愛が空から落ちてきて~空から未来のお嫁さんが落ちてきたので一緒に生活を始めます。ワケアリっぽいけどお互い様だし可愛いし一緒にいて幸せなので問題なし~   作:北乃ゆうひ/YU-Hi

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11.かいものクエスト~5000円の旅路、有るか無いかお店へ~

 

 駅と繋がる通路はまだ開いているので、ビルの中から駅の方へと入っていき、改札の前を通って建物の反対側へと抜けていく。

 

 その途中で、リヒトが紅久衣に訊ねる。

 

「そういえば、なんでバンディマート?」

「あのコンビニってノーサインの商品を取り扱ってる店舗があるの。お店によっては、結構しっかりとね」

「確かにお菓子とかなら見かけたコトあったかも」

 

 リヒトとしては、ノーサインのロゴの入った美味しいバームクーヘンが置いてあったなぁ……くらいの感覚である。

 

「そうじゃなくても、使い捨てになるかもだけど、一応下着やお泊まりセットみたいなのも置いてあるのよね」

「え? コンビニってそんなのも売ってるの?」

「売ってるのよ。あ、お泊まりセットに関してはコンビニにあっても、いったん保留だけど」

「なんで?」

「せっかく駅前に来たから、ルナドラッグにも寄りたくて」

「それこそなんで?」

 

 首を傾げるリヒトに、紅久衣がちょっとだけ口を尖らせるように告げる。

 

「だってコンビニのお泊まりセットに含まれてる使い切りシャンプーって個人的にあんま好きじゃ無いのだったりするし」

「ドラッグストアにはあるんだ」

「あったりもする……かなぁ。

 それにドラッグストアなら、お泊まりセットがなくとも、試供とか携帯用として、お高めシャンプーの使い切り百円パックみたいの置いてあったりするからね」

「全然知らないドラッグストアの話してる?」

 

 リヒトの言葉に、今度は紅久衣が首を傾げる。

 二人して、お互いの言っていることが分からないとばかりに目を瞬きあった。

 

「え? これから行くバンディマート近くにあるルナドラッグって使わない?」

「いや使うよ。バリバリ使う。そこでお徳用リンスインシャンプーとか買ってるし。っていうかうちにそういうのあるけど?」

「…………」

「待って紅久衣ちゃん!? なんで無言で肩に手を置くの!? 憐れむように首を横に振らないで!?」

 

 女の子のこだわりというのは、男の子の想像の範囲外なのである。

 

「せっかくだから、リヒトくんもお高めシャンプーの百円試供品とか買って使ってみたら? 世界が変わるかもよ?」

「そうなの?」

「そうよ。シャンプー変えたら気になってた頭のかゆみやベタ付きが劇的に変わったって人もいるくらいなんだから」

「へー……」

「あー! 気のない返事ぃ~!」

 

 最低限の身だしなみにしか興味がない男の子にとっては、高い効能やら保湿効果やらには、イマイチ興味が湧かないことも多いのだ。

 

 オタクでない人にとっての、SFロボットモノに出てくる量産型人型機動兵器の細かいバリエーションの差異とかと同じだ。

 

 興味ない人からしたら、人型機動兵器の陸戦型と空戦型の違いとかどうでもいいし。

 マーク2やら砲撃戦装備型やら、後期高機動型やらで、大きく上昇したスペックがどうだとか説明しても無駄なのと同じである。

 

 ただ、シャンプーと機動兵器に一番の違いがあるとしたら、前者はわかりやすく、リアルで効能を体験させやすいということだろうか。

 

「こうなったらリヒトくんの分も買って、実際に味わあせて上げないとダメね!」

「あれ? 紅久衣ちゃんが急に謎のやる気をッ!?」

「まずはルナドラッグね! 使い捨てでも良いから下着もあればそこで買っちゃうわ!」

 

 そんなワケでコンビニではなく、ドラッグストアへと向かうことになったのだった。

 

 

 

 ルナドラッグ 栗摩センター駅前店 シャンプー売り場

 

「……今まで気にしてなかったけどすごい数あるんだね」

「シャンプーだけでなく、リンスやコンディショナーとかもあるから。あ、隣の棚はボディソープだから別物よ」

「ボディソープもすごい数ある……」

 

 時々利用しているはずなのに、リヒトは驚愕の事実に襲われていた。

 普段は目当てのモノ以外を意識して見てない人の目には、大量の商品ラインナップが新鮮に映るモノである。

 

 その中から、紅久衣はファーストフード店やカフェチェーンなどで出てくるケチャップやメープルシロップの入った小袋を思わせるようなモノを手に取った。

 

「はい、これが百円の試供品」

「本当に試供品パッケージで有料のやつ売ってるんだ」

「疑ってたの?」

「疑ってたワケじゃないんだけど、イマイチ想像できてなくて」

 

 それも一つ二つではないようなので、さらに驚く。

 

「ムーンセレナーデシリーズに春限定サクラの香りなんて出てるんだ~♪」

「季節限定シャンプーとかあるんだ。というか香りのサンプルとかあるんだ」

 

 棚に置いてあるサンプル用フレーバーカプセルの入ったケースを手に取って鼻に近づけ、良い香りだと笑っている紅久衣を見ながら、リヒトは不思議なモノを見たような顔をする。

