今日は日曜日。天気は雲1つない晴天であり、鳥達の鳴き声が透き通るように聞こえてくる。絶好のお出掛け日よりのこの日に、カノンはシティの外れに位置する都心部に比べ草木が多く生い茂っている自然豊かな場所へと赴いていた。
「おまたせしたのだわ。」
カノンはそのとある場所に既にいた人物に声をかける。
「あっ、カノンさん!おはようございます!」
「来たか。」
「あらカノンさん、おはようございます。」
「ようカノン!準備バッチリみてぇだな!」
「おー、おはよーカノンー!」
「おはよう、カノン。」
最初にその声に気づいたのはルピコだった。即座に挨拶を返してくれる彼女に気分が良くなる。その次にカイト、エレナ、グレン、チュリン、ルカといった順に反応を返していく。しかしそこにはあと一人欠かせない人物がいた。
「カノン、久しぶり。」
その人物とはカイトの相棒であるクリーチャー、キリコである。といっても前回話し合いをしていた時もその場にはいたのだが、一言も話していなかったが故にカノンはキリコとの会話をすることはなかった。その為キリコは久しぶりだといった思いの旨を伝える。一瞬あの時会っていただろうと困惑するも、確かに話してはいなかっため久しぶりに会ったと言う体でカノンも返事を返した。
「ええ、久しぶりねキリコ。」
「前回は話し合いに参加できず申し訳なかった。マスターに記録係を任せられていた為話せなくて。」
突然謝られたことにビックリしたカノンは記録係とはなんだろうと疑問に思い、キリコに対して質問をした。
「記録係?一体何を記録していたのかしら?」
「それについては僕が話そう。」
キリコに質問していたカノンを見かねたカイトが変わりに説明をし始める。
「実はあの時、いきなり話し合いをすることが決まったために余り準備ができなくてね。いつもなら大事な話し合いの際は録音をしているんだが、それが用意できなかったんだ。だから変わりにキリコに録音を頼んでおいたんだが、録音中はしゃべれなくなってしまうんだ。」
カイトがの説明を受けたカノンは納得したといったような表情で「なるほど」と呟きながら頷いた。しかし一名だけがビックリしたような表情で目を見開きながらカイトへと質問をした。
「ちょ、ちょっとまて。キリコって録音なんて出きるのか?」
その人物とはグレンである。グレンは初めて知ったかのような声音でカイトに質問する。
「フッ……キリコを舐めてもらっては困る。」
自慢げな表情で口角を若干上げながらカイトは説明を始めた。
「仮にも機械の体なんだ。もしものためにと思ってキリコには録音を初め様々な機能を搭載しているんだ。」
「様々ってどんなのがあるんだ?」
「例えば撮影機能、それにアラーム機能もあるな。後は翻訳機能にネット検索機能。それから……」
「あーもうわかったわかった!!十分分かった!」
「何故だ?まだまだこれからが本番と言う所なのに。」
カイトの機能説明が往来の如く終わらなそうにないので、それを察したグレンは無理やり説明を終わらせた。納得してなさそうな表情で口惜しそうに引き下がるカイト。そんな様子をカノン達は苦笑いをしながら眺めていた。
「っと、そんなことを話している場合じゃないな。」
「ほんとだよ~……」
カイトがそう呟くとそれに反応するようにチュリンが声を上げた。やれやれといった表情でチュリンか話を続ける。
「案内するのは僕なんだからね!カイト達が目立ってどうするのさ~!」
「マスターはたまに知識を語りたがる癖がある。迷惑をかけたようで申し訳ない。マスターには私から言っておく。」
「キ、キリコ?……す、すまない……」
プンプンと怒りながらチュリンが苦言を呈すると、キリコがカイトの欠点についての補足を付け加えたうえで謝罪をした。思わぬところからの攻撃に戸惑いながらも、それがキリコから放たれた言葉だと言うことにショックを受けつつも反省したカイトであった。
