side ライナ
ミュアという少女はカミトを知っていた。
カミトもミュアを知っているみたいだ。
「カミト、ミュアってやつは、お前が<教導院>に居た頃の知り合いか?」
「・・・・・そうだ」
「なるほどな」
どうりで様子がおかしいわけだ。
「そうか、お前が過去に決着をつけたいっていうならなにも言わない」
「ありがとう、ライナ」
カミトはそういって先に行ってしまった。
「はぁ、寝るか」
俺も部屋に戻ることにした。
「ライナ、ちょうどいいところに」
エリスに見つかったので昼寝は無理そうだ。
「ティータイムだ。一緒にだんごを食べるぞ」
「あー、ちょうど腹が減ってきたとこだ」
「そうか、ならカミトも呼んで来い。私たちの部屋に三時集合だ」
俺はカミトを呼びに貸し出された部屋に戻る。
「カミト、エリスがティータイムだと、三時に女子の部屋に集合な」
「わかった」
俺はカミトと一緒に女子部屋に向かう。
ーーーーー◇ーーーーー◇ーーーーー
「今回はみたらしか」
テーブルの上にはみたらしだんごが置いてあった。
「もう来たのか、少し待て、もうすぐお茶の用意ができる」
「ああ、なるほど」
エリスは何故か複数の急須を用意していた。
「今日はどの淹れ方が一番いいのか、飲み比べしてもらうぞ」
「あー、なるほど」
そのためにだんごを山ほど用意していたのか
「まずはこれだ」
ーーーーー◇ーーーーー◇ーーーーー
数十種類飲まされた。
「さあ、どれが一番よかった?」
「俺は、八杯目がよかったと思うぞ・・・・・」
「俺は九杯目だな・・・・・」
「九杯目はあんだんごだろ。みたらしには八杯目だろ」
「いや、八杯目は三色だんごだろ!」
カミトと口論になった。
「ふむ、なるほど。ちなみに私は七杯目だと思うぞ」
口論の結果、七杯目ということになった。
やはりエリスには勝てない。
まあ、八杯目は三色だんご、九杯目はあんだんごに合うと、一応は意見を取り入れてくれたらしい。
というか、他の女子は五杯目でリタイアした。
「ライナとカミトは舞踏会はどうするんですか?」
「舞踏会?ああ、開会式のか」
「あー、いや、俺はいいや」
カミトが首を横に振る。
「なんで?」
「カミト君!」
おお、カミトは大変だな。
「んじゃ、頑張れよ」
「待て、お前の答えを聞いてないぞ」
逃げようとしたらエリスに肩を掴まれ止められた。
「わかったよ!出ればいいんだろ!」
「ふむ、そうか」
エリスは満足そうに頷いて肩を離した。
「あー、でも礼服を持ってきてないぞ」
「礼服なら貸してくれますよ」
リンスレットによって逃げ道を封じられた。
ーーーーー◇ーーーーー◇ーーーーー
side カミト
俺はライナと別れて城の中を散歩していた。
「というか、迷子だな」
迷子になっていた。
それもそうだ。普通の建築物とまったく構造が異なる神話時代の遺跡がベースとなってきるのだ。
おまけに何百年にも渡って増改築を繰り返したせいで、迷宮のようになっている。
「へえ、こいつは凄いな・・・・・」
開幕式の時間も近づいているので戻ろうかと思っていると、廊下を抜けたところに、噴水付きの庭園があらわれた。
庭園には無数の花々が咲き誇り、小さな光の精霊たちが集っていた。
「これは・・・・・」
俺は噴水の周りに石で造られた彫刻が気になり、近づく。
「五大精霊王の立像か・・・・・」
その五体の彫刻はそれぞれの精霊王の形を模していた。
火の精霊王<ヴォルカニクス>。
風の精霊王<ベルファール>。
地の精霊王<ロッド・ギア>。
水の精霊王<イセリア・シーウォード>。
聖の精霊王<アレクサンドロス>
そして闇の精霊王・・・・・
「闇の精霊王・・・・・?」
闇の精霊王は居ないはずだ。
なのになぜそんな考えが?
