「ふんふふんふふふふん♪」
とある人物の家の中で誰かの鼻唄が響く。相当にご機嫌な様子だった。鼻唄の主の正体、それは
「カノン、今日はやけに機嫌が良いですね。何かあったのですか?」
「あっ、おはよう!ウェディング!そうなの、今日は先輩が私のお家に遊びに来てくれる日なの。それが待ちきれなくって♪」
無垢の守護者カノンであった
寝室から出てきたウェディングは聞こえてきた鼻唄に釣られ、リビングへと真っ先に向かっていたのだ。まだ6時だと言うのに、すでに目を覚ましているカノンに疑問を抱くも、カノンの話を聞きウェディングは納得した。
「話には聞いていましたが……一体何をするのですか?外で遊んだ方が色々なものがありますし。」
カノン程とはいかないものの、ウェディングもまだまだこの世界への理解は浅い。知らないことの方が多いため、ウェディングはこのなにもないマンションの一室で何ができるのだろうかと模索していた。結局、カノンのしたいことなど皆目検討もつくはずがなく、ウェディングはカノンに質問することになった。
「先輩が、この世界の文化を沢山教えてくれるんですって!外でしかできないこともあるけど、家の中でしかできないこともあるから、それをしてくれるみたい。」
このような計画になった経緯として、カノンが家の中でしか何をして遊ぶのかを考えていなかったと進に伝えた事から始まる。困り果てていた様子を見ていた進が自ら考えてくれて、カノンのためにこの案を進言してくれたのだ。
「なるほど。確かに、この世界に来てからまだ日が浅いカノンに教えるに当たってこれほどまでに適した者は白守進以外にいませんね。」
「でしょう!?私、もう楽しみで楽しみで……!夜も中々寝付けなかったのだわ!」
興奮気味に応えるカノン。別に自信満々に言えることではないのだが、そんなことに気づかない様子を見るに自身のこと等気にする暇がないくらいに心を踊らせていたのだろう。
非常に微笑ましいとは思う。だが、これはこれ、それはそれである。少しばかり看過できない発言にウェディングはピクッと肩を震わせ、真剣な眼差しをカノンに向けながらこんなことを口にした。
「はしゃぐのはいいですが、きちんと睡眠は取ってください。何かあってからでは遅いのです。」
「そ、そうね……ごめんなさい。でも、始めての感覚だったのだわ。ワクワクして、大切な人と遊ぶことになるだけで中々眠れなくなってしまうなんて。それに……今日の事を考えるだけその分何だか幸せな気持ちになってきたの。心が何だかぽかぽかして、とても心地よかったのだわ。」
「ふっ……そうですか。良かったですね、カノン。」
カノンの浮かれっぷりに何故かウェディングも思わず笑みがこぼれる。基本無表情である彼女が表情を変えるなど珍しいにもほどがある。カノンは少し驚きながらも口を開いた。
「あっ、ウェディングさっき笑ったでしょう?」
「え……?」
「あら?もしかして気づいてないのかしら。ウェディング、さっき私の事を見て微笑んでいたのよ。」
「なっ……!?そ、それはっ……そのっ……」
カノンの指摘に柄にもなくあたふたするウェディング。最近思っていたのだが、もしかしてウェディングって結構感受性が豊かなのではないだろうか。カノンが傷つく時は勿論、仲間である人物が傷ついてもかなり起こっているようだったし、物事に対するリアクションも中々にしている気がする。
本人は未だに感情についての理解が乏しく、無表情の時の方が多い。だが、たまにウェディングはそれが崩れる時もあるのだ。ウェディングはそれについて少しばかり羞恥心を覚えているようで、なるべく感情を表に出さないよう努力しているらしい。因みに、なぜ羞恥心があるのかはウェディングには良く分かっていない。何となくだが、あのポーカーフェイスでいるときのイメージを崩したく無かったりする気がしなくもない。
「恥ずかしがることなんてないわ。ウェディング、ここ最近ずっと私の面倒を見てくれていたのだもの。そのお陰で元気も戻って……きっと苦労をかけたわよね。」
「!…っ何を言っているのですか!?私は当然の事をしたまでであり、それを一度も苦と感じたこともありません!」
必死に弁明するウェディング。まさかカノンに気を遣わせてしまっているとは思わなかった。てっきり喜んで面倒を見られているのだと思っていたのだが……兎に角、ずっとこんな感じに思われていたら遣えるものとして今後色々気まずくなるだろう。どうにかして自分は平気だとの旨を伝えなければならない。
「ウェディングはそう思っているのかもしれないけれど、毎回私だけが良くしてもらっているのよ?やっぱり申し訳なく思っちゃうのだわ。」
