とある日の休日だった。進の部屋に女性の声が響き渡る。
「進ぅー。あんた休日なのになんでなにもしないのよー。」
「なにもしないって、あのなぁ……別に良いだろ?毎週毎週何かしないといけないなんて疲れる。ゆっくりしてたいの!ほら、帰った帰った。」
「えーん!私の進ちゃんが反抗期になっちゃったぁー!」
無様に嘘泣き姿を晒すこの人物こそ、進の母である白守唯その人である。
「うげっ、抱きつくなよ!暑苦しい。」
「なんでー!今寒いんだし良いじゃない!ねぇどうしてカノンちゃんと一緒に居ないの?彼氏なんだったら時間のあるときくらい一緒に居てあげなさいよ!」
「バッ、何言ってんだよ!常に一緒に居る訳にゃいかねぇよ!カノンにも1人の時間、プライベートが必要なんだ!俺の我が儘で時間をとれないだろうが!」
「えー、でもー……」
「でもじゃねぇ!何が不満なんだ!」
一向に引き下がらない唯に青筋を立てる進。親というのは何故こうもしつこいのだろうか。小さいときから唯は細かいことを何度も聞いてきていた。最初はその気遣いが嬉しかった記憶があるのだが、思春期に突入してしまう年齢になってからはそれがとても鬱陶しく感じていた。
「だって、結婚するんだったら結局ずっと一緒に居なきゃいけないのよ?ずーっと他人と一緒に居たら疲れるかもしれないけど、それもいつか慣らせないと後々困るなーって思って。」
「ブフッ!けっ結婚!?気が早すぎるだろ!」
「え?あんた別れるつもりなの?」
「なわけない!それだけはない、マジで。」
「じゃあやっぱり側に居てあげるべきでしょ。」
「だからそれはまだ早いって……はぁ、もういいや。」
このまま言い合いをしていても確実に長引くだろう。長年生活してきた家族だからこその勘が働く進。そのお陰か言い訳をする前に何とか踏みとどまれた。
「何でまだ俺ん家いんだよ。今日は1人でゴロゴロするって決めてたのに……仕事はどうした仕事は。」
「そんなのまだまだ先に決まってるじゃない。職場にあんたの訃報を伝えたら長期休暇が出たちゃったからね~。恨むなら自分を大切にしなかった過去の自分を恨みなさい。」
「マージか……ってそれやばくね!?俺死んでないんだけど!?なんて説明すんだよ!」
「うーん……普通に一回死んだけど奇跡が起きて甦りました~で良くない?実際嘘じゃないんだしこれでいいでしょ。」
「本気かよ……それ。」
進は己の死を伝えられたときの唯の周囲の人々の反応を思い浮かべてみる。大変そうだなぁとあくまで他人事のように考えておこうと思った。これ以上頭を抱えたくない。
「そっかー。じゃああんたは今日どこにも行かないってことで良いのね?」
「そ、そゆことだから、じゃさっさとホテルなり何なりに帰ってくだせぇ。」
「はいはい、分かりましたよーだ。あっ、そうだ。あんたにやるものがあるのよ。」
突然思い出したかのように唯が声をあげる。部屋を出ていく寸前に気づいたらしく、忘れるところだった……と小さく呟く唯に対して進は訝しげな表情を浮かべた。
「はいこれ。」
「え、なにこれ?」
唯の手元にある"それ"が余りにも意味不明な見た目をしていたので、進は思わずすっとんきょうな声をあげてしまった。
恐らく持ち手だと思われる長い棒。その先端には毛のようなしなやかさと細さを誇っている長い鉄らしき物体が無数に付いていた。さらに、その無数の細長い鉄の先端にも何かがまた付いている。何かというのはそう、只の球体である。これらの組み合わせが未知の造型をなしており進の脳を混乱へと導いていた。
「な、なんかキモ……」
「こらっ、そんなこと言わない!」
「いや、でもねぇ……まぁいいや。取り合えず、それ何なの?」
進の質問に唯は胸を張ってこう応えた。
「これはね……メタルシャワーっていうの!」
「メタルシャワー?」
聞いたことのない名前に首をかしげる進。その反応を見越してなのか、唯が早速説明しようと口を開いた。
「これを頭に沿わせて上下に動かすと、凄く気持ちいいの。所謂マッサージ器って奴ね。私も使ってみたけど……やばかったわ。ほんとに……。」
