無垢の守護者と甘い恋   作:しゃべる

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惹かれた2人

ある日の事だった。バイトに復帰してから数日後、カノンと進がいつものようにバイトから一緒に帰っていると、ふとカノンがこのようなことを口にした。

 

「そういえば先輩、一緒に遊ぶって約束してましたよね?」

 

「あぁ、そういやしたな。最近忙しくてそこまで頭回ってなかった。」

 

進の発言に少しばかりショックを受ける。まさか、忘れていたというのだろうか。するとカノンの気持ちを察したのか進が慌てて

 

「あ、いや、忘れてた訳じゃなくて、事件後の後処理っていうの?気持ちの整理やら空いてた期間の埋め合わせなんかで大変だったから、その約束を守る時間がなかったって言うか……」

 

「…………ふふっ。」

 

必死に弁明しようとする進の様子はなんとも可笑しくて、とても愛おしく感じた。事情は理解できるし、怒ってなどいないのだが、余計な気を遣わせてしまったようだ。

 

「気にしてないですよ。元より、私から提案したことですし何より私も今になって無計画なことに気がついたので。お互い様です。」

 

「そう?気にしてないんなら良いけど……」

 

不安そうに嘆く進。双方、大事な約束事な為忘れてはいなかったようだが、カノンの風邪やバイト、進の入院などで時間をとれなかったせいでなかなか遊べる機会が訪れなかった。

 

「そろそろお休みですし、時間も空いてきたんじゃないかと思ったんですが、先輩はどうですか?私は大丈夫です。」

 

「俺も今週は暇だな。母さんが暫くこのシティのホテルに泊まって観光してるのが少し気がかりだけど、大丈夫だと思う。」

 

白森唯はあの件の後、暫くこの街に残っていた。曰く、進の住んでいる街の事を、住民たちの事を知っておきたいとのことだった。それだけならば良いのだが……

 

「どうして気になるんですか?」

 

「ん?いやぁ母さんさ、すっごい心配性なんだよ。それで頭抱えたことが何度もある。」

 

実際、1人で暮らしていくと決めたときも唯に最後の最後まで荷物の確認やら1人で暮らしていく上でのポイントを口煩く言われていた。もう少しあの親バカっぷりは治してほしいと思う。

 

では、これのいったい何が不安なのか。

 

「良いお母さんじゃないですか。それの一体どこに不安が?」

 

カノンの問いに進は苦虫を噛み潰したような表情で

 

「いや、母さん結構動きの読めない人でな。時には誰も思い付かないようなことを突拍子もなく行動に移すこともあるんだよ。だから、いきなり俺の家に押し入ってきて泊まるとか言い出すんじゃないかって思ってな。」

 

と応えるのだった。完全な憶測だが、進の思い付く範囲での唯の行動がこれだったのだ。共に何年も生活してきたのだから当たっていてもおかしくはない。

 

「なるほど。でも、それと私と遊ぶことに一体どんな関係があるんですか?唯さんが遊ぶことを止めるなんてことしないと思うんですが……」

 

カノンの言うことはもっともであった。あの日の出会いからはや数日経とうとしていたが、抱き締められた時の唯から溢れ出る慈愛の心根はカノンにも痛いほど伝わってきた。そのような人物が2人の関係に水を差すような真似はしないと考えるだろう。しかし、進の懸念していることはそこではなかった。

 

「そうじゃないんだよ。確かに母さんなら許してくれるかもしれないんだが……多分、俺の家に泊まろうものなら俺の事を拘束してくる。」

 

「こ、拘束!?」

 

「あ、拘束って言っても本当に縛るって訳じゃないんだが、母さんの事だから多分俺に暫く着きっきりになっちゃうんじゃないかって思うんだよなぁ。だから、外に遊びに行くって言いにくいんだよ。あの時母さんには心配かけさせちまったし、拘束されたら多分俺もそこから身動きできなくなる自信がある。」

 

「仲、良いんですね。」

 

「ん~……俺としてはもう少し控えてほしいんだけどな。まぁ、俺も母さんに強く言い寄られたら反抗できないし自業自得ではあるんだけども。」

 

進が唯にされるがままになってしまうのには理由がある。1つは唯が人生における恩人であると言う点。もう1つは、進も久しぶりの唯との再開に密かではあるが心が踊っている点。この二つが主な原因であった。でもカノンとは遊びたい。

 

「まぁでも、可能性の話なんだし母さんが来なかったら普通に今週は遊べるぞ。」

 

「………………」

 

「?」

 

一応遊べるであろうとの旨を伝えたのだが、いくら待っても返答がなかった。カノンに目を移すと、深く考え込むような仕草でぶつぶつとなにか言っていた。

 

「カノン、どうした?」

 

「……はっ!ど、どうかしましたか!?」

 

「いや、なんか考えてるようだったから気になって。」

 

「あぁ、その事ですね。実は……」

 

ここで1拍置き、カノンは

 

