精霊使いの伝説   作:テルメン(白)

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珍しく昼寝しません

side ライナ

 

学院の編入の書類にサインをした俺たち二人はエリスに学院を案内してもらっている。

 

「教師棟と学生棟は二階の廊下で繋がっている。食堂は一階だ」

 

カミトは考え事をしていて、聞いていない様子だ。

俺はグレイワースに貰った学院の地図を見ている。

 

「あ、なるほどな。でも、ここをこうした方がいいな」

「む?お前はなんの話をしている?」

 

エリスは俺の呟きが気になったのか、持っていた地図を覗きこむ。

 

「あー、いや、ここをこうすれば精霊の力を増幅できるようになるんだよ」

「ほう、精霊工学に詳しいのか?」

「こんなくらい普通だよ」

 

グレイワースは俺にもうひとつ頼みごとをしていた。

それは、外部からの侵入を拒む結界を張ることだ。

それはできないので、侵入した者を感知できるような結界を張ることにしたのだが、校舎の形がめんどくさいため、いろいろ面倒なのだ。

 

「それで、カゼハヤ・カミト。貴様はこの私が案内してやっているのに上の空だな。そんなに胴体と頭が離婚したいか?」

 

エリスがカミトの首へ剣を当てる。

 

「わー!?ま、待て、少し考え事をしていただけだ、それを言うならライナだってそうだろ!」

「いやいや、俺は聞いてたぞ」

 

そう、どこになにがあるかによって結界の基点も変わる。

前の世界の結界と、この世界の結界を合わせた結界を張るので詳しい情報が必要たからな。

 

「仕方ない、今回は許してやろう」

「ふぅー、た、助かった」

「ただし、次はないと思え」

「わかりました!!」

「はいはいっと」

 

カミトは敬礼し、俺は軽く返事をする。

 

「あー、あの部屋、入っていい?」

「む?ああ、構わない」

「どうも」

 

俺はその部屋に入る。

 

「これなら、なんとかなりそうだな」

 

結界の基点の場所は確保できた。

 

「ありがとう、もう大丈夫だ」

「気にするな。そうだ、お前たちの寝泊まりする場所も案内してやろう」

 

と、案内されたのは馬小屋の横の、今にも壊れそうな掘っ立て小屋。

 

 

「どうだ。私が三時間かけて作った宿舎だ」

「ねーよ!!」

 

カミトはいきなり叫んだ。

 

「ほう?私に文句があると、そう言いたいんだな?」

 

エリスはカミトの首に剣を当てる。

 

「ワー、ステキナシュクシャダナー!」

「俺は高級羽毛布団があれば文句はないけどな」

 

今度は俺に剣が向いた。

 

「そう易々と当たるかよ!」

 

俺は剣をのけぞることで避ける。

 

「ほう」

 

エリスは感心したような声を出した。

 

「体術も中々の物だな」

「どうも」

「だが、甘い!」

 

のけぞって動けないところに蹴りを入れられた。

 

「ぐはっ!?」

 

俺は跳ばされる。

 

「ん?」

 

エリスは脚を見て首を傾げる。

 

「ライナ、大丈夫か?」

「いててて、大丈夫だ」

 

咄嗟に魔法障壁を張ったので実質無傷だ。

跳んだのは演技だ。

 

「まあいい、貴様らの教室はレイヴン教室だ。場所は、わかるな」

 

うまく騙せたようだ。

 

「案内されたからな」

「そうか、なら、安心だな。私ももう行く。さらばだー」

 

エリスは凄まじい速さで校舎に向かっていった。

 

「あー、なるほどな」

 

俺は複写眼を発動させ、エリスが精霊の力で風の足場を作り、それを蹴る瞬間風を上へ吹かせることで加速したことが、解析できた。

 

「んじゃ、俺も・・・・・」

「待て!」

「ぐぇっ!?」

 

