無垢の守護者と甘い恋   作:しゃべる

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これから

「……ということだそうだ。」

 

「そ、そんな……」

 

カイトは今に至る迄の一連の流れを説明した。混乱していた2人をなんとか落ち着かせることに成功したものの、ずいぶんと時間がかかってしまった。

 

「今回の失態は僕からちゃんと言っておくよ。反省はしているらしいしね。」

 

「「「「「「「スミマセン……」」」」」」」

 

カイトがやらかし組に目を向ける。そこにはルピコとダピコ、エレナにルカやチュリンとプレイヤー。ウェディングに唯が居座っており、謝罪の言葉を口にしていた。

 

「それと、グレンに悪気はなかったんだ。余り責めないでやってくれないか?」

 

カイトはグレンに目をやる。グレンは本当に申し訳なさそうにしており、今も尚2人に謝り続けていた。

 

「すまねぇ……!ほんっとうにすまねぇ!」

 

流石のカノン達もここまで謝られると怒る気も失せる。死ぬ程恥ずかしいのは事実だが、それはそれとして謝られるというのは余りいい気はしなかった。反省しているようだし、許してあげようと進は口を開いた。

 

「えーっと……その、そこまで謝らなくてもいいですよ……あんまり気にしてませんし。」

 

「そうは言ってもよ……!俺の気がすまねぇ!」

 

「え、えぇ……」

 

思ったよりも深刻に考えていたのか、これだけは揺すれないといった意思表示をするグレン。これには進も困り果てていた。

 

「わ、私も気にしてないのだわ!だから顔を上げて?」

 

すかさずカノンがフォローに入る。嘘は言っていない。カノンも進と同様、謝られまくるというのは余りいい気がしなかった。それに、いつまでも怒るような重要なことでもない。まぁ、最初は滅茶苦茶に恥ずかしかったのだが……

 

「でもよ……!それじゃあ示しがつかねぇぜ……!」

 

グレンの反応に頭を抱える進。いつまでもこれでは埒があかない。最初こそ守護者達と会話を交わしている時はドキドキしていたのだが、今はそれよりも現状をどうするかという思考に上塗りされてしまっていた。悩める少年、白守進は考える。どうすれば納得のいく展開に持っていけるのかを。

 

暫く考えた後、進はある1つの提案が思い浮かんだ。ニヤリと笑みを浮かべながら進はグレンに話しかける。

 

「それじゃあ、1つ俺の言うことを聞いてくれませんか?」

 

「っ!あ、あぁ!できることならなんでも言ってくれ!」

 

食いついた。つまり、この条件はグレンとしても有難い申し出というわけである。作戦通りにいったので進は次なる条件を提示した。

 

「ありがとうございます!じゃあ早速なんですが……」

 

「おう!遠慮なく言ってくれ!」

 

自信満々にそう言うグレン。大丈夫なのか?という不安の視線を送るカイトにグレンは大丈夫だとアイコンタクトを返した。

 

「俺とデュエマしてくれませんか?」

 

「えっ」

 

思いもよらぬ提案に、グレンは思わず声を漏らした。

 

「そ、そんなことでいいのか?」

 

「そんなことも何も、これじゃなきゃ駄目ですよ!」

 

なにやら興奮気味に語る進。この場にいる全員が驚きの表情を見せていた。しかし、何かに気づいたのかルカはエレナに耳打ちする。

 

「そういえば言ってたわね。あの子、私達とデュエマをするのが目標だって。」

 

「っ!あぁ、確かに唯さんが仰っていましたね!なるほど、進さんにとって私達とのデュエマは今回の失態を許すほどの勢いがある、そのくらいの価値があるものなんですね。」

 

進の提示した条件の価値を理解する2人。そんなことなど露知らず、グレンは未だに困惑したまま話を続ける。

 

「本当にいいのか?」

 

あのグレンが不安そうに確認をとる。やはりグレンといえど相当な罪悪感があったらしい。

 

「勿論です!デュエマさえしてくれればもう言うことなんてありません!」

 

「でもよ、カノンはどうするんだ?」

 

グレンの質問にカノンは笑顔で応えた。

 

「私は先輩のデュエルが見られればそれで良いわ。」

 

何故なら、進の楽しんでいる姿を見られるだけで幸せだからだ。死んでしまったと思っていた人物が再び目の前で動き、幸せを感じてくれているという事実がカノンにとって既に幸せなことだったのだ。

 

「なら、遠慮なくさせてもらうぜ!」

 

「はい!お願いします!」(しゃぁぁぁぁぁ!!!)

 

「おう!やるからには手加減はしねぇからな!覚悟しとけよ!」

 

成り行きではあるが、今ここに進の夢が叶おうとしていた。

 

「あっ、デッキケースが無い!!」

 

「運が良いな。僕が丁度持ってきていて良かったよ。ほら。」

 

「あ、ありがとうございます!!」

 

「し、しまらねぇなぁ……」

 

グレンのリアクションに静かな笑いが溢れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(速攻デッキの中でも遅い部類のヒューマノイドを使ってみたが、進のデッキは何だ……?)

 

現在経過ターンは3後攻であるグレンはリンクウッドで攻撃するか悩んでいた。

 

フェアリーライフで加速し、シャワーで更に加速。ここまではシータ基盤のデッキでは良く見る光景だ。しかし、マナゾーンに置かれたカードに違和感を抱く。

 

(あからさまに置くカードに偏りがあるな……)

 

そう、進のマナゾーンにはシータだというのに火マナが一枚しか置かれていなかったのだ。単純に引きが悪いのか、それとも見せたくないカードがあるのか。そのカード次第ではリンクウッドでの攻撃は裏目に出るかもしれない。だが、シータは基本的にトリガーが薄いため攻撃する理由も余りない。だからこそ攻撃を仕掛けたかったのだが、考えようによっては難しくなる。

 

(うーむ……どうしたものか……一枚でもシールドを減らしておければ速攻デッキにとっちゃあかなりのアドバンテージになる。けどなぁ……ドンドン吸い込むナウがきついな。)

 

グレンの盤面には軽減効果を持つヒビキもいる。次のターンには除去されてしまうだろうが、それでも盤面にクリーチャーが一体は生き残るだろう。しかし、ここでトリガーを引いてしまえば速攻デッキにはかなりの痛手となる。そもそも、進のデッキがどんなものなのかまだ把握できなかった。

 

(リソースも欲しいんだがな……流石に厳しいか。仕方ねぇ、取り敢えずここはターンエンドといくか。)

 

「ターンエンドだ。」

 

ハイリスクハイリターンだが、ここはリスクをとった。グレンはターンの終了を宣言する。

 

先行4ターン目 進のターン

 

「俺のターン、ドロー。」

 

現在のマナは6

 

(まだドギラゴンはバレてない、よな?)

