宇宙世紀0079年初頭、ムンゾ自治区のギレン・ザビは連邦政府首脳に向け秘密裏に交渉を持ち、モビルスーツの運用方法と性能を連邦政府に開示し恭順を示すと共にそれが本気である事を示す為に保有するモビルスーツが装備している兵装の武装解除をも提案した。
だが、その提案は却下されて更なる武装の増産と各コロニーに向けたモビルスーツの輸出をも視野に入れた提案がなされた。
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地球欧州地区スイス、この地は地球連邦憲章発布後も永世中立と国民皆兵制度を保っており、風光明媚な観光地として栄えている。
と或る湖畔にあるホテルの会議室に連邦軍首脳のゴップ将軍とサイド3ジオン自治区の総帥ギレンが対峙し会談を進めていた。
「ほう、こちらとしては武装解除は貴方方連邦に対する恭順を示す良い方法かと思ったのですが、意外な提案ですな。ゴップ元帥?」
「いやなに、そちらの持つモビルスーツの有用性は我々も認識しているよ? だが知っての通り我々はラウンドバーニアンや重力制御技術を手に入れた。有益な物を手に入れた分だけ高いリスクも背負ってしまったという訳だ。それに何より悪い提案ではあるまい。君達は我々に対する悪意は無くなったと認識しているのだがね」
「違いありませんな」
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ギレンはやはりと確信を深めたが、連邦との戦端が開かれる可能性が減った事に安堵し、それまで無秩序に進められていたモビルスーツの開発を統合し無駄を省く施策を提示した。
例を挙げるならば、対モビルスーツ戦を考慮した地上戦用MS07グフ、地上での行動範囲を拡げる為の脚部対地効果エンジンを搭載したMS09ドムなどは必要がなくなったので技術をR型ザクⅡ高機動型と集約し、グフとドムは開発を中止、水中用モビルスーツもジャブロー攻略の必要性がなくなった為に中止。
その分、各環境に合わせて改造した局地戦用ザクの改造キットを少数開発する事でバリエーションを増やした。
また、余計な仕事が減り開発効率が上がった事によって各種アクチュエーターやミノフスキー=イヨネスコ型核融合炉の性能が向上した事により部品の交換のみでザクⅡの性能が向上、段階を経てMS06はA型からC型、F型、指揮官機用S型、地上・コロニー内用のJ型、更なる機体性能の向上したF2型、そして宇宙世紀0079年8月には最終量産型のFZ型が量産された。
連邦軍に於いては地球上及び宇宙での運用にRVトゥランファムを量産していたが、タンデム座席で乗り込み要員が操縦手とガンナーの二人必要な事もあり、地上での拠点防衛用と宇宙での汎用機としてRGM79ジムの量産が進められた。
テム・レイ技官の元での実証実験機としてのガンタンク、ガンキャノン、ガンダムの性能とコストを鑑みた結果、量産型のアーキテクチャーとして機動性に優れたガンダムタイプが選ばれたのだ。
因みにMSへの飛行用具スリングパニアーの取り付けには失敗した、自重が重く満足な性能が得られなかったのだ。
そして連邦政府は各コロニー守備隊にモビルスーツの配備を決定し、各自治体へと自衛権の拡大を勧告し、守備隊の増強を指示した。
これまで各コロニーの守備隊は連邦政府から反乱や独立の気運を高める要因だとして宇宙海賊に対する武装警察程度の戦力以外認めていなかったが、アストロゲイターの存在がそれを狂わせた。
連邦政府が所有する連邦軍の宇宙戦力は膨大な物があるが、基本的に大艦巨砲主義のドクトリンに沿っている物であり、アストロゲイターの有する機動メカに対する戦訓を共有した連邦宇宙軍は現在の戦力では各コロニーの防衛を賄う事が出来ないと結論付けた。
よって、各コロニーの防衛はそれぞれの守備隊に責任を押しつける事にした。
連邦軍で採用されていた宇宙戦闘機セイバーフィッシュやトリアーエズ等の低価格での売却優遇処置や各コロニーの造船所でも生産が可能なRB79ボールの設計図をライセンス販売し防衛力強化策を支持した。
反面、連邦に対する脅威となり得る宇宙戦艦や宇宙巡洋艦の下げ渡しはなかった。
連邦軍は自軍の強化を優先していた為、RGM79ジムの生産品は連邦宇宙軍並びに陸軍への配備が優先され、連邦軍からのモビルスーツの下げ渡しはなかった。
その為に連邦以外唯一のモビルスーツ生産能力を持つサイド3に多数のサイドから打診があったのだ。
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ギレンはその怜悧な眼を歪ませて各コロニーからの要望に対して苦慮していた。
「ふむ。こうも各コロニー政府からザクの輸出を乞われてもな。流石の連邦もモビルスーツの出荷は許可を出すまいよ」
