旅の用意は事前に
side ライナ
俺は今、城の広場に親友と一緒にいる。
前までなら通路に人がいたのだが、最近になっては足音すら聞こえない。
「ライナ、やっぱりこの方法しかないんだ。ごめん」
「お前にそんなことはできないね」
「ああ、俺にはできない。だから勇者にやってもらう」
白髪の王は黒い剣を創り、俺に飛ばす。
「ーーーーー」
俺は普通には発音できない呪文を唱えて黒い剣を破壊する。
「できないって言っただろ?」
「ライナは凄いな」
「化け物だからな」
「お前は・・・・・」
王は顔を歪める。
「いや、化け物だよ。でもさ、化け物でも世界を救えるって、皆を、お前を助けられるんだって、見せてやるよ」
「ライナ・・・・・」
「だからさ、もう少しだけ待ってくれよ」
王様は微笑む。
その瞬間、視界は真っ白に染まった。
ーーーーー◇ーーーーー◇ーーーーー
「起きてください、ライナ」
どうやら先程のは夢だったようだ。
目覚めたから、視界が白く染まったんだなと、納得する。
「おはよ、リンスレット」
「おはようございます。ライナ」
俺はリンスレットの部屋に泊まっていた。
もちろん二人っきりではない。
「起きたか、ライナ」
そう、エリスもいるのだ。
なぜ俺が女子二人がいる部屋に泊まることになったかというと、昨日、ライナだけじゃ起きられるか心配。と言われ、結果女子二人がいる部屋に泊まることになった。
もちろん高級羽毛布団を持ってだ。
「てか、お前、料理できたんだな」
エリスがキッチンで馴れた手つきで料理をしていた。
「当然だ」
「だんごを作ってるとかいうオチじゃないよな」
「そ、その手があったか!!」
冗談で言ったのだが、エリスは衝撃を受けていた。
「私としたことが・・・・・!!」
朝からテンションが高いな。と、布団から眺める。
「まあいい。だんごはまた次の機会だ」
エリスが調理にもどる。
「ライナもさっさと起きて支度をしてください」
リンスレットに急かされる。
「用意って言われても、あとは高級羽毛布団と枕くらいなんだけど」
着替えなどは既に符の入ったケースとともに旅行鞄の中だ。
「高級羽毛布団を持っていくんですか、あちらにも最高級のベッドが用意されているのにですか?」
「いや、だって長期間かかる種目だったらほら、眠れないだろ?」
「はぁ・・・・・らしいと言えばらしいですが」
リンスレットは呆れていた。
「お邪魔します」
「悪いな」
「失礼します」
他のチームメンバーもこの部屋に来た。
「あと少し待ってくれ」
「ちょっと早く来ちゃったみたいね」
どうやら最初っから朝食に誘っていたらしい。
「まさか、だんごを作っているとかじゃないよな」
「それ、さっき俺が言った」
「言ったのか・・・・・」
どうやらカミトも同じことを考えていたらしい。
「ふっ、次は期待に沿って私が作っただんごを食べさせてやろう」
「そ、その前にお茶の道を極めろよ。どこかのだんご好きもだんごの道はお茶の淹れ方に始まるって言ってたからな」
「ふむ、良いことを言うな。ならば、だんご作りセットではなくお茶セットを持っていくとしよう」
どうやら、だんごを味見と称して大量に食べさせられるという事態は防げたらしい。
「ナイス。けど、先伸ばしになっただけじゃないか?」
「そのときはそのときだ」
カミトに痛いところをつかれたが、どうしようもないことはその時考える。
「できたぞ!」
エリスが皿に盛り付けていく。
「持ってくぞ」
「助かる」
俺は料理を盛り付けた皿を並べていく。
ーーーーー◇ーーーーー◇ーーーーー
食事を終え、荷物をもち、集合場所である<石の円環>の前に集まった。
アレイシア精霊学院の敷地内にある、元素精霊界への<門>だ。