「はぁ……朝から元気ね……あの活気力どこから来るのかしら。」
「ふふっ、いいじゃないですか。元気があると言うことはとても頼りにできるってことですから。」
「グレンさん達は相変わらず仲が良いですね~プレイヤーさん。」
そんな光景を眺め呆れながらもルカが疑問を口にすると、エレナはくすりと笑いポジティブな捉え方での考えをルカに話す。ルピコはいつもと変わらずの調子で、プレイヤーと目の前で繰り広げられている光景についての感想を話していた。カノンはそんな様子がおかしくてふふっと笑ってしまった。しかし、それと同時にエレナの言う通り彼らがとても頼もしく見える。朝あった緊張が嘘のようにほどけていくのを感じていた。
「とりあえず皆集まれたんだ。早速だがチュリン、案内を頼めるか?」
カイトは脱線していた話を無理やり直し、唐突にチュリン話を振る。キリコから逃げたと思いながらもそろそろチュリンも案内をしたいと思っていたので深くは言及せずに話に乗る。
「おっけー!じゃあ皆、僕について来てね!」
その言葉に場にいる各々は頷き、チュリンの進んで行く背中についていくのだった。
「そういえばウェディングさんはどうしたんですか?」
深い森のなかにそんな声が響き渡る。声の主はルピコである。森の中を移動中、話すこともないので黙々とチュリンについていっていたのだがなかなかな距離があるそうで時間ができてしまっていた。そんな暇な時間ができるのならば話の1つや2つしていてもおかしくはないだろう。そんな会話の最初の内容がこれだったのだ。
「え、どうしたって?」
「はい。カイトさんが集まるときに最高戦力をもって来てくれと仰っていたので、てっきりついてくるものだと思っていたのですが……」
「確かに気になるな。」
ルピコの疑問に同調するカイト。皆も気になっているのかこちらに顔を向けている。カノンとしては特に言えないわけがある訳でもないので、素直に話すことにした。
「特に理由があるわけではないの。ただ、最高戦力でいくのなら力は最小限使わないようにしなければいけないから、カードから出していないだけなの。」
「あぁ、そういうことですか!」
カノンの回答にすぐさま納得するルピコ。他の皆も納得したようだった。ウェディングを召喚しているだけでもデュエリストとしての力を必要とする故、常に召喚していると言うのはどうしても力を解放してなければならないこととなる。カイトの言っている通り、最高戦力でいくのならば今は召喚しておかないでおこうと昨日ウェディングと話し合ったのだ。
「ねぇ、ウェディングのことで他に聞きたいことがあるのだけど。」
次に質問を投げ掛けたのはルカだ。カノンは一体なんだろうと耳をすませる。
「あなたが言っていたクリーチャーについて、彼女がなにか知っていたりはしなかったの?」
ウェディングはゼニスと呼ばれるクリーチャーの中でも極めて大きな力を持つ大型のクリーチャーだ。それに、神として崇め称えられていることもあるらしい。そんな彼女ならばクリーチャーの知識量が並みではない筈だとルカは踏んでいた。しかし、カノンは申し訳なさそうな表情で返事を返した。
「私も気になって訊いてみたの。けど、そんな特徴をもったクリーチャーはみたことないって言われちゃって……」
「そう、残念ね。ありがとう。」
あのウェディングですら知らないクリーチャーだと言うことが発覚し、他の皆も驚きを見せる。ルカは自身の読みが外れたことに悔しさを多少感じながらも答えてくれたカノンに対して感謝をした。
「「「「……………………」」」」
暫く沈黙が続く。話すことがなくなり黙々と森の中を進んでいく一同。かなり歩いたところでグレンが声を上げた。
「なぁ、ホントにここであってんのか?」
「む、僕を疑うの?」
グレンの疑いに少しムッとするチュリン。
「いや、そういう訳じゃないんだが……もう相当歩いたぜ?」
歩き始めて30分ほどが経過していたこともあってか、早く化物と戦いたくてうずうずしていたグレンはチュリンに確認をする。