「しかしギレン総帥、駄目元でも連邦に輸出の許可を打診してみるのは如何だろうか。各コロニー政府への言い訳にもなりましょうし」
「それはそうなのだがな」
「だが兄貴、他のコロニーが戦力を持ちすぎるのは拙いぞ。多方面に戦力があるとなれば我がジオンの防衛計画が破綻してしまう」
「ふむン。型落ちのF型ならば問題あるまい。現在我が軍の主力はF2型、既に最終型のFZ型の数も多いしな」
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意外な事に連邦政府からの返事はOKであった。
急ぎ各コロニー政府の担当役員を呼び集め、モビルスーツに関する説明会を執り行い、それぞれの都合に合わせて対応する事となった。
基本的にジオン自治区コロニー守備隊で型落ちになりモスボール保存されていたザク初期型A~F型を出荷し、足りない数はモンキーモデルのザクⅡF型をジオニック社と、出荷予定数が多すぎる為に足りない分は月に生産工場のあるアナハイムエレクトロニクス社でOEM生産する事となった。
この時点でジオンとしては出来るだけ高性能でビーム兵器を携行出来るMSを開発すべく次世代モビルスーツの開発計画を立てた。
最終的には最新型のザクⅡFZ型のジェネレーター出力に余裕があった事から、これを拡大改良しMS14ゲルググの開発計画を進めていた所、連邦から横槍が入る事となった。(何故06から14に番号が飛んだのか。数多くの試験機が存在したのである)
連邦のジムとの部品調達に融通を利かせる為、共有部品の増加、ユニバーサルデザイン化を推し進めろと『提案』(強要)してきたのだ。
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「ええい、連邦め、こちらの都合も考えずに自分の都合を押しつけおって」
「これは、こちらの成長を抑える為の策略なのでは? でなければこんな無体な提案を押しつけては来ますまい」
「どうかな? ただ単に傲慢なだけかもしれんぞ。しかし、対応を誤れば我がジオンの発展が妨げられるな」
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連邦とジオンではMSの駆動方式に違いがあり、連邦はフィールドモーター、ジオンは流体パルスモーターの為にアクチュエーターからして異なる。
ジオンも連邦式のフィールドモーターの実験の為にMS11アクトザクを実験機として製作した経験はあったが、流体パルス式を捨てるとなると初期コストが爆上がりであり、流用も出来なくなってしまう。
その為、新型機にジオンの技術を継承させるには、連邦のジム系とのハイブリッドで製作を行う際に駆動系は流体パルスモーターを残しつつ、RVに追従出来る高機動化をも画策する必要があった。
技術的困難を乗り越え紆余曲折の末にMS106ハイザックが完成した。
メリットはあった、ザクの素直な操縦性をそのまま継承したハイザックはベテランパイロットからビギナーまで追従性が高く機種転換の必要も無かったし、ジムのスプレーガンよりも高性能なメガ粒子ビームライフルを装備出来、ザクの豊富な武器弾薬類をそのまま使用出来た。
ジムの使用するルナチタニウム製の盾の使用も許可された為、技術の進歩により開発される事となる新技術の全天周囲モニターやリニアシートを順次段階的に換装する事により7年後にも通用する機体を開発できたことになる。
MS106ハイザックの生産は宇宙世紀0079年10月に始まり、直ぐにザクⅡとの置き換えが行われていった。
そして宇宙世紀0079年11月の事。
今年に入って地球圏全体に配備が進められたモビルスーツはその有用性を救助任務や宇宙要塞やコロニー修理などで示していたが、何故こんな新兵科の登用を急激に進めていたのか用兵側に疑問に思われていた。
そんな折、何時もの如く連邦のパトロール部隊は定期的に行われているパトロール任務に就いていた。
地球圏は狭いが宇宙ゴミが暗礁の様に集中する場所があり、またそれを利用した宇宙海賊の被害もごく少数存在した。
勿論、連邦軍による定期パトロールがなければその被害額も格段に多くなっていた筈であるからパトロール任務の意義は存在していた。
その日、宇宙世紀0079年11月7日、連邦宇宙軍地球圏第11パトロール部隊に所属するサラミス級巡洋艦改フジ級スルガはセイバーフィッシュ戦闘機を2機格納し地球圏月軌道外縁の哨戒任務に就いていた。
地球時間グリニッジ標準時午前3時9分に長距離レーダーに感有り、シリウス星方向に未確認移動物体を感知。
スルガはルナツー本部へと報告。
『報告・第11パトロール部隊所属スルガよりルナツー哨戒部隊本部宛、シリウス方面より未確認移動物体の地球圏への移動を確認。所属不明の海賊の可能性有り、本艦はこれより接触を試みる』
