side カミト
飛行艇が、エーテルで満たされた雲の上を滑るように進んでいく。
目的地は、元素精霊界にある聖域のひとつーーーーー浮遊島<ラグナ・イース>
今回の精霊剣舞祭の会場だ。
本来は、精霊王に仕える<神儀院>の姫巫女だけが立ち入ることを許された聖域だがら精霊剣舞祭の期間中は、特別に一般の人間にも解放されるのだ。
「しかし、すごいな。この飛行艇ってのは」
窓に広がる雲海を眺めて感想を述べる。
なにしろ、飛行艇に乗るのは初めてなのだ。
しかも、チームごとに部屋が分け与えられている。
磨きあげられた大理石の壁ら美しい刺繍の施された緋毛の絨毯。
そして高級羽毛布団。って、これはライナの私物だ。
「それにしても、ぜんぜん揺れないんだな」
「最新鋭の飛行艇らしいからね。そのおかげでライナもぐっすりと眠っているし」
クレアはライナをちらりと見て説明する。
そのクレアもソファに寝転んでいる。
「そういえば、今夜城館で開会セレモニーがあるって聞いたんだけど、カミトは舞踏会用の礼装とか持ってきてるの?」
「いや、持ってきてないぞ。舞踏会なんて御免だからな」
三年前の精霊剣舞祭を思い出して、うんざりする。
まあ、ライナのおかげでトラウマにはならずすんだ。
「そうなの・・・・・」
と、なぜか残念そうにつぶやくクレア。
「・・・・・?俺が礼装を持ってないと、なにか困るのか?」
「な、なんでもない・・・・・」
クレアは頭をさげる。
「おい、お茶の用意ができたぞ」
「わかった。ライナ、起きろ」
「あと五分」
ライナは布団に顔を隠した。
「おい!エリスが怒るぞ!」
「起きた!!」
ライナが勢いよく立ち上がる。
「ほら、エリスがお茶を淹れてくれたらしいぞ」
「あー、おう」
ライナは布団を畳んで、紐で縛り、テーブルへ向かってきた。
これで全員揃ったな。
「私も紅茶を淹れました。みなさんどうぞお飲みになってください」
テーブルの上にはわびさびを感じさせる湯呑みと綺麗なティーカップ。
そして、だんごとタルトが並べられていた。
「おー、うまそうだな」
「でも、一気に二つとなるとな・・・・・」
ライナはそんなことを言っているが、二つはさすがにきついとおもう。
「そうか?」
「そうだよ」
女の子たちは、ワイワイと談笑しながらだんご、あるいはタルトを食べている。
「やはりだんごには緑茶だな」
「まあ、それは認めますけど、やはり紅茶のほうが風味があって美味しいですわ」
なにやら緑茶か紅茶かで喧嘩しているらしい。
「どっちも原料同じだし、そんなことしなくてもいいんじゃないか?」
ライナがそんなことを言って喧嘩を止めた。
え?
「おい、お前今なんと言った?」
「は?そんなことしなくてもいいんじゃないか?」
「その前だ!」
「どっちも原料同じだし」
ポカーンとみんなが口をだらしなく開けていた。
かくいう俺も口を開けていた。
「「「「ええ!?」」」」
「うお!?」
女子の驚きの声にライナは肩を小さく震わせた。
「え、でも、色とか味も違うし・・・・・」
「あれだよ、発酵の度合いで色とか変わるんだよ」
「なんだと!?なら!紅茶畑は緑茶畑にもなるのか!?」
「お、おう」
ライナにエリスが詰め寄る。
「製法は!?」
「えーと、確か萎れさせないまま収穫して、蒸して・・・・・どうするんだっけ?」
「ちっ!使えないやつめ!」
「ええー」
エリスはライナから離れる。
「用事ができた。ではな!」
エリスはだんごと湯呑みを両手に、部屋から出ていってしまった。
「あ、俺のだんご」
ライナの皿にはだんごが無くなっていた。
エリスが持っていったんだろう。まったく気がつかなかった。
「俺のやるからな」
「いや、別にいいよ」
ライナはタルトを食べ終わると、立ち上がる。
「ちょっと外で昼寝でもしてくる」
「どんだけ寝るんだよ・・・・・」
まあ、雲の上だから晴れているので昼寝にはちょうどいいのだろう。
「それじゃあ、俺も外の空気吸ってくる」
このでライナがいなくなるということはこの部屋に男は俺しかいなくなる。ということだ。そんなことは耐えられないので俺はライナと一緒に甲板に出る。
はい、緑茶と紅茶の原料が同じということをみんなに教えた回でした。
小学生の頃知ってビックリした記憶があります。
ちなみに俺は緑茶派です。
洋菓子より和菓子が好きです。
そしてエリスはどこに行ったのか?
それは内緒です。
次回、みんな大好き(?)なあの娘が登場します。