「遊ぶ場所、私のお家にしようかなって考えてたんです!」

 

と胸を張って言うのだった。

 

「なるほど。所謂、お家デートってやつか。」

 

「でーと、ですか?」

 

「ん、もしかして知らないのか、デート。」

 

「でーと……何となく聞いたことがあるような。」

 

カノンは自身の記憶を頼りに、何とかそれらしき単語を見つけようと頭を働かせる。後少しでわかりそうなのだが、寸でのところで出てこなかった。

 

「う~ん……すみません、ちょっとわからないですね。」

 

ここは素直に進に教えてもらおう。正直に分からなかったと伝えると、進は少し難しい表情をしながら話を続けた。

 

「デートってのは、基本的には男女が会って遊んだりする日を決める事を指すんだ。良く使われる場面としては、カップルとか気があったりする異性同士が決めてるときかな。」

 

「へぇ~。つまり、仲の良い男女が遊ぶ日を決めたらそれはもうデートになるってことですね。」

 

「その通り。」

 

たまーに例外があったりもするが、認識的にはそれで構わないだろう。進の中でもデートは好きな女の子と一緒にするものだと思っているし、ただ仲の良い女の子と一緒に2人っきりで出掛けるなんて早々ないだろう。創作された物語などでは良く見るかもしれないが、現実で行われるデートはやはり既に男女共に気がある状態でしか発生しないのだ。……だよな?

 

「……思ったんだが。」

 

ふと脳内に疑問が過る。さほど重大なことではないとは思うのだが、気になるので訊いてみることにしよう。

 

「カノンって結構恋愛の事とかに疎いのに、よく俺の事を好きだって自覚できたよな。」

 

「うぇっ!?」

 

ウェディングから借りた本のお陰で気づくことができたというのは知っている。だが、それを差し引いて考えても不思議に思ったことがある。それは、元々カノンは恋愛の知識に関してはほぼゼロであり、恋と言うのがどんな感情になるのか、自分にはどんな変化があるのか等、これらが分からないことだらけだったのにも関わらず、気づけたと言う点だった。

 

恋は盲目、とはよく言ったものだ。この世界での生活をしている人間でさえも、恋と言うのに気づかず相手に迫ってしまっている者も少なくはない。そう、恋をしていると言う事実に自覚を持てないのだ。進が死ぬ前までのカノンはまさしくそれだった。そんなカノンがどうして気づくことができたのだろう。疑問を解消すべく、進はカノンの返答を待ったのだが

 

「…あっ、えと、そのっ…」

 

何故か林檎のように真っ赤に顔色を染め、もじもじと良い淀んでいるカノンがいた。なにか恥ずかしい理由でもあるのだろうか。首をかしげカノンを見つめているとやがて

 

「……そっ、それはっ」

 

と、未だに赤いままの頬を口許は喋るがために運動を起こした。

 

「先輩が死んでしまいそうに……いや、死んでしまった時のことでした。」

 

予想外の始まりかたに少し動揺してしまう進。だが、それと同時にこの話が己にとってどれだけ大事なことなのかを察することができた。静かに相打ちをうつ。

 

「後悔と悲しみでどうにかなってしまいそうになったのを覚えています。」

 

「…………」

 

実際のところはどうにかなってしまっていたのだが、それを仲間が何とかしてくれていた。しかし、進はその当時の状況はあまり知らされていないので、カノンに同情をするだけの感情でとどまっていた。もし自殺を試みていようものなら恐らく怒鳴ってでも止めることだろう。

 

「先輩の温もりが忘れられない。ずっと側にいて、また声を聞かせてほしい。何故あの時ああしなかったのか。そんな気持ちが永遠に頭の中をぐるぐるとしていました。」

 

どれだけ辛い思いをさせていたのか再認識させられる。だが、変わらず進は口を出すことなく話を聞いていた。

 

「そんな時、そういえばって気づいたことがあったんです。」

 

「……うん。」

 

「先輩とバイトをし始めてから1ヶ月くらいの時、私の中に変な違和感が生まれたんです。けれど、その時の私は一体それがなんなのか……全くといって良いほど分かりませんでした。」

 

この違和感に気づいたのはルピコ達とサスペンスのいる洞窟へと向かっているときだった。進の事を考えている時だけ、普段の自分では考えられないであろう感情がカノンの中で渦巻くのだ。先輩と後輩……良い関係だと思っていた。優しくしてもらっているし、楽しい時間を共有できるほどの仲にもなれた。だと言うのに、もっと知りたい、一緒にいたい、もっともっと親密な関係になりたい……そう、思ってしまっていたのだ。

 

駄目なことだと、罪を償う立場である人間がなんて事を望んでいるのだと、カノンは自身を軽蔑した。蔑んだ。だと言うのに、この感情を抑えることができなかった。

 

「けれど私は、見て見ぬふりをしてしまいました。」

 

