side ライナ
甲板に上がると、ものすごい速さで雲が流れていた。
本来なら、吹き付ける風で人間の身体などあっという間に吹き飛ばされる速度だが、風の音さえ聞こえないのは、精霊魔術による風の障壁が船体を覆っているからだ。
「あれ・・・・・なんだ?」
隣でカミトが目をごしごしと擦っては障壁を見つめる。
「どうしたカミト?」
「いや、一瞬文字みたいな物が見えたから・・・・・多分気のせいだ。もう見えないし」
「なら、いいんだけどな。んじゃ、おやすみ」
俺は甲板の一番日当たりのいい場所に寝転ぶ。
「マジで昼寝すんのかよ・・・・・」
「なんのために外に出たと思ってんだよ」
さて、寝ようと思った瞬間
「ここなら問題ないでしょう」
「そうだな。戯れ程度ならここでも大丈夫だろう」
この声はヴェルサリアだな。もう一人はわからないが
「なんだ?」
少し気になって覗いてみる。
「来い!レオノーラ!」
「行きます!」
レオノーラ。たしか、<竜公女>の異名をとるドラクニア代表のエースだったか?
レオノーラは剣の精霊魔装をヴェルサリアは鎧の精霊魔装ではなく、腕の部分の槍だけ精霊魔装を展開していた。
「以外と器用なんだな」
「確かにな」
俺たちは上から彼女たちの戦いを観戦することにした。
「ふ、流石ですね、ヴェルサリア」
「そういうお前はまだまだだのようだ。エリスと比べるといまいちだ」
「妹の自慢ですか?それとも私を貶しているんですか?」
「貶してなどいない。まあ安心しろ。私も妹に剣で勝ったことはない!!」
いやいや、自慢になってないぞ。
「ふ、姉としての尊厳はないのですか?」
「そんなもの、模擬戦で妹に完敗したときに捨てている」
エリス、お前はどんなメチャクチャなことをしたんだよ。
「ですが、私は精霊魔術も使いますよ!!」
「私も得意だ。これは妹に勝っているからな!」
精霊魔術を加えた遠距離攻撃も増え、甲板に流れ弾が当たる。
「ちょっとは飛行艇のことも考えろよ!求めるは、あー、とりあえず頑丈な結界!>>>・結界!!」
ヴェルサリアとレオノーラを囲むように、半球体の薄く透明な壁ができる。
「あの詠唱はライナか、ちょうどいい。これで飛行艇を気にしないで戦える」
「ええ、本気なら負けません!」
結界を張った瞬間、戦闘は激しさを増す。
結界にひびが入る。
「・・・・・頑丈に作ったんだけどな。求めるは結界>>>・結界」
もう一度適当に作った魔法を作り直して発動させる。
強度はさっきの3倍だ。
「あー、カミト、交代してくれ。かなり疲れんだよ、これ」
「いや、俺、使えないからな」
そういや、魔法を覚えるのが早いから忘れてたが、俺みたいに複写眼を持ってなかったな。
「めんどくせぇ」
「悪いな」
「まあいいや、もう寝よう」
「いや、結界はどうするんだよ」
「大丈夫大丈夫。寝てても魔力の供給くらいできるから。つーわけでお休み」
俺は目を瞑り眠ろうとする。
が、それはドオオオオオオンッ!という轟音に邪魔された。
「ーーーーーなんだ!?」
「せっかく昼寝ができると思ったのに!!」
昼寝を邪魔したやつを探す。
「あいつか!!」
飛行艇の舷側から身を乗り出し、目標を見つけた。
全長はおよそ十メートルほど。その姿は、海を泳ぐエイによく似ている。
エイと違うのは、頭部に巨大な紅い単眼がついていること。
そして、海ではなく空を飛んでいることだ。
「ヴェルサリア!」
「なんだ!ライナ!!」
「襲撃だ!!」
「なに!?レオノーラ!お前に構っている暇はなくなった!」
「私もです!」
俺は結界を消し、エイを指差す。
「あれは<破壊精霊>?封印破棄されたはずですが、なぜこんなところにーーーーー」
「そんなことはどうでもいい。来るぞ!」
その軍用破壊精霊ーーーーー<デス・ゲイズ>が咆哮を上げ、滑空してきた。
風の障壁があるとはいえ、この船は戦闘艦ではない。
あんな巨体に衝突されたらひとたまりもない。
甲板にけたたましい警報が鳴り響き、飛行艇が大きく旋回し、回避を試みる。
さすが最新鋭の船だけあって素晴らしい機動性能だ。
だが、精霊の前では鈍重な獲物でしかない。
「ちっ!求めるは障壁>>>・障壁!!」
俺はさっきの結界を本気で作り直して、船と破壊精霊の間に巨大な障壁を張る。
「っぐ!?あとは任せたぞ!」
「ああ、任せておけ、ライナ。私が殲滅してやろう!」
ヴェルサリアは全身に巨大な精霊魔装を纏い、破壊精霊へ連続砲撃を放つ。
「ふはははは!!この火力の前ではどんな軍用精霊だろうが無事ではすまない!」
やっぱりエリスの姉だと再認識した。
破壊精霊に雨のような砲撃が降り注ぐ。
爆煙で破壊精霊が見えなくなる。
「ちっ、しぶといな」
爆煙が晴れ、破壊精霊の姿を確認すると、まだ僅かに動けるようだ。
「来るぞ!!」
最後の抵抗と言わんばかりに、破壊精霊は自分の巨体を飛行艇にぶつける。
「くっ!船の航行機能がやられたようだな」
「どうやらそうらしいな」
カミトの言った通り、航行機能がやられたため、この船は落下している。
「今度は上から来るぞ!」
「<ゲオルギウス>!!」
頼れる仲間の騎士精霊が、破壊精霊の巨体を受け止める。
「大丈夫、みんな?」
「ああ、助かったぜ」
「カミト、もう動けるか?」
「ああ!」
「なら、乗ってけ」
グリフォンを召喚する。
「ああ、わかった」
「必要ありません」
「どういう意味だ?」
レオノーラはカミトの問いを無視する。
「黒き邪竜の御霊よ、汝、我の命に従い、我が敵を滅劫せよーーーーー凪ぎ払え、竜精霊<ニーズヘッグ>!」
詠唱が終わった瞬間ーーーーー
小型の竜が現れ、巨大な体をもつ破壊精霊が黒い火焔に飲み込まれ消え去った。
「さすがだと言っておこうか?」
「いえ、貴方の砲撃も中々でしたよ」
しかし、あの精霊は・・・・・
この船を狙っていた。
「あれか」
小型の戦闘艇を見つけた。
どうやらあれに乗って軍用精霊を操っていたようだ。
はい、ヴェルサリアとレオノーラが対決しましたね。
そしてライナさん。適当に魔法を適当に作りすぎですね。