宇宙世紀0079年12月25日キリスト教クリスマス日
それは或る日突然、溢れた。
小惑星帯から現れた光点が地球の常識から外れた高速で地球軌道へと接近すると、月軌道の外側で一旦停止した。
件のジェイナス号のカーゴから発せられるエクストラ力線は調査の結果月軌道と同じ直径まで届いている事が判明していた。
そしてサイド7は現在太陽に近付く軌道位置にいるので、丁度効果範囲の端っこに引っかかったUO(未確認オブジェクト)の集団、後に光学とレーダー解析から機種と所属を確定された敵集団は一時的に停止したのだった。
よって敵集団はそこで侵攻準備を整えた後、接近してくるラグランジュポイントL4に存在するサイド2ハッテへと侵攻を開始した。
敵集団は大小の艦艇群で密集隊形を取っており、その中でも地球側識別信号に無い新型の大型の宇宙戦闘空母である薄緑色をした左右に主翼を伸ばした艦が20隻以上、地球側識別信号XU23aと呼ばれる茶色のキノコ型をした中型輸送艇が100隻以上、その他恐らく輸送艦と思われる大型の艦艇が多数存在していた。
サイド2の外郭には連邦宇宙軍の第2連合艦隊の宇宙戦艦マゼラン級が50隻、宇宙巡洋艦サラミス級が100隻が戦列を組んで対峙していた。
ビンソン計画により以前から艦艇の増産を行い、戦争の準備を進めていた連邦軍で有ったが防衛しなければならない箇所が多く、万遍なくは数が揃えられない状態であった。
現状も同じL4にあるサイド6リーアの防衛艦隊を引き抜いて戦線を形成している状態である。
第2連合艦隊旗艦マゼラン級戦術指揮艦タイタンはティアンム中将の指揮下の元、全体の指揮を執っていた。
「各艦は敵の機動兵器展開に備えてGMの出撃準備を行う様指示を出して置け。又、マゼラン級は単縦陣を組み最大火力を発揮出来る様に丁字戦法を行う。敵の最大射程は不明だが、射程圏内に入り次第一斉射撃を行い一当てするぞ」
敵の分派艦隊は接近しつつあったが、この距離では機動兵器の出撃は出来ない物と思われたので連邦宇宙軍の元々の戦術ドクトリンである大艦巨砲主義の花形である丁字射撃を敢行しようと艦隊の隊形を整えつつあった。
元々マゼラン級は大艦巨砲主義の為に作られた艦で有り、ビンソン計画でもサラミス級の様に大幅なMSの搭載改造は行われずに、艦艇に簡易なMSデッキを作製しただけの大艦巨砲主義のまま増産された。
宇宙世紀になって宇宙に復活した戦艦とは強固な装甲で敵の弾に耐え、巨砲によって敵を打ち倒す、その為に作られ、それ以外の戦術は考えられていないのだ。
その為に艦隊の前方に位置し、敵の目前で目立つ事で被害担当艦として後方の柔らかい艦艇の被害を押さえる役目を持っていた。
マゼラン級が単縦陣を組んで艦隊の前面に展開し始めた所、敵艦から光が放たれた。
「くっ! 敵の射程の方が上だったか?」
「いえ、敵艦から多数の機動兵器が展開を始めました。その数、100機以上、艦隊防空システム起動します。敵機識別ARV-Bルザルガ、ARV-Gドギルムの2機種です」
ARV-B、-G共に宇宙用の機動メカであり、特にARV-Bルザルガは機動メカの原型に近く宇宙機に手を付けた様な容姿をしており足の無い特徴的な姿は鈍重な印象を与えながら非常に機敏な機動力を持っていた。
「ティアンム中将、敵艦隊が主砲の射程内に入ります」
「構わん、敵機ごと薙ぎ払え! 前衛艦隊は直ちに一斉射撃開始」
「了解、各艦一斉射撃開始」
マゼラン級戦艦は宇宙空間と云う広大な空間で米粒の様に小さな敵艦を狙い、レーダー射撃を敢行した。
連装メガ粒子砲7基計14砲×50隻の射線が広大な宇宙空間を突き進む。
途中進出してきた敵機動メカの群れの中を通り過ぎるが、大半が敵艦を狙っていた為に射線が通っておらず、一部命中しそうだったメガ粒子も躱されてしまった。
しかしレーダーによる精密射撃を行えた為か敵艦に対して撃ったメガ粒子砲は半数近くが命中した。
だが、最大射程で放った為か収束率が悪く少し拡散してしまったメガ粒子砲の威力は一撃で撃沈に居たる数は少なかった。
それでも少なくない破孔を敵艦に開け、10隻程度の撃沈を数え、中破以上の被害をそれ以上に与えていた。
続けて艦砲射撃を続けるが、敵艦からも発砲が開始され始めた。
敵機動兵器群は両艦隊の間から離れて迂回しながらも前衛のマゼラン艦隊へ接近を続けていた。
これに対してマゼラン艦隊は艦隊防空システムによる迎撃を開始、主砲を撃ちながら対空銃座やVLSから誘導ミサイルを放って迎撃する。
通常の地球製の現役の宇宙戦闘機なら運動性能からして追従可能な機動性能をもっている誘導ミサイルであったが、敵のARVは間近に迫ったミサイルに対して機体を予想外の方向へ機動する事でロックオンされたターゲティングを外してしまった。
