無垢の守護者と甘い恋   作:しゃべる

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何ということでしょう……1ヶ月は投稿してないじゃないですか。もうほんっと最近大変なんですよねぇ……ずっと小説書いてたい。


親方!あの人達が店内に!

11月

 

人はこの時期から大抵厚着をし始める。それは単純に外界からの寒さを防ぐために行っている行為であり、その行為自体は至極全うな理由だろう。

 

寒さは何もかもを奪う。体温も、気温も、更には私生活の有り様ですら。もし仮に氷河期がもっとも地球上で生物が地表に少ない時期だと聞いてもすぐ納得できるほどに寒さと言うのは生物にとって天敵であった。

 

…………散々どうでも良いことを語ってきたが結局のところ何が言いたいのか。貴方たちはわからないだろう。

 

さっきも言った通り、寒さは何もかもを奪う。その寒さの奪うものの中には……やる気も含まれている。一体どう言うことなのか。それはつまり

 

「へぇっくしょん!!」

 

「わっ、大丈夫?」

 

「ズビビッ……うーん、ちょっとやべぇかも。と言うか今日が寒すぎる!何なんだよ2℃って!昨日と8℃くらい違うじゃえねぇか!仕事どころじゃねぇよこれ。」

 

進の仕事へ対するやる気を削いでしまうということでもあった。因みに先程までの語りは全て進の今朝考えていた下らない愚痴である。

 

「確かにそうね。昨日の予想気温なんかも9℃位だったし、完全に異常気象か何かなんだと思うのだわ。」

 

「だよなぁ……はーあ、ついてないな……。!ま、まずいっ……!またくしゃみの気配が……!なっ、ティ、てぃっひゅがなっ!ハッ、ハッ、ハァッ……!」

 

「え、ええ!?ちょ、ちょっと我慢して!直ぐに持ってくるから!えーっと確かティッシュは……」

 

カノンがあたふたしながらティュシュ箱を取ってこようと辺りを散策し始めた。

 

現在2人はバイトの休憩時間中だ。つまりこれはスタッフの休憩室でお昼を取っていた際での出来事である。なので、カノンがあまり慣れていない休憩室でティュシュを取ってくるとなると少し時間が掛かってしまうのだ。となると必然的に

 

「も、もうむっぶえっくしょん!!うえー……」

 

間に合わないのも当然のことであった。

 

「あぁっ、間に合わなかったのだわ……ごめんなさい、遅れちゃって。はいティッシュ。」

 

「ん、ありがとう。チーン!……はぁ、店長早くここのエアコン直してくれよ。」

 

「しょうがないわよ。夏が暑すぎたせいで故障しちゃったって言っていたのだわ。古い型だから仕方ないらしいし、それに一週間後には新品に付け替えられるのよ。それまで我慢しましょう?それにしても、機械が壊れるほど暑いってどういうことなのかしら……」

 

カノンの言う通り、現在休憩室のエアコンは故障中である。進達が働き始めたのは秋ごろだった為今まで室内の気温を気にしたことがなかったのだが、いよいよ無視できなくなってしまった。

 

「それもそうかぁ……ま、店長やっと修理代が集まったって言ってたし、早めに直そうと努力してくれてたから何にも言えないな。それに店の中はちゃんとエアコン機能してるし、俺たちが少しの間我慢しとけば良い話でもある。あーあー……一週間の辛抱だぁ……」

 

冷える手を擦りながら進はそんな会話を交わす。これから続く極寒地獄に頭を抱えるも、これは仕方のないことなんだと割りきることにした。

 

「……にしても、カノンは随分と平気そうだな。もしかして寒さに強いのか?それだったら羨ましいなー。俺寒がりだしきついぜ。」

 

「ううん、私だって寒いのだわ。けどこれくらいだったら少し厚く服を着込むだけで済むし、それにいきなり寒くなったってだけで極寒とまではいかないからまだ耐えられるのだわ。」

 

四季のどれにも当てはまるのだが、始まりはどれも最高の気温ではない。初冬だってまだ秋だと勘違いしてしまうくらいの温度のことが殆どだし、夏だって初夏はまだギリギリ春だと思えるくらいの暖かさである。今回は初冬の温度のなかでもマシな部類だった。2℃と言うのも最低気温の話だし、現在がとても2℃だとは思えないような温度であるのも確かであった。

 

「こんな寒い日なら今日はお客さんも結構来るんじゃないかなー。見つけにくい場所にあるとはいえ、一応視界には入るようなとこにこの店もあるわけだし。しかも金曜だから尚更な。」

 

「そうね。こういう時にこそコーヒーとしてのブランドが輝くのでしょうし。」

 

そんな感じで休憩時間が終わるまで雑談している2人。大体店に人が来る時間は2人の休憩時間が終わった後頃である。それまでは朝はぼちぼちくるお客さんの対応と店の仕込み、必要な食器等の準備に時間を使っている。

 

2人が昼食をとっている間はあまり客も来ないので店長が一人で店番をしているのだ。一度休憩は一人づつでも良いのではと提案したこともあったのだが清々しいくらいに気持ち良く断られたのを覚えている。理由としては『この仕事が好きだから昼食に時間を割きたくない』かららしい。何ともまぁ店長らしい理由だと2人は思ったという。

 

「さーてと、そろそろ時間だな。これから忙しくなるだろうし早く行かないと。」

 

進の言葉に同調するようにカノンは頷いた。そうして2人は仕事場へと戻る。

 

「店長、休憩終わりました。」

 

「ん?おぉ、お帰り!待ってたぞー。」

 

進の声に反応する店長。見たところまだ忙しそうではない。

 

「今どんな感じですか?」

 

念のためカノンが状況を聞き出そうと質問した。

 

「今は誰も来てないな。さっきまでは2人くらいいたが、カノンちゃん達が来る直前に出てったよん。」

 

「その2人ってもしかして?」

 

「あぁ、いつも通りの常連さんだ。こんなに寒いってのによく利用してくれるぜ。頭が上がらんねぇ。」

 

この喫茶店は見つけにくい場所に為客数はあまり多くない。しかし、腕は確かなので一定の顧客を得ることには成功していた。だからこそ知る人ぞ知る隠れた名店と言われているのだ。

 

「今日寒いですしこれから結構来そうじゃないですか?」

 

「そうなんだよー。だから君達が戻ってくるのを今か今かと待っていたわけだ。」

 

「なに言ってんすか。戻る時間は固定ですよ。」

 

「へっ、まぁそうだな。ってなわけで何時でも対応できるようにいつもの配置に着いてくれ。頼むぞ、2人とも。」

 

「「わかりました!」」

 

こうして普段通りの流れに沿って2人は仕事をこなしていくのだ。今日は何時もよりお客さんが多いと思われる。通常とは少しだけ違う雰囲気が店内には蔓延っていた。

 

暫くすると、外から何やら話し声が聞こえてきた。くぐもっていてよく聞こえないが、声の数から察するにかなりの人数がいそうだ。今回案内をするのは進である。来るお客さんを前に気を引き締める進。そしてついにその時はやって来た。

 

カランカラン

 

ドアの開く音と入店の知らせを伝えるドアベルの音が同時に響いた。

 

(来たっ!)