 

進のデッキはシータドギラゴン。基本的には逆転のオーロラからワンショットを決めるのが戦術の1つだ。決めきれなくても後続の大型クリーチャーでのサブプランもとることができる非常にロマンに溢れたデッキとなっている。

 

コツとしては、メラッチかドギラゴンを見せないことだ。ドギラゴンデッキには単色しかないことが殆どな為、シャワーが判断力を鈍らせている。バレることはほぼないと言って良いだろう。しかし、相手は火の守護者だ。もしかすると既に勘づいているかもしれない。

 

(やっぱ火文明らしく速攻できたな。殴って来なかったのはトリガーを恐れてなのか?兎に角助かった……)

 

シールドが削れるとオーロラからのドギラゴンが決まりにくくなる。有効トリガーはドンスイしかないため、実は速攻に弱かったりする。一ターン耐えれば大体はドギラゴンからの逆転を狙えるが、基本的に速攻はそのターンで止めをさす。

 

それに、シャワーがシールドにある可能性も捨てきれない。多色採用のデメリットはやはりこれだろう。そこも踏まえて進はロマンを感じているのだが、やはり手順としては少々難易度が高かった。

 

(うーん……手札にはオーロラしか無いな。ドン吸いもマナと手札で2枚は見えているし……まだまだ6マナしかないからヘッドやウェディングにも届かない。攻められると不味いな……)

 

手札の要求値も高いため、悩むことが必然的に増える。ここはリソースを稼ぎ、ヒビキを除去することに専念することにした。

 

「龍覇 M・A・Sを召喚!エビデゴラスを超次元ゾーンからバトルゾーンに!そして、ヒビキを手札に戻す!」

 

「っ!そうきたか!」

 

進はドン吸いを使うのではなく、龍覇 M・A・Sを召喚した。このクリーチャーならばリソースを稼ぎながら除去も行える。デッキに三枚しかいれていなかった為、手札にあるのはラッキーだった。

 

「ふぅん、やるじゃない。どんなデッキなのか分からないのも面白いわね。」

 

「何かの準備をしてそうではあるけど、それが何か分かんないから下手に動けないねー。」

 

「そうだね。マナゾーンにある火のカードがマグナムなのも面白い。何か裏がありそうだ。」

 

「プレイヤーさんに聞いていた通り、かなりやり手のデュエリストですね。」

 

進の未知数なデッキに各々が感想を溢す守護者。

 

「いつ見ても進さんのデッキは動きが面白いです!」

 

「ルピコは知っているのか?」

 

「はい!以前、デュエルを拝見させて頂きましたので!」

 

ルピコの発言にダピコが質問する。ルピコは以前プレイヤーとのデュエルでデッキ内容を把握していた為反応の仕方に差が出ていた。

 

「頑張ってくださーい!」

 

「っ!お、おう!任せとけ!」

 

カノンが進に声援を送る。少し照れながらも進は相槌をうった。

 

「あんまり分からないけど、凄いことをしてるってのは分かるわ。」

 

「あれ、唯さんはデュエマのルール知らないんですか?」

 

ルピコが唯にそう訊く。それに対して、唯は少し申し訳なさそうに応えた。

 

「そうなのよ~。前に進に教えてもらったんだけど、ちょっとおばさんには難しくてねぇ~。なんとなーくは分かるんだけど、カードの種類が多すぎてねぇ……」

 

「あ~、確かにカードは多いですよね~。良かったら今度一緒にしてみませんか?」

 

「本当!?是非してみたいわ!進が何をしているのかちゃんと分かっておきたいしね!」

 

ルピコの提案には目を輝かせる唯。子供のようにはしゃぐ唯に、カノンは以前まで持っていた唯のイメージとはかけはなれていることに気がつく。しかし、どことなく進ににていることから、この性格こそが唯の素なのだと考えた。

 

場面は変わってグレンのターン

 

後攻4ターン目

 

ヒビキを返されたことにより、軽減効果が無くなりグレンモルトや鬼丸を出せなくなってしまった。

 

(やるな!ドン吸いからのライフじゃないとはな!M・A・Sがいるからリンクウッドも攻撃しづらくなっちまったぜ。さて、どうしたものか……)

 

もしかしたらいつものデュエルよりも悩んでいるかもしれない。グレンは心野底からこのデュエルを楽しんでいた。

 

(ヒビキが手札に3枚も有りやがる。ついてねぇ……が言い訳にしかならねぇよな。これを有利に進めるのが守護者だ!)

 

「爆炎舞 ヒビキを召喚!コイツの効果でコストを軽減し勇気伝承 ゲットJr.を1マナで召喚だ!」

 

「やっぱり展開しますね!」

 

「まぁな!そしてリンクウッドで攻撃だ!」

 

「っ!マジか!」

 

攻撃宣言に目を見開く進。驚く進に対してグレンは強気な笑みを浮かべていた。

 

「攻撃時の能力で山札の上をめくるぜ。それがヒューマノイドなら手札に加えられる!……こいつはっ……!へっ良いもん拾えたぜ!爆神装甲 ヴァルブレアを手札に加えるぞ!」

 

「ヴァルブレア!?くっ、トリガーは……ないか……!」

 

「よっしゃぁ!」

 

不味い、手札も悪ければ運もない。加えて切り札も引かれてしまった。次のターンには総攻撃が来るだろう。M・A・Sでリンクウッドを除去しても、盤面にはヒビキがいる。

 

「俺のターン、ドロー!エビデゴラスの効果でもう一枚ドロー!……っ」

 

手札は4枚。しかし、その内容に進は顔をしかめた。

 

フェアリーシャワー、逆転のオーロラ、燃えるメラッチ、ピクシーライフ。これでは除去は愚か、逆転さえも狙えない。進の変化にカノンは不安を覚える。

 