カミトに制服の襟を掴まれ首が締まり止まる。

 

「置いていくなよ」

「はぁー、しかたねーな」

 

カミトの準備が終わるまで少し待つことにした。

 

「我・契約文を捧げ・大地に眠る悪意の精獣を宿す。準備完了だ」

「着いてこいよ」

 

エリスがやったことを真似て風を足場にして加速する。

 

「っおおお!!」

 

カミトが後ろで叫び出した。

それを無視して跳ぶ。

 

ーーーーー◇ーーーーー◇ーーーーー

 

「ふぅ、ついたな」

「ぜぇぜぇ、無理・・・・・」

 

あの魔法は脳のリミッターを外す魔法だからな。

こうなっても仕方ない。

 

「大丈夫か?」

「無理・・・・・」

「ったく、俺が眠らずに頑張ってんだからお前も頑張れよ」

 

まぁ、三日くらいずっと寝てたからな。

 

「た、確かに、珍しいけど・・・・・それとこれとは・・・・・」

「あーっ!!」

 

紅い髪の少女がカミトめがけてタックルした。

体力が切れたカミトは少女のタックルに耐えきれず壁にぶつかる。

 

「っぐふ!」

 

うわぁ、痛そう・・・・・。

 

「私の契約精霊返して!」

「って、言われてもな、先に俺が契約しちまったし・・・・・」

「ううっ・・・・・」

 

紅い髪の少女は泣き出した。

説明を聞くと、少女、クレアが契約しようとした剣精霊は、とんだじゃじゃ馬で助かるためにはカミトが契約するしかなかったということか。

助け船を出してやろう。

 

「泣き止めよ。カミトがお詫びに君のチームに入るってさ」

「ちょっ!勝手に決めるな・・・・・」

「本当?」

 

クレアは涙を止める。

 

「腹くくれよ。んじゃ、俺は先に行ってるからな」

 

俺はさっさと教室へ向かう。

 

「わかったよ、チームを組めばいいんだろ」

 

歩きながら聞いていたが、どうやらうまくいったみたいだ。

確認して、俺は教室に入る。

 

「ん、君が男の精霊使いか。もう一人はどうした?」

「あー、しばらくしたら来ると思うぞ」

「まあいい」

 

大体の段取りを聞いた。

俺はそれを遅れてきたカミトに説明する。

 

ーーーーー◇ーーーーー◇ーーーーー

 

いよいよ自己紹介だ。

俺たちは教壇に上がる。

 

「あれが男の精霊使い・・・・・」

「目つきが悪いわ。人殺してそう」

「片方はトロそうね」

「クレア・ルージュ様を手籠めにしたらしいわ!」

「な!?許さん!!で、手籠めってなに?」

「わ、わからないけど・・・・・と、とにかく、えっちなことよ!」

「でも、ちょっと不良っぽくてカッコイイかも♪」

「私はあの、寝癖のついた無気力な方が可愛くて好みだわ」

「外見に騙されちゃだめよ。男なんてみんな変態の淫獣なんだから」

 

めんどくさいことにメチャクチャ言われてる。

 

「あー、さえずるな。静かにしろ。単位減らすぞ貴様ら」

 

担任講師のフレイヤ・グランドルが名簿で机を叩くと、教室はしんと静まった。

 

「ほら、おまえらもとっとと自己紹介しろ」

 

なんというか、豪快な性格だな。悪いやつではなさそうだな。

カミトが教壇の前に一歩踏み出す。

 

「カゼハヤ・カミト、十六歳。見ての通り男の精霊使いなんだが・・・・・その、あまり怖がらずに仲よくしてくれるとありがたい」

「ライナ・リュート、同じく十六歳。あー、カミトと同じで仲よくしてくれ」

 

自己紹介が短いと思ったが、とくに話すこともないのでいいだろう。

 

「なんか、ふつー・・・・・だね」

「うん、ふつー。あんまり魔王っぽくないし」

 

