お気に入り2122件ありがとうございます。もう、ほんと。うれしい。
今回と次回くらいで前置きは終わらせて、本格的に治安官ズや家政のストーリーに絡めて行く予定でございます。お楽しみに。
では、今回の話も楽しんでいただけると幸いです。
「ッ、邪魔アッ!!」
強靭な尾が暴風と冷気を伴い、有象無象を薙ぎ払う。あるものはコアが砕けて崩れ、あるものは精巧な氷像と化した。それを為した“捕食者”は、氷像に向かって大鋏を構え…一息に閉じれば、砕け地面に散らばって、哀れ虚空へ消えてゆく…。
「ふぃー…終わり?」
「ええ、ご主人様よりの指令はこれで完遂しました…いつにも増して張り切っていましたね、エレン」
「そ…」
“捕食者”…ヴィクトリア家政のメイド、エレンの言葉に、ゆらりと現れた女性が答えた。二匹の小さな戦闘用ボンプを傍らに浮かべ、自らも電気の力でふわふわと浮いている。スリットの入ったロングスカートのメイド服に上から拘束ベルトのようなものをつけ、ボディラインを際立たせている。
彼女の名前は“アレクサンドリナ・セバスチャン”…ヴィクトリア家政のメイドであり、同僚からは“リナ”の愛称で呼ばれている。
柔らかな笑みをたたえた彼女の言葉に、エレンは軽く返した後、徐に取り出した棒つき飴をかろ、と口に含み…眉間に少し皺を寄せた。
「ン…やっぱ、これ美味しくないな…」
「あら…いつも舐めている飴とは違うのかしら?」
「うん、いつもより安いのにしたんだけど…失敗だったかな」
微妙な顔をしながらかろかろと飴を転がすエレンに、リナは首を傾げた。
「そういえば…最近、仕事のシフトを増やしていましたわね。それに、飴も安いものに変えたり、残業も珍しく進んでこなして…
リナのその言葉を聴いた途端、エレンは飴を転がすのをぴたりとやめた。
「……………早く
がりっ、という音がした。ぽろりと飴の棒が地面に落ち、突然、エレンはふらりとたたらを踏み…ぽす、とリナに抱き止められた。
「エレン、あなた…最近全く休みを取っていませんね?睡眠時間や学業に、自らの体調まで蔑ろにして…。そうまでして、あなたは一体何を「リナには関係ないでしょ」…ごめん、なさい?」
「………ありがと。」
ぽかんとした表情のリナを他所に、エレンは支えてくれたリナに礼を言い、足下に待機していた家政のボンプ、“ボンプ・バトラー”に呼びかける。
「終わったから、キャロットで案内お願い」
『ンナ、ナ…(おまかせください)』
少しの演算ののち、ぽてぽてと歩き出したバトラーに随伴し、二人はホロウの外を目指すのだった…。
ーーーーー
『なんかヘンだゾ、アイツ!』
『ピリピリ、コワイ〜!』
「その通りね、ドラシラ、アナステラ…。あの子個人の問題と言ってしまえばそれまでだけれど…少し調べてみても、いいのかしら?」
ーーーーー
場面は変わって、ヴィクトリア家政、事務所。デスクに向かい、一枚の書類を眉間に皺を寄せて眺めているのは、狼のシリオン…ヴィクトリア家政の執行責任者、“フォン・ライカン”である。
ふむ、と書類から顔を上げ、壁にかかった時計を見るライカン。そろそろリナとエレンが帰ってくるころであるが…。
「アレクサンドリナ、只今戻りましたわ」
「お帰りなさい、リナ。時間通りですね…。おや、エレンは?」
「今日はもう帰らせました…。流石にこれ以上働かせては、彼女の体に障るでしょう?」
リナのその言葉に、ライカンはデスクの一角に置いてあるシフト表を手に取り、改めて目を通す。エレンのシフトがいち、にい、さん…これ以上連勤させると
「リナ。最近、彼女に何か…変わったことは?」
「ええ、つい先ほど…」
ライカンの問いに、リナは先程聴いたエレンの独り言を原文ママで伝えた。どうやら何か買いたいものができたらしいことと…それが他に売られてしまわないか、常に焦燥していること。
「あんなに焦っているなんて、普通じゃありえませんわ…。偶に、物を集めるのがお好きなご主人様がいらっしゃりますが、あそこまでの様相には…」
「確かに不可解ですね。彼女のプライベートに踏み込むのは、デリカシーやモラルを尊重するとあまり気の進む行為ではありませんが…彼女の身体が心配です。はてさてどうしたものか…」