「先輩、大丈夫かしら……」

 

「盤面も厳しそうですね……流石グレンさんです。」

 

「焦りが見えるな。」

 

「そうですね。なかなか切り札が来ないといったところでしょうか。」

 

「えぇ、それにあのデッキは恐らくトリガーが薄いわ。次のターンを渡してしまえば負ける可能性がある。リンクウッドを除去できたとしても余り意味は成さないでしょうね。」

 

「お手並み拝見、だね!」

 

「さて……進君はどう出る?」

 

ギャラリーであるダピコ達は進の焦りを見抜いていた。守護者達は進の腕を見極めるべく真剣な表情で試合を眺める。

 

(7マナあるのか……ドギラゴンはあんまり見せたくないんだよな。警戒されるとシールドを3枚に調整されたりするするからなー。ヒビキの除去も出来ないし……クソッ、マナにドン吸い置かなきゃ良かった。)

 

シャワーでワンチャン持ってこれなくもないが、それは余りにもリスキーだった。山札的にもドギラゴンかメラッチが見えるかもしれない。そうなった場合が面倒だ。もし次のターン決着を着けずシールドを3枚にされれば成す術はなくなる。その時にはクリーチャーも展開されているだろうから除去は間に合わないだろう。

 

進のデッキの弱点はその除去カードの少なさだった。逆転に重きを置きすぎて守りが余りにも薄くなってしまっていたのだ。

 

(こうなれば……あれに賭けるしかねぇな。俺はパーツ集めに専念しよう。)

 

「呪文、フェアリーシャワー!山札の上から2枚を見て、一枚をマナゾーンに、もう一枚を手札に加える!……こっちだ。」

 

結果はドギラゴンと早打人形マグナムだった

 

勿論マナに置くのはマグナム。ドギラゴンでなければマグナムを出してリンクウッドを取りに行きたかったのだが仕方がない。ヴァルブレアの標的になるので出さない選択は正しかった。

 

(ピクシーライフは……止めとこう。)

 

変にマナを加速する必要もない。下手にカードが見えるかもしれないし、伸ばす理由も余りなかった。

 

「いいのが引けなかったのでしょうか……?」

 

渋い表情を崩さない進にルピコは疑問を持つ。実際はドギラゴンが手札にきた為すごく喜んでいるのだが、それを表情に出すことを我慢していた。

 

「M・A・Sでリンクウッドと相討ちする。ターン……エンドだ。」

 

「お、シャワーを打っただけなのか?」

 

「そう、ですね……」

 

「本当に良いんだな……?」

 

グレンの質問に進は首を捕まれた様な感覚に陥った。進を強烈なプレッシャーが襲う。まるで試しているような、そんな眼差しを向けられる。つい怖じ気づいてしまいそうになるも、カノンが応援してくれているのを思いだしハッとした。

 

「……はい!俺は、このデッキを信じます!」

 

「へっ、良い返事だ!んじゃ俺もその想いに応えなきゃな!」

 

グレン 後攻5ターン目

 

盤面には爆炎舞ヒビキと勇気伝承ゲットjr.が一体ずつ

 

手札にはヴァルブレアに龍覇 グレンモルト、鬼丸「爆」に爆炎舞ヒビキがあった。

 

「先ずはっ!爆炎舞ヒビキを場にいるもう一体のヒビキの効果でマナを軽減し、2コストで召喚するぜ!」

 

「来たわね。決着を着けるつもりよ。」

 

「あぁ、そのようだね。これからどうなるか……見物だな。」

 

「進さんの目はまだ諦めていません。残りのシールドに全てを賭けているのでしょう。」

 

「面白くなってきたねー!グレンも結構本気だしてるっぽいし、名勝負の予感!」

 

各守護者はグレンの動きで次に何をするのかを察した。総攻撃を仕掛ける準備は着々とすすんでいるようだった。

 

「そんで……こい!龍覇 グレンモルト!」

 

「っ!グレン、モルト……!」

 

思わぬクリーチャーの登場に焦る進。てっきりヴァルブレアか出てくるのかと身構えていたのだが、予想が外れたようだ。

 

「超次元ゾーンからガイハートを装備するぜ!まだまだ終わらねぇ!さらに、さっきだした爆炎舞ヒビキを爆神装甲 ヴァルブレアに進化だ!」

 

「これで攻撃可能のクリーチャーは4体。それに龍解の可能性も出てきたわ。」

 

「そんなっ……それじゃあ実質5体分の攻撃をいなさなきゃいけないの……!?先輩……!」

 

ルカの解説にカノンは心配の声を上げる。

 

「カノン、今は白守進を信じましょう。あなたの信じた者ならば、貴方を救いだした者ならば……きっとこの状況も打破してくれる筈です。」

 

「ウェディング……そうね。私が選んだ人なんだもん。信じないなんてあり得ないのだわ!お願い、先輩にどうか祝福を……!」

 

元気づけるウェディングにカノンはハッとする。珍しくウェディングがカノン以外の人間の肩を持ったが、それに気づくことなくカノンは祈りを捧げ始めた。

 

「覚悟はできたか?」

 

「フゥー…………はい!」

 

「っし!そんじゃ、遠慮なく攻撃してやる!先ずはグレンモルトで攻撃だ!」

 

残りシールド3

 

「トリガーは……無しだ。」

 

「よし!次に爆炎舞ヒビキで攻撃!」

 

残りシールド2

 

「トリガーは……っ!よしっ!シールドトリガー、Rev.タイマン!」

 

「なにっ!?」

 

Rev.タイマン。能力はクリーチャー一体の対人への攻撃不可、革命2でそれを全体に付与するといったものになっている。

 

(ピン刺しだったが来てくれたか!)

 

進の賭けは余りにも無謀なものだった。ドンドン吸い込むナウだけでは対処できないクリーチャーの数。それをどうにかするにはピン刺しのこの呪文しかなかったのだ。それに、革命2を発動できなければ終わる。そんな高難易度の賭けを進は土壇場で引き当てたのだ。

 

「ちっ、けど油断するのは早いぜ!」

 

「そ、そうでした。龍解条件は達成しているんでした。ということは……!」

 

ルピコの発言と同時にグレンは意気揚々と宣言する。

 

「いくぜ!」

 

龍 解!!