魔王ね。悪魔王にならなったことあるけどさ。

あのときはムカついてヴォイスを地面に埋めたな。

 

「でも、なんか、キュンときたよね♪」

「あ、わかる。眠たそうで、なんかこう、世話をしてあげたくなる感じ?」

 

いやいや、グレイワースで間に合ってるからいらねーよ。

 

「あー、ここのお姫様たちはな、一般市民にくらべて感覚がズレてるんだ。なにしろ人間にとって最も不可解な隣人である精霊と、いつも触れ合っているんだからな。ま、おまえたちが精霊使いうんぬんってよりも、とにかく同年代の少年にいろいろ興味津々なのさ」

 

こういうのはカミト任せたいんだが、俺も巻き込まれるんだろうな。

 

「あ、あの、ライナ・・・・・君とカミト・・・・・君」

 

一人の少女がおずおずとした様子で手を挙げた。

 

「なんだ?」

「あ、えーっと、す、好きな食べものはなんですかっ?」

「あー、団子?」

 

前回の世界でフェリスという少女に進められ、食べたら凄く美味しかったのでそう言う。

 

「俺は、まあ、なんでも・・・・・強いて言えば、グラタンかな」

 

ふつーとか、女体盛りとか聞こえる。

俺たちをなんだと思っているんだ・・・・・

次々と質問された。

出身や、スリーサイズ、風呂でどこから洗うのか。

ほとんどセクハラだ。

というか、誰が知りたいんだよ。

 

「チームはもう決まってるの?」

 

やっとまともな質問だ。

 

「チーム?」

「決まってるでしょ、今度の<精霊剣舞祭>のチームよ」

「ああーーーーー」

 

確か、二ヶ月後の<精霊剣舞祭>は五人制のチーム戦だったな。

グレイワースに頼まれたから出るつもりだ。

 

「俺はクレアとチームを組む約束をした」

「俺は、まあ、適当に探すわ」

 

カミトは甘えるから、別のチームになって甘やかさないようにする。

 

「二人はどんな精霊と契約してるんですか?」

 

やっぱりその質問が来たか。

 

「あー、俺はさっき契約したばかりだし、ちょっとじゃじゃ馬だから見せることはできない」

 

期待の眼差しが俺に集中する。

出すしかないか。

 

「来い、グリフォン」

 

俺は契約している精霊の一体。

風属性の高位精霊を呼び出す。

教室がざわめき、カミトは驚いた反応を見せる。

 

「戻れ」

 

騒がしいのでさっさとグリフォンを戻し、視線をフレイヤ女史に向ける。

 

「質問の時間は終わりだ。ほら。おまえら、とっとと好きな席に座れ」

 

察してくれたようだ。俺は日当たりのいい、一番後ろの席に座る。

カミトはクレアに袖を掴まれ、クレアの隣に座った。

 

「先ほどぶりですね。ライナさん」

 

隣に座っていたのはプラチナブロンド髪の少女。

名前は確か・・・・・

 

「リンスレットだったよな。これからよろしくな」

「はい、よろしくお願いします」

 

俺はリンスレットと仲よくなった。




また投稿してしまった。
こんな速度でもう投稿しませんから。期待しないでください。

ライナは伝勇伝の世界では一人で勇者の遺物探しをしていました。
ですが、フェリスとはローランドに帰ってきたとき、団子屋で出合い。団子を無理やり口に突っ込まれ、その後、奢らされました。

クレアの性格をガラリと変えてみました。弱気で、保護欲?をそそられるような感じです。
なのでレイヴン教室のアイドルとなっています。

あと、ライナはなんだかんだいってマザコンなのです。
恋愛対象としては見てませんが、グレイワースに頼まれるとそれを実行します。

契約精霊グリフォン
ライナと契約しているグリフォンは最高位精霊と同等の力を持っています。

因みにライナの契約精霊は複数体います。
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