機動戦士バイファム   作:EINGRAD

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第八話 改修

 サイド3ジオン自治区の防衛線は緊張が走っていたが、その内の1隻のムサイ級巡洋艦の中で軽い騒動が起こっていた。

 事の発端は、最初にククトニアンとの交戦が行われた連邦宇宙軍の戦訓のレポートがジオン軍にも共有された事に始まる。

 敵ARVの機動力の高さは想定以上で、4機のジムが持つ連射性の高いビームスプレーガンの弾幕を掻い潜り、ジム4機編隊での命中率が異常に低い事が問題になっていた。

 レポートを受け取ったジオン軍士官はそれぞれに研究を進めていたが、現在のジオンのモビルスーツ技術は連邦軍に比べて進んでいたものの格段の差がある訳では無かった。

 その為に敵機の撃墜を為す為に自らの機体のチューンナップ、人によって伸ばす方向は異なっていたが運動性や装甲の増加を行う者が後を絶たなかった。

 特にジオン軍ではエースパイロットに機体のパーソナルカラーやチューンナップの自由を与えていた為、機付きのエンジニアや製造元のジオニック社の技術者に大きな負担が掛かっていた。

 そんな中にシャア・アズナブル少佐は自機のハイザックの機動性能のチューンナップを指示していた。

 

「ハイザックのポテンシャルならば今よりも三倍の機動性を出せる筈だ」

「しかし、シャア少佐、それではパイロットに掛かるGが軽く10Gを越える事になります。幾らシャア少佐でもブラックアウトしてしまいます」

「だが、今の小隊で取れる戦法は限られているのだ。FZの機動性では遠距離からの援護射撃が精々、弾幕を張る為にザクキャノン改造キットを組み込んだがその分機動性は下がった。私のハイザックで敵に肉薄して見せるしか無かろう」

「確かに赤い彗星の異名を持つシャア少佐ならば可能かと思われますが・・・。実は連邦から技術供与がありまして、連邦との共通規格を持つハイザックになら組み込めるのですが、試してみますか?」

「連邦から? しかしMSの技術ならば我がジオン軍の方が優れている筈だが。確かに基礎技術の高さからMSの携帯兵器にビーム兵器を標準装備としたのは驚異的としか言えないが」

「コクピットの座席に耐G性能を組み込んだリニアシートと云う代物なのですが、試作実験品の上に、操縦方法が連邦式の操作方法なので機種変更並の手間が掛かりますので」

「ほう、興味深いな。何、MSの操縦など慣れが大事だからな、事前学習と訓練でどうにでもなるだろう。以前乗った事のあるヅダに比べれば容易い物だ。しかし、連邦のジムにその様な改造がされたと云う話は聞いた事が無いが」

「ええと、レジュメに拠りますと、連邦の試作・機能実験機であるRX78の機動性を上げた所パイロットに掛かる負荷が大きくなった為に採用した機構、との事です」

「ふむ、そのRX78についての説明が欲しい所だが」

「それならば簡単な概要がこの報告書に纏めてあります」

「どれ。連邦のMSの駆動装置であるフィールドモーターの駆動速度の向上にマグネットコーティングを実施し、各所バーニアの出力向上をした所パイロットの負荷が限界を迎えたと。パイロットはアムロ・レイ。ふむ、それでもRVのバイファムと同等なのか。・・・しかし連邦はMSに何を求めているのだ、能力実証実験機とは云え大気圏突入能力まであるぞ。連邦のMSはゲテモノか? とは云え装甲はルナチタニウムで物理的な耐久性は抜群に高いな。ザクマシンガンが主兵装のザクキラーとしては充分すぎる。これは以前から対ジオン戦闘を考慮に入れていたと考えられるか」

 

 シャアはレポートを見て深く考え込んでしまったが、整備主任にコクピットブロックの換装を指示し自分は戦術の立て直しを検討し始めた。

 

 ◇ ◆ ◇ ◆

 

 少し前、サイド7、1バンチ・グリーンノアにはMS開発部にて連邦のMS開発の試作試験機として作られたRX78ガンダムの姿があった。

 RX78はテム・レイ博士の考えた最高のモビルスーツの性能が詰め込まれた能力を目指して製造された。

 エネルギー源はミノフスキー・イヨネスコ式核融合炉を上半身のAパーツ、下半身のBパーツ、そして脱出装置を兼ねた宇宙戦闘機コアファイターに1基づつ搭載し、スペースデブリや仮想敵機のザクマシンガンに耐えられるルナチタニウムの装甲、駆動装置として小型のフィールドモーターを搭載し、武器として戦艦級のメガ粒子ビームライフルを運用出来、スラスター出力は重量比で2倍近くを誇る。