「気にする必要等ないです!私はあの時、一生カノンの事を守ると誓いました。これは好きでやっているのであって、カノンが後ろめたさを感じる必要はないのですよ!?」
「……ふふっ、やっぱりウェディングは優しいのね。」
頑張ってなんとか言葉を絞り出そうとするウェディング。その様子が何だか可笑しくて、柄にもなく焦っているウェディングがちょっとだけかわいくて、思わず笑ってしまった。
「優、しい……?」
「えぇ、ウェディングはとってもと~~っても優しいのだわ!」
「私が……」
優しいなんて、一度も言われたことはなかった。ゼニスとしての使命を淡々とこなすだけの人生に、赤色のない景色を見ない日はない。クリーチャーとしての感覚で言うのであれば、何者かを狩ると言う行為自体にそこまでの罪としての意識はない。猟奇的で孤高に生きるクリーチャーもいれば、文明を築き共に助け合って生きていくクリーチャーもいるのだ。
だが、そのなかでも異質な存在だったのがゼニスなのである。クリーチャー世界どころか、別次元の世界の者たちすら巻き込み世界をゼロへと染め上げようとしていたのだ。幾らクリーチャーの世界が殺伐としていようが、倫理観が欠けていようが許されることなんてなかった。そして、ウェディングも例外でなくゼニスの1人で、ゼロ計画を進行していた……つまりウェディングも誰かしらに恨まれる対象となってしまうのは必然的だった。優しいなんて言葉はウェディングには勿体ない。
「その、非常に言いにくいのですが……余り私は褒められた存在ではないです。変に気を遣って言っているのであればその必要はないので止めてもらえると助かります。」
カノンの気遣いを無碍にしてしまっている事に罪悪感を抱く。だが、これだけは譲れなかった。ウェディングを肯定してしまうと、カノンの名に傷がつく。ウェディングは只、カノンの事を守れたらそれで良いのだ。それ以上に一体何を望むと言うのだ。優しいなんて言葉、ウェディングの手には有り余ってしまう。
(そう……私はゼニス。カノンの様な人間とは訳が違う。カノンは皆に許され、いつか罪を償えるでしょうが……私だけは永遠に償いきれない罪を犯している。私が褒められることなどあってはならないのです。)
別に思うところがない訳じゃない。でも、常に無感情であったウェディングにとってこんなことなど些細な出来事に過ぎなかった。今更許されたいなんて思っていないし、罪から解放されたいとも思わない。今は只この安息の時が続いてほしいと願うだけである。
「ウェディング……………ねぇ、ちょっと良いかしら?」
「?……どうかしましたか?」
「私の前にきてほしいのだわ。」
「え、えぇ。分かりました。」
突然、カノンの前に立ってほしいとお願いされるウェディング。一体何をするのかと疑問に思いながらも言われた通りにカノンの目の前に立つ。すると、ソファに座っていたカノンが立ち上がり
「私の顔の位置まで屈んでくれない?」
と指示を出した。
「、?」
今だ疑問の尽きない中、淡々と言われたことをこなす。ある程度まで腰を落とすと、ウェディングとカノンの目線が合った。じっと見つめ合う二人。無言の時間が続く。しかし、次の瞬間
「……えいっ!」
とカノンの声がリビングに響いた。その声と同時に
「いたっ」
ウェディングが何かの痛みに襲われ、声を漏らした。痛みのする体の部位に手を添える。その部位とは
「何故、このようなことを……?」
おでこであった。
そう、ウェディングはカノンにデコピンを食らわされたのだ。カノンの事を恨むとかはしないし、今後もすることはない。と言うより全然痛いって程でもない。ウェディングは兎に角、『何故』が頭から離れなかったのだ。嫌われた?怒らせてしまった?様々な憶測が脳内を飛び交う。どれもこれもネガティブなもので、考えるだけで憂鬱になる。
でも、考えたって仕方ないのだ。真意はカノンから聞き出さなければわからない。だからウェディングは呆然としながらカノンが話を始めるのを待つしかない。
「だって……」
カノンの口が開く。その瞬間、待っていた筈なのにウェディングの心は酷く締め付けられた。ウェディングこの時、始めての感覚に陥った。ゼニスだと言うのに彼女は
酷く、緊張していたのである。
戦っている訳じゃないのに、思わず身構える。そして遂に、カノンは次の言葉を紡ぎ出した。
「貴女が少しだけ、ほんの少しだけ間違っていたから。」
「っ!やはり、私は……」
カノンに迷惑をかけてしまった。そう言おうとして
「違うわ。迷惑をかけたとか、そういうことではないの。」
先を見据えたかのように遮った。
「では、私は何を間違っていたのでしょう……?」
「間違ってはいるけど、そこまで深刻に考える必要もないのだわ。率直に言うけれど……ウェディングは少し自信がないの!」
「……はい?」
自信?