「大丈夫だよ~。多分後少しでつく筈だから。」
そんなグレンに対してチュリンは自信満々に応えた。こんな感じの緩い雑談を時々交わしながらも一行はどんどん森の中を進んで行った。
「それにしても、何故こんなにもクリーチャーの目撃情報が少なかったのでしょう?」
ふと思ったことをエレナが呟く。
「確かに変ですね。私も進さんの言っていた虫のようなクリーチャーは見たことがありませんでしたし。」
そんな疑問にルピコが同調するように相槌を返した。
「僕も会議の後シティ内で調べてみたがこれといった情報は特になかった。何かの力が働いているのか、或いは白守くんの見間違いだった可能性も「そんなことないわ!」っ!」
顎に腕をやり、考える素振りを見せるカイト。そんなカイトの挙げる可能性の1つには進の見間違いだったと言うものがあった。それを聞いたとき、カノンは咄嗟に否定の言葉を口にする。突然大きな声を出されたのでビックリしてしまうカイト。不思議そうに見つめるカイトを見てカノンは我に返る。
「あっ、えっとこれは……別に深い理由があるわけではないのだけど……先輩が嘘をつく筈ないと思っただけで……」
無意識に大声を出してしまった事に羞恥心が芽生える。何故こんなことをしたのだろうと思いながらも必死に弁明するカノンだが、焦っているのか言葉がたじたじになっている。そんな様子を眺めていたルピコはふふっと笑いながら口を開けた。
「分かります。少ししか会っていませんが、私も進さんが嘘をつくような人だとは思えません。それに一番近くにいたカノンさんが言うんです。きっと本当のことなんですよ。」
ルピコがカノンの気持ちを汲み取りしどろもどろになっていたカノンの変わりに話をする。そんなルピコの姿を見てしゃべっていた口が止まってしまい、呆然としてしまう。
「そういうことか。すまないな、カノンがそんなに信頼しているんだ。きっと、嘘や見間違いというわけではないのだろうな。」
ルピコの説明を聞きカイトは先程の考察を取り消した。ルピコがそこまで言うのだ。それにカノンが信用する人物なのだからそんな嘘をつくこともないかと、カイトは結論付けた。
「あ、あの……ありがとう。」
「大丈夫ですよ。カノンさん、私から見ても進さんをとても信頼しているんだなって言うのがすっごく伝わって来ましたから!変わりに説明するなんてなんてことありません!」
そんなに信頼しているように見えていたのかと少し恥ずかしくなるが、それでもルピコは戸惑ってしまっていた自分を助けてくれたのだ。カノンはとっても優しい友達の気遣いに心が温まる。そんな時だった。
「へぇ~そんなに良い子なんだね~!」
これまで一言も喋らず黙々と道案内をしていたチュリンが声を上げた。続けて話をするチュリン。しかし、この発言が波乱を呼ぶこととなる。
「ちょっと気になるんだけど、カノンと白守君はどんな関係なの~?」
「!?」
突然そのようなことを問われ思考がフリーズし固まるカノン。
「そうね、私も気になるわ。」
「確か、とってもデュエルがお強いのでしたっけ?それ以外のことは私も気になります。」
「そういやそうだな~。俺もプレイヤーからはデュエルの事しか聞いてねぇしどんな奴かってのは気になるな!」
「僕も気になるな。一体どんな人物なんだ?機会があればデュエルもしてみたい。」
チュリンの発言に各々か反応し進に対して興味を示す。一斉にカノンに視線を向けられるが、カノンはそれどころではなかった。
(私と先輩の関係!?そんなの私が後輩で先輩は私の先輩で…………あれ?でも、何だかそれは……)