 

 香りのお試しという感覚そのものが、リヒトにとっては未知の世界である。

 

「ほら、リヒトくんも試してみたら?」

 

 そういってサンプルのケースを渡される。

 言われるがままにかいでみると、シャンプーの泡らしい香りの中に、華やかなサクラの香りがした。

 

「あ。本当に良い香りだ」

「香りは持続するものじゃないけど、自分の髪から香るなら、やっぱり良い香りの方がいいじゃない?」

「それはまぁ分かる」

 

 この香りが髪の毛からする紅久衣を想像して、ちょっとドキドキするリヒトである。

 

「そういえば、季節限定に驚いてるけど、お徳用とか出るやつでも、期間限定のキャラクターコラボとかやってない?」

「なくなったら詰め替え用を買うだけだしなぁ……パッケージとか気にしてないや」

 

 リヒトが素直に答えると、「え~」という顔をされてしまった。

 

「シャンプーやボディソープって、最近は結構キャラクターコラボやってるのよ」

 

 ほらーーと紅久衣が指差す先には、ガラスっぽさを意識した透明のボトルに琥珀色のシャンプーが詰まったモノがあった。

 そのラベルにはゆるきゃら系マスコットのクマが描かれている。

 

「ほら、ハニーアンバーシリーズの堕落(ダラ)ックマコラボボトル。パッケージめっちゃ可愛いくない?」

「可愛いけど、これってパッケージだけ?」

「うーん……あ。コラボ限定ホットケーキの香りだって! ……ホットケーキ!?」

「あ、紅久衣ちゃんも驚くんだ」

「驚くでしょ。まさかシャンプーでホットケーキの香りが来ると思わなかった」

 

 香りのサンプルと書かれたスティックのようなものがあるので、それを手に取ってキャップを取り、紅久衣が香りをかぐ。

 

「あ、本当にホットケーキっぽい。けどハチミツ感が強いせいで変な感じはしないな」

 

 美味しそうではあるーーと言いながら手渡されたので、リヒトもかいでみる。

 

「ほんとだ。でもちょっとお菓子っぽすぎる気がする」

「そうね。人を選びそう」

 

 この香りはこの香りで、紅久衣の髪からふんわり漂ってきたら素敵だろうなーーなどと考えてしまうリヒト。

 ずっとこの香りを纏う紅久衣と一緒にいたら、きっとホットケーキの香り=紅久衣という謎の条件付けがされてしまうかもしれない。

 

 それはそれで、良いかもしれないーーなどと考えたりするリヒトであった。

 

 そのままいくつかの香りを試しながら、紅久衣は一つうなずく。

 

「うん。とりあえずはムーンセレナーデのサクラかな。リヒトくんの分も含めて二つ買おうっと。それから……」

 

 コンディショナーの試供品も一つ手に取る。

 さらに二人でドラッグストアの中を見て回った。

 

 歯ブラシとミニチューブの歯磨き粉の入ったお泊まりセットがあったので、それも手にする。

 

 さらに何点かの商品に、お茶とお菓子も買ってレジへ。

 

「思ったより高くなっちゃったな」

 

 そう言いながらクレジットカードを財布から出そうとする紅久衣を制して、リヒトは自分のクレジットカードをお店の人に差し出した。

 

「すみません。これでお願いします。あと、レジ袋も付けてくださいね」

「かしこまりましたー」

 

 紅久衣が驚いている間にリヒトはさっさと会計を済ませてしまう。

 袋詰めされた商品を店員から受け取って、二人でお店から出たところで、紅久衣が訊ねる。

 

「いいの?」

「うん。今の紅久衣ちゃんにはお金は貴重でしょ? あんまり気にしないで。ボクが払いたいから払っただけだし」

「じゃあお言葉に甘えるわ。ありがとう」

「どういたしまして」

 

 リヒトはそう笑うと、隣のコンビニへと向かう。

 

「あとは下着だね」

「そ、そうね」

 

 すっかり忘れてたことを言われて、紅久衣は思わず目を逸らすようにうなずく。

 

「ここに置いてあれば、手っ取り早いんだけどなぁ」

「確かに。そろそろ帰ってお風呂に入りたいものね」

 

 シャンプー以外にも紅久衣が見て回る棚に、リヒトがいちいち驚くのだ。

 それが面白くて、紅久衣もついついリヒトにサンプルを試させたりなんなりをして、だいぶ時間をくってしまった。

 

 もちろん二人ともそれが楽しかったので、問題だとは思っていないのだが。

 とはいえ、がっつり時間を使ってしまったのは確かだ。

 

 このままだと、帰るのがだいぶ遅い時間になってしまいそうである。

 

「そう言えば、バンディマートの新作スイーツ気になってたのよね」

「わかる。イチゴ味の白玉でしょ?」

「そうそう。それそれ!」

 

 そうして、ルナドラッグの隣にあるバンディマートへと入っていった。

 

 運良く下着の取り扱いがあったので、それを購入して二人は帰路につくのだった。

 下着と一緒にイチゴ味の白玉デザートの入った袋を片手に。

 

 

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