この先へと行ってしまえば、もう罪を償うだけの健気で情けない己には戻れない。そう考えると恐ろしくて堪らなかった。だから、真剣に向き合わなかった。

 

「知識がなかったのもあります。ちゃんと考えたとしても、違和感の正体に気づくには時間が掛かってしまう。そのくらい私は無知でした。」

 

進は頷くことも、首を横に振ることもしなかった。無知なのは仕方の無いことだと言う言葉を寸でのとろこで抑える。これは、カノンの中での感情だ。誰かが決めつけれるものではない。だからといって言いたいことがないわけでもないのだが。

 

「でも、先輩がきっかけで持ったであろうその違和感の正体を知らなければ一生後悔してしまうような気がして……塞ぎ込んでしまっていた私は空いてしまった時間をその正体探しに全て費やしました。」

 

必死に考えた。何故独占したくなってしまうのか、なぜ進の事を想うとこんなにも暖かい気持ちになれるのか。何故進を見ているとこんなにも満たされるのか。道標となるものは何一つなく、全てが手探りだった。折れかけたこともあった。故人の事を考えたところでどうなるのだと、負の感情が高ぶりすぎてそう考えてしまったときもあった。その度に、その思考を取っ払うようにして嘔吐した。自分を嫌いになりかけた。

 

今思い出しても辛いものだ。たが、向き合わなければ前に進めないと夢の中で進が毎日語りかけてくれたのだ。しかし、残酷なことに進が夢の中で出てくる度にサスペンスに殺されてしまうのだ。頑張って手を伸ばすも、その伸ばした先にあったはずの右腕が毎回あの時のように切断され、進が痛みに悶え苦しむ。悪夢は日に日に酷くなるばかりだった。

 

しかし、最終的に折れることはなかった。カノンは夢に出てきた進の少しの励ましを糧に毎日を生きぬいたのだ。

 

「そして、やっとわかったんです。この違和感の正体が。それが……」

 

「恋愛感情だった、って訳か?」

 

「……はい。」

 

ゆっくりと頷くカノン。

 

「私、本気で先輩の入院生活をサポートし終わったら消えるつもりだったんですよ?なのに、先輩は全部受け入れちゃうんですもん。すごいです、本当に。」

 

「あーそうだったな。あんなに俺のアプローチはね除けてきた時は嫌われてんじゃないかってヒヤヒヤしてたぜ。」

 

明るかった雰囲気が一気に暗くなっていた。進は少しでもその場の空気を明るくしようと少しおどけて見ながらそんなことを言う。もう、終わったことなのだ。気にやむ必要など何処にもない。

 

「それは……本当にごめんなさい。」

 

「あ、謝らなくても良いって。ちょっとした冗談だから気にしなくて良いよ。ごめんな、変なこと言っちまって。」

 

人付き合いをしてこなかったかツケがここに来て回ってきてしまった。カノンの不快な重いにさせてしまったことに対して内心焦る進。

 

「なら……良かったです。」

 

「ちょっとそこ座って休憩しよう。歩きながら話すと疲れるからな。」

 

そういって道の脇にあるベンチを指差す。丁度話しも終盤に差し掛かっていそうだったのでタイミングが良かった。ベンチに座り、再び話しに戻るカノン。

 

「えっと、お話の続きなんですが……私、先輩に恋をしているって自覚した時、一体何時、どんな状況で、何処を好きになったのか考えてみたんです。」

 

遂に本題に入った。感情を自覚できた要因。これは付き合っている2人の仲を作るのに必要な部分の半分を占める。カノンが好きになった理由と進が好きになった理由が巡りめぐって2人の関係を形作っているのだ。これがなければ始まらない。

 

「私が先輩を好きな理由……それは」

 

私を頼ってくれることでした

 

「頼る?」

 

「あの時、先輩を私が慰めていたあの時……先輩はこう言ってくれました。『今後もよろしく』って。」

 

確かにそう言った記憶はあった。カノンはもっと頼ってくれて良いと言ったので素直によろしくと伝えただけだったのだが、それの一体何処が良かったのだろうか?

 

「私、初めてだったんです。自分の意思で、自分の力だけで誰かのためになれたのが。」

 

ひとりぼっちじゃ何も出来ないと思っていた。コンプレックスと言うやつだろうか。そんな感じの物も多分あっただろう。

 

「今までは1人じゃなにもできなかった。罪を償うのは当然の事だから少し違うと思うし……だから、先輩に頼られた時嬉しかった。お礼を言われた時、認められた気がして、必要とされているんだって思うとそれが堪らなく心地よかった。求められるのが本当に嬉しかった。」

 

取り柄なんて無いと思っていた。自分に出来ることは贖罪のみ。持って生まれた力もなにかを壊しかねない。実際、それを使い自分は世界をゼロにしかけた。なのに、そんな人間に頼ってくれる人がいた。暗闇から手を指し伸ばされた気がした。運命の人はこの人しか居ないと本能が叫んでいた。今回ばかりはカノンもその意見に同意したのだ。

