機動戦士バイファム   作:EINGRAD

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第四話 観艦

 サイド3ジオン自治区は地球から一番遠いコロニーである。

 月軌道上にあるラグランジュポイントはL1~5が存在し、月軌道の月と地球を結んだ60度の位置の前にL4、後ろにL5、月の内側にL1、外側にL2、月の反対側にL3が位置している。

 サイド3は月の外側に存在するL2に存在している、地球から一番遠いと云う事は『外敵』からの脅威を最も受ける位置にあると云う事だ。

 今までは地球圏の外から飛来する天体の脅威でしかなかった。

 もしも以前に外星人が攻めてきたらどうすると言ったら考え過ぎだと馬鹿にされただろうが、今現在では洒落にならない状況になってしまった。

 そんなサイド3では政府首脳であるギレン総帥が檄を飛ばしていた。

 

「現在我々は未曾有の危機に瀕している。高度な文明を誇る異星人がこの地球圏へと明確な意志を持って攻め込んで来たのだ。これは我々ジオンの滅亡を意味しているのか、否! これは我々が外星系へと羽ばたく第一歩である。悪意ある異星人(アストロゲーター)は地球圏を目指し、よって最前線である我々月の外側にあるサイド3が最初に、そして最も激しく攻撃されるだろう。しかし、銀河の彼方に広がる茫洋たる星々が開拓を待っている。そう、我々自らが地球圏という卵の殻を割り最初に飛び出す人間になるだろう。その為には襲い来る外圧を自らの手で押しのけ、この世界の何処ででもその存在を保てる事を証明せねばならないのだ。我々がここ数年溜めてきた牙の数は伊達では無い、傍若無人な異星人を自らの手で打ち砕き、我々こそが銀河進出に最も相応しい存在で有る事を示さねばならない。立てよ人民! 敢えて人類の矢面に立ち、アストロゲーターを打ち倒せ! ジーク・ジオン!」

 

 ジオン自治区の首都ズムシティに於いてジオンの総帥たるギレン・ザビは観艦式を行う為の出陣の演説を行っていた。

 約一年間の戦力増強と実戦と変わらない程の演習を積み重ねてきたジオン軍はその牙を研ぎ、獲物を見据えて臨戦態勢へと入っていた。

 ジオン軍の宇宙攻撃軍と宇宙機動軍の主戦力たるMSの配備も更新され続け、現在では指揮官機やエースパイロット相当の乗機はハイザックへと代わり、最低でもザクⅡFZが配備されている。

 隠す事無く大々的に行われてきた訓練でその練度は向上され、実戦経験こそまだだがエースパイロット相当の活躍を遂げて名を上げた者達がパーソナルカラーを許されて特別なMSに搭乗している。

 彼らは国民の士気を高める為にヒーロー然とした扱いを受けており、宇宙攻撃軍ではシャア・アズナブル、ランバ・ラル、シン・マツナガ、アナベル・ガトー、ヘルベルト・フォン・カスペンら、宇宙機動軍ではガイア、マッシュ、オルテガ、シーマ・ガラハウ、ジョニー・ライデン、フレデリック・ブラウンらが名を連ねている。

 子供らの間での人気はキャプテン・ジオンに匹敵する程なのだ。

 この観艦式では宇宙巡洋艦のチベ級やムサイ級がジオン自治区の外縁部にある軍事要塞コロニーの外周で輪形陣を組んで遊弋しており、テレビクルーの乗った小型哨戒艦から地球圏へと放送されている。

 そこを横切る様にMSの編隊が飛翔し、ザクマシンガンやビームライフルを掲げてポーズを取っている様が見受けられた。

 テレビ画面ではパーソナルカラーに染められたハイザックが横切る度にテロップが流され、パイロットのプロフィールと敬礼をした写真が表示されている。

 それを興奮した口調のアナウンサーが説明し、軍事アドバイザーが解説を付けていた。

 

 ◇ ◆ ◇ ◆

「ヤレヤレこれでは道化だよ」

 

 ピンクがかった赤のハイザックを操縦するシャア・アズナブルはモニターの一部にテレビ放送を表示させて僚機のザクⅡFZの位置取りを確認しつつ編隊飛行を続けていた。

 

「そんな事を言って、実は嬉しいんじゃないですか」

「おい、ジーンやめないか」

「まぁ構わんよデニム。確かに功名心はある。だが、初陣もまだなのだ、気恥ずかしいのもしかたあるまい」

 ◇ ◆ ◇ ◆

 

 サイド3の防衛体制は機動部隊が主力で有り、艦隊にモビルスーツが帯同して攻撃、迎撃を行うコンセプトになっている。

 これはMSの行動範囲と制限時間の都合上、戦場までの移動を削減する必要がある為だ。

 この制限を取り払う為に旧来からあるガトル戦闘攻撃機にアタッチメントを付けて航続距離を伸ばす裏技からサブ・フライト・システムが開発されたりしているが、まだ主流では無い。

 よってモビルスーツ運用能力を持つ母艦の存在は必須であった。

 宇宙は嫌になる程広い。

 それとは別にコロニーに駐留する少数の部隊も存在するが、運用される機体は型落ち品の旧式機が長らく使用され続けている場合が多い。

 予算の都合上、使用が終了した中古の部品を供給され、部隊の努力でそれを維持している場合が多い。

 サイド3の辺縁部にあるとあるベッドタウンの様なコロニーの場合、MS05旧ザク1機にMS06FZ2機と云う貧弱さてある。

 駐留している部隊の部隊長スターマイン大尉は四苦八苦しているが、コロニー1基の人口は数千万人にも及ぶ、これはアメリカの州軍と比べても少なすぎるので、ジオンがどれだけ正面装備に集中しているかを証明している。

 観艦式も終了すると部隊は解散し、通常の待機任務に戻る者も居れば部隊毎哨戒任務に就く者も居り、通常のローテーションに戻ったのだがデフコン4に相当する警戒態勢に入っていた。

 連邦軍がアストロゲーターとの戦闘状態に入った事は通告により知らされており、デフコン3でも問題なかったのだが、観艦式が予定されていたと云う政治的な都合と接触宙域がL5方向の高軌道であったので川の流れの如く位置エネルギーのポテンシャルはサイド3の方が高く常識的な宇宙軍事的な運用から上流に遡る可能性は低く見積もられた。

 ただ、それは現代地球の宇宙科学技術的な常識なのだが。

 対して連邦軍はデフコン3に相当する警戒態勢を取っていた。

 アステロイドベルトに進出させた哨戒艦の超長距離レーダーだけではなく、学術目的で外惑星系に存在する無人探査機や衛星望遠鏡まで徴収し最大限の警戒態勢を取っていた。

 今までの連邦軍の戦術ドクトリンは地球圏内部の反乱分子との戦いであり、外宇宙からの侵略は全く考慮に無かったのだ。

 その為、敵が未知のステルス技術によりいきなり地球圏近傍へ現れる可能性も高い為、臨戦態勢を取った迎撃艦隊がサイド3を除く各コロニーの近傍宙域に駐留している。

 ジェイナス号と宇宙駆逐艦レーガンが存在するサイド7近傍は特に精鋭部隊が待機しており、ククトニアンのジェダから入手した言葉、遺跡が敵のコンピューターを狂わすエクストラ力線を発しており、地球侵攻に際して敵の第一目標となる可能性が高いと考えられていた。

 

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