 

「来たぜ!熱血星龍 ガイギンガ!!!」

 

選ばれると追加ターンを得ることのできるドラグハートクリーチャーである。バトルか全体除去でもしない限りは干渉されることがないカードだ。

 

「で、でもRev.タイマンのお陰で攻撃はできないは「いえ、可能よ。」え……?」

 

カノンの発言にルカが指摘をする。

 

「あの呪文は場にいるクリーチャーにしか効果がないの。後から出てきたクリーチャーに効果は無いのよ。ドラグハートクリーチャーは龍解するまでクリーチャー扱いではないから呪文の効果は受けてないわ。」

 

「そ、そんな……じゃあ先輩のシールドは……!」

 

「えぇ、0になるわね。」

 

進のピンチにカノンは焦る。やはり好きな人には勝ってほしい。チラリと進の顔を見る。

 

「っ!」

 

驚くことに、その表情には何一つ焦りが見えておらず、なんなら涼しい顔をしていた。こんな状況だというのに楽しんですらいる進にカノンは安心感を覚える。

 

(そうだったわ。先輩の切り札はドギラゴン。このターンにやられちゃうことは無いから逆に0になった方が都合が良いのだわ。駄目ね、先輩のことを信じるって決めていたのに乱れてはいけないわ!頑張って、先輩!)

 

「よしっ!ガイギンガで残りの2枚のシールドを割りき……っ!?」

 

「あれ?攻撃が止まりましたよ……?」

 

「あのグレンが……?何をしているんだ?」

 

勢いづいていたグレンの攻撃が止まる。グレンの額には汗がほんのりと滲み出ていた。不信感を抱くルピコ達。いつものグレンを知っているカイトですら行動の意図を読み解けなかった。

 

(なんだ……?一瞬だが背筋が凍るような感覚がした。この攻撃、なんだかわかんねぇがしちゃいけねぇ気がしてならねぇ。くっ、俺らしくない!……けど、ここは勘にしたがった方が良い気がするな…どうしようか……………よし。)

 

「ターンエンドだ。」

 

「「「「「「「!?」」」」」」」

 

突然のエンド宣言に困惑する一同。

 

「なにやってんのー!?風邪でも引いちゃった!?」

 

「ちげぇよ!……ただの勘だ。」

 

チュリンの言葉に突っ込みを入れるグレン。

 

「何が起きているの……?あのグレンが止まるなんて。」

 

「分かりません……こればかりは本当にグレンさんの勘ではないのでしょうか。私には攻撃しても良いように見えますが……」

 

「あの色のデッキに9マナで逆転できるカードがあったか……?」

 

カイトの言うことはもっともであった。基本的にシータカラーのデッキはビックマナの系譜であることが多く、切り札カードのコストは10~12の間にあることが多い。次のターンには9マナに達する進だが、それでも勝てる見込みはほぼ無いと言って良い。

 

「けど、トリガーからのマナ加速で負ける可能性もあるな。このターンに決着を着けることはできないから、攻撃しない理由も一理ある。」

 

「そうか……しかし、マナ加速系統のカードはほぼ見えている。もし次のターンにまたRev.タイマンを引けば負けは確実だろう。僕はこのターン中にシールドを割りきった方が良いと思うんだがね。」

 

「むむむー。こりゃ難しいねー。」

 

ダピコと意見の交換をし合うカイト。横で会話を聞いていたチュリンは難しそうな表情を浮かべていた。実際の所はタイマンはピン差しなのでその心配ごとは杞憂なのだが、進は苦虫を噛み潰したような表情をしていた。

 

「……バレてるわ。」

 

「そう、ですね……流石グレンさんと言ったところでしょうか。」

 

カノンとルピコは皆に聞こえないようにヒソヒソと話しをしていた。以前にデッキ内容を見せてもらっていたカノン達は進が何をしたいのか知っている。だからこそ今の状況を重く見ていた。

 

「次のターンにオーロラを打つのでしたら、シールドゾーンには単色のマナを1つ要求することとなります。残りのフェアリーシャワーの枚数は2枚。運が悪ければ進さんは負けます……」

 

「そんなことはないと思いたいけど、これはデュエル・マスターズ。常にあり得ないことが起きる……有効なシールドトリガーももうないから、後は先輩の運だけね。」

 

気づけばカノンは両の手を絡め、ぎゅっとしていた。先輩が勝つようにと願いながら……

 

(流石はグレンさんだ……!プレイヤーさんにも引けをとらない熱さに強さ!手札にはドギラゴンとメラッチ、オーロラはある。結構ピンチだけど……やっぱりおもしれぇ!!)

 

憧れの人とのデュエマに湧き出る高揚感。進は今のこの状況を嬉しそうに噛み締めていた。やっぱり守護者は強い。流石、目標にしていただけはある。これからも尊敬の対象であり続けることだろう。しかし、だからといって負けるつもりは毛頭無かった。

 

(やってやる!こっからの逆転をな!!!)

 

「俺のターン!ドロー!エビデゴラスの効果でもう一枚!」

 

「っ!目が変わった……!」

 

雰囲気が変わった。グレンは瞬時に違和感を察知する。何が来るのかと思わず身構えた。

 

(やることは決まってる。既にパーツは手のなかだ。後は運だけ!)

 

「俺は……逆転のオーロラを唱える!!」

 

「「「「「「!?」」」」」」

 

カノンとウェディング、そしてルピコを除いた者がその宣言に驚愕していた。

 

「んだと!?それは予想できなかったぜ……!」

 

「逆転のオーロラですって……!?」

 

「そんなことしたって不利になるだけじゃないの~?」

 

「うーん……私にはもう検討がつきませんね……ここは静かに観察させていただきます。」

 

「面白いじゃないか……!ここからどう逆転するのか見物だな!魅せてくれ、進君!」

 

「ほぉ、逆転のオーロラか。これはどうなるか分からなくなってきたぞ。」

 

 

守護者とダピコは思いもよらぬカードに感想を言い合う。グレンは一体何をしてくるのだろうかとワクワクしているようだった。

 

「シールドを全てマナゾーンに送る!」

 

「ここが勝負どころです!あのシールドに2つフェアリーシャワーがあれば進さんは負けます。しかし、一枚でも単色のカードがあれば……!」

 

「お願い……!」

 

「一枚目は……っ!?フェアリー、シャワー!?」

 