 

「だから私は、この人と何時までも一緒に居たいって、そう思ったんです。」

 

「…………」

 

「あっ……気持ち、悪いですよね……」

 

感情が爆発し、好き勝手喋っていた事に気がつき謝るカノン。知られるのは恥ずかしいが、それ以上にもっと自身の事を進に知ってほしかった。だからだろうか、口が止まらなくなっていたのは。つくづく自分は進の事が好きなのだと痛感させられる。

 

「で、でも!それ以外にも好きなところは沢山あって!例えば私に優しいところとか遊んでくれるところとか「良いじゃねぇか」……え?」

 

「誰かを好きになる理由なんて人によっていくらでも違うんだ。むしろカノンのその気持ち、すっごい素敵だと思う。」

 

「で、でも……私が先輩の事を助けようとしたばかりに、先輩はあんなに傷ついて死にかけてしまったんですよ!?結局、先輩の役に立てたのは一度だけだったんです。折角頼ってくれたのに、私は迷惑をかけるばかりで……とても素敵な気持ちだなんて思えません……」

 

進の視線から目を反らす。なんだか気まずくなってしまい、素直に見つめられなかった。それに、険悪なムードにしてしまったし、進のフォローも無下にしてしまった。そんな自分にますます嫌気がさす。だが、良い機会だったのかもしれない。好きって気持ちだけを伝えて満足するよりも、本当の自分を知ってもらって、幻滅された方がマシだ。

 

病院で進は嫌いになんてならない、幻滅なんてしないと言ってくれたが、カノンは納得できていなかった。だって、こんなにもまだ隠していることがあったのだから。あの時は気分も高揚していて伝えそびれていたが、これこそが本当の自分なんだと言うことが出来た。きっと進も無理してフォローしているだけに過ぎない。

 

良い夢を見させてもらった。名残惜しいが、これで関係は破綻してしまうのだろう。そう考えると悲しいが、それでも友達くらいの関係ではいたいな。

 

そう思っていたのに

 

「なに言ってんだよ。迷惑だなんて一度たりとも思ったこと無いんだが。」

 

「っ!」

 

言われると思ってなかった言葉に、心臓が跳ね上がるのを感じた。まただ。たまに進が発する言葉にドキドキさせられてしまうことがある。不思議と苦しくはない。それどころか心地よさすら感じる。緊張なのか?それとも恥ずかしい?いや、そのどれとも違うような気がする。一体この感覚は……?

 

「確かに大変な思いもしたけどさ、悪いことばっかじゃなかった。お互いの想いを知れたし、何より一番大切な人と付き合えたんだぜ?それに比べたらどんなことも死ぬこと以外はかすり傷だ。」

 

あぁ、そうだった。彼はこう言う人だった。どんなに醜い自分だろうが、それを含めて愛してくれる、受け入れてくれる。何故忘れていたのだろう。私は彼のこう言うところにも惚れていたんじゃないか。最初からこの話題で己を卑下する必要などなかったのだ。

 

「…………えへっ」

 

思わず変な声が漏れる。幸い、聞こえてはいないようだ。こんなにも思ってもらえることが嬉しいなんて思わなかった。

 

(大切な……人……)

 

脳内で進の台詞が繰り返される。カノンにとってこのワードは特に刺激的だったようだ。

 

「それに頼ってくれる所が好きってことはさ、俺にいっぱい構ってくれるってことじゃねぇか。これほど嬉しいことはないぜ!」

 

「な、なるほど。」

 

確かにそうかもしれない。頼られると言うことは必然的にカノンは進に構う必要がある。相思相愛なカップルにはこれ以上無い位相性が良いかもしれない。そう考えると、何だがこの気持ちも悪くないかもしれないと思えてくる。

 

「だからさ、自身持てよ。な?俺はどんなカノンも好きだぞ。」

 

「はうっ!」

 

(!?……なに……これ。急に心がキュンって……)

 

未知の感覚に胸を抑えながら戸惑う。だが、不思議と苦しくはなかった。というより、なんかこう……先輩が一段とかっこよく見えた瞬間、謎の高揚感が……。

 

「ど、どうした!?」

 

「あ、え?えっと……」

 

「どっか痛むのか!?それともまた無理してるとか……」

 

「ち、違います!!!」

 

変に心配されるも、妙な羞恥心に見回れたカノンは頬を赤く染めながら声を上げた。

 

「そ、そう?いきなり声出すから驚いた……なんともないなら良いんだ。」

 

「いやっ、その、な、なんともないって事でもないんですが……」

 

カノンから手を引こうとする進を思わず引き留める。進ならなにか知っているのではないかと思ったのだ。さっきの違和感を話したらなにかわかるかもしれない。そんな淡い希望を抱きつつ話を続けた。

 

「さっき先輩のお話を聞いていたら、急に心がキュンってして……思わず声が出来ちゃう程取り乱してしまったんです。苦しくはなかったんですが、これって何かの病気なんでしょうか……」