 

やる気に満ちた進に不可能などない。勢いよくまずは挨拶からだ、と進は口を開いた。

 

「いらっしゃいまっ……!?」

 

しかし、進は目の前の広がっている光景を目にして言葉を失ってしまった。意気揚々としていたあの頃の彼は何処へ……。して、進が言葉を失ってしまった理由。それはある人物達の話し声によって明らかとなる。

 

「おっ、進じゃねぇか。ってことはやっぱここがそうなのか!」

 

「あらよかった、ここで合ってたわね。」

 

「少し迷ってしまいましたが、無事に着いたようです。」

 

「へぇ~。なかなか雰囲気イケてるね~!」

 

「ふむ、微かにだがコーヒー豆の匂いがするな。それもかなり上質なものと見た。これは期待できそうだね。」

 

「!マスターの風格に似合うお店を発見した。ここに来ればいつもよりもマスターが五割増しでクールに見える……記憶しておこう。」

 

「わぁ~!カノンさんから聞いてはいましたが、想像よりも遥かにお洒落なお店です!」

 

「こ、こういった物静かな店に行くのは初めてだが……シティの騒がしさがないとなんだかソワソワしてしまうな。」

 

そこにいたのは、何時かの病院に集まっていた時のメンバーだった。唯の姿だけ見えていないが、そこはあまり深く考えないでおこう。兎に角見覚えのあるメンツに驚きを隠せない進。それはカノンも同様であった。

 

「ちょ、え、皆?な、何でこんなタイミングで……?」

 

気づけば客にとるものとは思えないような口調で思わず心の声を漏らす進。普段ならば店長が注意するところなのだが、今回ばかりはそうもいかなった。

 

「いやなに、偶々皆の休暇が取れただけだよ。」

 

「そ、それもそうなんだろうけどさ……!何で態々こんな大人数で来てくれたんだ?」

 

「そうだね……強いて言うのなら興味があった、ってくらいかな。それに、何時かは皆で行くことは決まっていたんだ。喫茶店でゆったりするのもたまにはいいだろう、とね。」

 

カイトの説明に進は納得した。いや、せざるを得なかった。でなければ突然のこのカオスな状況に理解が追い付きそうになかったからである。

 

「ふふっ、立ち竦んでいても良いけどそろそろ席を案内してくれないかしら。貴方の驚く反応は飽きないけれどね。」

 

「っあ、そうだった!」

 

ルカの言葉に進はハッとする。しかしすぐさま行動に移そうと試みるのだが、何故か思うように体が動かせない。なぜならさっきの衝撃で完全にやる気がなくなってしまったからだ。いや、やる気というより元気といった方が正しいか。正しく意気消沈である。経験したことがある方もいるかもしれないが、バイト中に知り合いが顔を出したとき何故か人は妙に緊張してしまうことがある。相手は友好的に接してくれているというのに、何故かやりにくくなるのだ。これが本当に仲の良い友達なのであればその緊張も幾らかは無くなるだろうが、それでも初めてはきついものがある。

 

これ元に考えると……最近知り合ったばかりの、それも守護者という憧れの存在が"初めて"バイト中に目の前に現れたというこの状況。もうお分かりだろう。そう、進にとってこれほどまでに心臓がドキドキするシチュエーションはないのだ。

 

「あ、え、えっと、きゅきゅ9名様でのご来店ですね!?で、でしたら……あちらのお席にお座りください!!」

 

何とか口許を動かせはしたが、当然動揺を隠せるはずもなくしどろもどろな対応になってしまう。

 

「あそこだね、わかった。」

 

カイトに続いて一同は進の案内された席へと赴いていく。幸い、4人席がこの店には3ヵ所あるので困ることはない。一人だけ少し狭苦しい思いをしてしまうかもしれないが我慢してもらって座っていただこう。それに席的にはあまり離れてもいないため会話しようと思えばできる。因みに、片方が椅子でもう片方が壁際にあるソファ式の席である。

 

「あれ、これじゃあ一人だけ余っちゃいますね。うーん……そうです!私とお姉ちゃんとキリコさんで一緒に隣同士で座りましょう!」

 

「そうだな。自分で言うのもなんだが、私たちは小柄でスペースを取らないから丁度いい。キリコもそれで構わないか?」

 

「ん……わかった、それで妥協する。マスターの隣は諦めよう……

 

クリーチャー三人組が微笑ましい会話を交わす。キリコは少し惜しそうにしていたが、渋々ルピコの案を承諾した。

 

「ご、ご注文がお決まりになりましたらこちらのベルでお呼びください……で、では!」

 

進は必要最低限の言葉をかけた後、逃げるようにしてその場を後にした。

 

「あらあら、随分と緊張なさっていましたね。」

 

「まぁ無理もないんじゃないかしら?関係をもったとはいえ、まだ顔を会わせたのは一度きりだし。彼、元は私たちの熱狂的なファンだったんだもの。」

 

「流石にグレンさんとのデュエマだけでは完全に打ち解けませんよね。」

 

「わからないものだな。病室での進は私たちと平然と会話していたというのに。」

 

「関係値、というのは簡単には増えない。白守進の反応は必然的なものだと判断する。でも、これから深く関わっていけばいいとキリコは考えた。」

 

一方の席からは5人の女子による雑談が花を咲かせていた。そして、もう一方の席からは……

 

「ふぅ、ここは落ち着くね。最高の雰囲気だ。」

 

「あぁ、たまにはこういうとこに行くのも悪くねぇ。」

 

「だねー。それに、僕としてはこの木造の造りがすごくいいと思うんだー。加工しすぎてないからか自然に囲まれてるような感じがするよ!プレイヤーはどう……って、もうデッキ出してる!?た、確かにデュエマするにはうってつけの場所かもしれないけどさ、先に注文しないと……え?もう決めてある?……はっやいね……。」

 

意外なメンバーの組み合わせではあるのだが、思ったよりも落ち着いている4人組が店についての会話をしていた。

 

場面は変わり白守進サイド

 

「ててて店長!!どうしましょう!?」

 

「おお落ち着け!!なななな何も焦る必要はない!!」

 

動揺を明らかに隠しきれていない2人。

 

「店長、落ち着いてください!それに進も!」

 

「「ハッ……!」」

 

カノンの一言に我に返る2人。親子か何かなのだろうか?

