中」
「それは良かった。しかし敵基地にはまだ抵抗を続ける敵軍が籠もっているというのに、お構いなしか」
「司令、このまま砲撃が続けば基地の攻略部隊が危険に曝されます」
「ああ。直ちに撤収させろ。接近戦に特化した部隊では荷が重すぎる」
指揮官の判断により坑道部隊には直ちに撤退が指示され、陸戦隊の撤収が始まった。
MSは最後のトラックが坑道に姿を消すまで敵の基地に籠もる敵部隊を牽制し、直ぐに撤収を始めた。
基地から10キロ離れた平原にククト軍第3機動特務隊が隊列を組んで周囲を警戒していた。
部隊には地球軍との戦闘で得られた情報を元に開発された新型の機動メカ、地球側ではARV-Lディロムと呼ばれるARV-Iデュラッヘの量産型の機体と可変機構を備えて人型の機動形態と四つ足の砲撃形態になるARV-Mディゾの姿があった。
全てが新鋭機で固められたその部隊に紛れて先程ビームガンを失ったシド・ミューラァの愛機のデュラッヘの姿もあった。
そのデュラッヘからディゾに搭乗するこの部隊の指揮官であるガンテツ少佐に通信が行われていた。
「ガンテツ少佐、味方ごと撃つとはどう言う了見なのだ」
『当たってはおるまい。貴様こそ武装を持たずに戦場で遊んでいるとはどう言った了見なのだ』
「だから、私にディロムのビームガンを貸して貰いたいと依頼しているではないか。敵は強敵だ。私も加勢するので」
『無用だっ! そもそも地球人とのハーフ等と云う半端な人間が軍にいる事自体が気に食わんのだミューラァ。我が部隊に貴様に貸与する武装など有りはしない。とっとと私の前から消えたまえ』
「くっ! 後悔するぞ、ガンテツ」
『ハァッハハハ! 負け犬の遠吠えとはこの事だな。地球人の如き鎧袖一触よ』
「失礼する」
デュラッヘは打つ手は無しと云う態度で部隊から離れると跳躍を繰り返しながら戦場から離れていった。
「ふんっ清々したわ。どれ、地球軍めらに一泡吹かせるぞ、ディゾは全機砲撃形態に移行、ディロムは周囲の警戒を怠るな」
ガンテツ少佐の指示に従い、6機のディゾは人型形態から四つ足の砲撃形態に変形し味方基地の周辺に集結している地球軍に照準を定める。
その周囲をディロムが警戒する。
ディロムはデュラッヘの量産型であるがククトの機動兵器らしく左腕に固定武装のビーム砲が内蔵されており盾は持っていない。
だが地球製のRVを参考にしただけ有り機動性はMSのRGMー89ジェガンに匹敵する。
なので飛行能力を持っている地球軍のトゥランファムとバイファムの上空からの攻撃も素早く避ける事が出来た。
直ぐさま反撃すべく強化されたバーニアにより空中へ跳躍し迎撃態勢を整える。
空中で機動しながら地球のRVとククトのARVが空中戦を繰り広げる。
その間にディゾは地球軍の部隊を殲滅すべく照準を定めようとする。
ビーム兵器は基本直進しか出来ない、だが地上で同じ地上の目標を直接照準で狙うのは障害物等も有り難しく、気の短いガンテツはイライラしながら照準が整うのを待っていた。
「えーい、何時まで掛かるのだ。これでは敵の反撃が始まってしまうぞ」
『ガンテツ少佐、急速に接近する反応が』
「何だと」
その時、少し前に上空に居たトゥランファムから敵目標の諸元を送られていた後方砲撃陣地のガンタンク部隊が長距離砲撃を敢行しその砲弾が約60キロを飛翔し弾道軌道を描いて今、着弾した。
徹甲榴弾の弾体が豪雨の如く釣瓶落としに部隊を叩く。
長距離砲撃は曲射の効く実体弾の花形であり、ビーム兵器では距離的に届いても地平線の影に隠れてしまって敵の上空を通り過ぎるだけになってしまう。
ディゾから地球軍までの距離は10キロ余りなので攻撃自体は可能なのだが、森林地帯の近くに居たのが災いした。
ミューラァ少佐にデカい口を叩いたガンテツ少佐であったが、まともな反撃も出来ずに一方的に叩かれて部隊は壊滅した。
地球軍の戦訓は言っている。砲撃は戦場の神と。
◇ ◆ ◇ ◆
ククト軍の本隊から派兵されてきた正規軍の存在に地球軍は警戒色を強めていた。
その為にこの前進基地の防備は強化され、哨戒を強化する為にジオン軍で運用されている最後のハイザックバリエーションであるRMS-119・EWAC-ZACK(アイザック)が2機と、同じく希少な能力の為に運用されている最後のザク2バリエーションであるMS-06E-3強行戦略偵察機ザクフリッパーが配備された。
そんな厳重な警戒が続く基地の一角、民間人収容施設で解放された民間人の中にケイト・ハザウェイの姿もあった。
バイタリティに溢れているのか、解放されたばかりだと云うのに早速クレーク博士とミーティングを始めていた。
「そうか、ではBポイントの捕虜は全員無事解放された訳だね」
「はい。幸いな事に敵基地の司令官も長い虜囚として過ごしていた女子供には同情的でしたので。特に虐待も無く」
「無事で何よりだ。それから君に朗報があるのだが」
「はい? 朗報ですか?」
「うむ。ああ、来たね、彼に見覚えは無いかね?」
クレークが指し示す方を見ると、若い士官が赤い顔をして立っていた。
一瞬思い浮かべた顔と違う事に違和感を憶えたが、あれからどれほどの時間が流れたと云うのか。
「もしかして、ロディ。貴方なの? あぁ、随分と立派になって、すっかり見違えたわ。無事で良かった。ジェイナスの皆(みんな)は大丈夫? あぁ何から聞いたら良いのかしら。ビックリなんて言葉じゃ言い表せないわ」
「ケイトさん…。あぁケイトさんだ。あの時は本当にすみませんでした。僕はケイトさんを助けられなかった。もう、本当に」
ロディは頭を下げて後悔の言葉を零す。あの時とはどの事を指すのかも本人は分からない程に混乱してしまったが。
「頭を上げてロディ。私は後悔なんてしていない。最善を尽くしたんですもの、ジェイナスの皆(みんな)で生き残る事が出来ればそれで良かったの。カチュアは元気?」
「ええ、はい。みんなジェイナスに乗って後方で待機しています。本当の地球に帰れる日まで。両親に会える日を待っています」
「? 込み入った事情があるみたいね。説明してくれる?」
「はい。そもそも…」
ロディが年上の女性に泣きついている姿を遠くから見ていたアムロは、それまで頑なになっていたロディの精神が重圧から解放される様子を見て取った。
彼がサイド7に来てから育んでいた親友の姿に思わずニヤつきながらも深い安堵を覚えた。
アムロとロディ、親友との永遠の別れは着実に近付いて来ていたのだ。