side ライナ
闘技場の観客席について、カミトはすぐにフィールドを見つめる。
「・・・・・いない」
「ねえ、カミト、なにを探してる?」
カミトの後ろにクレアがいた。
「クレア!?よかった・・・・・」
「え?なにが?」
「ライナにカミトさんに・・・・・エリスさん」
「リンスレット・・・・・いたのか」
リンスレットとエリスは睨み合っている。
「とりあえず、一段落だな・・・・・ん?」
なにか異常なモノを感じとったので、複写眼を発動させて辺りを見回す。
「どうした、ライナ?」
カミトが首を傾げて聞いてくる。
「いや、気のせいならいいんだがな・・・・・どうやらそうじゃないらしい」
思わず溜め息を吐く。
「めんどくせぇ、なんでこんなことに巻き込まれるんだよ・・・・・」
「どうかしましたか・・・・・?」
リンスレットが顔を覗きこむ。
「・・・・・!?」
リンスレットは驚いた顔をする。
「ああ、ライナの眼は特殊で見ただけで構造を解析できるそうなんだ」
「そうなのか?」
エリスは便利だなと呟く。
「でも、虹色・・・・・なんで?」
ぶつぶつとリンスレットは呟く。
「『α』」
「なんで知って・・・・・」
いや、今はどうでもいい。そろそろだ。
「動けるように準備しておけ。避難誘導の準備もだ・・・・・」
「なにが起き・・・・・!?」
祭壇に祀られていた石柱にひびが入る。
ひび割れた石柱の裂け目から、巨大な人間の手が出現する。
「巨人精霊が狂精霊に憑依された」
観客も、フィールドにいた出場者も一斉に逃げ出す。
「お前たちは休んでいろ。ここは私が出る」
エリスは跳躍してフィールドに立つ。
「刺激するな!まだ出てきていないから、それまで避難誘導をする!目覚めたら、足止めしてくれ!」
周りが五月蝿いので大声で叫ぶ。
「わかった!!さっさと避難誘導しろ!」
エリスは抜いていた剣を鞘に収める。
「いや、お前の仕事だろ・・・・・まあいいや。グリフォン、氷虎、病人怪我人老人子供を優先して運べ」
氷属性の最高位精霊で水虎の亜種。とグリフォンを呼び出し命令する。
不死鳥や他の精霊は余りこういうことには向いていないからこの二匹にした。
グリフォンと氷虎は頷き、駆け出す。
「二体目の精霊!?」
クレアは驚いていた。
「お前らもボーッとしてないでさっさと動け」
俺が珍しくやる気を出しているというのに。
「そうだな。エスト、お前にも手伝って貰うぞ」
エストは頷く。
「私はカミトの剣。あなたの望むままに」
カミトの後ろをエストがついていく。
「フェンリル!」
「スカーレット!」
白狼と火猫が現れ主人の側に近づく。
「俺はあっちに行くからお前らは反対側とここを任せる」
「わかりました。私はあちらに行きます」
「それじゃあ、私はここで避難誘導するわ」
俺は誰も向かっていない場所に向かう。
「押さないで、慌てず避難してください」
人の命がかかっているので気を抜けない。
「おばあさん、大丈夫ですか?」
「私のことはいいから、孫を・・・・・」
おばあさんが指差す方向には小さな女の子がいた。
「おばあさんは先に行ってください。俺が責任をもって避難させますから」
慣れない敬語を使い、おばあさんを安心させてから、俺は少女の前に跳ぶ。
「うぇぇぇーーん!!」
少女は泣いていた。
「大丈夫か?怪我はないな」
「えぇぇぇーーん!!」
少女は泣いてばかりだ。
「ちょっと揺れるけど我慢してくれ」
話すことは無理なので俺は少女をお姫様抱っこして走る。
「おばあさん!」
「フェル!」