 

「確かに突然皆が来たことには驚いたげれど、私たちはいつも通りでいいのだわ。それに進は以前にも会ってデュエマもしているのだからそんな弱気にならないで!」

 

「そう……だな。俺はグレンにもうダチだって言われたんだ。いつまでも緊張してちゃあ友達になった意味がない!大丈夫だ……俺はもう既に友達……友達なんだ……」

 

自身に暗示を掛けるかの如くぶつぶつと呟く進。そこから少しして、進は落ち着きを取り戻した。

 

「ふぅ……あービビったぁ……ありがとなカノン。」

 

「ふふっ、どーいたしましてなのだわ。」

 

進の反応が少し可笑しくて笑ってしまうカノン。進が守護者達のことを憧れの対象として見ているという事実を知っているからこそ、あの焦りようが一層かわいく見えたのだ。

 

「それにしても、店長まであんなに取り乱すなんて珍しいですね。」

 

カノンは先ほど少し疑問に感じていたことを店長に質問した。いつも豪胆で頼りがいのある彼が一体どうしてあそこまで驚いていたのか不思議だった。

 

「驚くに決まってるだろ!2人は既に会ってるのかも知れんけどな、普通は滅多に守護者なんて見れるもんじゃないの!俺だって一応デュエリストでデュエマもめっちゃ好きなんだぞ!」

 

「そ、そうなんですか?でも皆かなりの頻度でシティの中心に居るし、それにイベントも開催しているから目にする機会は十分にあると思いますよ?」

 

「そ、それは確かにそうなんたが……そうじゃねぇんだよな。」

 

「違うんだよカノン……守護者をこんなに間近で、生で見られることが凄いんだ。シティに現れようもんなら一瞬で周りに人集りができるわ、イベントに参加してもそもそもデュエマが余り得意じゃない人は守護者と戦うことすらできないわで……マジのガチに守護者って会えないんだよ。」

 

進が分かりやすく説明する。カノンはこのシティに来る前からルピコちゃんや守護者達と交友関係があったので彼等の凄さというのを理解しきれていないのだろう。一般人であれば普通ここまで守護者やその関係者と深く関わりを持つことはできない。それほどまでに彼等は遠い存在なのだ。

 

「そうだったんだ。皆、私が思っていたよりもずっと凄い人達だったのね。」

 

納得したカノンは深く頷いた。

 

「あー、本当にどうしよう。普通に胃が痛くなってきたぞ……マジでどうしよ……」

 

店長が突然そんなことを愚痴り出す。流石に気にならざるを得なかったので進がなぜそこまで大袈裟に反応しているのかと聞いてみたところ

 

「大袈裟なんかじゃねぇよ!マジで冗談きちぃわ……コーヒーを上手く淹れる自信が全くといっていい程湧いてこない。緊張で手が震えて絶対失敗すると思うんだ。全く困ったぜ……」

 

と本人にとってはとても深刻な悩みを吐露していた。

 

「きっと大丈夫です。さっきも言ったように、普段通りにしていればいいんです。店長のコーヒーは世界一ですから!……まぁ、私はまだ飲めないんですが。」

 

「そ、そうですよ!店長は余程のことがない限りは大丈夫なはず!自信もってください!」

 

「お前ら……!あぁ、そうだな。俺の作るコーヒーは俺の全てで、この店自慢のもんだ!今までどれだけ作ってきたと思ってやがる!すまんな、情けない姿見せちまって。もう大丈夫だ!いつも通りやればいい……教えてくれてありがとよ、カノン!」

 

2人の励ましに店長は決意を固めた。元より店長は結構楽観的な思考をしている。何か辛いことがあろうが嫌なことがあろうが、その持ち前の明るさで何とかしてきたらしい。

 

「俺も頑張るが、その分お前らもちゃんと受けた注文用意してくれよ!今回のお客さんは俺の人生史上最高クラスの方達だ、絶対満足して帰って頂くぜ!気合いれろよ!」

 

「「はい!」」

 

いつもの店長が戻ってきた。それどころか今度は逆に2人を鼓舞するという漢気っぷり。なんともたくましいことである。

 

チリーン

 

(((ッ!!!)))

 

店内に透き通るような音が響き渡る。呼び鈴の音に呼応するかのように進はその音のなる方へと足を運んだ。

 

「お待たせいたしました。ご注文をどうぞ。」

 

眼前に居るは水の守護者カイト。恐らく、これから順々に注文を受けるのだろう。大丈夫だろうか?今の自分は人前で振る舞うべき姿になっているだろうか。そんな不安がさらに緊張を加速させてくる。

 

大丈夫だ。カノンが言っていたではないか。いつも通りの俺で接すれば良いと。客観的に見ても今の俺は変ではないはず。自信を持つんだ。いつも通りを演じるのを躊躇ってはいけない。"いつも"を見せるために全力を出すんだ。

 

「じゃあ僕からいいかい?この店長特製のブラックコーヒーとバニラアイスを頼む。」

 

カイトの注文内容を復唱しながらメモする進。そして次は

 

「んじゃ俺は普通のコーヒーと……そうだな、このバタートーストにしてくれ。」

 

とグレンが続けて注文した。

 

「えぇ……?グレン、っていうか僕たち全員お昼は食べたでしょ。本当に食べれるの?」

 

「さっきまではそうだったんだが、この写真と概要をみたら食べたくなってな。見ろよ、オリジナルのパンとバターを使った唯一無二の一品だって書いてあるんだぜ?もしかするととんでもねぇパンかもしれないだろ?」

 

「ふぅーん。よく食べれるねぇ。」

 

ジト目でグレンを見つめていたチュリンは納得のできる理由を話されて、その怪しいものを見るような視線を送るのを止めた。

 

グレンの言う通り、このお店のメニューはどれも食欲をそそるようなものばかりである。写真や名前だけならば至って普通の喫茶店によくあるような物なのに、その品に添えられている詳細文がなんとも強い魅力を感じさせるのだ。

 

「次はプレイヤーが頼んでいいよー……普通のコーヒーとバニラアイスかぁ。ま、そうだよねー。食後のデザートって感じで無難な内容だもんね。じゃあ僕もバニラアイスと……ココアにしようかな!」

 

これで片方の席は全員注文し終えた。あとはルピコちゃん達だけだ。

 

「私もカイトと同じものでお願い。」

 

「では、私はチュリンさんと同じものでお願いします。」

 

ルカとエレナは迅速に注文を済ませる。内容が被るのも昼食を取ったが故の影響だろう。実際こう言った注文は少なくない。進としては覚えやすいので大いに助かっていた。

 

「んー……私はこのメロンソーダフロートでお願いします!」

 

「……よし!私はコーヒーとこのバニラアイスにしてくれ!……あと一応砂糖も付けてくれないか?」

 

「キリコもルピコと同じ、メロンソーダフロートをお願いする。」

 

クリーチャー組も注文を終え進は確認するために今までされてきた注文内容を復唱し始める。間違いはないかと再度確認を取ったが、問題ないと言われたので進はその場を後にした。

 

「戻りました~!内容言います!」

 

店長とカノンに注文内容を伝える。すると店長は少しにやけながら嬉しそうに

 

「かぁ~!やっぱカイトさんとルカさんは俺特製のコーヒー頼んでくれたかぁ。チュリンさんとエレナさんも想像通りのもの頼んでくれたなー。グレンさんがトーストってのは少し意外だったが。」

 

と呟いた。

 

「凄いです……!予め用意していた物の殆どが必要なものでしたよ。」

 

「予め……?」

 

カノンの言葉に進は首をかしげる。不思議に思ってカノンの目線の先を追うと、そこにはなんと先ほどの守護者分の注文内容に必要な材料が殆ど揃っていた。

 

「わぁお、すげぇなこれ。」

 

思わず素の自分が出てしまう進。

 

「どうしてわかったんですか?」

 

純粋な疑問を持つ進に店長は

 