思っていたよりも軽い言葉にすっとんきょうな声を上げる。
「まだいまいち分かっていないかもしれないけど、貴女は自己肯定感が低いのよ!」
「???」
自己肯定感のどこがこの話と関係すると言うのだ。全くもって理解できない内容に頭を抱える。
「低いからこそ、褒めるべき存在じゃないとか言ってしまうの。でもね、貴女が思っている以上に皆はウェディングの事を優しいって思っているのよ。自分の事を低く見てしまう気持ちはすごく分かるわ。でも、それだと誰かに感謝されたり褒められたりしても素直にその気持ちを受け取れないのだわ。」
「っ……」
「それって、どっちも余り良い気持ちにならないと思わない?だから、自分なんて……っていう考え方は止めた方がいいと思うの。」
「そういう、ことですか……」
やっと今理解した。カノンは、もっと素直に生きろと、もっと単純になれと、そう言っているのだ。
今までのウェディングは何をするにしても深く物事を捉えて動いていた。決して悪いことではない。考えることで道はいくつにも増え、最善の行動を見つけ出すことができるのだから。だが、この深く考えすぎる癖が裏目に出てしまったのだ。自分はこんなことをしたから、許されざる事をしたから、一生許されることはないのだと。価値なんてないのだと思い、それを信じて疑わなかった。何故なら、深く考えた結果がこれだったのたから。
それ故にウェディングは見失っていたのだ……別の道を。1つの結論に勝手にたどり着いて勝手に納得して、そこから一切動こうとしなかった。だからだろう。思考が固定化されてしまい、褒められようが何を言われようが謙遜してしまうようになったのは。
しかし、自信を持てればそれらは全て崩れることとなる。だからカノンは自信を持てと、そう言っているのだ。
「それに、罪はきっと償えるわ。」
「そうでしょうか……」
「えぇ。第一、貴女が一生許されないのなら私も許されないでしょうし、今頃こんなに良い生活はできていないわ。」
「しかし……」
「もう!」
しびれを切らしたのかカノンが声を上げる。
「自信を持ってって言ったわよね?ウェディングは償えないと思うんじゃなくて、償おうって思ったほうが良いのだわ!大丈夫、私達ならなんでもできるわ!」
「わ、分かりました。カノンがそういうのであれば……そうすることにしましょう。自信を持つ……出来るだけやってみようと思います。」
遂に、カノンの勢いに負けウェディングは渋々ではあるが意見を飲んだ。
「それでこそウェディングなのだわ!」
「それでこそ……?私は貴女から見て自信を持っている様に見えていたのですか?」
「うん。だって、誰かと戦う時のウェディングっていつも冷静で、たまにトゲのあることを言ってたりするでしょ?それに、見下しているようにも見えたのだわ。」
「あ、あれは威嚇のようなものなのです!戦場では常に余裕を持ち、殺気や威圧感で先ずは威嚇をします。その後、相手のペースを乱せる言葉をぶつけたりしながら戦うのです。少しでも相手に気を許せばその時点で敗けですから。」
「そうだったのね。私、てっきりウェディングは何でもプラス思考捉えるものだと思っていたわ。だからさっきウェディングがネガティブになっているのを見て内心ちょっと驚いちゃった。」
「うぐっ……わ、私だって悩むときは悩みますし、それなりにマイナスな事を考えたりもします。」
普段の振る舞いが思わぬ誤解を招いてしまっていたようだ。そう思われてもしょうがないし何も言うことはないのだが、カノンと一緒に長くやってきたと言うのに自身の内面的な部分が知られていなかった事実に多少のショックを受ける。だが、なにも語らなかった自分も自分だ。しょうがないことだと割りきろう。
「しかし、自信が大事だと言うのは分かりましたが、何故私にあのような打撃を与えたのですか?」
ウェディングの事は解決したので一旦おいておこう。次なる疑問は至極当然のものであった。考えなくとも、あのデコピンの必要性が全くと言って良いほど感じられない。
「んーっとね……だって、ウェディングって意固地な所があるじゃない?少しでも別の事に意識を向けさせれば考え方も柔らかくなるかなって思って……嫌な思いをさせてしまったわよね、ごめんなさい。」
「そ、そうだったのですか。ならばカノンが謝る必要等ありません。カノンに気を遣わせてしまった私に非がありますから。」
まさか謝られるとは思ってなかった。デコピンについては別に怒っているわけではなく、単純に疑問に思っただけだ。やはり、ウェディングが認めただけはある。こんなにも他人の事を思いやれる子は早々いないだろう。