代表選手はここから元素精霊界へ転移し、精霊剣舞祭を司る<神儀院>の用意した船に乗ることになっている。
「ライナ・リュート、今度の剣舞では私が勝つからな」
「ヴェルサリア、メンバーを揃えられたのか?」
「ああ、それと、精霊を解放してくれたことには感謝している」
ヴェルサリアの言っている精霊の解放とは、呪詛義手に取り込まれた精霊を解放したことだろう。
まあ、精霊使いとのリンクは切れているのでもう一度契約し直すということになったが、精霊との絆が深かったのか、全員無事に契約することができたらしい。
「ねぇ!レン様とはどういう関係なの!」
「え?あー、師弟関係みたいなものだ」
ヴェルサリアのチームメイトが俺に質問してきた。
前回俺も魔法を使ってしまったからバレているらしい。
「え!じゃあ、カミトくんはライナくんの兄弟弟子ってこと?」
「え、ま、まあそんなとこかな?」
だが、師匠だなんて言ったらめんどくさいことになるので、レン・アッシュベルの弟子ということにしている。カミトもわかっているみたいだ。
「いいのか?」
「いいんだよ、めんどくさいから」
エリスが真実を伝えないのか?といった顔をしたがめんどくさいからいいのだ。
「ふふふ、ヴェルサリア様の地獄の訓練を受けた私に最早死角はないのだ。クレア・ルージュ!」
「へっ!?ご、ごめんなさい!」
以前、チーム対抗戦で儀式をおこなっていたところをクレアに退場させられた少女だ。
「んで、チーム名はなんなんだ?」
「チーム・移動要塞だ」
「確かにぴったりだな」
ヴェルサリアは動き回るからな。
もう一つのチームは上級生のみで構成された<チーム・ワイヴァーン>だ。
こちらを一瞥くれると、ふいっと目を逸らした。
どうやら敵として認識されているらしいな。
「ふん、ようやく三チームとも集まったか」
<門>の管理者であるフレイヤ教師がつかつかと歩いてきた。
彼女は学院の時計塔をちらっと見上げると、
「十分後に君たちを元素精霊界へ転送する。友人との別れはすませておけよ」
そういって、<石の円環>の中に魔術陣を描きはじめる。
「んじゃ、十分たったら起こしてくれ」
「いや、寝るなよって、もう寝てる・・・・・」
俺は目をつむり寝る。
「おい!起きろライナ!」
「ん?ふぁぁぁ」
「時間だ。全員、<石の円環>の中に入れ」
フレイヤ教師が指先で石柱をなぞると、地面から青い光がほとばしった。
この世界と元素精霊界を繋ぐ<門>が発生したのだ。
俺は最初に<石の円環>に足を踏み入れた。
ーーーーー◇ーーーーー◇ーーーーー
まばゆい閃光を抜け、少し船酔いのような感覚を味わい、元素精霊界についた。
目を開けて、最初に飛び込んできたのはーーーーー
鬱蒼と生い茂る森の木々と、その奥に広がる広大な湖。
「あ、前に学院の合宿で来たことがある」
「そういえばそんなこともありましたね」
リンスレットとクレアがそんなことを呟く。
「ところで、船はどこだ?」
カミトは湖の上を見回していた。
「あれだと思うけど・・・・・」
クレアは木々のあいだに覗く空を指差した。
「ん?」
カミトが視線をその方向に移す。
「あれが、<神儀院>のベルファール級飛行艇・・・・・」
カミトは目を見開いてうめいていた。
一方俺は、船を複写眼で解析していた。
「なるほどね。そういう仕組みか」
解析すると結構面白い仕組みをしていた。
「カミト、絶対に優勝を目指すわよ」
「ああ」
「そう、優勝してだんご王国を作るのだ!」
「はぁー、またあなたはそんなことを・・・・・」
なんというか、俺たちのチームは個性の強いチームだな。
なぜ関係のない前世の話を書いたんだ?
精霊のイタズラだな。
そしてヴェルサリアが剣舞祭に出場するぞ!!
やったね!!
あとはライナをどうするかが問題だ。
最悪お父さんを召喚しなければならない。