二人して静かに考えていると、リナが話を変えた。
「そういえば、先程書類を眺めていたみたいですが…何か気になることがあったの?ライカンさん」
「…ええ。これはエレンのものとは別件になりますが…少々、厄介ごとが」
そう言うと、彼は机の上にあった書類をもう一度手に取り、リナに差し出す。それを受け取ったリナはそれに目を落とし…首を傾げた。
「スケジュール表…ですか?」
そう。それはA4用紙にプリントされた、なんの変哲もないスケジュール表。その日の予定、仕えさせて頂く“ご主人様”の名前が書かれているが…特定の人物の場所には、赤いマーカーで斜線が引かれている。
「あら、シュヴァリエ様の予定に斜線が…もしや、シュヴァリエ様に何か?」
「いえ、そういうわけではなく…あの方が、依頼を
シュヴァリエ…ヴィクトリア家政を頻繁に利用する、上流階級の“ご主人様”である。それを聞いて、リナはさらに疑問符を浮かべた。
「…別に、特に問題ないように思えるけれど…」
「ええ。キャンセル自体は問題ありませんが…理由が理由なのです」
「…理由?」
ライカンはリナの問いにゆっくりと頷き、続ける。
「時にリナ、シュヴァリエ様がいつも、我々に任せてくださるお仕事は覚えていますよね?」
「ええ、勿論。彼の方は大の
「その通り。彼は我々の仕事に満足してくれていた…と、私は勝手ながらに自負していました…。いえ、実際に満足していただいていたそうです」
「それは嬉しいことですわね。……でも、それならなぜキャンセルを?」
ライカンは息を深く吸い込み、ゆっくりと吐き出す。まるで何か、鮮烈な記憶に思いを馳せるような…そんな間を置いて、彼は口を開いた。
「先日のことです。私はシュヴァリエ様の下へ呼び出されました…
ーーーーー
屋敷の一角、大部屋の扉の前。ノックの音が静まり返った廊下に響く。
「シュヴァリエ様。お待たせしてしまい申し訳ございません。ライカンにございます」
『…………入りたまえ』
「失礼致します」
ぎい、と軋む扉を開き、部屋の中に。中を見渡せば、そこかしこに拘りを感じるライティングに、並べられた“コレクション”の数々。
結晶のような緑色の刃や、黒い鉤爪…緑と白の鋭いアーチや、巨大な何かの手のひらまで、多種多様な…しかし、皆一様に異彩を放つ、
部屋の隅には一定の湿度・温度を保つ空調機器が巧妙に隠され、部屋の雰囲気を邪魔していない。
今回の“ご主人様”…、独特の雰囲気を放つ老紳士。シュヴァリエは、大きなカーテンに覆い隠された何かの前に立ち、ライカンに背を向けていた。
「今日はすまないな、急に呼びつけて…少し気分が良くてね」
「いえ、私達はそれが役目ですので…」
シュヴァリエが振り向き、その双眸をライカンに向けた。人生を積み重ねてきた、落ち着き払った彼の顔…そこに、まるで少年のような輝きを宿して。
「今日は君に見せたいものがあってね。これをいち早く他人に見せたいとうずうずしていたんだよ」
「左様でございますか…。では、不肖ライカン、拝見させていただきます」
その言葉を聞いて、嬉しそうに頷いたシュヴァリエは…いつの間にか手に握っていた紐を引いた。それと同時に、何かを覆い隠していたカーテンが引き上げられ…ライカンは、息を呑む。
一言で表すならば…それは、
「…素晴らしいだろう?高危険度侵食体の大角だ…。なかなか見かけることはできない。素晴らしい、これは特に、ね…」
満足げにため息を漏らしながら、彼はそれを仰ぎ見る。しかし、ライカンにはそれが不可解だった。ライカンはこれまでこの老紳士の従者として雇われてきたこともあり、所謂
まずは根本、頭甲殻の部分。侵食体の頭に生えていた部分の結晶は砕けたような断面だ。ありえない力をありえない角度から加えたような…つまり、無理矢理に引き剥がされたような形跡が見られた。
次に角。悪魔のような立派な2本角だが、それにはあちこちに罅が入っており、左角の先は少し欠けていた。そして右角の根元には、何かで締めつけたように環状の跡が残っている。
極め付けに、全体を俯瞰して見る。あちこちに爪痕、擦ったような傷、欠け…控えめに言って、『標本』としては0点の出来であった。
