side カミト
「手掛かり無しか」
俺はライナのいた部屋から出る。
「カミトか、ライナの様子はどうだ?」
出てすぐにエリスと出くわした。
「なんかやる気出してたぞ」
「ほう、そうか」
エリスはうんうんと頷いていた。
「やる気を出しているならだんごでも持っていってやるか」
「ああ、いいと思うぞ」
エリスは胸を張ってそうだろうと自慢する。
「ではな」
「おう、邪魔しないようにな」
無駄だと思うが一応忠告しておく。
「さて、俺はどうしようか・・・・・」
「あ、いた」
「クレアとフィアナか、どうした?」
俺は二人に遭遇した。
「気分転換に外に一緒に出掛けようと」
「それでカミトくんを探していたの」
「・・・・・そうだな、それもいいかもな」
俺にできることと言えば、心臓に埋め込まれた呪装刻印を解析して、解呪することと、エストが帰って来れるように<門>をいつでも開けるようにしておくことだ。
「それに、この浮遊島には<神儀院>の管轄する古代図書館があるのですわ」
フィアナが言った。
「ライナが喜びそうな場所だな」
「ライナって、そういう歴史とか好きなの?」
「多分好きだと思うぞ。始めて会ったとき、本を読んでたしな」
「意外ね・・・・・」
「そうか?」
まあ、基本はだらしないけどさ
「結構物知りなんだぞ」
「それは、前、カミトたちに勉強を教えていたからわかるけど・・・・・」
「でも、意外よね」
「お前らのライナへの認識ってどんなのだよ・・・・・まあいいや、着替えるから外で待っててくれ」
俺は貸し出された部屋に戻って着替える。
ーーーーー◇ーーーーー◇ーーーーー
制服に着替えた俺たちは馬車で港までやってきた。
聖域の古代図書館は、ここからやや離れた場所にあるらしい。港の周辺は簡素な木造の建築物が並び立っていた。
「んー、いい天気」
「まあ、雲の上だからな」
歩きながら猫のように伸びをするクレアに、相槌を打つ。
遥か上空に浮かぶ浮遊島には、本来、ものすごい突風が吹いているはずなのだが、この聖域のは風の精霊王の加護に守られているため、吹き飛ばされる心配はなさそうだ。
その加護すらも今の俺の瞳には映っている。
「どうしたの、カミトくん」
「ああ、いや、壮観だなと思ってさ」
白い雲のあいだを飛び交う小型の飛行艇に視線を移して誤魔化す。
「ん?お前らか」
「ヴェルサリアか」
「それで、ライナの様子はどうだ?なんらかの負傷をしたらしいが」
「大丈夫だよ、やる気満々だったからな」
「ふ、そうか」
ヴェルサリアが恐い笑みを浮かべる。
返す言葉間違えたかな?
「では、ライナに伝えておけ、覚悟しろ。とな」
「あ、ああ、わかった」
ヴェルサリアは楽しそうにどこかへ行ってしまった。
「帰ったらライナに謝ろう」
両隣にいる二人も苦笑いしていた。
「あ、カミトくんにクレア、あそこに『ラ・パルフェ』の店舗があるわ!」
「え!?」
クレアは熱心に視線をフィアナの指差す方向を見つめる。
「・・・・・じゃあ、あそこでなにか食べるか」
「うんっ!」「ええっ!」
ーーーーー◇ーーーーー◇ーーーーー
『ラ・パルフェ』はほぼ満席だったので、中に入ったところですこしだけ待たされた。
「ここにもだんごがあるのか、なんだ?ブームなのか?」
「さあ?」
「そんな話、聞いたこともありませんわね」
しばらく待ってから、俺たち三人は奥のテーブル席に通された。
「オススメはみたらしだんごとなってます」
店員が笑顔で勧めてくる。
「なあ、やっぱり流行ってるんじゃないか?」
「そうなのかな?」
俺たちはごそごそと相談する。
「じゃあ、それと草だんごと玉露」
「私は桃のタルトに桃のシャーベット、あとは桃だんご。紅茶はローレンフロスト産の」
桃ばっかりだな・・・・・というか、桃だんごってなに?
「私は・・・・・そうね、ティラミスとミルフィーユを頼めるかしら?私にもクレアと同じ紅茶を」
「かしこまりました」
というか、玉露、あるんだな。
しばらくすると頼んだ品が運ばれる。
みたらしの餡は反射で宝石のように輝き、だんごは雪のように真っ白で儚げだ。
「おお、凄いな」
「帝国を代表する最高の菓子職人が作ってるだけのことはあるわね」
「まるで宝石のよう」
俺はみたらしだんごを口に運ぶ。
「ん、うまいな」
ヴィヴィアンのだんごとは違う美味しさがある。
どちらも美味しいのには変わりないが・・・・・
「ふぁっ・・・・・すごくおいしい!」
「この食感、いいわね」
二人にも好評のようだ。
「でも、この店、精霊剣舞祭が終わったら壊されるんだよな、この店の雰囲気、俺は気に入ったんだけどな」
「そうなの?」
「ああ、派手なのよりこの落ち着いた感じの方が俺は好きだな」
「でも、帝都には本店があるし、他にもいっぱい食べられるわ」
「ああ。今度来るときはライナと・・・・・エストもつれてきてやりたいな」
精霊刻印の刻まれた右手を見下すが、構成が見えない。
なにか霞がかっているような感じだ。
「カミトくん・・・・・」
「ーーーーーエストは戻ってくる。絶対」
「ああ、力ずくでも連れ戻してやる」
それぐらい強引でないと、レスティアの時離れて行ってしまうような予感がする。
「ふふ、カミトくん、強引ね」
「そうかもな」
「うん、でも、その方がきっとエストも嬉しいわよーーーーー」
このカミト、強引である。
そしてクレアが最後に言ったのは、原作のクレアが読んでいる本をこのクレアも読んでいるということです。
つまり、そういうことだ。
そしてだんごは・・・・・
エリスが菓子職人をだんご職人にしようとだんごを食わせて・・・・
という経緯です。