ダピコに言われたことを思い出す。この世界には先輩と言われる者がいる。基本的に立場は上だし部下をまとめてくれたり、困ったときはその長き経験を生かし助け導いてくれる存在だと。そんな人には敬意を込めなければいけない。ならば言葉使いはちゃんとしておいた方がいいと。そんな感じだったと思う。カノンは償いをする為に働くことを決めていた。ならばまずこの世界のマナーは守った方がよいと思い、今の今まで暮らしてきた。しかし進は私の先輩でそれ以上に何かある関係というわけでは……と考えたそのとき、カノンの心のなかになにか違和感を覚える。
(嫌だな……)
今まで先輩後輩といった関係で接してきた筈なのに、何故ここに来てそんなことを思ってしまったのか。カノンは無意識にそんなことを考えてしまった自分に驚く。
(って、なに考えてるの!?私は先輩の後輩なだけ!それ以上の関係はない筈なのに…………でも、やっぱり嫌だ……どうして?相手は先輩よ?それ以上の関係なんて望んでいいのかしら……でもこの世界のルールは守らないと。罪を償わなければいけないのに、ルールを破ってはいけないのだわ。でも…………)
一向に思考がまとまらない。罪を償わなければならない人間が、その世界でのルールを守らないなど本末転倒にも程がある。そんな状態で償ったとしても意味はない。しかしそんな気持ちとは裏腹に、別の感情がそれ以上の関係になりたいと叫んでいた。そんな感覚にむず痒くなる。そもそもそれ以上の関係とは何だろうか?ルピコと同じような友達?いや、違う。感情が違うと言っている。では何なのか?考えても考えてもその答えは出ず、カノンはチュリンの質問を最後に黙り込んでしまった。
「どう……すか……カ…………さん?」
誰かがなにかを言っているが思考の海の中にいるカノンの耳にその声は届かなかった。
(友達以上の関係?そんなものがあるの?もっと仲が良くなりたい?いや、これも違うのだわ。じゃあ一体何なの?もう、わかんない…………やっぱり先輩が私に相談したあの日から、少し変になってる。今も先輩のことを考えるだけで少しドキドキしてしまっているし……どうなっちゃったの、私……?)
「…………ノン……さ……カノ……さん!…………カノンさん!」
「っ!ル、ルピコ?」
「どうしたんですか?さっきからぼーっとしてましたけど……」
心配そうに顔を覗き込むルピコ。
「あ、いや、別になんでもないのだわ!」
そういって愛想笑いをして誤魔化す。
「そうですか?それならいいんですが……」
「ちょっと~僕の質問忘れてない?」
ルピコは納得いかないようだったがこれ以上深入りしてくることもなく引き下がった。そんな会話を見ていたチュリンが、忘れていないかと聞きに来る。次から次に問題が来るので少しうんざりしてきたものの、皆はクリーチャー退治に力を貸してくれているので無理に話題を逸らすこともできなかった。
「えっと、先輩との関係よね。」
「うんうん!カノンはその子と何をしてるの?」
そんな質問をされたカノンは、一拍あけて口を開いた。
「先輩は私と一緒にバイトをしているの。初めてあったとき右も左も分からなかった私に優しくしてくれて、とっても助けられたのだわ。」
ここまでは研究室で皆に話しているため、特に言うことはない。皆が求めているのはこの後の話だろう。一体カノンは進とどこまでの仲がなのだろう。そんな疑問を解消すべくカノンは説明を続ける。
「え~と、先輩とはたまに遊んでもらったり、帰り道はほぼ毎日一緒に帰っていて楽しくお話をしていたりするの。」
「へぇ、毎日ね。」
ルカが少し驚いた声を上げる。毎日一緒に帰るほどには関係値が高いことが判明したのだ。話によるとカノンはまだシティに来て1ヶ月と少し位しか経っていないので、この短期間でそこまで仲良くなる人がいたのかと驚く。
「野暮なことを聞くかもしれないが、何故そこまで彼を信用しているんだい?」
「それは……」
カイトの質問に少し考え込むカノン。何故ここまで彼を信用しているのか。今までの先輩との思い出を振り替える。なにかきっかけになったものは……ここで、1つの出来事を思い出した。