当たってほしくなかったカードが捲れ、動揺する進。その様子を見ていたグレンはどうしたのかと不思議そうな表情を浮かべていた。

 

「フゥー……最後の、カードはっ……」

 

息を吐く。緊張で手が震えた。そして、その震える手を使い最後のカードを捲った。

 

「っ!しゃぁぁぁぁ!!!!!」

 

捲れたカード。それは

 

 

燃える革命 ドギラゴンであった

 

 

「ド、ドギラゴンだとッ!?」

 

驚くグレンを横目に、進は行動を続ける。

 

「残りは5マナ!ならっ、4マナ使って燃えるメラッチを召喚だぁぁ!!」

 

「まさか……!そんなデッキ構成があり得るのか!ふっ、面白い……!」

 

カイトは進のしたいことを察したのか、広角を若干上にあげながらそんなことを呟く。

 

「メラッチの効果でコストを軽減しっ!……来い!」

 

燃える革命 ドギラゴォォォォン!!!!

 

「やった、先輩のドギラゴンなのだわ!!」

 

「へっ、へへっ……そんなのアリかよ……!」

 

7  燃える革命 ドギラゴン

 

□ 進化:火のクリーチャー

 

□ T・ブレイカー

 

□ 革命2:このクリーチャーがバトルゾーンに出た時、自分のシールドが2つ以下なら、次の自分のターンのはじめまで、自分はゲームに負けない。

 

□ 革命0:このクリーチャーが攻撃する時、自分のシールドが1つもなければ、このクリーチャーをアンタップする。

 

 

現在の進のシールド数 0

 

「いけぇぇぇ!!!ドギラゴンッッ!!」

 

「ぐっ!トリガーは……ない……」

 

グレンのシールド 2

 

「これは……勝負あったわね。」

 

ルカが呟く。

 

「更に革命0発動!ドギラゴンをアンタップし、再度攻撃だ!!」

 

「っ!シールドトリガー、モエル 鬼スナイパー!だが……これじゃ止められねぇ……!」

 

「ドギラゴンでダイレクトアタックだァァァァ!!!」

 

進のダイレクトアタック宣言。グレンはそれに抵抗することなく、ただ自身の運命を受け入れるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「か、勝った……?」

 

「くぅ~~~……!盛大に負けちまったな!進!おまえの勝ちだぜ!!」

 

「ま、マジかよ……よっっっしゃぁぁぁぁ!!!!!!」

 

勝利の雄叫びを上げる進。病院なので控えめになっているが、それでも嬉しさは抑えきれていないようだった。

 

「やりましたね、先輩!」

 

「すごいです!まさかグレンさんに勝っちゃうなんて!」

 

「まぁ、カノンが認めた男なのですからこのくらいはできて当然でなければ困ります。」

 

「凄いな。まさかあそこから逆転するなんて思わなかったぞ。ルピコが言うだけはある。」

 

「奇抜なデッキで面白かったわ。カード愛が中々のものね。」

 

「カードを全く見せなかったのが勝敗を分けましたね。私達でさえ騙されてしまっていたので、ロマンデッキの中でも通用する部類なのではないでしょうか。」

 

「いや~プレイヤーの言う通り結構やるじゃん!グレンも良くシールド割りに行かなかったね!」

 

「興味深いな。後で構築を見せてくれないかい?できれば僕のデッキ作りの参考にさせてほしい。」

 

各々に感想を言い合う。そのどれもが試合内容を絶賛しており、進は照れ臭そうにしながら頭をかく。そこへグレンが近づいてきた。

 

「良い勝負だったぜ!またしような!」

 

そういって手を差しのべるグレン。それに対して進は

 

「は、はい!また今度、やりましょう!!」

 

と満面の笑みをうかべながら握手をするのだった。

 

「おいおい、俺たちはもう友達だぜ?んな固い口調は要らねぇぞ!」

 

「えっ……で、でも……」

 

「遠慮すんなって!デュエリスト同士、対等な関係でいこうじゃねぇか!」

 

グレンの申し出に進は頭を悩ませた。しかし、ここまでグレンがいってくれているのに断ると言うのも何だか失礼だろう。ならば返事は1つだった。

 

「わ、わかった!じゃあ宜しくな、グレン!」

 

「おう!宜しくな、進!」

 

見てて気持ちが良いくらい爽やかな会話に一同は何だか和むような雰囲気に包まれた。

 

「僕たちにも遠慮しなくて構わないよ。素の自分で接して来てくれないか?」

 

「じゃ、じゃあ……そうさせてもらいます!」

 

「そうね。その方がこっちとしてもやり易いし良いと思うわ。」

 

「ふふっ、これはまた騒がしくなりそうですね。」

 

「うんうん!ハッピーエンドになりそうで良かったよ!これから宜しくねー!」

 

「はい……じゃなかった。おう!皆宜しくな!」

 

堅苦しい雰囲気もなくなり、改めて挨拶をする守護者達。考えてみれば、ちゃんと面と向かって会話をするのは今回が初めてだった気がする。今の今まで大変すぎて気づかなかった。内心まだまだ緊張が解けない進だったが、デュエマに勝ったと言う事実がそれを和らげていた。

 

「わ、私も全然敬語じゃなくて良いですよ!」

 

「私も構わないぞ。」

 

そこにすかさずルピコとダピコが介入してきた。片方の子の名前はまだ知らないが、これから仲良くなっていけば良いだろう。進はその言葉通り、遠慮することなく言葉を紡いだ。

 

「そうか。ありがとな!これから宜しく、ルピコちゃん!」

 

「へ!?ル、ルピコちゃん!?」

 

進の呼び方に驚くルピコ。少し気恥ずかしそうにしていたルピコに進は不思議そうな表情を浮かべながら質問した。

 

「ど、どうした?いや、だったか?」

 

「い、いえ……そうじゃなくて、私ちゃん呼びで呼ばれたことが無くて、なんか恥ずかしかったと言うかなんと言うか……あっべ、別に嫌ってわけじゃないんですよ!?それは本当です、はい。」

 

なんとも可愛らしい理由に思わず頬が緩むのを感じた。そして、進は気になっていた子に声をかける。

 

「そんで、君は一体……?」

 

「私はダピコ、ルピコの姉だ。これから宜しく頼むな。」

 