少し呆けた表情になる唯。その様子から、嘘はついていないことを確信する。だからこそ疑わしかった。こんな特殊な形をしている物が本当に人を気持ち良く出きるのだろうかと。
「メタルシャワーねぇ……こんなんで本当に気持ち良くなれるのか?ちょっと貸してくれよ。」
「あ、疑ってるわね~。いいわよ、貸してあげる。嘘じゃないから安心してね。本当に仰天するから。」
「ふーん。」
そんなやり取りをしながら進はそのメタルシャワーとやらを手にした。
「えっーと、此を頭の上にやって……それからぁ……?」
こうか?と唯に言いながらメタルシャワーを頭にかける……つもりだった。
ピンポーン
「「!?」」
突然のインターホンに一同は動きを止める。メタルシャワーは寸でのところで止まっていた。あと1ミリでも下に行けばいいというところで進はメタルシャワーを一旦置いて玄関へと赴く。
唯が暫く待っていると、何やら興奮気味になって帰ってきた進が一言に唯に対してこう言った。
「ごめん!頼んでたボックス今日届くの忘れてた!今からか開けてデッキ作らないといけないからもう帰ってくれ!1人じゃなきゃ集中できない。メタルシャワーはまた今度な。」
「えぇ~……」
期待していたがゆえにマッサージが行われなかったことに対する残念感が強まる。しかし、唯も我が儘は言ってられなかった。デュエマ関連のことは邪魔したくないのだ。進のデュエマに対する情熱を誰よりも知っているからこそ、生まれてくる思考だった。
「一応言っとくけど、それをあげた理由は最近あんたが疲れてるんじゃないかなって心配になったからよ。だからちゃんと癒されてよね。」
「なるほどね、そういうことか。んじゃ俺も一応礼言っとくかな。」
「ふふっ、全くもういつからこう素直じゃなくなったのかしらね。」
親子らしい会話を交わす2人。その後唯は進に言われた通り家を出ていった。1人になった進は暫くの間パック開封とデッキ作りに勤しんでいた。
少し落ち着いてきたところで進は唯から貰ったメタルシャワーが目に入る。
「あー……此どうしようか。」
今日はもう遅い。正直今すぐにでも寝たい。折角唯がくれたのだから一度くらいはマッサージをしてみたいと思うのだが、それを睡魔は許してはくれなかった。
メタルシャワーを使うのはまた今度にしようと進は考える。となると、此は片付けなければならない。しかし、進の住んでいる家は狭くもはやしまう場所など皆無だった。別に汚いわけではないのだが、デュエマグッズで埋め尽くされているこの部屋に他の物をしまう余裕がなかったのだ。
困り果てた進は、取り合えず今はバックにでも入れておこうと思い立つ。そして自身のバックのチャックを開けて、その中にメタルシャワーを丁寧に入れた。
「よし、とりまこれでいいか。ふぁ~あ、ねっむ。早く寝よ。」
こうして進はとある休日を過ごし終えた。この日が原因でまさかあんな出来事にあってしまうとも思わずに……
「いや~、なんか悪いな。毎回毎回上がらせて貰っちゃって。」
「なーに言ってるの?此のくらいなんてことないのだわ。寧ろ貴方がここに居る方が何だか良いなって思うなぁ。」
「うぉぉ……言うね……」
あの休日から暫くしたまたまたある日。進とカノンはまたもや家で遊ぶという約束ごとを交わしていた。因みに今回ウェディングは居ない。『外の世界に対する知見を深めてきます。』といって出掛けにいったらしい。
「といっても、今回はやることないんだよなー。いきなりカノンから誘われたからなにも準備できなかったや。申し訳ねぇ。」
「そんな、気にしないで。こうしてなにもせず進と一緒に過ごす。そんな時間も私は好きなの。私は貴方とさえ一緒に居れればそれで良いのだわ。」
「カノン……!ほんっとにお前って奴はぁ~!どうしてこうも嬉しくなるようなことばっかり言ってくれるんだ~?」
そう言って進はソファに座っていたカノンの側へと近寄ると、わしゃわしゃと頭をなで始めた。
「んっ……んふー……んへへ///」