特に先行して来たARV-Bルザルガは脚部の代わりに大型バーニアが付いている完全に無重量状態での運用に限定している宙間専用機であり、全身に付いたバーニアを噴かして空飛ぶ円盤の様な細かい軌道変更を繰り返しているので、コンピューターで機動を予想して予想位置を掃射するマゼランによる対空防御が大して役に立っていない。
敵機動兵器が味方艦隊に接近して以降、敵艦からの艦砲射撃は停止されているが味方艦隊からの射撃は続けられていた。
敵機動部隊は至近距離まで接近し、艦隊防空システムはフル活動を行っている。
だが、弾幕が濃く艦隊内部への侵入を防いでいるとは云え、敵機の持つ射撃武器の被弾もあり艦隊に被害が増えてきていた。
「味方機動部隊のジムが後方より接近中、敵機動部隊の阻止に入ります」
「良し、味方機に連絡、コンバットボックスを形成し必ず多対一で当たる様に。また、敵艦隊との間に入らない様に注意せよ」
「了解」
後方艦隊から出撃してきたジムは敵機動兵器の数倍の数を揃えていたが、対テロ戦闘はあっても戦争は宇宙世紀が始まって以来体験していない。連邦宇宙軍そのものが初陣なのだ。
宇宙戦闘の基本として、大出力の砲によって相手を攻撃し、相手の攻撃を耐えしのぐ事の出来る戦艦が最良の兵器として長い間君臨してきた。
所謂大艦巨砲主義が支配してきた訳だが、第二次世界大戦の戦訓の様に高度に進化した機動兵器との戦闘では万全では無いと「演習」ではっきりした。
だが、その機動兵器の扱いも決め兼ねている段階で有り、ゾーンディフェンスが有効なのか、敵機に張り付いて攻撃をした方が有効なのかも分からず、今回は艦隊防衛の為に艦隊の周囲を座標で区切って数機でカバーする方法が採られた。
実際の所、モビルスーツであるジムの運動性はラウンドバーニアンのトゥランファムらに比べて低く、敵ARVとの格闘戦に於いては不利が否めなかった。
ジムの持つ主兵装であるビームスプレーガンはガンダムの装備するビームライフルに比べて威力は劣るが連射出来る数は多く、集団戦での弾幕効果は高いのだが、1秒間に1発程度の発射速度では到底足りる物では無かった。
「くっ、こいつ素早いぞ!」
第二連合艦隊第四MS小隊のサウス・バニング中尉は部下のアルファ・A・ベイト少尉、ベルナルド・モンシア少尉、チャップ・アデル少尉を率い、ジム4機で編隊を組んでゾーンに侵入してきたARV-Bルザルガへ攻撃を仕掛けていた。
基本姿勢である盾を正面に構えながらビームスプレーガンを乱射するのだが、ルザルガは弾幕の隙間を掻い潜って接近を続け、腕に構えたビームガンから四角いビーム片を無数に発射する。
急いで回避行動をとるジム4機だったが内1機のジムが衝撃を受けて仰け反る。
「大丈夫かモンシア!」
「ああ、盾に当たっただけですぜ中尉。畜生め」
「無理はするなよ」
「へっ! 宇宙人なんかに大きな顔をさせられてませんぜ」
被弾したモンシア機であったが士気は衰えて居らず、半壊した盾を構えつつビームスプレーガンを撃ち放つ。
まるで見えてるかの様に回避するルザルガの姿を見て頭に血を上らせているモンシアだったが偶々撃った弾がスカート部分を掠って煙を上げた。
「いよっし! ざまを見ろよ宇宙人め」
「油断するな。敵の戦闘力は削れていないぞ」
敵の目的は飽くまで敵艦に艦砲射撃を続けているマゼラン級宇宙戦艦にあるらしく、ジムには牽制目的の射撃を続けているのみでジムに隙があればマゼラン級戦艦の隊列に突撃しようとするので機先を制して機体を先回りさせ、威圧する様に射撃を行う。
一進一退を続ける攻防だったが、幸いジム4機に目立った損傷は無く時間切れになったのかルザルガは敵艦隊へと引き返していった。
全体の戦況は概ね地球連邦軍の優勢で行われたが、数機のルザルガが防衛線を突破し2隻のマゼラン級戦艦が撃沈している。
こちらも艦砲射撃にて敵艦の撃沈を確認しており一方的な勝敗では無かったが、とにかくコロニー群の防衛には成功していた。
敵戦隊は機動兵器を回収した後月軌道の外側へと撤収して行き、現在は連邦宇宙軍の警戒線の外側で隊列を整えて時期を見ているらしく連邦軍の参謀本部ではサイド7に対する総攻撃で無ければサイド3への攻撃が第1候補になると予測されていた。
サイド7であれば近傍にあるルナツーからの増援も可能なので、本命のサイド3であるとして今後の防衛計画が練られていた。
ぎりぎり迄書いてました。
ここ数週間筆が進まない事、ようやくここまで書けました。
なのでストックなし。
来週の更新が危ぶまれる事態です。
ドキドキ。