side ライナ
俺は眠気や気だるさと戦いながらホールで待機している。
「ふぁぁ・・・・・眠い」
「こんな時くらい少しはしっかりしてください」
「あー、はいはい、わかってるよ」
リンスレットに注意され背筋を伸ばす。
「それにしても随分と注目されているな、ライナ」
「俺というより、カミトだろ?ま、めんどくさいのに変わりないけどさ」
注目されるということは目をつけられるということで、めんどくさくなることには代わりない。
はぁ、めんどくせぇ・・・・・
「というか背筋を伸ばすとかなりデカイな」
「そうか?」
「寝る子は育つと言うしな」
確かに俺より背が高いやつはいないな。
見渡していているとヴェルサリアと視線があった。
「げっ・・・・」
その目が言っている。
「覚悟しろ」と、
「あー、もうやだ。寝たい。あと八十年くらい寝たい」
「いや、そんなに寝たら死んでるだろ」
「俺ってば昼寝王だから平気なんだよ」
ほら、立ったままでも段々と眠くなって・・・・・
ーーーーー◇ーーーーー◇ーーーーー
「ん?なんだ?」
ざわざわと五月蝿いので目が覚める。
「はぁ、こんなときくらい寝るなよ・・・・・」
「えー、俺ってば一日に50時間寝ないと死んじゃう病にかかってるからさ」
「一日は24時間だぞ」
そういいながらカミトは視線をある方向に向ける。
「うえっ!?」
自分の姉と名乗る少女、ティアラ・ルミブルが笑顔でこっちに向かってくる。
「どうやら呪いはなんとかなったみたいね」
「っ!」
こんなとこで言うなよ!
「まあな、俺ってば天才だから」
誤魔化すしかないな。
「ライナでもこんなに早く・・・・・ああ、なるほど」
リューラがどこからともなく現れて顔を見つめてくる。
「それで、アレはなによ?」
「アレ?ああ、アレのことね」
視線を全身を漆黒の甲冑で覆った黒騎士に移す。
「確か、先代の魔王の後継者、名前はネペンテス・ロアだったと彼女が言ってたわ」
「レン・アッシュベルが、か・・・・・」
複写眼が使えないのでなにかわからないが、人間ではない気配がする。
『女神』や『勇者』、それに『寂しがりの悪魔』とも違う異形の気配だ。
「そろそろ時間ね。お互い頑張りましょう」
「えー、俺ってば頑張るとかそういうの嫌いなんだよね」
「そんなこと言っちゃだめだぞライナ」
二人が離れていく。
「はぁー、先代の魔王の後継者とか、めんどくさそうなことが起きる予感しかしねぇよ」
複写眼封じられたしあれだな。
完璧過ぎて中から脱出できないマジックシェルターを作り出す『あの』魔法を応用して作った封印魔法の使用も視野に入れないとな。
「あ、説明聞き逃した・・・・・」
めんどくさそうなことの対処に頭がいっぱいで忘れてた。
「ってことで、カミト、よろしく」
「はぁ、要約すると、浮遊島の北にある森林地帯がフィールドでそこには野生の魔獣や精霊がいる。フィールドは<神儀院>の姫巫女が構築した風絶結界で覆われて、普通には脱出不可能。そこへ俺たちはランダムに転送され、七日間のあいだ、剣舞を奉納する。禁止事項は精霊使いを殺してはならない。だそうだ。勝敗を決めるのは、代表に配られる特別な精霊鉱石ーーーーー<魔石>の奪い合いで、常に肌身離さず持ってないといけない、身体から離れた場合、一分以内に取り戻せなかったら強制脱落。<魔石>を最も多く所有していた四組のチームが決勝に行けるというわけだ」
「ありがと」
「ふむ、なるほど」
隣にいたエリスも頷いていた。
お前も聞いてなかったのかよ・・・・・
「ーーーーー剣舞を舞う姫巫女に武運と加護を!」
五人の精霊姫がいっせいに唱和した。
それが、本選開始の合図となり、割れるような大歓声の中、各国の代表たちは、祭壇の上の転送円に足を踏み入れる。
「みんな、絶対優勝するぞ!」
「当然だ」「ええ♪」「ですね!」「え?それって私の・・・・・ま、いっか」「おー・・・・・」
アレイシア精霊学院最強の剣士、エリス・ファーレンガルト。
オルデシア帝国の元第二王女、フィアナ・レイ・オルデシア。
ローレンフロスト家の長女、リンスレット・ローレンフロスト。
災禍の精霊姫の妹、エルステイン家のクレア・ルージュ。
三年前の精霊剣舞祭の優勝者、レン・アッシュベルことカゼハヤ・カミト。
最後に昼寝王の俺。
それぞれの<願い>を胸に、<精霊剣舞祭>に挑む。
ーーーーー◇ーーーーー◇ーーーーー