ライカンの思考の回廊は深みへと沈んでゆく。普段、家政はエーテリアスの動きを止め、できるだけ損傷のないように切り離すことで『標本』を回収していた。その仕事ぶりが丁寧であるから、この老紳士は我々に仕事を依頼し続けてくれたのだ…と、思っていたのだが。
「…わからない、と言った様子だね」
「…申し訳ございません、お恥ずかしながら…」
「いいんだよ。僕とてこの標本が『標本』たり得ないことは理解しているとも。これは僕の
彼は革の手袋を右手に嵌めると、標本に近づき、表面をゆっくりと撫でた。
「君たち家政の仕事は綺麗だった。僕もその仕事に満足していたさ。だが…こんなものを見せられちゃあ、だめだよ」
震える声で彼は続ける。
「これはね…
「…………闘争、ですか」
「そうさ。強者と強者がぶつかり合い、一方が地に伏せ、一方はその亡骸に、あるいは死の淵に牙を突き立てる…。食うか食われるか、殺すか殺されるか…そんな闘争でだよ!!!!!」
堪えきれぬ歓喜のまま腕を広げ、彼は訴える。上品な言葉遣いも崩れてゆく。
「今思えば私は昔から戦い、勝負、闘争…そういうものが大好きだった。僕自身、紙とペンで気に入らないやつをぶちのめしながらここまで登りつめた…。高校生の頃、夜中にこっそり抜け出して違法闘技場なんかも見に行ってねえ…、血の香りのする闘争も、勿論しない闘争もたまらなく好きだった」
「この標本からはね…それがありありと見て取れるんだ。ぶつかり合い、叩きのめし、勝ち取った…立派な戦利品さ。もう、これは一種の芸術とさえ言えるだろう…!」
興奮した様子で彼は声を上げ、咽せる。大きく咳き込み少しよろめくが、ライカンが咄嗟に身体を支えた。
「エホッ、ウエッホ…ああ、すまないな…ついはしゃいでしまったよ」
「いえ…」
ライカンの腕を支えにシュヴァリエは姿勢を直すと、ライカンに向き直り申し訳なさそうな表情で言う。
「すまないが…今後も入れている君たちへの依頼を、全てキャンセルさせてはくれないだろうか。君たちの仕事にも満足していたが…これほどのものを手に入れてはなあ…」
「…構いません。いままでご贔屓にして頂き、恐悦至極に存じます」
「ああ。こちらこそ、今までありがとう。キャンセル料も払わせてもらうよ…」
ライカンは感謝を述べ、頭の中でスケジュールを思い浮かべ、シュヴァリエの予約に取り消し線を入れていく。そんなことをしているうちに、ふと、気になったことがあった。
「恐縮ですが、後学の為ひとつお伺いしたいことが…」
「ふむ、なんだね。言ってみなさい」
「ありがとうございます。………これほどの品、一体何処で?」
この老紳士がいたか気に入ったこの標本は、一体何処で、誰が、どうやって採集してきたのか…これがわからなかった。
「なるほど、確かに気になるだろうね。…これはね、最近名をあげてきているらしいホロウレイダーに頼んだものだよ」
「なるほど。そのホロウレイダーとは、直接?」
「いいや、彼の
シュヴァリエの孫と同年代…ということは高校生だろうか。だが、そんなに若い人間が、本当に仲介役なのだろうか。
「君も仕事をしているうちに、仲介人の彼とは知り合うかも知らんが…本人には会えんだろうね。彼は常に一人で仕事をするそうだ」
「左様でございますか。………その、ホロウレイダーの名前は?」
「ああ、それなら…これを」
そう訊くと、彼は懐から一枚の名刺を取り出し、ライカンに差し出した。しっかりと受け取り、彼はそれに目を落とす…。
『クロウラー ホロウの荒事お任せください』
ーーーーー
ちょっと嬉しい月曜の祝日。ちょこっとだけ
「…あァら。誰かと思えばクラウスじゃあないですの。お久しぶりですわね」
「お。ほんとだ。よっす、元気してたか〜?」
「…なんですの、その顰めっ面は。はっ倒しますわよ?」
「いや、昼飯なのに面倒なのに会ったなって」
「へへえ、結構言うねぃクラウスぅ」
片方はつかつかと、片方はゆらりとこちらに近寄ってくる。二人とも金髪で、背が低く…だいぶ世紀末なファッションをしていた。
この二人は、僕の叔父繋がりの知り合い…というか、叔父の
「なんで街に?まだ繁忙期でしょうに」
「物資の買い出しに来てるんだ〜。さっきここに着いたばっかりで…ばったりお前と会ったってわけだぜぃ」