「俺の店に守護者が来るの、ちょっとした夢だったんだよ。頼むとしたらどんな物を頼むんだろうとか考えたり、時にはこんな品を作れば喜ぶんじゃないかと思って衝動的に品を追加したこともあった。言っとくがお前らが思ってるよりもずっとデュエマのこと考えてるからな?イメージ変わるかもしれんが。」

 

と得意気に語っていた。

 

確かに意外ではあった。進達のイメージとしては、喫茶店経営に誇りを持っていて自分の作ったコーヒーに絶対的な自信を持っている人というものだった。たが、あまりデュエマの話題を出さないので忘れていたが、この店のあるところもデュエマシティだ。デュエマシティはデュエマ好きの集まる街。ならば当然店長がデュエマ好きなのもなんら可笑しな話ではなかった。

 

「さ、雑談はこのくらいにしてさっさと作業に取りかかろう!進とカノンちゃんは俺が用意できなかった分の材料を持ってきて、それ使ってまずはフロートを作ってくれ。あとは頼まれた分のバニラの用意、んで最後にトーストをどっちか焼いて欲しい。俺はコーヒーとココア全部作っとく!」

 

「「わかりました!」」

 

店長の指示に進達は元気よく返事を返した。いつも通りの動きだ。この店のコーヒーは全て店長が作っている。以前カノンが負担を減らしたくて変わりにしようかと提案していたのだが、どうしてもこれだけは譲れないと断っていたのを思い出す。なので2人はいつもそれ以外の仕事をしていたのだ。

 

テキパキと仕事をこなす3人。その間、客席の方からは和気あいあいとした会話が聞こえてきていた。

 

「キリコさん、メロンソーダなんて飲むんですね。てっきりカイトさんと同じコーヒーを頼むと思っていました。」

 

「コーヒーもいいけど、私は最近サイダーというものにハマってしまった。あの舌を刺激する感覚がなんともクセになって面白い。それよりも私はダピコが少しだけ注文するとき間が空いていたのが気になった。」

 

「なっ!あ、あれはその……じ、実は言うと私はコーヒーを飲んだことがないんだ。たまにレンタルデュエリストの仕事をしていたらコーヒーを飲んでいる対戦相手がいるんだが、どうも匂いが慣れなくてな。」

 

「では何故今回はコーヒーを頼んでみたのですか?」

 

エレナの疑問にダピコは少し恥ずかしそうにしながら応えた。

 

「だ、だってなんかカッコいいじゃないか!味があると言うかなんと言うか……あんなに苦そうな物を余裕の表情で飲み干すあの渋い雰囲気に私は憧れたんだ!!」

 

「憧れたねぇ。その割には砂糖を付けているようだけれど?」

 

「うっ……そ、そこは見逃してくれないか……?私でも情けないとは思うのだが、あの匂いを思い出すとどうしても飲み干せるビジョンがみえてこなくてな。念のためというやつだ。」

 

「あはは……なにもそこまでして飲む必要はないと思いますけどね。」

 

「ルピコ、私は姉として妹の常に一歩先へ居なければならないと思っている。つまり、これは勝負でもあるんだ!!譲れない戦いがそこにはあるんだよ。私は砂糖に頼らずともコーヒーを飲んで見せるぞ!」

 

「へ、へぇ」

 

ダピコの熱量に気圧されるルピコ。そのままでも十分お姉ちゃんをしているのだから無理する必要はないと思うのだが、今回は好きにやらせてあげよう。

 

「にしてもこんな場所に喫茶店があるだなんてしらなかったぜ。シティにはもうかなり長く居たと思ったんだがなぁ。カイトは知ってたか?」

 

「グレン、僕たちは進くんの情報を頼りにここまで辿り着いたんだ。すこし迷ってしまっている時点で僕も知らないと考えるのが妥当じゃないかい?」

 

「それもそうか。ちょっと俺たちデュエマに熱狂しすぎちまってたのかもな。」

 

「かもねー。思い返してみると、プレイヤーが来てからのシティはさらに盛り上りを見せたと言うか、本当に賑わってるよね。僕たちもその日辺りからデュエマをする回数が増えた気がするし、のんびりとシティを歩き回れなかった気がするなー。」

 

「それに、デュエ因子という未知なる力やクリーチャーの存在の発覚、シティの危機など色んなことがあった。そこから更にシティ利用者の数も増えて……この日々は大変ではあったが絶対に飽きはしなかった。しかし、それは言い換えれば毎日が激動の日々で暇がなかったということにもなる。そう考えると今回の時間はかなり有意義な物となるんだろうな。」

 

カイト達のテーブルでは、今まで起きたことを振り返るような会話をしていた。ゆっくりする時間はあったが、こうしてなにも考えずただ喫茶店で誰かと喋ったりぼーっとする時間はなかった。ゆっくりしている間も常にデュエマのことや明日の予定等を考えていたのだ。だからこそ、カイトらのみならずこの場にいる全員が今回の時間を噛み締めたいと思っていた。

 

その証拠にデュエマのデッキを取り出していたプレイヤーは、誰にもバレないようにそっとデッキーケースの中にデッキを直していた。プレイヤーもまたカイト達の思いに同調したのだ。今日くらいなにもしなくても良いかな、と密かに心の中で考えたらしい。

 

「お待たせしました。こちらお先に人数分のバニラアイスです。」

 

そうこうしているう内に進が品物を運んできた。コトッコトッ、とアイスのある皿を頼んだ者達の前へと置いていく。そして調理場に進が戻ったかと思えば

 

「お次にコーヒーとココア、メロンソーダフロートになります。」

 

と再びカイト達の元へと戻ってきた進が飲み物を運んできた。これも先程と同様注文した者の元へと品物を置いていく。コーヒーのほろ苦い匂いとココアのちょっとした甘い香りが辺りを包む。大量に運ばれてきた為その場の空気そのものをコーヒーと少しのココアが支配していた。

 

「わぁ~、見てくださいキリコさん!美味しそうです!」

 

「確かに美味しそう。メロンソーダの緑色が濃いのに透き通っている。まるで水みたい。奥の景色がハッキリと視認できる。」

 

フロート組が感想を溢す。その声音からして今の状況を楽しんでいるのは間違いなかった。

 

「へぇ、これはなかなか……匂いからでもこのコーヒーの素晴らしさが伝わってくるね。」

 

「ふぅん、普段は紅茶しか飲んでないけれどこう言うのも悪くないわね。普段嗅ぐ香りとはまたひと味違った感覚がするわ。」

 

店長特製コーヒーを頼んだ2人は飲む前から既に笑みを浮かべていた。普通のコーヒーとも違う嗅いだことのないコーヒーの匂いに心を踊らせていた。

 

「ふ、2人は凄いな……ここからでも強烈な苦味を含んだ匂いが届いているぞ。私は目の前にある普通のコーヒーですら匂いを嗅ぐのすら困難だというのに。しかしこの程度で音を上げることはできない!私はやって見せるぞ!」

 

普通のコーヒーを頼んだダピコは人知れず勇気を振り絞っていた。彼女のチャレンジは無事成功するのだろうか。

 

「この甘く優しい香り……上品な紅茶とはまた違った暖かみを感じます。」

 