幸せそうな表情を浮かべるカノン。まるで小動物かのような愛くるしい仕草に進は更に撫でを加速させた。
「すすむ~♪」
「ん、なんだ?」
「だーいすきっ!……ふふっ、言っちゃったぁ♪」
「アッ……」(尊死)
気分のノッてきたカノンが突然ストレートに言葉をぶつけてくる。恥ずかしかったのか、両手を頬に当て少し顔を赤くするカノン。しかし、その顔は満更でもなさそうである。その光景に進は無事尊死した。
それから暫く頭を撫でていた進。何といっても髪質が良いのだ。さわり心地も良いし、艶もある。おまけに色も綺麗で、その髪のお陰でカノンが10割り増しで可愛く見える。控えめに言わなくても神だと言わざるを得ない。
そんなこんなで時間は過ぎていく。ウェディングは『外の世界への知見を広めてきます』といって今日は居ない。この空間は完全に2人のものであった。そんなときだった、事が起きたのは。
「あっ、そういや母さんに貰ったあれバックに入れっぱなしじゃね……?」
「進?どうかしたの?」
カノンの頭を撫でている最中、突如としてそんなことを思い出す進。撫で方が弱くなり、なにやら考えているような素振りを見せていたのでカノンが少しだけ不安そうに顔を覗きこむ。カノンの表情を見て進は慌てて誤解を解こうとする。
あの件以来、カノンは進に対して少しだけ過保護になってしまっていた。勿論、母親も似たような状態だ。詰まる所不穏な状態の進に2人は敏感なのである。顔が見えなくともすぐ気づかれる。
「あ、いやちょっとな。」
「……困り事とかじゃ、ない?」
不安げに訊くカノン。進はカノンの様子を察してか、少し明るく振る舞うことにした。
「ないよ。ありがとうな、ほんとに。こんなにも俺の事心配してくれてさ。でも安心してくれ!もし今度何か困ったことがあったりしても絶対隠さず言うから!」
「……よかった。」
心底安心してそうな声音で一言、カノンは呟いた。すると次にカノンは不安そうな表情から一変して、少しいたずらな笑みを浮かべ
「ねぇ、私の事……ぎゅっ、てして?不安にさせた罰。」
と恥ずかしげもなくそう言い放った。
やはりこの子、割とグイグイ来るタイプだ!以前の控えめ気味だった性格からは想像もつかない。というか、ウェディングを辱しめていた時も若干S寄りの事をしていた気がするし……全く、最高やな!
等とくそほどどうでも良いことを心のなかで思う進。しかし、この無駄な思考こそが幸せそのものなのだ。もっとこう言った無駄が増えていけば何れは世界も平和になるのかもしれない。
「ははっ、しょうがねぇな。」
撫でていた手の動きを止め、その手をそのまま頭の後ろへと移動させる。そして進は自身の胸元へと抱き寄せた。ふわっと甘い香りが鼻の中へと入ってくる。カノンの体温を感じる。この状況が酷く進を気分を高揚させた。
「えへへ……あったかぁい。ずぅっとこうしていたいのだわ。」
どうやら満足して貰えたらしい。よかったよかった……
じゃなくて!俺そういえば、バックの中にメタルシャワーが入ってるのか気になってたんだった!余りのカノンの可愛さに記憶が飛ばされるところだったぜ……
──白守 進──
(なんか俺のさっき思ったことフレーバーテキストに乗せても違和感ねぇな……って違うだろ!やばい、カノンのせいで頭が上手く働いてない!少しでも気を抜いたらカノンの事しか考えられなくなる!)
進は今一度、このカノンという少女の持つ破壊力を理解した。笑顔だったり声だったり、小さな所作だったりとカノンの魅力は尽きることを知らない。だが、その全てが一撃必殺級の物かといわれればそうではないのだ。別に一部分のカノンを見たとしても、うおっかわいいぃ!!!という思いも一瞬しか頭の中を過らない。
……逆に考えてみてはくれないだろうか。一瞬の所作ならば耐えられる程度の可愛さ。それをずっと目の当たりにするとどうなる?そう、現在の進のように徐々に徐々に理性が潰されていって最終的にはカノンの事しか考えられなくなってしまうのだ。
カノンッ、なんて恐ろしい子……!