 

不安げに質問するカノン。キュンとした部分が丁度心臓辺りだったこともあり、もしかしたらと思うところがあるらしい。それに対して進は少し考える素振りを見せ数分考え込んだ後、口を開いた。

 

「うーん…………わかった!多分あれだ。キュンとしたんだよ、それ。……これ自分で言うの結構はずいな。」

 

「?それは分かってますよ。そのキュンが一体何なんだろうって言っているんです。」

 

(恋愛知識がまるで無い!いや、確かにキュンって造語だし知らないのも無理は無いのか?まぁ、今までそんな感覚になれるような環境じゃ無かったんだろうな……。余りいい気分になる話題じゃないしこの事は深く考えないでおこう。)

 

改めて考えると、よくもまあ人間はここまで的確な表現を作り出せるなと感心する。説明しようと思考を張り巡らせるも、これが意外と難しい。日常に浸透している言葉って案外深く考えず使っているのだなと痛感させられた。

 

「んー……キュンって言うのは、誰かのかっこいいところとかかわいいところを見て、こう胸が高鳴るっていうの?なんかドキドキしたりすることを言うんだ。胸が締め付けられるような感じになるんだよ。」

 

言ってて思ったのだが、これ結構ナルシストなんじゃなかろうか。もはや恥ずかしいを通り越して痛いような気がする。ただ、思い付く限りの事がこれくらいしか無かったのだ。だってキュンなんて言葉久しぶりに聞いたし……

 

「かっこいい所……」

 

思い当たる節があるかどうか、先程の出来事を思い返してみる。

 

 

どうしよう、かっこいいところしかない

 

 

「あ、あれ?うーん……うーん?」

 

どれがキュンとした原因なのかさっぱり分からない。仕草?声?それとも全部?一向に進展の兆しが見えず、悩み込んでしまうカノン。

 

「どうしよう……」

 

「どうした?まだどっか分からないところがある?」

 

悩んでいるようだったので声をかける。この世界に慣れ慣れないうちはカノンを助けたい。出来ることならなんでもしようと思っていた。進はさぁ、こい!と心の中で思いながらカノンの返答を待つ。だが、返ってきたのは予想外の言葉だった。

 

「全部かっこよくてどれがどれだか分かりません……」

 

「ん"ふっ!?」

 

「先輩!?」

 

「や、やられた……」

 

次は進が声を上げた。無理もないだろう。相談を受けようとしていたらいきなり不可避のカウンターが飛んできたのだ。デーモンハンドもビックリの性能である。

 

(そうだった……!カノンって結構天然なんだった!付き合い始めて間もないと言うのにこれじゃ身が持たない!)

 

「何かあったんですか!?まさかっ、まだ何処か痛むんじゃ……!」

 

「い、いやこれは違くて……」

 

「本当ですか?良かった~……」

 

ほっと胸を撫で下ろすカノン。恐らく、退院したばかりだから極端に心配してしまったのだろう。変に不安にさせてしまい申し訳なく思う進。だが、それと同時にここまで心配してくれていると言う事実に嬉しく思い、ここまで自分に本気になってくれるカノンが兎に角可愛かった。

 

(って、なんかデジャブ感じるな……さっきもこの下りやったような……ま、いっか。)

 

「でも、どうしていきなり?」

 

「あー……」

 

カノンの気持ちが分かったかもしれない。キュンとした、なんて恥ずかしくて言えたもんじゃない。よく俺に言えたな。

 

「あっ、こ、応え辛かったら応えなくても大丈夫です!」

 

気を遣ってくれるカノン。だが、カノンが応えたと言うのに俺が応えないなんて不平等だ。俺にも意地ってものがある。やってやろうじゃないか。

 

「いや、気にしなくて良い。俺がさっき声を上げたのはな……カノンの言葉にキュンとしたからなんだ。」

 

「えっ?」

 

思っても見なかった返答にぽかんとしているカノン。

 

「わ、私何か言いましたっけ……?」

 

そう言って困惑するカノンに進は思わず笑ってしまった。

 

「案外、どっちも意識せずにそう言うとこ言ってるんだな。」

 

「そう、なんですかね?」

 

「あぁ。お互いがお互いの事を強く想いあってるって事だ。」

 

「なるほど、それなら納得です!先輩への想いだったら唯さんにだって負けません!」

 

「っ!そう言うところだよ全く……

 

結構本気で心臓持つか心配になってきた。慣れる気がしない。いつか死ぬんじゃなかろうか。本人には自覚ないようだし。……まぁ嬉しいんだけど。

 

「あれ?そういえば俺たち何話してたんだっけ?」

 

本題からズレ過ぎて一体何を目的にベンチに座って会話をしていたのかすっかり忘れてしまった。

 

「えっ?あれですよあれ。えーっと……こ、これです!!」

 

「……分かんないんだな。」

 

「……てへっ☆」

 

えぇ!?ふっるいリアクション!!だと言うのに正統に可愛い!!若干恥じらいを感じ取れるのもVERYGOOD!!