「やっぱ寒い日はココアだよねー。」

 

エレナとチュリンはまったりとしたテンション感でそんなことを口にした。2人の雰囲気にココアはピッタリハマっていたと後日進は語っていたそうな。

 

そして最後に

 

「お待たせいたしました。バタートーストとコーヒーになります。」

 

カノンが進が運べなかった分を運んできた。

 

「お、サンキューなカノン。これがオリジナルのパンってやつか。見た感じは普通の食パンだが、なんか旨そうに見えるぜ。」

 

食べやすいように4等分されている、一見普通のパンにしか見えない品を前にグレンは何となくではあるのだが一般のパンとは決定的になにかが違うと感じていた。

 

「あっカノンさん!久しぶりです!」

 

見知った顔を見掛けたルピコは衝動的に挨拶をした。

 

「え、えっと、そうね。久しぶり、ルピコ。」

 

一瞬どちらの口調で話して良いのか迷ったカノンだったが、友達の中でも一番といっていい程の関係性であるルピコに対してそんな対応はできなかった。

 

「初めてカノンさんの働いている姿を見ましたが、ちゃんと働けているようで安心しました。元よりカノンさんなら心配する必要もないとは思いますが……慣れない土地でのお仕事でしたでしょうし、とても立派です!」

 

ルピコの言葉に一同は頷く。

 

「そ、そうかしら?あ、ありがとう。」

 

気恥ずかしそうに返事を返すカノン。その光景を見ていた進はこのまま皆と話したい欲をグッと抑えてカノンに

 

「名残惜しいがその辺にしとこう。まだ仕事中だからな。」

 

と耳打ちした。

 

自身の状況を思いだしハッとするカノン。申し訳なさそうにルピコ達に顔を向けると

 

「ご、ごめんなさい!お話はまた今度しましょう。今はまだバイト中だから戻らないと。」

 

と言いその場を進と共に後にしようとした。軽くお辞儀をして店長の元へと行こうとする2人だったがある人物の声がその行動を止めることとなった。

 

「折角なんだ、カノンちゃんと進はお客さんと一緒に席を共にして良いぞ~!」

 

その声の主はなんとあの店長であった。気合いを入れていけと言った直後に放たれたこの言葉。正直訳がわからなかった。

 

「え、いいんすか!?」

 

「良いもなにも、なんならこっちからお願いしたいくらいだ!!思う存分楽しんでくれよ。」

 

「で、でも今日はお客さん多いだろうし……無茶ですよ。」

 

カノンが苦言を呈する。しかし、店長は嫌な顔ひとつせず満面の笑みを絶やさずにこういった。

 

「俺はお客さんがいい気分になって帰ってほしいんだ。また来たいなって少しでも思ってくれたらそれだけで万々歳なんだよ。その為ならいかなるサービスも欠かせないのよ。大丈夫、それも仕事の内だと思ってやればいいさ!」

 

「店長……!あ、ありがとうございます!ではお言葉に甘えさせてもらいますね。」

 

「やっぱ店長は気前が良いなぁ!流石だ!」

 

例の件の時もそうだったが、店長は器がとんでもないくらい広い。カノンの過去を知ろうがそれを踏まえて受け入れてくれたりしてくれるのだ。恐らく今回の店長の提案も、2人が皆と一緒に居たいと言う気持ちを汲み取ってくれてのものなのだろう。本当に頭が上がらない。取りあえず2人は座る席を確保するために椅子を取ってくることにした。

 

「えーっと場所は……ここにしようかな。」

 

カノンはそこが言いと思うぜ、と進は口にしながら椅子を皆の座っているテーブルの内の一つに置いた。その場所は、カイト達の座っているテーブルで、隣にはカイトが居る形となっている。カノンはルピコちゃん達のテーブルに決め、その隣にはエレナが居た。少し2人にはずれてもらって少し申し訳なかったが、それと相反するかのように2人の表情は穏やかなものであった。

 

「よし、思わぬメンバーが追加されたがそろそろいただくとしようか。」

 

「そうですね。」

 

カイトの言葉にエレナが反応を返す。それに釣られるようにして各々が目の前にある品を手に取り口にしていった。少し緊張してしまうカノンと進。一体どのような評価が下されるのか、皆の口に合うのだろうかと思ってしまう。ただ一つ言えるのだとしたら……美味しいという言葉が聞きたい、と言うことだけだ。

 

「こ、これは……!」

 

まず最初に声をあげたのはカイトだった。

 

「なんて美味しいんだ!僕好みの味わい深い苦味、そしてこのキレの良さ!全てが標準を大きく上回っている!これが、この店の店長の実力か……全く、素晴らしいものだ。」

 

絶賛する声に進達は思わずにやけてしまった。自分のことを褒められたわけでもないのに、すごく嬉しい気持ちになったのだ。

 

「本当ね。普段は紅茶しか飲まないけれど、その紅茶すら凌ぐ位美味しいわ。久しぶりにここまで濃いものを飲んだけど後味が良いのも驚きね。どのような仕組みなのかしら。」

 

カイトと同じコーヒーを頼んでいたルカが続いて感想を口にした。口許が少し緩んでおり、妖艶な笑みを浮かべているルカだが本人はそれに気がついていない様子だった。思わずニヤッとしてしまうくらいそのコーヒーが旨かったのかもしれない。

 

「なるほど、これはこれは……とても言葉では表現しきれませんね。強いて言うのであれば、優しい味わいと言ったところでしょうか。温度だけの暖かみではありません。もっと他に、何かが込められているようなそんな気がします。」

 

「はぁ……寒いこともあってか体に染み渡るよ~。やっぱりココアは冷える時期に飲むのが最適だね~。」

 

ココアを頼んでいたエレナとチュリンは、その優しい甘さと暖かさに和やかな表情を浮かべていた。冷えきった体が芯から解凍されていく気分だったそうな。

 

「キリコさん、このアイス何だかすっごく美味しくないですか?普通のバニラとは何か違うと言いますか……何故でしょう。」

 

「恐らく、原料が別格なんだと思う。見た目はシンプルなバニラアイスだけど、明らかに私たちの普段口にする普通のバニラアイスではなかった。メロンソーダに乗っていると言う点も挙げられるけど、正直根拠としてはそこまで強くない。だから私は最初に言った説を推す。」

 

「成る程~、確かに言われてみればミルクとしての味わいが深かったような気がします。余程良い素材を使っているのかもしれませんね。」

 

ニコニコしながらルピコとキリコは会話をしていた。こう言った話題で話し合うことがなかったせいか、思ったよりも楽しくなってくるルピコ。キリコの頭が良いからなのか、その内容がルピコの気を引くものばかりだったのだ。

 

「どれどれ、このパンの味はどうなんだ?」

 

グレンが期待の眼差しをパンへと向けながら、自身の口元へとパンを運びそして口にした。

 

「!?……なん、だ、これ!?」

 

サクッ、と食欲をそそる音が辺りに響いた。その僅か数秒後、グレンは驚きのあまり目を丸くさせながら、現在の自分の状況を表すかのよな反応を示していた。

 