そんな畏怖の念も抱きつつ、進は話を戻そうと口を開いた。
「さっきカノンが気にしてたやつ、言おっか?」
「んー……そうね。私自身気になるのもそうだし……何より進の考えていることとかもぜーんぶ知りたいのだわ!」
「お、おぅ……わかった。」
魔性の女かな?(進特効)
「つっても、別に大事なことって訳でもないし面白い事でもないんだよな。ま、ちょっと待ってて。」
そう言って進は自身の持ってきたバックの中身を漁り始めた。抱き締めてくれていたその手が離れたことにカノンは名残惜しさを感じる反面、進の考えていたことが分かると思うとワクワクもしていた。
「あった!これだよこれ。やっぱ持ってきちゃってたか~。」
「っ?!そ、それ何なのだわ……?」
唯から貰ったメタルシャワーを取り出す進。その異質な物体を目にしたカノンは驚きと戸惑いを隠しきれなかった。
「ん?これなぁ……母さん曰く、頭をマッサージする器具なんだとさ。俺は信じられねぇけどな。」
「ゆ、唯さんがマッサージ器って言っていたの?」
「そう、これ母さんからこの前貰ったんだよな。俺もカノンみたいな反応したんだけど、そしたら不服そーな顔して此は凄いマッサージ器なのよ!って言われちゃってさ。使ったことはないけど多分相当な物なんだとは思う。」
「へぇ~。不思議な形。」
興味津々にメテルシャワーをまじまじと見つめるカノン。その様子を見ていた進はとあることを思い付いた。早速提案してみようと口を開く。
「なぁ、よかったら使ってみるか?」
「え、いいの?」
思わぬ言葉に目を丸くするカノン。
「うん。何か目、キラキラさせながらこれ見てたしさ。それに俺もこのマッサージ器具が本当に効果のあるものなのか知りたいし。」
「で、でもそれって多分唯さんは進の為にあげてくれたんじゃないのかしら……最初に私が使うなんて、なんだか申し訳ないのだわ。」
「いいっていいって。それくらい別に気にしないと思うから。あと俺も普通に後から使うと思うし大丈夫。心配することはないぜ。」
進の言葉を目の前ににカノンは己の申し訳なさよりも好奇心が勝ってしまった。元々カノンはこの世界の未知なる部分を知りたいと強く願っている節がある。初めて食べるスイーツや、初めてこんなに栄えた街を見たときはそれはもう言葉には言い表せないくらいに感動したのを覚えている。それくらい、カノンはこの世界について関心があるのだ。
「そこまで言うのなら……分かった、やってみるわ!」
先程の申し訳なさそうな表情から一変、直ぐ様キリッとしものになったカノン。未知なる道具を使うので幾分かの心構えは必要なのだろうか。現在のカノンの表情は正に大きな何かを待ち構えんとする勇ましいものへと変わっていた。
「んじゃ折角だし、此は俺が持つよ。どんな感じで当てれば良いのかとかやってみたいし。」
「わかったのだわ。」
そう言って進はメタルシャワーを手に持つと、カノンの頭の上まで持っていく。念のため進は今からするぞ、と確認をとるとカノンは元気よく返事を返した。
「よーし……それじゃ先ずはゆっくりとしてみるか。ほいっ」
進の掛け声と同時にカノンの頭上に位置していたメタルシャワーが振り下ろされる。まるでタコが水中を移動するときに足を伸ばしているかのような形状が、カノンの頭に合わせてその形に沿うようにして変形していく。
その瞬間、カノンは
「ッ!?」
ゾクリ、背筋がゾワゾワするような感覚に陥った。
なんだこれは。力が抜ける。抜けていく力の代わりに今まで感じたことのない快感?快楽?が全身を駆け巡る。進がメタルシャワーを上下に動かす度に甘い刺激に襲われ、その度にカノンは身体をピクッと震わす。それも無意識にである。初めての感覚だった。その余りの気持ちよさにカノンは遂に
「あっ……ひっ、んぅっ!ふぁっ、あぁ……」
と甘い声を漏らしてしまうのだった。
(なに、これっ……あっ…それ、はっ…!…こ、こんなの知らないっ……わた、し……どうなっちゃってるの?頭がふわふわして、からだぞくぞくして……ひぁっ…!……私が、私じゃないみたいぃ……気持ち、いいよぉ……)