「ある日私が仕事をしていたら、お客さんが私に言いがかりをつけて怒鳴ってきたの。それで困っていたら他の業務で大変な筈なのにすぐに駆けつけてくれて、変わりに対応してくれたの。結局そのお客さんは迷惑客だったみたいで、先輩が追い出してくれたわ。そのとき、かな。きっかけとしては。」
話終えて周りを見回し反応を伺う。真っ先に声を出したのはグレンだった。
「めちゃくちゃいい話じゃねぇか!いいねぇ!白守進、俺は気に入ったぜ!あー早くそいつんとこいってデュエマしてぇなぁ!」
グレンはとても感動したらしく、進の人柄も知れたことで尚のことデュエマをしてみたくなっていた。他の皆もカノンが信頼する人物がどのような人柄なのかを知れたので、先程あったカノンの進に対する信頼感についての疑問も解消されたようだった。
「とても勇敢な方なのですね。私も少しデュエルを申し込みたくなってしまいました。」
エレナは進の正義感溢れる行動に感心していた。一体どんな文明のデッキを使うのか、もしかしたら正義感のある彼は光文明なのかなと考えたりする。
「なるほどねぇ。そりゃカノンも信頼するする訳だ。じゃあさじゃあさ、その子の話でなにか面白いこととかあったりする?」
「面白いこと?」
チュリンはまだまだ気になるようで今度は進に関してのエピソードトークを求めてきた。その好奇心は自然で暮らしてきたチュリンならではのものなのだろう。
「うん!って言っても別に本当に面白いことじゃなくても良いんだー。なんかこう、印象に残ったエピソードとかかな?」
「印象に残ったこと……」
また暫く黙り込み、過去の記憶を遡る。印象に残ったことと言えば、ルピコと遊んだ時のことや雨の日に家の中に先輩を入れた時だろうか。ルピコと遊んだ時のことはルピコが皆に言っていると思うし、もう一方の方を話そうと口を開いた。
「先輩と一緒に帰っていた時の話なんだけど、いつも通り帰ってたらいきなり雨が降ってきたの。雨宿りするところがなくてどうしようって悩んでたときに、私の思いつきで先輩を私の家に入れることにしたの。」
「家に!?」
ルピコが驚いた様子で声を上げた。他の皆も驚いている様子だ。
「な、なんで家に入れようと?」
ルピコは困惑気味に質問する。結局家にしか雨風しのげる場所がないのなら、もういっそのこと諦めて進は進の家に、カノンはカノンの家にずぶ濡れで帰った方が良いとのではとルピコは思っていた。それに、まだ出会って日が浅いのに男の子が女の子の家に入るなんてハードルが高すぎると感じていた。
「先輩の家よりも私の家の方が近いの。なら、一秒でも早く雨宿りする為にはこうするしかないじゃない?」
((((強引(すぎますよ!)(ね……)(ですね……)(だな……)(だねぇ) ))))
そんなカノンの回答にグレンを除く全員が心の中でそう突っ込んだ。
「そ、その後はどうなったんですか?」
なんとなく嫌な予感がしつつも恐る恐る質問するエレナ。
「その後は……お風呂に入ったわ。」
「「「「「えぇ!?」」」」」
「え?」
カノンの爆弾発言に今回はグレンも含む全員が驚きの声を上げた。
「ちょ、ちょっと待ちなさい!お風呂に入ったって、貴女それ本当なの!?」
ものすごい剣幕で詰め寄るルカ。今まで見たことのないような焦りようであった。
「これは……ちょっと予想外かなー……」
加えてチュリンが考えても見なかったといった表情で頭をかく。
「え?み、皆?私、変なことでもいっちゃったかしら?」
そんな様子見にかねたカノンが困惑気味に声を上げた。
「あー……カノン、単刀直入に言うぞ。」
「え、え?」
グレンが真剣な顔をしてカノンの前に立つ。歩きながら話していた筈がとんでもない爆弾発言によって一行は歩を止めていた。状況が理解できずひたすら困惑するカノン。そんなカノンにグレンはストレートにもの申した。
「お前、マジで進と一緒に風呂入ったのか?」
「へ?…………えぇ!!?」