「カ、カイト!こりゃ相当な大物たぜ!バターの染み込んだこのパンの舌触り、程よい噛みごたえが最高だ!バターによる味付けも文句の付け所がねぇ!お前も一枚食ってみろよ!」

 

「そ、そうか。(急に語彙力が上がったな……)なら僕も一枚貰おうかな。」

 

グレンの熱気に押されるカイト。しかし、ここまで言われて食べてみないと言う選択肢はあり得なかった。なのでここはグレンの言葉に甘えて自分も一枚食べてみようと、そう思い立ちカイトはパンを口へと運んだ。

 

「どれ…………!?す、凄いなこれは……!確かにグレンのこの反応も頷ける。もしかするとこのコーヒーとも合うんじゃないかな。」

 

「そうか、やっぱお前もそう思うか!俺もコーヒーと合うんじゃねぇかなって思ってたとこなんだ。」

 

「ほう、奇遇だな。グレンとここまで意見が一致するのも珍しいかもしれないね。」

 

へっ、そうかもな!と呟きながらコーヒーを飲み始める。すると

 

「あー……疲れが吹き飛ぶぜ……」

 

と最早何かに感銘を受けているかのような反応をしていた。その様子が可笑しくて少し笑ってしまう進。わかってはいたが改めて愉快な人達だなと心の中で思った。

 

しかし、一人だけあまり愉快そうではない人物がこの場に居た。

 

「だ、大丈夫だ。こんなことを恐れてどうする。私ならいける……簡単なことなんだダピコ。目の前にある液体を飲み干すだけでいい。それだけなんだ……!」

 

その人物とは苦手であるにも関わらずコーヒーを頼んでしまったダピコであった。

 

「ダ、ダピコお姉ちゃん?無理は良くないと思いますよ?お砂糖を入れたほうが……」

 

「駄目だ!そ、それではお姉ちゃんとしてのプライドが許さない!妹の前で弱気になんてなれるものか!心配してくれるのは嬉しいが、安心してくれ。私はきっと……きっとやり遂げて見せるからな!」

 

「なーにやってるのよ……そんなことしても美味しくないでしょうに。」

 

ルカが呆れ気味にそんな言葉を口にするが、ダピコには最早聴こえていないようだった。あーだこーだとぶつぶつ何か言っていたダピコだったが、遂に覚悟を決めたらしくカップを手に取った。

 

「よ、よしっ!後はこのまま飲むだけだ!」

 

そしてダピコは漸くコーヒーを口内へと運ぶことに成功た。後はそのまま飲み込みミッションは成功する……

 

「ブフッ!!あ、あぁ!!これっ、無理だっ!アイスっ、アイスを食べなければ!!」

 

訳がなかった。口に含んだ瞬間盛大に吹き出し、ダピコは注文していたバニラアイスへとてを伸ばす。掻き込むようにしてアイスを頬張るダピコ。

 

「あ、甘い……うぅ、まだ苦味が残ってるぞ……カイト達は何故コーヒーをいとも容易く飲みきれるんだ。あれは流石に飲めないだろう……」

 

若干涙目になりながらダピコは弱々しく嘆く。それを見かねたエレナが

 

「流石に早すぎたかも知れませんね。もう少し成長するか、苦味が好きになればいつかきっと飲めるようになりますよ。」

 

「成長か……やはりさらに多くの経験を積まなければならないんだな。ここは一度折れるしかないか。」

 

「飲めはしなかったかもしれませんが、そのダピコさんの何にでもチャレンジしてみる精神はとても良いものだと思いますよ。その気持ちを大切にしていけば意外と早く飲めるようになるかも知れません。頑張ってくださいね、ダピコさん。」

 

「そ、そうか……あぁ、頑張ってみる。」

 

「ふふっ、その意気です。」

 

とダピコにフォローを入れた。

 

そんなこともありながら一同は話へと花を咲かせる。その光景を遠目から見ていた店長は『あぁ……生きてて良かった……』(感涙)と今までの自分を振り返りながら感傷に浸っていたらしい。

 

そんな時、一人の問いかけがちょっとした波乱を呼ぶことになる。

 

「カノン、貴方は最近白守進と恋仲になったと聞いたけどうまく行っている?」

 

「……へ?」

 

キリコからカノンへの単純な疑問から来る質問。その問いにカノンは数秒間頭が真っ白になってしまった。

 

「わ、私も気になります。その……あの辛かった出来事からカノンさんがちゃんと幸せになれているのか知りたいです。」

 

「あー……私も個人的に気になります。そ、その……デュエマシティは余り色恋沙汰とは縁がないと言いますか、身近にそういった話題に触れる機会がないので興味があります。」

 

「ちょっと皆!あっちの席に会話が聞かれるかもしれないから声のボリュームを落としなさい!も、もし話すのだとしたら慎重にしないと。」

 

キリコの質問に便乗する3人。ルピコは純粋な心配の気持ちでの思い、エレナは己と縁の余りない話題についての好奇心、ルカは話を聞き出す前提での周囲への提言、と各々の反応は三者三様であったと言えよう。

 

ルピコに関してはなんとも言えないが、他2人に限っては是非とも聞いてみたい話であっただろう。所謂

 

「あ、あれか。確か恋バナというやつだろう。エレナの言う通り、その様な話はシティでは余り耳にしないな。」

 

女性の大好物な会話におけるテーマの一つ

 

恋バナというやつだ

 

ダピコが自身の得た知識を必死に思い出しながら何とか話に着いていこうとする。

 

「え、えと……そんなに気になる?」

 

「イエス、知的好奇心は抑えられない。これは避けられない運命。よってカノンは私達に最近起きた出来事を話す必要がある。」  

 

いかにも水文明のクリーチャーらしい言い回しでキリコはカノンから詳細を聞き出そうとする。ここで断る理由も特にないし、なんだかカノンもこの場の雰囲気に当てられて興が乗って来たのでもう勢いで喋ってしまおうと、そう思い立った。

 

「うーん……じゃああの時の話しでもしましょうか。あれは帰り道の時だったんだけど───」

 

ルカに言われた通り声の大きさを少し下げて話し始めるカノン。カノンとしても隣に会話を聞かれるのは恥ずかしかったのでこの忠告は大いに助かった。

 

カノンの話を聞いている最中の皆はそれはもう凄かった。恋愛映画を見ていたカノンといい勝負をするくらいの反応の仕方だった。ルピコが『わ、わぁ……私が今飲んでいるフロートよりも甘々ですぅ……』と顔を赤くしながら話を聞いていたのが印象に残っている。

 

ルカは『し、進展早すぎないかしら??』と酷く困惑していて、エレナは『……私、最早何かの小説を聞かされているのではないかと錯覚してきました。でも、今実際にその経験をした人が目の前に居るんですよね……語彙が悪くなりますがなんだかその……凄いですね。」と柄にもなく今思った気持ちをオブラートに包まず率直に言葉を吐き出していた。

 

キリコに至っては『今度マスターで試してみるのも、アリ?』と何処に教訓を得たのかは分からないが、カノンの行動を真似ようとしていた。傍目から見ていてもキリコはカイトに恋愛感情を抱いてはいない……ように見えているがもしかすると、この日を境にその見え方が変わってしまうかもしれない……とカノンは密かに思った。