「ハアー…ッ。それなら僕もう行きますよ?お腹減ってるんで…「ちょっとお待ちなさいな」…………(눈_눈)」
足早に立ち去ろうとすると、ぐいっ、と袖を引かれてその場に留められた。抗議の目線を向けると、ルーシー嬢もこちらを睨む。
「あなたの叔父様に頼まれてるんですの。近況を聞いてこい、ですってよ。本当ならワタクシもこんなクソ面倒臭いこと、バックれたい気分でしてよ?」
「じゃあ『あんたが直接会いに来い』って言っといてください」
「おおっと、そういうわけにもいかねんだなあ〜」
振り払って逃げようとすると、進路上にぬるりとパイパーが入り込んできた。彼女は一気に距離を詰めてくる。
「オマエの叔父さんもちょっち忙しいからねぃ…。当分会いには来れなさそうだぜぃ」
「…さいですか」
短く返答すると、パイパーはくすりと笑い…僕の袖を掴み、親指を立てて路地の出口へ振った。
「とりあえず、一緒にメシでも食うぞ〜。そこに美味い店、あるらしいぜぃ?」
ーーーーー
「……………これと言って変わったこたぁ無いじゃあないですの。チッ、聴きに来て損しましたわ」
「わざわざ人を捕まえておいてそりゃないでしょ…!」
「どうどう、落ち着け〜クラウス、何もないってのはいいことだと思うぜぃ?」
目の前で悪態を吐きながらポテトを摘むファンキー令嬢。僕たちは今、近くにあった店で昼食をとっていた。僕の横に座ったパイパーが僕をなだめる。
…そう。ここは四人がけのテーブルであるが、僕の向かいにルーシー嬢が1人で座っている。そして僕とパイパーは隣同士…僕が奥側、パイパーが通路側に座っており、逃げ場がない。ちょっと居心地が悪いので、僕はパイパーに抗議することにした。
「パイパーさん…普通あなたもあっちに座るもんじゃないですか?」
「えー?別にどうだっていいだろぅそんなの〜。………あ〜、さては照れてんのかぃ?可愛い奴だねぃクラウスは〜」
眠たげな目のまま口角を上げ、うりうり、とパイパーはこちらに身を寄せてくる。…暑苦しい。体温高いなこの人。
「ウザいからそんなに近寄らないでください…」
「そんなこと言ってえ、ほんとは嬉しいんだろ?へへへぇ、素直じゃないねぃ」
「ハーッ…ワタクシの目の前でイチャつくんじゃぁねぇですの。暑苦しいったらありませんわ」
顰めっ面のルーシーはそう言ってナゲットをひょいと摘み、口に入れた。…それ僕のなんですけど。
「まあ、貴方が息災ならそれでよくってよ。あの人との会話が一文だけで済みますから」
「ルーシーはドライだなあ…。パイパーおねーさんは、お前が元気にやっててよかったと思ってるぜぃ?」
「お姉さん…………お姉さん?」
その見た目で?と、言い掛けたところで踏みとどまった。いくらなんでも失礼であろう。誤魔化すように、僕はハンバーガーを齧った。チーズバーガーのジャンキーな旨みが口の中に広がる。
「…それ、何個目ですの?」
「ん、三個目ですけど…何か?」
「…結構大食いでしたのね………」
「すごいなぁ、この身体のどこに消えてんでぃ…?」
「ひえっ、触んないでくださいよくすぐったい…!」
ぺむぺむ、と僕のウエストや胸板を触ってきたパイパーさんの腕を手で制すると、彼女は残念そうに唇を尖らせた後、テーブルの上の飲み物をぐい、とあおった。その中身は、しゅわしゅわと音を立てる黄金色の炭酸飲料…。
「ビールですか…それで成人、なんでしたねパイパーさんは」
「んお、そうだぜぃ?今日は買い出しでワゴンで来てるし、ライトに運転してもらうから呑めるってわけでぃ。いやぁ、最高だぜぃ昼酒はぁ」
ぐびぐび、ぷはぁ。と、彼女はポテトをつまみに麦酒を楽しんでいる。その見た目でビールを飲まれるとなんだか非合法に見えるし、実際、さっき注文の時に免許証の提示を求められていた。彼女が差し出した免許証には、普通と大型の二つの資格が書かれていた。
満足そうにふへー、と笑う彼女を一瞥し、ふと気になったことをルーシー嬢に聞くことにした。
「そういえば、件のライトさんはどこに?」
「別の場所に買い出しに行ってますわ。…なんですの?その“どうせならそっちと会いたかったな”とでも言いたげな表情は!」
「いや、どうせならそっちと会いたかったなって…」