「ほら、そういうところ。やっぱりウェディングは優しいのだわ。」
「っ!そう、ですかね。」
「えぇ。何度でも言うわ。ウェディングはすっごく優しいって!」
「……ふふっ。確かに、悪い気はしませんね。」
こうして、朝からひと悶着あったものの無事問題は解決されたのであった。
「っとそうでした。今日は白守進とここで遊ぶのでしたね。私は邪魔だと思いますので、今日は大人しくカードにでもなっておきましょうか。」
やっと2人っきりで遊べるようになったのだ。それも、付き合い始めてから初めて遊ぶので、尚更ウェディングは邪魔になる。気を遣ってウェディングはその場から引こうとしていた。しかし
「え、何を言っているの?ウェディングも一緒よ?」
「!?!?!?」
衝撃的な発言に思考が一瞬フリーズする。カノンはあっけらかんとした表情で話を続けた。
「最初は2人で遊ぼうって話だったのだけど、もう私の秘密も全部知られちゃったし、遊ぶのなら数は多い方が良いでしょう?それに、ウェディングも先輩から学べるところがあると思うし一石二鳥なのだわ!」
「で、ですが……良いのですか?折角2人だけの時間がとれたと言うのに……」
無理をしているのではないか、また変に気を遣ってしまっているのではないか。そう思ってしまうくらいには自分を誘うメリットがないように感じていた。
「大丈夫、貴女が思っているよりも2人で居られる時間って結構あるの。それに私のお家で遊ぶ機会は中々訪れないわ。なら、折角なんだしウェディングとの思いでも作りたいでしょう?」
「カノン……!」
「だから今日はとっても楽しみにしてたの!でも、ウェディングが遊びたくないって言うのなら仕方ないわ。決めるのは貴女自身よ。どうしましょう?」
いたずらに笑みを浮かべながらそういってくるカノンにウェディングは頭を抱えた。断れないことを分かって言っている。察するのにはそう時間は掛からなかった。
「はぁ……断る方が無理な話ですね。カノンが言うのであれば私はそれに従うだけです。」
「ちーがーう。従うんじゃなくて、ウェディング自身が決めるの。貴女はどうなの?私達と遊びたいと思ってるの?」
「むぅ……」
全てを見抜かれている。何だか怖くなってきた。直接一緒に遊びたいと言うのが何だか気恥ずかしくて遠回しに事を伝えたのだが、はっきりとものを言わなければ納得してくれないようだ。
「一度しか言いませんからね。」
「分かったのだわ。」
「正直に言うと…………遊びたいなとは……おもい、ます……」
体が熱くなるのを感じる。初めての感覚だった。理由を考えたところで無意味なのは火を見るよりも明らかなので、追求はしないでおこう。
「っ!へぇ~そーなんだー」
「も、もう良いでしょう!?この話は止めにしませんか!?」
ニヤニヤしながらウェディングの事を見つめるカノン。その視線に耐えられなくなったのか、強引に話題を切り上げようとした。
「いいえ、駄目。悪いけれど、後1、2分は話させて。」
「なっ…………もう話すことなど無いでしょう……?」
カノンの発言に絶句するウェディング。やけに真剣な眼差しで見つめてくるものだから、ウェディングも無視するにできなかった。もしかしたら、何か重要なことではないのかと勘ぐってしまったからである。
「今のウェディング…………」
一瞬、間が空く。カノンの言葉に身構えるウェディング。そして
「すごく……可愛らしかったのだわ。」
「……は?」
と飽くまでも真面目に、そう伝えるのであった。
「か、かわっ……?」
「私、初めて見た。あんなに顔を真っ赤にしているウェディング。」
「っ!?な、何を言って……!」
「いつもはクールなのに、ふとした拍子にあんなの見せられたら……なんかこう、グっとキたわ……!!」
恥ずかしい。兎に角恥ずかしい。今のウェディングの中を支配している感情はこれだった。今だかつて無い位の感情の起伏にウェディングは限界寸前であった。脳が混乱してくる。止めてほしいと思っているのに、心のどこかでまたその『可愛い』という言葉を求めている自分がいる。一体自分はどうなってしまったのだろうか。
「や、やめ……やめてください……」
「んーと……確かウェディングみたいな人の事を指す言葉が有ったような……先輩が言っていたわよね。うーん……」
