愛が空から落ちてきて~空から未来のお嫁さんが落ちてきたので一緒に生活を始めます。ワケアリっぽいけどお互い様だし可愛いし一緒にいて幸せなので問題なし~   作:北乃ゆうひ/YU-Hi

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33.こうして二人は一緒に暮らし始めるのでした

 

 

「おかえり」

 

 アントワープの入り口のドアを開くと、マスターがこちらを一瞥して声を掛けてくれる。

 

 それに、リヒトと紅久衣は「ただいま」と答えてながら、中へと入っていった。

 

「荷物が届いてたから二階へ運んで貰っておいたよ」

「ありがとうございます」

 

 二人で二階へと上がっていくと、階段上がってすぐのところに荷物があった。

 届いていたのはホームセンターに配送を頼んだ布団だったようだ。

 

「これでリヒトくんもこっちで寝泊まりできるね」

「えっと、あー……うん。そうだね」

 

 これから、紅久衣と一緒に暮らす。

 その事実に、少しばかりしどろもどろになってしまうリヒト。

 

 その様子を見て、リヒトの胸中を理解した紅久衣が、胸の裡で意地悪く笑う。

 

「リヒトくん、私と一緒に暮らすの……イヤ?」

「そんなコトないよ!?」

 

 慌てて、リヒトが言葉を返す。

 

「でも、なんだからためらっているようだったし……」

「いやえっと、なんというか、事実を実感し始めたら、緊張してきたというか、ドキドキしてきちゃったというか……」

「まだ何もしてないうちからそんなので大丈夫?」

「え?」

「だって、一緒に暮らし始めたら、横で私が寝るワケだし……一緒にご飯食べて、同じ場所で着替えたり、交代でシャワー浴びたりとか色々が毎日あるのよ?」

「……まい、にち……ッ!」

 

 次の瞬間、リヒトの脳内で、一緒に寝泊まりした時のドキドキがリフレイン。それが毎日あるのかと思うと、顔が赤くなってくる。

 

 脳内では恥ずかしさと嬉しさと緊張と、健全な男子特有の妄想のあれこれが一同に介して派手なフェスを開催しはじめた。

 

「リヒトくん?」

 

 脳内フェスが激しすぎて完全にフリーズしたリヒトの前で、手をひらひらさせるも、動きがない。

 

「しまった。ちょっとからかいすぎたかな?」

 

 どうしたものか――と少し悩みつつ、動けないなら……と、紅久衣はちょっとだけ、自分でも勇気のいることをやってみることにした。

 

「リヒトくーん? おーい?」

 

 パタパタと目の前で手を動かしても反応がないのを改めて確認した紅久衣は、「よし」と小さく気合いを入れると、彼の横へと移動する。

 

 そうして、オーバーヒートだかバーンアウトだかして固まっているリヒトの頬に、自分の顔を近づけた。

 

「いつまでも固まってると、キスしちゃうぞ?」

 

 自分でそう口にしておきながら、紅久衣は自分の顔を赤くして……。

 けれどもためらいはせず、リヒトの頬へと自分の唇を当てた。

 

 すぐに顔も身体も離した紅久衣は、リヒトに背を向けた。

 

「え? 紅久衣ちゃん――今……?」

 

 直後、リヒトが正気に戻るが、紅久衣は気にした様子もなく告げる。

 

「さてリヒトくん。布団を和室に運んじゃって~」

 

 自分の顔が真っ赤になっているのをバレないようにしながら、紅久衣は和室に向かって歩き出す。

 

「あ。待って紅久衣ちゃん!」

 

 さっさと行ってしまう紅久衣を追うように、リヒトは布団を持ち上げる。

 それを抱きかかえながら、リヒトは紅久衣を追った。

 

「これで、今日から一緒に暮らせるわね」

 

 和室で、二人で荷ほどきをしていると、紅久衣が改めてそう告げる。

 それにリヒトがうなずいた。

 

「うん。そうだね。それと、さっきは固まっちゃってゴメン」

「あははは……私もちょっとからかいすぎちゃってゴメンね」

 

 お互いに謝り合い、広げた布団を押し入れへと片付けた。

 

「明日はリヒトくんの荷物をこっちに持ってくる感じかしら?」

「そうだね。持ってこれるモノはそうしようか」

「あっちはいつまで借りてるの?」

「一応、今月いっぱい。だからあと二週間くらい?」

「じゃあそれまでにやるコトやっておかないとだね。引っ越し業者とかどうする?」

「手配した方がいいよね? 事前にマスターに相談する必要があるかもだけど」

「それもそうか。じゃあ、それはあとでマスターに相談しましょう」

 

 やりとりをしていくにつれ、さっきとは違う実感が段々と湧いてくる。

 

「本当に、紅久衣ちゃんと一緒に暮らすんだなぁ……」

「そうよ。例え別れるコトになろうとも、それまでは大切にしてくれると嬉しいわ」

「もちろんだよ。あと、もしもという例えでも別れるとか言って欲しくないかも」

「そうね。今のは失言だったわ」

 

 そうしてどちらともなくお互いの顔を見て、小さく笑い合った。

 

「お腹空いてきたわね。夕ご飯はどうしようか」

「今から買ったり作ったりは大変だし……下で食べちゃおうか」

「そうね。そうしましょう」

 

 どちらともなく相手の手を取って、手を繋ぐ。

 階段は並んで降りれるほど広くはないから、階段までだけど。

 

 できるだけ長く手を繋いでいる為に、二人はいつもよりもだいぶゆっくりと、廊下を歩くのだった。

 





 これにて第一章、完となります。
 ここまでお読み頂きありがとうございました。

 自転車操業的に更新していくのはやっぱりしんどいので、第二章もある程度まとまった量の書きためをしてからやりたいと思います。
 それまで、気長にお待ち頂ければと。

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 第二章開始まで間が空くと思いますので、気が向いたら作者の他の作品もお楽しみいただければ嬉しいです。

 では。
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