「は、あぁっ……!んんっ…ひぁっ」
カノンの漏れでる声は止まらなかった。少し動かすだけでも身体をピクピクさせながら声を出す。恐らく、快楽への耐性が皆無なのだろう。だとしてもだ。流石にこの反応は……
(あー…………不味い……これ……)
思春期の男の子が目の当たりにするには刺激が強すぎるのだった。
(まだ始めたばっかだってのにこれかよ。どうなってんだこのマッサージ器具。何つーもん渡してくれてんだよ。)
心のなかで愚痴る進。一見冷静そうに見えるが、実のところはそうじゃない。あの一瞬で限界を超えてしまったのだ。その結果進はある種の賢者タイム(意味深……なわけねぇだろそのまんまだよ)のような感じになってしまっていた。
経験したことがあると言う人も少なくないのではないだろうか。たまに自身の想像しているもの以上の光景を目にすると自分でもよくわからないくらい冷静になってしまうことがある。今の進は正にそれだった。
平常心を保っているように見えるが、ふっつーに興奮しちゃってる。ムードも何もないのに最低だとは思う。只のマッサージでの出来事なのに何たる始末だと、自分を殴ってやりたくなる。しかし、それでいても尚押さえることなど年頃の男の子には無理な話であった。
(俺はマッサージをしているだけ俺はマッサージをしているだけ俺はマッサージをしているだけ俺はマッサージをしているだけ俺はマッサージをしているだけ俺はマッサージをしているだけ俺はマッサージをしているだけ。)
念仏のように唱える進。こうすることでしか平常を保てなかった。今ここに、最もカオスな空間が誕生した。
「そ、そろそろやめる。」
「あっ…ふぅっ…」
そう言って進はメタルシャワーをカノンの頭から離した。
少し……いや、ものすっごく名残惜しそうにしながらメタルシャワーを見つめるカノン。あんなに熱烈な視線を向けられるなんて少しコイツに嫉妬してしまう。俺でもあんな目で見つめられたことはない。
「どうだった?」
まだ少しだけ身体をピクピクさせているカノンに問う。今のカノンと話しているだけでも理性を保つのがきついが、念のため評価だけは訊いておこうと思ったのだ。カノンは進の問いに、とろんとした目で
「しゅ、しゅごかったよぉ……」
と弱々しく呟いた。
「ッ!!!!!!!!!!!!!!!」
金槌で頭を殴られる……否、ぶっ叩かれたような衝撃が進を襲う!!跳ね上がる心臓、カッと開く瞳孔、打ち砕かれそうな理性。そして何より
(静まれっ……静まれぇぇぇ!!!!我が愛しき子よっっ!!!)
睡眠から目が覚めようとする可愛い可愛い子供がいた。
不思議なことに、この子供は寝ている間だけ子供でいられる特殊体質らしい。いったいナニ何だろう?()
できれば一生明かされないでほしいところだ。
「どうしたの?そんなに私の顔を見て。えーっと……や、やっぱりその…さっきの私、ちょっと情けない声……だ、出しちゃってた……わよね////」
恐らくカノンにそう言った知識はない。そんなカノンですら今のだしていた声は本能的に恥ずかしかったのだろう。顔を赤く染めながら、しかし自身でもよくわからない羞恥心に苛まれ、困惑しながら話しているその仕草も今の進には
「!?ぐっ!!!!!!」
大ダメージだった。眠れる我が子の睡眠を邪魔する障壁は目の前に居る。普通であればそそくさとその場を去るのが正しいのかもしれないが、生憎目の前の女の子は進の彼女なのだ。何も言わずにその場を立ち去るなど疑われるに決まっている。したがって今の進には
(帰ることが出来ない……ならばここはっ!!耐えるしか、ないッ!!!!!)
男としての覚悟を決める他なかった。その後も進はカノンの家で過ごしている間、あの出来事が過っては耐え過っては耐えを繰り返していたという。因みにその日進の帰りが妙に早かったことに少しカノンは引っ掛かっていたそうな。
こんなカノンとの日常を書くのが夢でした……無限のアイディアが私を待っている!!