 

「てへっじゃねぇよ!ってか誰からそれ教わったんだ!?……けど、可愛いから許す!!!!」

 

「か、かわっ!?……ありがとうウェディング……!後で何かご褒美あげましょうか……

 

「聞こえてるぞ!というかウェディングの入れ知恵だったのかよ!カノンも何で簡単に実行に移しちゃうんだ!?」

 

「だ、だって……分からないことがあったらこうして誤魔化せって言われて……それに、先輩が可愛いって褒めてくれるって。」

 

(うわー……絶対やらせたいだけだこれ……俺が最初の被害者で良かった……)

 

進のウェディングへのイメージはこの瞬間、冷静でクールビューティーなお姉さんからカノン大好きお姉さんへとクラスチェンジした。

 

「やっぱり駄目ですよね……ちゃんと思い出さなきゃ。私からお話したのに……」

 

しゅんとしてしまうカノン。単純にカノンがあんなことをするから驚いただけであって怒ってはいないので焦る進。

 

「そ、それは良いんだよ!思い出せなくても問題ないって!あーっと……そうだ!恋愛だ!何でカノンは恋心を自覚できたのって話だった気がする!」

 

脳をフル回転させ、物の数秒で本題を思い出した。よくやった俺と自身を褒める進。これでまたカノンが曇ることはなくなった。

 

「え、あ……そ、そうでしたね。」

 

物凄い剣幕で言葉を並べるのでカノンも若干引いていた。そんなに焦っていたのだろうか。今になってはその答えも分からない。このままでは一生話が纏まらない。早い内に今回の総括をしておこう。

 

「と、兎に角!カノンのその俺を好きになった理由はすっごく素敵なものだと思うし、俺もめちゃめちゃ嬉しかった!って話だった訳だ。」

 

「あの……」

 

「うん?まだ何かあるの?」

 

どうしたのだろう。まとめ方に何か不満でもあるのだろうか。訝しげな表情で見つめる。だか、その心配も杞憂に終わった。

 

「よ、よければ私の何処にキュンっとしたのか教えてほしくて……」

 

申し訳なさそうにお願いするカノン。それに対し進は

 

「俺の事を全部かっこいいって言ってくれたこと。」

 

と即答するのだった。

 

進の回答に首をかしげるカノン。まだ何か分からないことがあるのだろうか。これ以上はもう答えられないかもしれない。そんな不安を抱きながらカノンの反応を伺う。

 

「それの何処にキュンと感じた要素があるのかしら……」

 

ボソッと呟かれたそれを進は聞き逃さなかった。このままでは永久にこの会話が終わらない。カノンのためにも早く答えを考えてあげなければ。そして、この話題を終結させる結論を急ぐため考えを張り巡らせはじめる進。

 

(……つっても、ここまで来たらもう言えることは1つしかないよなー。)

 

進の応えられる範囲での結論。それは人それぞれだ、というものだった。というより、キュンとする理由なんて人の数だけあるといっても過言ではないのだ。カノンはカノンなりにこの世界への理解を示そうとひたむきに頑張ってくれているのだろうが、ここまで無理する必要はない。ならば、もう言うべき事は決まっているはずだ。

 

「キュンとする理由なんて人によって違うんだ。分からないんだったらそうなんだー、位の気持ちで考えた方がいい。」

 

「で、でも、私先輩の事をもっと知りたいんです!だって恋人ですから!」

 

おっと、これも中々クるものがあるな。表情は表に出さないがあと一歩のところで萌死にするかもしれん。健気すぎる……

 

心のなかでは既に限界化寸前の進であった

 

「そこまでグイグイこられても……」

 

「あっ……」

 

カノンの勢いに気圧される。何がそこまで彼女を必死にさせるのだろうか。

 

(俺の事を知りたい……恋人だから……なんで?)

 

まて、恋人としての立場で考えてみよう。カノンは俺の事を知ってどうしたいんだ?知れると嬉しい?それとも俺の事なら全て知っておきたいだけ?そうだとしたら結構愛が重いな……。あっ、もしかして案外恥ずかしがってたりして。俺ならお前のここがキュンとする~なんて言われたら羞恥心で死ぬ。なるほど、これが必死になってる理由なのか!納得納得。

 

などと考えていると、カノンは意を決したかのような表情で話を続けた。

 

「ご、ごめんなさい!そのっ、私っ!………先輩が思ってるキュンとする私が知りたくて……そしたらもっと喜んでくれて、もっと距離が近くなるんじゃないかって思うとつい……」

 

……さっきの思考タイムほど無駄な時間は無いだろう。元より、乙女心など男に分かるわけ無かった。

 

「……マジ?」

 

「ほ、ほんとう……です……」

 

顔を真っ赤にしながらそう応えるカノン。そりゃ恥ずかしいに決まっている。だって、理由を訳すと『下心があったからあなたの事を知りたかったんです!』なんて言っているようなものだから。いや、これは流石に曲解しすぎか。兎に角カノン、それは流石に……

 

「はぁ……やっぱり私に恋愛なんて向いてな「お前、それは反則だって」……へ?」

 

どうやらまだ自身の価値を理解しきれていないらしい。これは"教えて"あげないとな

 

その瞬間、進の中の何かが決壊した!