予想外の質問に情けない声を出すカノン。どうやらとんでもないすれ違いを起こしていたようだ。カノンは一緒に風呂に入ったと言ったわけではなかったのだが、ルピコ達にはそう聞こえてしまっていたらしい。グレンからの質問に戸惑うカノン。
「せ、先輩と一緒にお風呂……!?そんなことできる訳ないわ……!そんなことしたら先輩のは、裸が見えちゃうし、わ、私のも……ってなに言ってるの!?ち、違う!先輩の裸を見たい訳じゃないわ!落ち着いて私……」
小声でぶつぶつとなにかを呟いているカノン。どうしたのかと皆が眺めていると突然深呼吸をし始める。何がどうなっているのかは分からないが、カノンの反応をみるに一緒に入ったわけではないのだと察した一同であった。
「ど、どうやら我々の勘違いだったみたいだね。」
「え、えぇ……先輩と一緒にお風呂は流石に入れないわ。その、紛らわしい言い方をしちゃったわね。」
カイトが勘違いだったと伝えたことですれ違い事件は解消された。一同がほっとしたと胸を撫で下ろしていた時、カノンは未だに早く心臓がドキドキと鼓動しているのを感じていた。
「で、結局お風呂に入ったって言ってたけど一緒に入った訳じゃないんでしょ?でも2人ともびしょ濡れだよね。どっちが先に入ったの?」
チュリンが再び歩を進めながら話を戻した。気になる点はまだまだある。また飛んできた質問に対して冷静になったカノンは応えを返した。
「勿論先に入ってもらったのだわ。かぜを引いちゃうかもしれないし。」
「ま、そうだよね~」
強引に家に招き入れたのだ。そんな人を家に入れたあと、はいじゃあここで待っててくださいね。先に私風呂に入りますから、なんてカノンがする筈ない。大方予想のついていた返答にうんうんと相槌を打つチュリン。
「あっでも先輩、服がなかったんだったな……確か……」
「ちょっと待ちたまえ。」
「?」
カノンの爆弾発言を見逃さなかったカイトが我先にとカノンの話を静止する。またもやどうしたのだろうといった表情でカイトの顔を見つめているカノン。
「服がないだと?ってことはつまりなんだ、白守君は全裸で過ごしていたのかい?」
平然を装ってはいるが内心吃驚しながら質問するカイト。女性陣は次から次に舞い込む衝撃的な話に、少し顔を赤くしていた。
「いえ、確かに服はなかったんだけど先輩が下着は濡れていないからこれで良いって言っていたわ。」
あの時の出来事を思い出しながら少し顔を赤くするカノン。それを見ていた一同は、カノンにも羞恥心はあったのだと安心する。がしかし問題は山積みだ。なんたって先程の内容もとても流せるようなものではないからだ。
「おいおい……下着があるっつったってそれはそれで問題が生まれちまうだろ……」
同じ男として進のことを心配しながらカノンに質問するグレン。流石に下着がみられても大丈夫なそういう趣味がある男だとは思いたくなかった。
「私も何とかしようとしたんだけど、先輩がこれはボクサーパンツ?だから大丈夫だ。男なんだから~とかなんとか言っていたから……正直私だけじゃどうにもできなかったし、しょうがなく先輩の案でいくことにしたの。」
その話を聞いた皆は主に2つの反応に分かれていた。
((白守、君(お前)は男(漢)だな(ぜ!) ))
((((白守さん(進)(君)……お疲れ様です(ね)(だね)……))))
男性陣は進のその心意気に感心し、女性陣は労いの言葉を心のなかで唱えた。
「そんなことがあったんだ~。なんだかんだ言って結構いくとこまでいってるじゃん!」(進君は下着姿だけど……)
チュリンはカノンが先輩先輩と呼んでいたので実際はそこまで仲良くなっていないのではと思っていたが、カノンが信頼できるようになるほどにはやはりちゃんと距離を詰めていたのだなと確認できた。アクシデントがありつつも微笑ましいエピソードが聞けて満足げに笑った。
「あっ」
賑やかムードも終わりを迎え、いよいよ真剣な雰囲気に戻ろうとしていた最中、カノンは言い忘れていたと言わんばかりの声を上げた。一同が嫌な予感を感じとりながらも、どうかしたのかと質問しようとカノンの方を向くと