「一言一句違わないじゃあないですの!」
「ぶちのめしますわよ!?」と物騒な言葉をぶつけて来るルーシー嬢を他所に、今頃どこかにいるであろうライトさんのことを考える。
あの人とも、叔父繋がりで知り合いであった。たまに会って話すときも、同性ということもあってか会話がしやすい。それに、あの人はあの人でけっこう気にかけてくれていて…僕からの好感度は高いのである。
「まあまあ、いいじゃないかそんなにカリカリしなくてもよぅ、おねーさんに会えたんだから、ライトよりもお得だぜぃ?」
「貴女をお姉さんとしては見れませんよ、当分は…」
「えーっ、なんでぃそっけねえなあ」
ぶーぶー、と彼女は抗議する。この人は毎度こうであった。何かにつけては引っ付いてくるし、暑苦しいったらありゃしない。
「パイパー、成人女性が男子高校生にそんなに擦り寄るのは如何なものかと思いますわよ」
「えーっ、なんでい、ルーシーもけちだなぁ…」
ルーシー嬢の注意に、パイパーは渋々僕から離れた。こういう時ばかりは、ルーシー嬢に感謝である。彼女はそのままパイパーを諭す。
「だいたい、今のクラウスくらいのトシなら、
「二人もいたらダメだと思うんですけど?????」
「へえ、そっかそっか、そうだよなあ…。いんのかぃ、カノジョ」
「……………いませんけど?」
そう答えると、ルーシーは驚いたような表情をする。パイパーも同じく、意外なものを見る目で僕を見ていた。
「高校生ですわよね?………てっきり何人か囲ってるものかと思いましたわ」
「あんたには僕がそんなにクズに見えてるんですか…?」
「へえーっ、今フリーなんだねぃクラウスは!」
常識から逸脱した言葉を吐くルーシー嬢に、なんだか声色が明るくなったパイパー。一方はヘタレめ、といった表情で僕を見つめ、一方はまたこちらに寄ってきた。
「クラウスよぅ、今のうちに
彼女はぐい、とまた一個こちらに寄ってくる。彼女の身体が触れている箇所が、なぜだか少し温まってくる。酔っ払っているのだろうか、赤ら顔で彼女は言った。
「いちおう経験豊富だぜぃ?おねーさんに任せてくれれば、卒業後の進路も安泰でぃ。どおだぁ?おねーさんと
いつの間にか、眼前に彼女の顔があった。酒気を帯びた吐息が感じられるほどの距離だ。上気した肌と、彼女の瞳がぐい、と近づいて…。
「シャレになりませんわよパイパー!おやめなさい!」
「うわあっ、いててててて、ごめんよルーシー…!」
いつの間にか席を立って移動してきたルーシー嬢が、ぎゅむうっ、と音がしそうなほどパイパーの耳をつねる。パイパーは容赦のない折檻に涙目で謝っていた。
「ッたく、油断も隙もありゃしませんわ…!クラウスも、ボサッとしてないでちょっとは強めに抵抗するべきですのよ?」
「え、あっはい、ごもっともです…」
その後、パイパーと共にくどくどと小一時間説教をくらう羽目になってしまった。貴重な月曜の祝日は、少女からの説教で潰れてしまった訳である。
ーーーーー
「…これで最後ですわね。パイパー、そろそろライトと合流しますわよ」
「わかったよルーシー…へへい、今日は大収穫だぜぃ」
「それにしても…パイパー、いくらなんでも同僚の甥を
「あー?別に同僚の甥だからって気にしないぜぃ?」
「気にするのは貴方ではなく
「…あいつ、そういうの気にするかねぃ」
「…………それも、そうですわね」
「だろぅ?…へへっ、楽しみだぜぃ、あの子と
「舌なめずりしてんじゃあねーですの!」
【To Be Continued…】
クラウス:危機感がないよ〜。
エレン:お金のために過労気味。これも全てクラウスってやつが悪いんだ。
リナ&ライカン:急にハードワークをこなし始めたエレンを心配している。
ルーシー:金髪ガラ悪お嬢様。クラウスの叔父の同僚である。
パイパー:けだるげ金髪合法ロリ(推定)。ゲーム内の会話から成人済み説が囁かれている為、当小説で採用させていただいた。また捕食者かたまげたなあ。
ライト:カリュドーンの子の黒一点。ガチャ来たらぜってえ引く(by作者)
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もしよろしければ、感想・評価よろしくお願いします。
では、また次回。