 

「ちょっとは自分の可愛さを自覚しろ。」

 

「あ、え?じ、自覚?」

 

「そうだ。カノン、はっきり言ってお前は容姿、声、仕草からして全てがパーフェクトだ!」

 

「そ、そんなっ、いきなりどうしたんですか!?私、ルピコみたいに愛嬌ないし、エレナみたいにおしとやかって訳でもないんですよ!?」

 

突然ベタ褒めされるものだから混乱してしまうカノン。いきなり全部が完璧と言われても、どうしても他の女の子達と比べると自分は見劣りしてしまうと思っていた。

 

「何言ってんだ!俺から見たカノンは他の誰よりも可愛いし綺麗だし、何より優しい!てか全部いい!!全部好き!ちょっと控えめな性格なところもいいし、めちゃくちゃ純粋で基本的に誰かの言うことを信じちゃうのもすっごく可愛い!」

 

「え、えと、そろそろ恥ずかしいからやめ「それに!」まだ続くの……」

 

カノンの言葉を遮る進。カノンはまだ続くのかと思わず嘆いた。羞恥心で頭がパンク寸前である。

 

「普段はおっとりしてて可愛らしいのにすごい頼りになるし、本気で俺を助けようとしてくれたときはマジでかっこいいしで……欠点が見つからねぇ!カノン最高!」

 

「あうぅぅ……!」

 

真っ赤なんて表現では収まりきらないほどに顔を赤く染め、両手で顔を覆うカノン。恥ずかしくなったときについ顔を手で抑えてしまうあれだ。いくら鈍感なカノンと言えどこの褒め殺しには耐えられなかったらしい。計画通りだ。

 

「カノンは自然体でいてくれたら良いんだ。無理に俺の求めるカノン像を作ろうとしなくていい。カノンさえいてくれればあとはなんだって良いんだ。好きな理由が少し特殊だろうと、恋愛に対して知識がなかろうと、俺はそれ含めて大好きだ。」

 

「先輩……」

 

進に良い思いをしてほしいから、付き合うことになってからは彼女としてのあり方を模索し続けた。だが、見つけることはなかった。いや、探そうとした時点で見つかることはなかったのかもしれない。結局のところ、進が好きだったカノンは普段通りの何の変哲もないカノンそのものだったのだ。

 

ならば、もう余計なことを考えるのはよそう。思っていた以上に自分は愛されていたし、自分は進のなかではかなりイけているほうだというのだ。あそこまで言われて流石に自身を卑下することは出来ない。これ以上ぐだぐだ言っていると進に病院での喧嘩の時みたいにまた怒られそうだ。

 

「ありがとうございます。私、自信持てました。」

 

「なら良かった。これからも長いんだ、そういう問題はカノンに限らず、俺の事も含めて気になることがあったら2人で何とかしていこう!」

 

「はい!」

 

ぱぁっと表情が明るくなり、元気良く返事をするカノン。どうやら、悩み事は吹っ切れたらしい。

 

『心配事ごとぶっとばしてやる!!』

 

過去の自身の発言を思い出す。

 

役目、果たせてるよな。

 

カノンに確認するなどと言う野暮なことはしない。何故ならば、進は目標の1つに、これを意識せずに出来るようになることがあるからだ。今回は少し意識してしまったが、やりたくてやっているんだし、義務感から動いているわけではない。それでも、いつかは自然に出来たら良いなと思う進であった。

 

「あー!随分話し込んじゃったな。」

 

「先輩となら幾らでもお話しできそうです。」

 

またしても進が喜ぶようなことを口にするカノン。だが、流石にこれくらいは耐えられた。少しだけ慣れが来たのかもしれない。

 

「はぁ……さみぃさみぃ。そろそろ帰るかな。」

 

10月下旬のこの時期。寒さが目立ちはじめるこの季節は、寒いのが苦手な者にとっては既に少し辛かったりする。

 

進は冷えきった両手を暖めるように擦りながら、帰るためベンチから立とうとしていた。

 

「あっ、先輩顔に何か付いてますよ。」

 

「えっ、マジ?」

 

「はい。口元から少し右斜め下辺りに埃のようなものが。」

 

カノンの発言に一旦立つのをやめ、その付き物を取ろうとカノンに言われた場所を右手で触る。

 

「もう少し右……あっ、少しもどって下にいって……も~う、全然違います!」

 

「わ、悪い。埃だからか触れられてる感覚が全くなくてな……」

 