「…………/////」
そこには今までみたことがないくらいにの顔が赤くなっており、それに加えて何を思い出しているのか自らの体をそっと抱き締めるカノンがいた。明らかに先程のカノンの様子とはかけはなれていた為、質問しようとしていた口が塞がってしまう一同。グレンだけはその変化にあまり気づいていない様子だったが、周りの反応を伺い何となくなにかが起こっていることを察する。
「あ、えっと……カノン、さん?一体、どうしたんですか……?」
誰よりも早く質問したのはルピコだった。あまりのカノンの雰囲気の変わりように動揺しているのか、しどろもどろになってしまっている。ルピコに質問されたカノンは実に応えにくそうな顔をしながらルピコに顔を向け、口を開いた。
「えっと、その……実はそのぉ……ト、トラブルが他にもあったことを思い出して……」
嫌な予感が的中してしまい一同は頭を抱えた。あれだけ濃いエピソードを話しておいて、話が終わりそうなムードだった筈なのにまだ何かあると言うのか?それも話の流れ的に、また風呂でのトラブルの可能性があるのが更に嫌な予感に拍車をかける。あまり大事なことではないでくれと願いながらルピコは恐る恐るカノンに質問した。
「トラブル、ですか?い、一体何が起きたんです……?」
「そ、それはぁ……えっと……わ、私のぉ………………」
とここまでしゃべった後、カノンはあまり話したくないことなのかその後の言葉を紡げずもじもじしている。
「その、カノンさん?無理に話す必要はないですからね?」
そんなカノンを気遣ってかルピコが別に話さなくても言いといった旨の内容を伝える。このやりとりを見ていた守護者達は、一体進はなにをしてしまったんだと心のなかで強く考えてしまった。しかし、気にはなるものの本人が話す気がないのなら無理に話させるわけにもいかないので、口惜しいがこの話題から一歩足を下げようとする守護者達だったが。
「い、いいえ!私、話すのだわ!」
謎に覚悟を決めた表情で声を上げたカノン。本人が話す気なら聞こうではないかと引きかけた足を戻した守護者達。尚、カノンとしては皆がクリーチャー退治に手伝ってくれているのだから、私は私なりに出きることをしようと思っただけなのだが。カノンの宣言のあと暫く沈黙の時間が続く。皆が固唾を飲みながらカノンを見守っていると、先程までうつむいていた顔を前に向ける。それに顔の赤みを帯びた表情でもなくなっていた。いよいよくる。そんな予感がして無意識にルピコは身構えた。
「あの後私がお風呂に入って、お風呂から出たの。そして下着を探したのだけど、その場に私の下着がなかったことに気づいてしまって思わず声を出して吃驚してしまったわ。そしたら……」
「思ったよりも大きな声だったから、先輩が心配して私の元にやって来て勢い良く扉を開けたの。勿論、そこには私がいるのだけど…………そのときの私ってほら……そ、その……///」
再び恥ずかしそうにもじもじし始める。言葉に行き詰まっているときふと周りの様子を伺うカノン。
「「「「「……………………」」」」」
あまりに衝撃的な情報に全員が唖然としてしまっていた。皆黙って聞いてくれているんだなと思ったのと同時に、待たせてはいけないと思い続きを話そうと口を開きかけたカノンを、静止する声が響いた。
「もう分かりました。そんなことがあったんですね。確かチュリンさんが後少しで洞窟に着くといっていたので、とりあえず今の話しはやめておきましょう?何かあるか分からないので念入りに備えておきたいですしね。」(超早口)
「え?う、うん……?わかったのだわ。」
その声の主はルピコであった。ナビゲーター業で培ってきたこの滑舌の良さをいかす日が来た。すごく聞き取りやすい声で尋常ではないほどの早口で強制的に話を終わらせた。そのとき、その場にいた全員がルピコに感謝をしたという。