 

因みにダピコも話を聞いていたのだが、それよりもコーヒーをどう処理しようかという問題に直面していたので反応はこの中で一番薄かった。ダピコ曰く、砂糖を入れても入れても苦いとのこと。

 

そんなこんなで女性陣は一方の席には内緒で恋バナに精を出すのだった。

 

「……?なんかあっち盛り上がってるなぁ。カノンもノリノリだしなに話してんだろ。」

 

時折小声で聴こえてくるキャー!だったりおぉー!だったりの声が気になる進。しかし、そこに合わせてカイトは

 

「余り気にする程のことでもないんじゃないかな。」

 

とあっけらかんに答えた。

 

「それよりも、進くんには紹介し忘れていた人が居たのを今思い出したよ。あそこに座っている緑髪の女の子、あれは僕の相棒であり切り札であるキリコって言うんだ。いきなり人数が増えてて驚いただろう?悪かったね。」

 

精神世界で見ていた光景に確かにあの子と瓜二つの人物がカイトの側にいた気がする。微かに覚えていた記憶を思い出しながら、進はその子がキリコという事実に驚いた。

 

「へぇ~!あの子キリコか……!キリコっていうとやっぱりあのキリコなの?」

 

「あぁ、あのキリコだ。君の想像している通りのね。」

 

「はぇ~あのキリコががねぇ……ウェディングの時も思ったんだけど、何でクリーチャーなのにこんなにヒト型が居るんだ?色々と凄い街だよなほんと。」

 

「あははっ、何だかこんな反応を見るのも久しぶりだなー!皆は街の人も含めてああいうクリーチャーっぽい格好とか、明らかにこの人間の世界に適応できてないヒト型クリーチャーとか見慣れちゃってたからねー。」

 

驚いている進に対してチュリンは初期の初々しかった頃のプレイヤーを思い出していた。

 

「えっ、対応できてないクリーチャーって……もしかして分かってないだけでシティって結構クリーチャーが居るのか?」

 

「そうだな。街を行き来しているクリーチャーはかなりの数いるんだ。この前存在をバラしてはいけない、なんてことを言っていたのに変な話だとは思うかもしれないけどね。」

 

「マ、マジかぁ……じゃあ余りにも不自然な人がいたらそれはもしかしてって言うのも……」

 

「十分あり得るな。ま、俺達は大体その容姿が分かってるから驚くことはねぇけど。良かったら今度紹介してやろうか?気が合う奴がいるかもしれないぜ?」

 

「おー!いいねそれ。俺も色んなクリーチャーに会ってみたいな!時間ができた時お願いするわ!」

 

「おう、任しとけ!」

 

グレンの申し出に進は心踊らせた。あのフィクションの世界だと思っていたものが現実にいて、そして話せる。遊べるのだと知ったらそれを断る者は居ないだろう。快くその提案を受け取った進にグレンは得意気な笑みを浮かべて返事をした。

 

「っと、そうだった。進くんに渡したいものがあるんだ。」

 

「渡したいもの?」

 

カイトが荷物を漁りながらそんなことを口にする。その言葉に進は首をかしげた。この場に居る皆(女子組の席以外)も聞いていなかったのかカイトの言動に疑問を浮かべている。暫く待っていると、カイトが徐にその"渡したいもの"を取り出して進に見せる。

 

「あ、そ、それはっ……!?」

 

見覚えがあった。掌サイズのそれは綺麗なデザインをしていて、ある人に凄く似合いそうな見た目を形作っていた。

 

「何だこれ?」

 

「これは……髪飾り?」

 

チュリンがそれを見ながら放った一言、その言葉に間違いは何一つとしてなかった。

 

「ちょっ、ちょちょちょ!!!な、何でそれ持ってんの!?」

 

酷く焦る進にカイトは動じることなく

 

「君の死体検査をしていたら偶然、ね。」

 

と微笑みながら答えるのだった。それに、何処と無く視線が生暖かいような気がする。

 

「ん~?進くぅーん?なーんでこんな物持ってるのかな~?白くてキラキラしてる髪飾りかー……あれ、何だか1人だけ似合いそうな人がい・る・よ・う・な?」

 

チュリンがニヤニヤしながら詰め寄ってくる。

 

コイツ……分かってて言ってやがる。俺がカノンにあげたくて買ったってのを察しててわざとこんなことを言ってるんだ!畜生ぉ……普通に恥ずかしいわ!!

 

と心の中で悪態を付く進。カイトにお礼を言って受け取ろうと思っていたが、そこに進は羞恥心を覚えており固まってしまっていた。

 

「チュリン、からかうのはそこまで。」

 

「ふふっ、はいはーい。」

 

いたずらっぽく笑うチュリン。カイトからの注意を受けておとなくしなった物の、そのニヤニヤとした目は俄然変わることはなかった。

 

「?……2人して何言ってんだ?進、お前はこれが何かしってんのか?」

 

一方、何も理解できなかったグレンは只固まっている進に対してそれが一体何なのかを問うことしかできなかった。

 

「ほら、いつまで固まっているつもりだい?君が買ったものなんだろう?それとも僕の見当違いだったかな。」

 

煽るように言葉を掛けるカイト。カイトもカイトでこの状況を楽しんでいるようだ。その言葉に進は意識を取り戻し、恥ずかしながらも目の前にある髪飾りを手に取った。

 

「……これ、アイツには言わないでくれるか?」

 

「どうしてだい?」

 

進のお願いにカイトはその真意を確かめる為に質問する。

 

「カノン、あんまり自分に金掛けられるの好きじゃなくてな。これを買った理由は只俺がカノンが付けたら可愛いだろうなーって思って衝動的に買っただけで……それって結局自己満足なんだよ。そんなものを貰っても喜ばないと思うし、何より押し付けは駄目だ。だから、内緒にして貰えると助かる。」

 

苦い顔をしながら語る進。それに対し、カイトは少し考える素振りを見せながら少し間を空け口を開いた。

 

「わかった。僕たちからは何も言わないよ。」

 

カイトの言葉に安堵する進。しかし、その安心も一瞬の内に崩れ去った。

 

「でも、それは渡した方がいいと思う。」

 

「え?」

 

「君がカノンに渡さない理由には何かあるんだろう。きっと僕たちの知らない出来事が起きたんだと思う。確かにやたら滅多に金を使われても嬉しくはない。優しい人であればあるほど申し訳なく感じる筈だ。だからその言い分も分かる。」

 

「じゃ、じゃあなんで……」

 

「なんで、か。そうだな……その髪飾りには君の想いが詰まっているから、かな。その髪飾りに金を懸けた事実はあるかもしれないが、それ以上に君はこの髪飾りに自身の想いを乗せているんだ。それは時に金を越える価値になり得る。もし仮に7000円位懸かっていたとしても、その物に対する想いが大きければそれは7000円以上に価値のあるものに変化するんだ。なのに、それを渡さないなんて勿体ないだろう?それに……可愛いと思うから付けてみてほしいと言われて嫌な気持ちになる彼女なんていないと思うけどね。寧ろ喜んでくれそうだ。」

 

「っ!!」

 