「・・・・・っ!?」
ーーーーー全てを。
ーーーーー望むままに。
「っ!?なんだよ・・・・・これっ!!」
頭に声が響き、
すべてのものの構成が視界に広がる・・・・・
数値で、グラフで、模様で・・・・・
「久しぶりね、カミト」
声をかけられ、正気に戻る。
それに比例して視界が元に戻っていく。
「レスティア・・・・・」
「なによその顔、まるで幽霊を見ているような顔よ」
なぜ彼女がここに?
いや、そんなことよりなんでここにいる?
「ああ、この壊れた彫像は、後の時代に存在を消された、闇の精霊王」
ーーーーー解放しろ。
視界に再び、ものの構成が広がる。
「っぐ!?」
どうやら頭に響く声は闇の精霊王とそれに関係するワードがキーとなっているらしい。
「あら、どうしたの?」
レスティアの声を聞くと、頭に響く声は無くなった。
前にも話しかけられることで正気に戻った。
あのときは全員に向けての説明だったな。
「いや、レスティア、助かった」
「なんのことかわからないけど、どういたしまして」
レスティアはクスクスと笑う。
「なあ、レスティアは俺の名を騙るもう一人のレン・アッシュベルのこと、知っているのか?」
「彼女はあなたの名を騙っているわけではないわ、カミト」
彼女ということは、正体を知っているってことか・・・・・
つまり、そいつの仲間に・・・・・
「彼女もまた、本物のレン・アッシュベルなのよ」
「どういうことだ?」
本当は気づいている。が、俺は答えを出さないでいる。
「残念だけど、いまのあなたにその意味を教えることはできないわ」
レスティアは静かに首を降った。
「なら、なんで俺の前にあらわれた?」
「警告よ」
「警告?」
「あなたの過去が、あなたの大切なものを壊そうとしているわ」
「<教導院>の遺児か」
「ええ。ミュア・アレンスタールは<彼女>の命令を無視して暴走している。まあ、<彼女>は敢えて看過しているようだけど」
「ミュアは、どうして俺たちを狙うんだ?」
「狙っている獲物はあなたではないわ。あなたの大切な女の子たちとライナ・リュートよ」
「なんで、あいつはそんなこと・・・・・」
「決まっているじゃない。大好きなお兄ちゃんをとられたからよ」
「・・・・・ああ、だからレスティアはあのとき嫉妬してライナへ喧嘩を売ったのか」
そうだったのか、もう少し構ってやればよかったな。
「もしかしてそのことで俺から離れたのか?」
「・・・・・はぁ、なんで天然に育ってしまったのかしら?」
「半分冗談だよ」
「半分は本気ってことよね、それ」
「違うのか?」
「・・・・・半分正解よ」
構ってやらなかったことが理由半分とは・・・・・
「かわいいな、レスティアは」
「ちょっ!?」
俺が頭を撫でてやると、レスティアは慌てて顔を隠すが、真っ赤なのはバレバレだ。
「い、いつのまにこんな女誑しになったのかしらっ!」
レスティアは俺の手を払った。
「そうなのか?」
「ええ、そうよ!」
なぜか怒られた。
「でも、嬉しかったわ、カミト」
レスティアに口づけされた。
「・・・・・っ!?」
俺はあまりに突然なことで、驚いて硬直した。
「待っているわ、カミト。あなたが魔王の後継者として目覚めるのを」
お前まで夜の魔王と言うのか・・・・・
「お前のパートナーは魔王じゃなくて俺だ」
レスティアは頬を赤く染め、黒い霧となって姿を消した。
なぜかカミトをボケさせた回です。
それと短い時間に数十杯飲んだらとかいうツッコミやキャラが壊れてるというツッコミは受け付けてません!