転送円に足を踏み入れた次の瞬間、目の前には不気味な森が広がっていた。
薄く霧のかかった視界。遠くから鳥や獣の鳴き声が聞こえる。
「森の中か、カミト、マジックトラップ仕掛けるぞ」
「だな」
俺たちはとりあえずマジックトラップを仕掛けた。
踏んだら縛呪に縛られたり、大きな音が鳴ったり、霧を発生させたり、落とし穴だったりと、多彩なマジックトラップだ。
「ふう、こんなものか」
「やり過ぎたか?」
まあ、いいだろう。
死ぬようなトラップは仕掛けてないしな。
「終わったなら、行きましょ」
「そうだな、隊列は、エリスが先頭で次にクレア、フィアナ、リンスレット、ライナ、俺でいいか?」
「うん、そうね」
カミトが指示した隊列は、エリスが前方、カミトが後方からの襲撃を防ぐ。そして俺、リンスレット、クレアがフィアナを守りつつ中遠距離からの援護を行う。といったものだ。
「あ、ちょっとタイム」
俺はグリフォンを呼び出す。
「罠にかかったやつの<魔石>を回収して持ってきてくれ」
コクンと頷くグリフォン。
「頼むぞ」
頭を撫でてやる。
「もういいか?」
「おう」
「それでは行くぞ」
ーーーーー◇ーーーーー◇ーーーーー
「んあ?」
嫌な気配を感じて目が覚める。
「どうした、ライナ?」
「待ち伏せだ」
「ああ」
カミトも頷いたことで全員が戦闘体制に入る。
「カミト」
俺は武器複製で<魔王殺しの聖剣>を投影し投げ渡す。
「悪い」
「気にすんな。来るぞ」
眼下で閃光が弾けた。
「ちっ!」
破裂したのはあらかじめ地面に埋めてあった精霊鉱石の爆雷。
複写眼があればこんなものに引っ掛からなかったはずだった・・・・・
「ライナ下だ!」
カミトの声が聞こえ、俺は飛び上がる。
目を開きぼやける視界には砂が蠢き、腕のような形をして襲いかかってくる光景が見えた。
「凍てつけ!氷結の閃光!」
迫ってきた砂の腕を凍てつかせ動きを止める。
「ライナ、上!」
「我・契約文を捧げ・大地に眠る悪意の精獣を宿す!」
エスタブールの魔法を発動させ回避行動を取る。
「ーーーーー圧殺せよ、石獣精霊<ガルグイユ>!」
刹那、地面に落ちる影。頭上から落下してくる巨大質量の塊。
土砂が舞い上がり、石の魔物のをした精霊が現れる。その背中に精霊使いの少女が乗っている。
石獣精霊が咆哮を上げ、迫ってきた。
「ーーーーー剣聖の騎士よ、我が盾となれ!」
その進路上に、フィアナの騎士精霊が立ちはだかり、その剣で石獣精霊の腕を破壊する。
「求めるは雷鳴>>>・稲光!」
雷が石獣精霊に乗っていた少女に当たる。
「求めるは光陣>>>・縛呪!」
怯んでいる隙に少女を拘束し、縛呪を縮めることでこちらにつれてくる。
「クレア!」
「えっ!?」
俺は拘束したまま少女をクレア目掛けて投げ渡す。
直後土砂を舞い上げ、眼前に砂の巨人があらわれた。
「ーーーーー蹂躙しろ、恐竜精霊<ティラノサウルス・レックス>!」
ギャオオオオオオーーーーー!!と凄まじい咆哮を上げる巨大な精霊。
俺の契約精霊、恐竜精霊の<ティラノサウルス・レックス>。
人間が生まれる遥か前、この星を力で支配したとされている恐竜の姿をした精霊だ。
「やれ!」
その言葉に従い、巨大な顎で砂の巨人を噛み砕く。
「きゃぁぁあ!!」
誰かの叫び声が聞こえた。
「ああ、なるほど」
ティラノサウルス・レックスの口の中に少女がいた。
恐らく砂の巨人は精霊魔装だったのだろう。
女の子の体を触るのはなぁ・・・・・
「私がやります」
「おお、よろしく」
<魔石>の回収をリンスレットに任せる。
「んで、カミトとエリスはどうだ?」
「俺とエリス一人ずつ仕留めた」
「これが<魔石>だ」
エリスが俺に向けて<魔石>を投げる。
「おっと」
「お前が持っておけ」
「ええー」
「確かに、ライナが持ってるのが一番安全だな」
信頼しすぎだ。
「だとしてもこういうときは分散させて持っておくもんだ」
「そうだな。んじゃ、持っておく」
しかし、こんなに早く敵に見つかるとは。
「誰かが見ている?」
確かに遠くから位置を確認する魔法はある。
親父なら意図も容易く、姿もくっきり見ることができるだろう。
だけど他のチームに教えるメリットがない。
「誰なんだ?」
ふと視線を感じ、振り返るが、そこには誰もいなかった。
「どうした?」
「いや、なんでもない」
遠くから直接姿を見る方法もあったな。
すみません、遅れました。
なんか疲れててね。