カイトの説得に進はハッとした。思い返してみると、パックをあげた時はほんの少しだけムッとしていたカノンがニューゲイズを引き当てたとき、進がそのカードにカノンが合っているから買ってみたと説明したところ、その表情が一段と明るくなっていた気がする。これがカイトの言う、金の価値を想いが越えるという奴なのだろうか。

 

それに、寧ろ喜んでくれるというのは……そこのところはまだ分からないが、カイトがそう言ってくれるだけで何故か確かにと納得してしまった自分がいた。カノンならば喜んでくれると自身の勘が応えていた。

 

「そうだよー!それを買った理由が似合いそうだからなんて、そんな純粋で素敵な理由中々ないって!カノンも素直に受け取ってくれると思うな!」

 

「進……男なら、うだうだ言わずに渡してこい!その方がカノンも気分が良いと思うぜ!」

 

「皆……」

 

進を鼓舞する一同に胸を打たれる。

 

(俺は……少し考えすぎる癖がある。そのせいでどうでも良いことで悩んだりすることも少なくなかった。母さんに余り深く考えることはないと何度も注意されたっけな。今の今までその癖が直ることは無かったし、これからも多分直らないんだろう。でも……以前の俺とは違うんだ。今の俺には仲間が……いや、友達が、カノンがいる!俺のことをこんなにも受け入れてくれるんだ!だから、俺はそれに応えるためにもう少しだけで自分に素直に、真っ直ぐに動いてみよう。大丈夫……もし俺がなにか間違ってしまったとしても……この人達ならきっと正してくれる!)

 

このシティに来てからも、何か少しでも気になることがあれば熟考していた進。その思考の先には大抵負の結論が聳え立っていた。そのお陰で回避できた最悪の未来があるのも事実である。しかし、それは本当に一部だけの話でありこの日常生活においてはそこまで重要な要素ではない。頭のなかで先の先まで考えて勝手に判断して動かれてもカノン達は困るに決まっていた。進は漸くそれに気がついたのだ。

 

だからといって、この癖を完全に無くそうとは思わない。助けられた事実は消えないのだ。悪い部分もあるが良い部分もあった。ならばこの個性を一方的に無くすというのはあんまりではないだろうか。なので、進はこの癖を発動する頻度こそは減らそうと思ったが、それとは別に他の活用方法も見つけていこうという結論に至った。でも、取り合えず今は……自分に正直になってみよう。

 

「ありがとう。正直、これをカノンにあげても喜ばれないと思ってたから、皆のお陰で渡す勇気が出た。俺、やってみるよ。」

 

「ふっ、友として当然のことをしたまでだ。礼には及ばないさ。」

 

「大丈夫、カノンなら絶対喜んでくれるよ!進、ファイトー!」

 

「良い顔になったじゃねぇか。それでこそ白守進だな!へへっ」

 

……これが友達かぁ

 

ルピコちゃんやプレイヤーと初めて遊んだときとはまた違った感覚に進は心がポカポカするような気がした。対等な関係になった後に関わる人というのはこんなにも素晴らしいものなのか。

 

「そうと決まれば善は急げ、だよな!よしっ、今から行ってくる!」

 

素直に、やってみたいと思ったことをなにも考えずにしてみる。そう考えた進はもはや自分を止めるということを知らなかった。

 

「あぁ、頑張ってく……ん?まて、今からだって?」

 

「?うん、そうだけど。どうした?もしかしてまだ何かあるんじゃ……」

 

「い、いや……何かあるって訳でもないんだが……今から、今からか……ふむ、今の状況的に考えて果たしてそれはありなのか……?だが進くんは現在正に勇気を出して渡そうとしているんだ。ここで引き留めるというのもまた違う気が──」

 

「お、おい?おーい、カイトー?カイトさーん、カイトさーん?」

 

何やらブツブツと言い始めたカイト。それに困惑を隠せない進が、カイトに何とか反応して貰おうと声をかける。しかし、聴こえていないのかカイトはそれを無視。変わらずブツブツと何か呪文のような早口で何かを言葉に出していた。

 

「あー……カイトは気にしないで。それより僕からも言わせてほしいんだけど……流石に今渡すってのはやめといた方がいいんじゃないかな。」

 

「え、そりゃなんで?」

 

「だ、だって……確かに今渡してもカノンは応じてくれると思うよ?でもね、今ってこの場にみーんな居るんだ。そして談笑してる。そんな雰囲気のなか2人がそういうやり取り始めちゃったらさ……絶対、絶対に──」

 

ここに来て言葉を詰まらせるチュリン。顔を少し赤くしてもじもじしている。今までのイメージしていたチュリンとは全く別の様子に進は面食らってしまった。

 

(うぅ……言えないよー!2人がイチャつき始めるのが目に見えて分かるからやめてなんてさー!!多分進があの髪飾り渡しちゃったら一気に2人の世界が形成されちゃうんだ。それを間近でなんて恥ずかしくて見れたもんじゃないよ!それにお店の雰囲気も損なわれちゃうかもだし!でも進の勇気を無駄にはしたくないんだよなぁ……もーなんでこういうときに限ってカイトはパンクしちゃうのかなー!?)

 

大量の愚痴を心の中に吐露するチュリン。初めてこの場から早く消えたいと思った。素直にことを伝えるべきかどうか迷っていると、それを見かねたグレンが口を開いた。

 

「進、今は我慢しろ。」

 

「へ?我慢?」

 

「そうだ。お前は今会話を楽しんでいるカノンを邪魔しようとしてんだ。無理やり間に割って入ってそれを渡してもカノンは最高に喜べないぜ。やるなら2人っきりで、それも周りに誰もいないときにしな。カノンがお前だけしか見てないときに渡すんだ。そしたらきっと大成功するだろうよ。」

 

(グ、グレン……!!初めてこんなにグレンが頼りになると思ったかもしんないよ!!)

 

チュリンはグレンの説得を聞いて感動していた。グレンに尊敬の視線を送ると、それに気づいたのか小さくウィンクを返したグレン。この時、チュリンはグレンが本当は光文明の使い手なのではなかろうかと思ったらしい。

 

「なるほど……そういうことか。あっぶねー!脳死で素直に行っちまう所だった……ありがとな、グレン!」

 

「へっ、どうってことねぇよ!俺達はダチだからな!」

 

「っ!あぁ!!」

 

こうして2人は熱い握手を交わした。

 

 

店長から今見ているこの光景を言わせて貰うのだとしたら、騒がしいの一言に尽きる。一方は恋バナで盛り上がっていて、一方はプレゼントがどうのこうので議論を交わす。カオスという他ない。しかし、それは不快になるようなものではなく、寧ろ愛おしいと思えるくらい可愛らしい騒がしさだった。

 

静かになりがちな喫茶店だったが、今日限りはそうでもなかったらしい。遠くから眺めていた店長は、これからも頑張ろうと、若者達の活気に当てられながらそう思うのだった。




当初から予定していたのですが、進くんの素性は徐々に明らかにしていこうと思っています。なので彼の性格以外は割となにも分からないように書いてきました。明確なゴールも一応作っているので、お付き合い頂けると幸いです。
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