ルナツーでは平時にしては緊張感の漂う司令室から『貴艦の無事を祈る』と返信が帰ってきた。
スルガはベクトルを合わせメインエンジンを必要なだけ吹かすと、軌道エネルギーの増した艦体は地球から遠ざかる高軌道へと遷移した。
数時間後、近距離レーダーの範囲に到達した未確認移動物体はお椀形をしたステルス性に優れた形をしていて、地球圏目指して移動していた。
未確認移動物体に対してスルガから通信を試みるが返答はなかった。
「ダメですヘンケン艦長、全周波数帯を試してみましたが返答有りません」
「む、そうか」
通信士の声に艦長ヘンケン・ベックナー少佐はガッカリした表情を浮かべるが、立て続けにレーダー管制官から入った報告に目を剥く。
「未確認移動物体からふたつの小型飛翔体が分離、こちらに向かってきます!」
「なんだと、識別は出来るか」
「少しお待ちください。これは要警戒識別物体ARV-Aウグです」
「来たか噂のアストロゲイターが。副長、直ちにセイバーフィッシュ2機の発進準備。仕留めるぞ。対空戦闘準備用意」
「了解。セイバーフィッシュ・アルファ並びにブラボーは直ちに発艦し敵機を迎撃せよ」
『了解(ラジャー)』
エアロックから空気が抜かれ、扉が開放される。
中に入っていたセイバーフィッシュ型宇宙戦闘機2機がアームによって格納庫から押し出され、宇宙空間に漂う。
機体後部のノズルが輝き、推進剤が爆発的に燃焼し機体を前方へと押し出す。
蹴飛ばされた様に加速したセイバーフィッシュ2機は直ちにレーダーに映る敵機の光点をロックオンし武器を選択し、トリガーに指を掛ける。
「フォックスワン、シュート」
ウェポンベイから放された大型ミサイルは狙い違わず目標に向かって直進するが、接近してきたミサイルに向けてウグ2機は構えていたビームガンを構え、短冊状のビーム弾を無数にバラ撒く。
ミサイルの本体に接触したビーム片が破壊を撒き散らし爆発、迎撃されてしまった。
「続けてフォックスツー、シュート」
今度はミサイルランチャーから小型のミサイルを多数発射、射程は短いが先程よりも接近している為にすぐに接敵する。
同じように迎撃されるが、少数の小型ミサイルがウグに到達。
先行していたウグの左腕に命中し、それを破壊したが左腕から煙を吐いただけで撃墜には至らなかった。
セイバーフィッシュは機関銃を撃ち込みながら回避行動に移り敵の背後に回り込むが、ウグは機動メカを自称するだけあって機敏な動きでそれを回避し、ついでに左腕から人魂状のビームガンが撃ち出され、数秒飛翔したビームはセイバーフィッシュに直撃した。
一瞬で破壊されたセイバーフィッシュ2機はスペースデブリに姿を変え、虚空へと散った。
「セイバーフィッシュ、アルファ、ブラボー共にロスト。撃墜の模様」
「クッ、それで敵の損害は?」
「レーダー上では確認出来ません」
「分かった。操舵手、直ちに船体を反転、全力噴射で軌道エネルギーを減速し地球方面へ進路を変更せよ。通信士はルナツーへと戦況を報告。敵アストロゲイターの攻撃に遭遇しセイバーフィッシュ2機被撃墜確実。急げよ」
スルガは等速運動を続けていた艦体を姿勢制御バーニアで前後反転させ、前方に回した艦体後部のメインスラスターを全力で噴射し、軌道スピードを大きく殺した。
地球重力に牽かれている艦体は直ぐに低位軌道へと遷移し、尚且つ艦体上部のスラスターを噴かして短楕円軌道から長楕円軌道に変更し月を斜めに横切る様に逃げ道を走り出した。
流石に機動兵器では最高移動速度が高い巡洋艦に着いて行くのは難しく、直ぐさま引き離された。
敵の母艦がウグ2機を回収している時間で距離を稼いだスルガは一目散にルナツーへ向けて転進する事に成功した。
月軌道上には最新の兵器であるモビルスーツ・ジムとラウンドバーニアン・トゥランファムを揃えた連邦の月軌道艦隊が待ち構えている。
旧式の宇宙戦闘機では適わない事を証明したスルガは威力偵察としては充分な成果を上げた。
同じく敵も威力偵察だろうから、お相子であるが、こちらは十数年使われてほぼ現役を退いた宇宙戦闘機なので問題は無いと地球連邦は判断していたが、敵の機動メカは数千年間使われている超旧式機である事を彼らは知らない。
第三話です。
主人公達が出てきませんが敵、アストロゲイターの先触れが姿を現しました。
モビルスーツの開発ですが、正規の宇宙世紀とは異なり重力戦線が無い事、戦いの舞台が基本地球圏のスペースコロニー周辺に限定されているのでザクのバリエーションだけで十分と判断しました。(総監督もスポンサーにオモチャの販売に必要だからとグフとかドムを出したらしいですし)
そしてそのままハイザックまで繋げてしまいました。ザク好きなんです。歴史が進めばザクⅢとかギラ・ドーガとかギラ・ズールとかに発展するんでしょうか。マラサイはありかも知れない。
ではでは。