「じゃあ、私が取りましょうか?」

 

「あぁ、そうしてもらうと助かる。」

 

カノンの申し出を素直に受けとる進。恐らく、埃と言ってもあの塊のような感じではなくて、糸みたいに細いタイプのやつなのだろう。

 

進から許可をもらったので、手の届く距離になるまで近づくカノン。

 

(おお、結構近いな。やっぱ、改めて見てもカノンって可愛いよなぁ。それに、可愛いだけじゃなくて美しさも秘めてる。こりゃ成長したら化けるぞ。)

 

そんな感じで見とれていると、埃を取ろうとしていたカノンが進の顎下に手を添えた。触られた事の無い部分だったので少しドキッとしてしまうも、この程度ではもはや動揺することすら無かった。

 

だからだろう。油断しきっていたからこそ、カノンの一瞬の行為に反応しきれなかったのは。

 

「先輩……失礼しますっ……!」

 

「えっ、ど、どうし…んっ!?」

 

瞬間、進の唇に既視感のある感覚が広がった。何が起きたのか理解するのに進は少々の時間を要した。

 

(こ、れは……!)

 

約2秒、思考を纏まらせるのに掛かった時間はこれ程だった。なぜここまで時間が掛かってしまったのか。それは

 

 

カノンが進と唇を重ねてしまっている事が原因だったのだ

 

 

動揺しないなどと余裕ぶっていた頃が懐かしい。現在の進の心拍数は明らかに上昇していた。恥ずかしいのと幸せなのとで頭が爆発しそうだ。

 

(……あれ?)

 

良く見ると、カノンも顔を真っ赤にしていた。唇から微かな震えも伝わってくる。きっと、相当な勇気を持ってこんなことをしてくれたのだろう。そう思うと恥ずかしさより、愛おしさが強くなってくる。

 

だって、こんなにも必死になって慣れないことに挑戦して、その度にドキドキしてくれて、それなのにこんなにも意表を突いたことをして自分を喜ばせてくれる。ここまで純粋な子も中々珍しい。改めてカノンと付き合えて良かったと思えた。

 

口づけを交わしてから約四秒、カノンは進から顔を離した。時間としてはとても短いと言うのに、体感では何時間も過ぎたように感じた。

 

「…………ふぅ。」

 

息を吐くカノン。顔が真っ赤だと言うのに、何故か平然を装いながら腰を上げた。そして

 

「私だって、先輩の事が大好きで……それに、かっこいいって思ってますから!えへへ……これは病院の時のお返し、です!」

 

と手を後ろで組み満面の笑みを浮かべながらそう言うのだった。

 

その時のカノンは進から見て夕暮れ時の背景と重なり、進の語彙力では表しきれないほど美しく、幻想的に見えたという。

 

「……そうか。」

 

そっぽを向きながら最低限の返事をする。これ以上は言葉がでなかった。そうしてカノンにつられるようにして進も立ち上がる。

 

帰路へ着こうと歩を進めようとしたその時。

 

「っ!」

 

進の右手にカノンの左手が繋がれた。

 

「寒いのなら、こうしていましょう!」

 

「……あぁ。」

 

こうして、夕日のように頬を赤く染めた2人は歩きだすのだった。









デュエプレ小話:とある日のカノン達

「ウェディング……本当に言ってるの?」

「はい、本気です。」

「でも……ちょっと恥ずかしいのだわ。」

「何を言うのですか。これも立派な社会勉強。もしもの事があってからでは遅いのですよ。」

「でも……」

「心配しないでください。誰もカノンの事を奇っ怪な物を見るような目で見たりしませんから。」

「うーん……わ、わかった!やってみるのだわ!」

「その意気です。では、もう一度見本を見せるのでそれを真似してください。」

「えぇ、任せて!」

「では…………てへっ☆」

「てっ……てへっ!」

「駄目です!まだ恥じらいが見られます。此では誤魔化しきれません!」

「う、うぅ……やっぱり恥ずかしいのだわ……」

「カノン、恥は捨てなさい。でなければ白守進に可愛いと言ってもらえませんよ。」

「っ!!!そ、それは駄目!」

「では……もう一度してみてください。合格かどうかは、私が判断しますので。」

「わ、わかったのだわ。よし……!」

数秒の間

「こほん…………てへっ☆」

「っ!!!!!!!」

「ど、どう、かしら?」

「感、無量です……此ならば誰であろうと知らないことはシラを切れる事は確実です。仕事中は生かしてください。それと、ついでに白守進には毎日見せても良いでしょう。」

「やったぁ!これで先輩に可愛いって言ってもらえる……!それにお仕事にも役に立てるのだわ!ありがとう、ウェディング!」

「お役に立てたのなら何よりです。ふふっこれでまたカノンの素晴らしさを世に知らしめることが……」

「?何か言った?」

「いえ、何も言ってません。」

「そう?ふふっ、明日が楽しみだなぁ~♪」





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