「おばあちゃん!!」
おばあちゃんと少女は抱き合っている。
俺はなにも言わずに会場に向かう。
「お兄ちゃん!ありがとう!!」
さて、もう少し頑張るか。
会場に戻った瞬間、轟音が鳴り響いた。
どうやら巨人精霊が目覚めたらしい。
<門>から巨人精霊が這い出てきた。
その全長は数十メートルある。
あらかじめ、簡単に張れる頑丈な決壊を張っていたが、もう限界だ。
「エリス!!なるべく外に被害を出さないように戦ってくれ!もうすぐで避難が終わる!」
「わかった!」
エリスは昨日の大鷲を召喚して、戦う。
「カミト!リンスレット!クレア!そっちはどうだ!!」
こんなに叫んだので喉が痛いな。
「こっちは終わった!」
「こちらも終わりました!」
「終わったわよ!」
闘技場からの避難は終わったようだ。
グリフォンと氷虎が帰ってきた。
「ご苦労様」
二匹を元素精霊界に戻す。
「っく!剣が折れた」
エリスの剣が折れていた。
ヤバイな。剣の無いエリスは俺の素手と同じくらいだ。
「不死の鳥よ、炎の剣となりて、我が敵を凪ぎ払え!」
不死鳥が炎の剣、<業火の剣>となる。
「エリス!!使え!!」
俺は<業火の剣>をエリスに投げる。
「っ!はぁっ!!」
受け取ったエリスは剣を振るい、巨人精霊の腕を切断する。
「戻れ」
手元に<業火の剣>を戻す。
「あの魔術で剣を造れ」
「はいはい、武器複製」
武器複製でカミトが昨日、使っていた剣を複製する。
どうしても複製品になるのでランクが数ランク落ちる。
「ほら」
「ん、おお!!なかなかだな!」
「ランクはオリジナルに比べて数ランク落ちてる」
「十分だ!」
巨人精霊がこちらへ残っていた拳を向かわせてきた。
「はっ!」
エリスが数回斬ると巨人精霊の拳はボロボロと崩れ落ちた。
「スパスパだな」
エリスが胸を張ってそういう。
俺は巨人精霊よりエリスが怖いよ。
「エリス下がれ!!」
「ふむ」
エリスはあっさり俺の指示に従った。
予測していた通り、巨人精霊が吠えると近くにあった祭壇が崩れる。
「留目はお前の好きにしろ」
「んじゃ、カミトにやらせるか。あいつ、サボってたみたいだし」
俺はカミトを手招きする。
「ライナ?もう留目刺せるだろ?」
「あとはお前がやれ。サボってたみたいだしな。剣だけだ」
「ちょっ!?待ってくれよ!!」
カミトがそういうが
「じゃ、俺たちは観客席でお前の剣舞を見といてやる」
「ではな」
俺とエリスは観客席に戻る。
「ちょっ!カミト一人しかいないのよ!!」
「私が両腕を切り落としたんだ。大丈夫だろう」
「そうそう。三年前なら、エリスといい勝負してたな」
カミトが空中に魔方陣を書く。
「求めるは雷鳴>>>・稲光!!」
しかし、魔法は発動せず魔方陣だけが残される。
「あー、なるほど、遅延発動魔法か。あいつもそれなりにやってんだな。剣技は衰えてるみたいだけど」
カミトが走ると、稲光が発動して、<魔王殺しの聖剣>に切られる。
「はぁぁぁあっ!!!」
カミトは跳躍し、巨人精霊を一刀両断する。
カミトはフラフラと今にも倒れそうだ。
「カミト!」
クレアがカミトを支えに走っていった。
俺は空気を読んで、仮眠室に自主的に向かった。
氷虎
氷属性の最高位精霊。
水属性の高位精霊、水虎の亜種で水虎が十匹よってかかっても氷虎には勝てない。
リンスレットの反応の理由。
エピローグで話したいと思います。
ライナの武器複製で作った<魔王殺しの聖剣>
オリジナルより二ランク落ちるが、それでも名剣。
ライナさん。あなたはどこのエミヤですか?