 他に低軌道上の戦闘で地球の重力に負けて大気圏突入に備えた装備まで内蔵していた。

 地上をホバーで移動する能力こそ無いが、地球圏内から宇宙空間での十全な性能を持っていた。

 だが、実際に運用してRVを仮想敵機として演習を行った所、初期は運動性能を駆動OSとパイロットの不慣れの為に被撃墜率が高かったのだが、メインパイロットのアムロ・レイがガンダムの操縦に慣熟してくると様子が変わった。

 神懸かり的な先読みによりビームライフルを構え、敵の攻撃をかわし、RVバイファムに対しても無敵、には成れなかった。

 この時点に於いてもRVの機動性は驚異的な回避率を誇り、複数のパターンを無作為に変化させる乱数回避技術はロディ・シャッフルの腕前もあって3対1の勝率を超える事は無かった。

 更にアムロの操縦にガンダムの反応が追いつかず、モスク・ハン博士によるマグネットコーティングによる機体の反応速度の向上やOSも最適化し機体性能は初期の3倍とも計算される程だった。

 だが、ここで致命的な弱点が露呈する。

 全ての機動兵器、気圏戦闘機の頃から付きまとう耐G性能の限界だ。

 RVは脱出装置も兼ねた小型ポッドに備えられた高い耐G性能により格段の機動性能を持っていたが、MSの、特にガンダムを含むRXシリーズは胴体内部にコンパクトに折り畳んだコアファイターを格納し、その極少のコクピットには耐G設備を導入する余地は無かった。

 そこでテム・レイ博士はアムロ・レイとも相談の上コアブロックシステムの代わりに脱出ポッドを兼ねた全天周モニターと耐G装置リニアシートの導入を決めた。

 更にアムロの敏感なセンスはバーニア等の残存分子や太陽風や光圧による機体に掛かる圧力も感知している事が分かったので、わざわざ宇宙空間でもマイクセンサーをオンする事で驚異的な敵補足能力を保有する事となり、この頃にはバイファムに対する勝率も五分五分を越えるMSとして最高性能を有するに至っていた。

 現時点に於いては最高性能を持っているとして過言では無いガンダムであるが、当然としてそのピーキーな性能は一般兵の操れる物では無く決して量産機には向かなかったが、そこで培った画期的なマグネットコーティング技術や全天周コクピット技術は現状機の機体性能の向上や次世代機の設計に活かされる事となる。

 

 ◇ ◆ ◇ ◆

 

 更に少し前。

 アムロ・レイは父でありガンダムの制作者であるテム・レイ博士に愚痴を零す。

 

「父さん、ガンダムの反応が鈍くて操縦に追いつかないんだ」

「それはアムロの操縦が早すぎるんだ。この私が直々に手を入れてガンダムはもう既に限界の性能だ。出来る事は対処したんだがなぁ。マグネットコーティング然り、フィールドモーターの出力も向上した。これ以上はオーバーヒートで機械的に壊れてしまう。こんなにアムロの操縦が凄くなるなんてな。まあ現時点に於いては技術的なブレイクスルーがなければどうしようも無いな」

「むー。そう言えば疑問なんだけどMSってカニか昆虫みたいなモノコック、外骨格構造してるけど、人間に近い構造の方が人間に近い動きが出来るんじゃ無いの?」

「ふむ、どう言う事だ?」

「人間みたいな内骨格の方が人間の動きを再現出来るんじゃないかなって」

「なるほど、云うならばMovableFrame(ムーバブルフレーム)と言った所か。確かに現段階では技術的な突破口は見出せていないし、研究する価値はあるかも知れんな。前回会戦で敵がエネルギー兵器を多用している事は分かったし、ガンダムの装甲もエネルギー兵器には耐性が弱い、いっその事、基礎フレームに強固で柔軟な超合金を用いて装甲は適宜変更可能にした方が。いや基礎フレームは同一で装甲デザインやスラスターを変更した方が多目的な状況に対応出来るか」

「父さん?」

「うむ。とにかく現行技術を改良しても量産型のMSではRVの機動性に追従出来ない問題は置いておいて、基礎技術の向上を図るべき段階に入ったと言う事だ」

「それじゃあガンダムの性能はこれ以上伸ばせないって事じゃ無いか」

「今のままではそうなるな。来たるべきガンダム、βガンダム、いやガンダムMkⅡまではお預けと言う事だ」

「ガンダムMkⅡ、何だか強そうだね」

 

 斯くしてMSの構造を一から変えるムーバブルフレームの基礎研究はこの時点で始まっていた。

 新機軸の構造を持つ第2世代MSの開発は技術検証実験機ガンダムMkⅡから始まった。

 テム・レイ博士の持つ技術の粋を凝らして実用化されるムーバブルフレームは直ちに量産機に使用される事は無かったが、敵のARVとの大規模交戦が予想されている7年後には敵と互角に戦える量産機が必要不可欠であり、この技術の実用化が切望される事となる。

 




 MS開発史はガンダム世界から大分捏造しています。
 開発スピードも速すぎですが、一年戦争時のMS開発スピードに比べたらマシなのでお許しください。
 ではでは。
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