「え、えぇぇぇぇぇ!?!?!?」

 

思わぬ事実に声をあげて驚く進。

 

「ど、どうした?」

 

不安そうに訊いてくるダピコに進は焦って説明した。

 

「あ、いやまさかルピコちゃんに姉ちゃんがいるなんて思わなくってさ。」

 

「なるほど、そういうことか。」

 

「あはは、私も最初は皆さんに驚かれました。懐かしいですね~。」

 

ルピコの姉の存在が明らかになったときのプレイヤーの驚き様は、思い返してみると少しおかしかったように感じる。馬鹿にしている訳ではないが、なんだかんだ言って楽しかった記憶だと思っている。

 

「進ぅ~!」

 

「ゲッ、母さん!」

 

「凄いじゃない!まさかあんたの言ってた守護者の方に勝っちゃうなんて!」

 

そういって唯は進のことを強く抱き締めた。めんどくさそうな表情のままされるがままになる進。唯の素については薄々察してはいたものの、それでも余りの豹変ぶりに一同は驚きを隠せなかった。

 

「やめろって!」

 

「あら~どうしてかしら~?久しぶりの再開なのに!」

 

「俺はもうそんなことされる歳じゃねぇの!」

 

「どんなに歳を取ろうがいつまでも貴方は私の子供よ!」

 

「やめろよ……み、皆が見てるじゃんか……恥ずかしいんだよ。うぅ……」

 

赤くなった顔を隠すように手を被せる進。そんな素振りを気にすることなく唯は更に強い力で進のこと抱き締めていた。ほのぼのとしたやり取りに一同は笑みが溢れた。

 

「そ、そうだ!そこのお姉さん!貴女のこともまだ知らないんです、お名前は!?」

 

都合の良い理由を見つけ、なんとか唯を引き剥がしウェディングに近寄る進。顔色1つ変えずウェディングは受け答えを行った。

 

「私の名はウェディング。カノンの付き人とでも思ってください。」

 

「……今まで隠しててすみませんでした。ウェディングは私の大切な人の1人で……クリーチャーなんで「やっぱりか!」えっ……」

 

申し訳なさそうに謝るカノン。ずっと隠し続けてきたためやはり後ろめたさがあったのだろう。だと言うのに、進はそんなことなど意に介さず、明るい声で口を開いた。

 

「いやぁ、ビッグマナではマジで世話になってるカードだけど、まさかこんな美人な人がクリーチャーだなんてなぁ。」

 

「び、美人……むぅ……」

 

感傷に浸っている進の発言になぜだかモヤっとした感情が湧き出るカノン。これに関しては完全に無意識であり、数秒経った後で自身の抱いていた感情に驚く。

 

「やはり、貴方は私のことを知っているのですね。一体どこで知ったのですか?」

 

そんなことなど露知らず、ウェディングは疑問に思ったことを率直に口にした。

 

「そうだね、君はクリーチャーのことを知っていた。僕たちとしては必死に隠してきたつもりなんだが……良ければその知った経緯を教えてくれないかい?」

 

誰もが思っていたことをカイトが代表して話した。これに関しては全員が興味を持っているらしく、真剣な眼差しで進を見つめる一同。それに対して進は思わぬことを口にした。

 

「あー……それはちょっと、できないなぁ……」

 

「……ふむ、どうしても駄目なのかい?」

 

目を見開くも、冷静に交渉するカイト。しかし、進の決意は固まっているらしく、どうしても駄目だと言う風に首を横に振った。

 

「ごめん。こればっかりは、な……約束なんだ。」

 

「約束……」

 

顎に手をやり考える素振りを見せるカイト。一体誰との約束なのか、考えてみても答えは見つからない。他の者も思考していたが、悩めるだけで意味はなかった。

 

「じゃあ1つだけ確認させてほしい。」

 

「?」

 

「その約束は、危険なものではないのかい?」

 

聞き出すと言う行為を諦めたカイトは、その約束事をした相手の情報を得ようと動く。懸念点があるとすると、クリーチャーを知っている存在がどのようなものなのか、もしかすると悪意を持つものなのではないかと言うものだ。詳しく詳細を知れなくても、これだけは確認しておきたかったのだ。

 

「勿論だ。危険ってより、もう安全って言った方が良いかもしんないけどな。」

 

「なる程ね……分かった。ではこの話は今後一切しないと約束しよう。」

 

「ごめんな……そうしてもらえると助かる。」

 

「いや、いいさ。誰にだって隠し事の1つや2つあるものだ。気にする必要はないよ。」

 

「そうか……ありがとな。」

 

取り敢えずは危険か危険じゃないかが知れたので良しとしよう。そういうことで2人は妥協した。そこに1人の声が進に質問する。

 

「その……お体の方は大丈夫なのでしょうか……?」

 

これも気になっていたことだ。というより現在進行形で心配していることだった。エレナの不安そうな質問に進は元気良く応える。

 

「ん?あぁ、そうだよな。大丈夫大丈夫!この通り全然元気だから!なんなら前よりも体が軽くなったような気がするよ。ほらっ腕が動く動く……なんちゃって。」

 

「不思議ね……完全に切り外されていた筈なのに。」

 

「そこんとこも進の言う約束ってやつと何か関係してるんだろうな。まぁもうすんだ話だ、もうこの話題は終わりな!気分が悪くなっちまうぜ。」

 

不思議そうに腕を見つめるルカ。グレンはどうもあの事件を良く思っていないらしく(当然だが)早々に切り上げようとしていた。

 

「そうですね。進さんが一番お辛かったでしょうし、このお話はここで区切っておきましょうか。」

 

エレナも気を遣ってくれているようで、グレンの意見に賛同した。一同も同意見のようで、お互いの顔を見合い微かに頷いた。

 

「っとそうだった。一応進君の容態を報告しておくよ。」

 

「容態?」

 

「あぁ、君が倒れた後綿密な検査を行ったんだ。結果として、異常はどこにもなく恐らく貧血で倒れたのだろうとのことだった。これには僕も驚いたよ。」

 

科学者気質のあるカイトは少々興奮気味に話している。進自身も予想が当たっていたとは思わず驚いているようだった。カノンは今度こそ不安要素が完全になくなり、安堵している様子だった。

 

「そうか……ありがとう。」

 