(もう~聞いてるこっちが持ちそうにありません!進さん、まさかここまでカノンさんと距離を詰めていたなんて……それに、とんでもないトラブルにも遭遇しちゃっていますし……というか何でカノンさんは結構平気そうなんですか!?恥ずかしそうな素振りは見せていましたが、それでも割りと冷静気味でしたし……)
無理やり話を切り上げたは良いものを、ルピコは内心気が気ではなかった。カノンが話したとんでも情報はルピコを混乱させる。それに聞いてるだけでも恥ずかしくなってくる。
(とんでもない子ね……流石の私もそこまでいっているとは思わなかったわ。第一、カノンってあんなに天然だったかしら?いえ、白守進と関わっていく内に本来のカノンの性格に近づいていったとか……?どちらにせよ、私も会いたくなってきたわ。)
ルカはカノンの話を聞き、白守進とは一体どのような人間なのか。それが気になってしょうがなくなった。正義感溢れる勇敢な子で、それに加えてそんな大胆なことまでやってのけるその人物像がとても気になってしまっていたのだ。
(あらあら……白守さんも災難でしたね……それにしても、ふふっ。カノンさんのお話を聞いているととってもお似合いな2人だと思えてしまいますね。しかし、そこまでの仲でありながらなぜまだ先輩呼びなのでしょうか……?案外癖が抜けてないだけだったりしますかね?)
エレナは進の境遇に同情する。カノンの話すエピソードはどれも微笑ましいものばかりで、とても仲が良いのがそのしゃべり口調だけでも伝わってきていた。それ故になぜ未だに先輩呼びなのかが少し気になったが、仕事の都合だったりでの癖なのだろうか?と深くは考えていないようだ。
(あちゃ~……やっちゃったね~進君。でもカノンの反応をみる感じじゃ変なことをしている訳でもなさそうだね。てかカノンもカノンでなんであそこまで進君のことを許容できてるんだろう。もしかして、好きだったりするのかな~!)
チュリンは話の内容に驚きつつも、カノンの様子をみる限りでは進は嫌なことはやっていないのだろうと見抜く。冗談気味にもしかしてカノンは進のことを?等と考えるが、ないないと己の思考否定した。
(進君、心中お察しするよ……そこまでの関係ならばカノンが進君を信頼する理由もわかるよ。カノンを助けた話のときもそうだったが、彼とカノンはとても息があっているように感じるな。それも僕のようなキリコとの関係といった形とはまた違う。)
男として当時の進の心情を察するカイト。何となくではあるがカノンが進のことを意識していることにも勘づいていた。これ以上の思考は野暮だと結論付けカイトはこの話題についての思考を取り止めた。
(白守進、想像以上におもしれぇやつだ!肝も据わってやがるし、何しろデュエマ好きなのがいい!カノンに対しての対応も男として申し分ないし、マジで今度会いに行ってみたいぜ!)
グレンは進の男前な部分を高く評価していた。何より案外気が合いそうなのが嬉しい限りである。グレンほどの熱い人物はプレイヤーくらいしかいない。守護者達に情熱がないとと言うわけではないが、それほどにグレンは熱い男なのだ。もしかすると白守進はプレイヤーに続いてよきライバルになるのでは?と密かにするのだった。
そんなことがありつつも、一行はズンズン森のなかを進んでいく。また暫くの沈黙が続いていると、チュリンが突然声を上げた。
「あっ、森が開けてきたね!…………あった!皆~着いたよ!」
先程まで周りが草木でもい繁っていたのに、その洞窟の周りに出ると同時に不自然なほどに空間が開け、チュリンの言う通り洞窟らしき穴を見つけることに成功したのだった。
いきなりお気に入りの数が倍になっていてすごく驚いている作者です。皆さんありがとうございます!めちゃめちゃモチベ上がります。これからも頑張っていきます。これからめちゃくちゃ不定期更新になってしまいますがなるべく早く投稿していきたいと思います。