なんということでしょう。まさか今のウェディングにピッタリの言葉があるというのではありませんか。絶対に録でもない名称だということだけはわかる。恥ずかしい思いをしてしまう現状に名をつける人間のセンスを見てやろうではないか。
「あっ、そうだ!確か、『ギャップ萌え』って名前だった筈よ!」
「!?なん、ですって……!?」
「あら?どうかしたの?」
「ギャップに萌え……つ、つまりはそういう……」
いまここに、後悔の念を納めようと思う。ウェディングは……初めて人間の言葉を学んでしまって後悔した。萌えなんてワード、知らない人は知らない言葉だ。だが、最近までカノンのために恋愛小説を読んでいたせいでこの前偶然にも理解してしまっていたのだ。
「あーっ、ウェディングもしかして意味分かっちゃった?」
「い、いえっ!全く!全くと言って良いほど分かりません!」
まずい、イメージが崩れる!このままではカノンが自分に対して持ち合わせているウェディング像が完全に別のものへと置き換わってしまう。なんとしてでも阻止せねばらならい。ウェディングは飽くまでもシラを切るつもりでいた。
「本当に?」
「えぇ、本当です!」
「うーん……意味、訊いてみようと思ったんだけどなぁ。言葉は思い出せたけど詳しい意味までは曖昧なままなのよね。もしかしたら、使用用途を間違っている可能性もあるかもしれないのだわ。」
「き、訊かれても答えれませんからね!第一私がそのような事にに興味が無いのですから知らなくて当然でしょう?」
ウェディングは上手いことカノンの意識をギャップ萌えから遠ざけようとしていた。
「そう?ウェディングって最近本を良く読んでいたから知ってるのかなって。」
「そうでしたか。お役に立てず申し訳ありません。」
澄ました顔で言っているが、内心ガッツポーズしているウェディング。答えられないのは悪く思っているが、それでもプライドというものがあるのだ。
「じゃあ、今日先輩に訊いてみようと思うわ。」
「!?」
ド忘れしていた。そうだ、今日は白守進が家に来るのだった。なんというタイミング……!運命のイタズラッッ!ウェディング、置換効果により爆散!
……まぁ忘れていたウェディングが悪いのだが
いつかは知られてしまうだろうと思っていた。別にそれは良いのだ。調べれば簡単に分かることなのだから知らないでいる方が無理という話だ。しかし、そのタイミングが重要だった。せめて、せめてウェディングの前でだけはその言葉の意味を知らないでほしい。恐らく耐えられない。
(くっ……!しかし、もう打てる手立てがない!ここは大人しく諦めるしか……)
ウェディングに残された道はなかった。八方塞がり……まさしく詰みである。
「ここまでですか……」
「?、何か言ったかしら?」
「い、いえ!何でもありません!し、白守進が丁度来るなんて私達は運が良いですね!ふっ、ふふふふふふ!!」
「ほ、本当に何でもないのかしら……」
不気味な笑い声を上げるウェディング。カノンは疑いの目を向けながらも一旦この話はここで終わることにした。
「随分話し込んじゃったわね。そろそろ朝御飯を食べましょう。先輩はお昼過ぎに来るからそれまでに身だしなみとか整えなくっちゃ!ウェディング、今日は目一杯楽しみましょうね!」
自分には勿体ないくらいの笑顔を向けて、そう言ってくれるカノン。ウェディングはどれだけお互いがお互いを大切に想いあっているのかを再確認した。だからこそ
(白守進……私の大事なパートナーを、大事にしてくださいよ?でなければ私直々に絶望を送りますからね。)
パートナーとはまた違う、別の類の
見て分かる通り、かなりカノンちゃん進くんの影響を受けてます。やっぱり進くん死にかけたんだから少しは依存しちゃうよね……これがいいんだ!
因みに置換効果の例えは分かる人は分かると思いますが、エターナルΩって無敵じゃないんですよね。
例えば羅月スカルムーンの能力を参照して『自分のクリーチャーが破壊されるとき、かわりに相手のクリーチャーを破壊する』ってのがあるんですがそれがウェディングに適用されると普通はエターナルΩで手札に戻るじゃないですか。でもそこで問題が起こるんですよ。
かわりに破壊→かわりに手札→かわりに破壊→かわりに破壊
みたいな感じになっちゃうんでデュエマのルール上これらの『かわりに』である置換効果は連鎖しないようになっているんです。
だから今回のウェディングは後から出てきた『進くん家に来るよ』っていうド忘れしていた『後から』の情報にやられちゃったわけですね。うん、ゼニスのメンツ丸潰れ!でも可愛いからヨシ!では、また次回。