「礼には及ばないさ。それに、お礼を言うのは此方の方だ。」

 

「え?」

 

「あの時……君が居なければ僕たちはいや、この街は危なかったかもしれない。守るべき立場であるのに無理をさせてしまった。本当にすまない。悪いな、話をぶり返すつもりはなかったんだが……これだけは言わせてくれ。ありがとう。本当に助かった。」

 

そういってカイトは頭を下げた。

 

「……だね。僕たちは守護者なのに、一般人である進君に助けられた。普通だったら僕たちが守らなきゃいけないのにね……ごめんね。でも、君はこの街を守ってくれたんだ!本当にありがとうね!」

 

続いてチュリンも頭を下げる。彼らはこの一週間、一般人である進が命を散らしてこの街を守ったと言う事実にとてつもない罪悪感を抱いていた。守護者としての責務を果たせなかった不甲斐なさ、それらを全て1人でやってのけた進に対する申し訳ない気持ち。そのどれもが守護者達を悩ませる感情だった。

 

「私達ではどうすることもできませんでした。悔しいですが、進さんの力を借りなければ今回の事件は解決できなかった……守護者として今ここで謝らせて下さい。本当に、すみませんでした。しかし、進さんの活躍によって救われた命の数は計りしれません。無論、私達も救われました。だから……本当に、本当にありがとうございます。」

 

エレナが頭を下げる。

 

「今回は私達に落ち度があった。もっと作戦を練ったりしていけば良かったのにね。だから貴方に頼る形になってしまったわ。今は平気かもしれないけど、あの時に傷を負ってしまったという事実は変えられない。本当にごめんなさい。でも、私達を救い街の人達を救ったというのもまた事実。だから、ありがとう。本当に感謝してるわ。」

 

ルカも頭を下げる。

 

「そうだな。俺も進を守れなかったこと、守護者としてマジで情けねぇなって思った。死ぬ寸前まで怪我をさせちまったこと……本当にすまなかった。だが、進のお陰で今があるんだ!こうしてデュエマも出来たしな!だから、ありがとうな。俺達を助けてくれて、街のやつらを救ってくれてよ。」

 

最後にグレンが頭を下げた。

 

「ちょ、ちょっと待てよ。頭あげてくれって。」

 

憧れていた人達が全員頭を下げているという光景に混乱する進。お礼を言われたことは素直に嬉しかったが、ここまで頭を下げられるというのは余り気分が良くなかった。

 

「悪いな。これは僕達なりの誠意なんだ。守護者として、1人の人間としてこれだけは譲れない。」

 

進の言葉に強く反論するカイト。ここで頭を上げるというのは守護者としてのプライドが許さなかった。それは全員そうである。暫く時間が経った後、頭を上げる守護者達。その表情は、デュエマで盛り上がっていたときとは売ってかわって、とても真剣なものとなっていた。何となく気まずくなってしまった空気感の中、口を開いたのは進だった。

 

「そのーさ?皆の思いは素直に受けとるよ。でも、正直に言うとあの時は別に皆のことを助けたいとか、街の人達がーとか思ってなかったんだ。」

 

「っ!そう、なのかい?」

 

「あぁ。あの時はもうカノンを助けるってことばっかり考えててさ、他の皆のことは余り見てなかったって言うか……気にする余裕がなかったんだ。」

 

「先輩……!」

 

進の発言にカノンは不謹慎ながらも、嬉しく思ってしまう。心臓の鼓動音が聞こえてきそうな位に高速で脈打つ。想われるというのはこんなにも暖かい気持ちになるのかとカノンは思った。

 

「だから……えーっと…す、好きでやったことだからこうなっちゃったこともあんまり気にしてないっていうか……カイト達がそこまで思い詰める必要はないと思うんだ。」

 

目を見開く守護者達。こんな目に会っておいて尚誰かを思いやり、言葉を選んで伝えてくれる。少年の奥底に見える優しさ。それが守護者達の悩みを溶かしてくれるような感覚がした。

 

「フッ……君という、やつは……!とんだお人好しだな。」

 

「そうなのかなぁ……そうなのかも。誰かさんのお人好しが移ったのかもな。」

 

思い浮かぶはカノンの行動の一つ一つ。最初はここまでのお人好しがいるんだなぁと驚いていた記憶があったが、気がつけば進も自然と誰かのことを思いやれるようになっていたのかもしれない。

 

「……グスッ」

 

「エ、エレナ?ど、どうして泣いてんの?」

 

「あっ……こ、これはそのっ」

 

進の指摘に慌てるエレナ。目尻に溜まっていた涙を拭って取り繕おうと必死に言葉を捻り出そうとしていた。

 

「……分かるわ、エレナ。」

 

「っ……」

 

「私も辛かったもの。白守進を死なせてしまったことに対する負の感情を吐き出せなかったから。止めどなく溢れる自身への嫌悪感は凄まじかったわ。」

 

エレナの心情に共感するルカ。それと同時に塞き止めていた感情が爆発してしまい、気づけばエレナは号泣してしまった。

 

「ひくっ、ぐすっ……ルカさん、私っ、私ぃ……」

 

「良く、我慢したわね。」

 

溢れ出てくる涙を必死に拭うエレナ。背中をさすりながら慰めの言葉を掛けるルカだったが、彼女も気づかぬ内に涙を流していた。それも一滴どころではなかった。

 

「一番悩んでたのエレナだったもんね。守護者として守るべき人を守れなかった、死なせてしまった自分は守護者失格だって。毎日言ってたよ。」

 

「正直、俺もあの日からデュエマが出来なかったんだよな。一週間くらいじゃ立ち直るなんて無理だった。でかいショックを受けると人間はああも酷く傷つくんだなって思ったぜ。」

 

「皆さん……」

 

ルピコが目の前の光景を前にして思ったことがあった。皆辛かったのだ。勿論、一番辛かったのはカノンだっただろうが、だからといってその他の皆が全く傷ついていないかと言われるとそうではなかった。小さな嗚咽が部屋に響き渡る。暫くすると、落ち着いたのかエレナは申し訳なさそうに口を開いた。

 

「す、すみません。はしたない姿を見せてしまって……」

 

「無理に取り繕う必要なんてない。時には誰かに悩みを吐き出すってのも大事なんだからな。その時はおもいっきり泣けば良いと思うぜ。その方が楽になれるしな。」

 

思い出されるはあの日、カノンに相談事をして泣きついてしまった時だった。やはり、人は1人で抱え込むと辛くなってしまう。そんなことを痛感した出来事だった。

 

「……ふふっ。」

 

「え?ま、また俺変なこと言っちゃった……?」

 

励ましたつもりが笑われてしまい、不安になる進。しかしエレナはすぐさま訂正しようと慌てて言葉を紡いだ。

 

「あ、いえっ、違うんです。ただ……カノンさんが進さんに惚れた理由、今なら何となく分かるなぁと思って。」

 

「エレナ!?せ、先輩は渡さないのだわ!!」

 

「うおっと!?そ、そう意味で言った訳じゃないと思うぞ……?」

 

エレナの発言にぎょっとしたカノンは、進にエレナから庇うようにして抱きついた。

 

「あはは!カノンってばー見せつけてくれるじゃん!」

 

「へ!?こ、これはそのっち、違くて……ただ先輩が取られちゃうんじゃないかって思っただけで……」

 

「うんうん!ちゃーんとカップルしてるねー!」

 

「あ、あぅぅ……」

 

羞恥心がカノンを支配する。真っ赤に染まった顔で進の使っている布団に顔を埋めた。そんな様子が可笑しくて進が思わず笑ってしまう。次第にエレナやチュリンも笑い、次第にこの空間は笑いで溢れるようになった。

 

「ふふっ……良かった……」

 

「あら、そんな顔してちゃ可愛らしい顔が台無しよ?」

 

「ゆ、唯さん……!?」

 

エレナが元気になり、ホッと胸を撫で下ろしていたルカに唯が突然接近する。そして、涙の伝った跡をハンカチで拭き取った。

 

「貴女も辛かったのでしょう?この際だから私に話してみたらどうかしら?」

 

「だ、大丈夫です。もう、十分泣きましたから。」

 

涙を拭かれたのが恥ずかしかったのか、ほんのりと頬を紅く染め目をそらしなから話すルカ。

 

「ふふっ、強がってもいいけれど無理はしちゃいけないわ。普段の貴女はクールな振る舞いを見せているのでしょうけど……私からすればまだまだ若いわ。貴女も1人の人間で、心があるの。

だから、慰めるだけじゃなくて慰められてもいいんじゃない?」

 

「っ~~!!……本当に、いいのでしょうか……?」

 

「えぇ、たまには溜まった鬱憤を吐き出さないとね。」

 

そういって微笑みかけてくれる唯。この瞬間、ルカも塞き止めていた感情が溢れだした。

 

「じゃあ、唯さんの胸を、少しだけ貸して下さい……」

 

「うん。私のであればいくらでもどうぞ。」

 

「ありがとう、ございます……!」

 

ルカは唯の胸に顔を預けると、エレナとは違いしくしくと静かに泣き始めた。唯は両手をルカの頭の後ろへと回し、優しく頭を撫でる。

 

「本当、ありがとうね。私の子を必死に助けようとしてくれて。まだまだ若いのにここまで命を張れるってなかなか出来ないわ。」

 

「うっ、うぅ……!け、けれどっ!私は一度息子さんを死なせてしまった……!あの時っ、ゆっ油断をしなければ、さっさと決着をつけていれば!」

 

「確かに失敗しちゃったかも知れない。でも、悪いところばかりじゃないわ。」

 

「……?」

 

未だ止まることをしらない涙を流しながら、胸に埋めていた顔を上げ唯を見つめるルカ。

 

「言ったと思うけど、あの子は親しい人が周りに居なかったの。貴女は余り深く関わっているわけではないのでしょうけど……泣いてくれるくらい気にかけてくれているのよ?嬉しくない訳がないわ。何が言いたいのかっていうと……自分のことをあんまり卑下しないでほしいなってこと。」

 

「あ……」

 

「もし、気持ちが晴れないんだったら……そうねぇ……あの子と一度だけでもいいから遊んでほしいなぁ。それだけでも十分報われると思うから。無理強いはしないけどね。そんな状態で遊んでも楽しくないわ。」

 

「っ!」

 

話を訊いてくれるだけでいいのに、唯はその先のことまで考えて助言までしてくれた。ルカの気持ちはとっくに全部見抜かれており、求めていることを全て話してくれる唯。思えば、ルカが誰かに甘えるというのはなかった気がする。別に普段から気丈に振る舞っている訳ではないのだが、性格的に本音を話すことは無かったし、話して発散させるということもなかった。だから、今の状況はルカにとってはかなり恥ずかしいものになっている。

 

しかし、心が疲弊しきっていたルカは、今だけなら誰かに甘えてもいいかな……と思ってしまっていた。ここまで唯に心を許すことが出来るのは、やはり母親の持つ母性がルカの心を溶かしただからだろう。こうしてルカはカノン達が隣で騒いでいる間、人知れず唯に泣きつくのだった。

 

「良かったな、ルピコ。」

 

「ダピコお姉ちゃん……!」

 

「これにて一件落着といったところか。ルピコも良く頑張ったな。偉いぞ。」

 

「……うん!」

 

荒んだ心がダピコの一言によって、癒されていく。ルピコもルピコでこの一週間、抱え込んでしまっていたので、やっと解放されたような気分になった。

 

「白守進、不思議な人間ですね。」

 

ウェディングは1人そう呟く。

 

「……彼になら、カノンを任せても問題ないでしょう。元より、カノンが選んだのですから、その心配事も杞憂でしょうがね。もし私が居なくなったときは……頼みましたよ。」

 

もしもということがある。その時は安心して彼に任せよう。そう考えるウェディング。その表情は以前とは比べ物にならないほど柔らかなものであり、無表情というにはあまりにも口角が上がっていた。この時、ウェディングは初めて心の底から微笑んだのだった。

 

 

 

 

 




進君の使っているデッキは一応ドギラゴンカップの時にADマスター到達したので弱くはない…筈です

グレンのデッキは試練の塔で25連勝したので弱いことはないと思います。

ドギラゴンの優遇っぷりがすごいですが、作者の子供の頃の初めての切り札なので悪しからず。私情マシマシですがね。
デュエルの描写が難しくて筆が進みませんでした……状況とか上手く伝わってますかね?気軽に感想下さい。

進の隠し事を番外編で

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