どんよりとした空気感が場を支配する。3人はもう先の展開が想像できなかった。
「サスペンスの能力は水晶化やエターナル・Kだけじゃなかったの。サスペンスは、ある石を埋め込んだ相手のことを操ることもできたのだわ。」
「もしやそれは、トライストーンのような原理なのではないか?」
「えぇ、サスペンスはそう捉えてもらって構わないって言っていたのだわ。」
修羅丸の質問をカノンは肯定する。
「くっそ…盲点だったぜ。そういやそんなもんあったな。」
「進を戦場の場へと呼び出したのか…!なんという奴じゃ!」
ずる賢いサスペンスの戦略にプリンプリンと鬼丸は頭を抱えた。
「それに、操られた人たち…その石を入れられた人は皆何時かは水晶の花になるって言われたわ。これはサスペンスを倒しても止めることが出来ない、もうどうしようもないんだって、そう言われたの。」
「なにっ…!?」
「嘘だろ!?」
「そんな…」
余りにも残酷な事実に一同は体を震わせた。そして何より、当時のカノンの心情を考えて、酷く辛い気持ちになった。
「あ、安心して。後日サスペンスの言っていたことは限りなく嘘に近いことだろうって、カイトとキリコが分析してくれたのだわ。でも当時のは私、それを聞いたらね…ちょっと取り乱しちゃったの。体が壊れてもいいから何とかしなきゃって、進を救わないとって思ったのだわ。そしたらその願いが届いたのか、シューゲイザーが仲間を連れて助けにきてくれたの。」
「…無理もない。その気持ち、察するのじゃ。しかしそうじゃな……なるほど、かの戦いの時にも披露していたあの召喚術じゃな?確かそのとき聞いた名前もシューゲイザーだったと記憶しておる。そやつが現れたのか…」
「えぇ、その通りなのだわ。私は自分の全力を出して門を開いた。それこそ、もう体が壊れてしまいそうなほどに力を入れたの。だからなのかしら。シューゲイザーはキリュージルヴェスを二体も引き連れていたの。」
「キリューか、中々考えたなぁカノン。あれだろ?スレイヤーを使おうって魂胆だろ?」
鬼丸が得意気にカノンの思惑を考察する。プリンプリンも鬼丸の意見に同調するように頷いていた。やはり火文明の力をもつ鬼丸と、自然文明の力を部分的にもつプリンプリンはキリュージルヴェスを知っていたようだ。修羅丸は最初なぜキリュージルヴェスを呼んでいたのか不思議に思っていたのだが、2人の考えを悟り一人で静かに納得していた。
「力ではゼニスに敵いそうもないからの。実に合理的な判断じゃな!それで、サスペンスはどうなったのじゃ?」
「ねーちゃん、もう分かるだろ。ここに進はいるし、カノンをみる感じじゃ現在進行形でサスペンスに困ってる様子もない。てことは、もうスレイヤーで倒せたということなんじゃねぇか?」
「それはそうかもしれんが…やはりこういった報告は当事者からちゃんと聞かないといけないのじゃ。事実あっての情報じゃからな!」
「それが…えーっと実は……サスペンス、倒せなかったの。」
「え?」
「は?」
「……嫌な予感はこっちだったか。」
カノンの衝撃発言にプリンプリンと鬼丸はすっとんきょうな声を上げた。カノンの様子からある程度の悲惨さを想像していた修羅丸だけが冷静を保てているようだ。
「じゃ、じゃあなんで今ここに進が居るんだよ?カノンしかその状況をひっくり返す事は出来ねぇ筈だろ。カノンがどうにかしなきゃ進は水晶の華になっちまうんだろ!?スレイヤーを3回使っても倒せなかったって…そんな出鱈目な話、あるのかよっ……!」
混乱する鬼丸。カノンを必要に問い詰めるその姿には明らかな動揺が目に見えて分かった。
「……鬼丸、今はカノンの話を聞こう。最早この話の考察は無意味だ。先の展開を予想するより聞いた方が早い。何か引っ掛かる部分があって、それをカノンに質問するのだったらせめて有用性のある事だけを質問するぞ。今のお前はカノンの体験を聞いて驚いているだけだ。」
「あ、あぁ……すまねぇ。話、続けてくれ。」
修羅丸の指摘に熱が冷めたのか落ち着きを取り戻す鬼丸。だがその表情はどこか不安そうに見えた。
「鬼丸…えぇ、分かったのだわ。」
鬼丸の反応は酷く合理的で、心の底から理解できた。だからこそ同情的な感情を抱く。それと同時にキチンと話さなければならない使命感に駆られるカノンだった。
一拍置いて、カノンは口を開く。
「水晶の華のストックは無くせたんだけど、でもそれだけだった。止めまでは手が届かなかったの。今のサスペンスは私たちの呪文で強化されている状態。はっきりいってもう私たちの勝てる相手ではなくなっていたのだわ。」
「因みにその呪文というのは一体何を使ったのじゃ?」
「ルカとエレナは聞いていなかったからわからないけれど…私は天頂秘伝・ゼニスレクイエムを使ったのだわ。」
「あれか…それはかなり不味いのじゃ。」
「マジかっ…!ありゃとんでもねぇ呪文だろ。それを奪われたってのか!」
「そうか…なるほどな。確かにあれを使われるのは絶望的という他ないか…。私も一度姉上と鬼丸に見せたことがあるのだが、2人がかりでも私を止められなかったのだ。その時は私の得た力を改めて見直してみるという名目の下使っただけだからブレーキが効いていたが……実戦で使われたとなるとかなりきついな。」
各々が戦慄する。元から強いサスペンスが更に強化されているなんて想像もしたくなかった。
「えぇ、それに加えて私も重傷を負ってしまったの。皆も動けなくて、逃げることすら叶わない。そんな状況だった。その時一瞬思っちゃったの。私、ここで終わりなのかな…って。実際あのサスペンスの事だから時間なんて与えず直ぐに私たちの事を殺しにくる筈なのだわ。だから少なからず私も覚悟したの。だというのにサスペンスは──」
余興を思い付いたって言ったのだわ
「「「…………」」」
「その内容は、進を操って私の事を殺す事だった。それをするのに理由なんてなくて、あるのはただ自身の復讐欲を満たしたい自分勝手な思いだけ。だからサスペンスは私をみて凄く笑っていたのだわ。」
部屋が静まり返る。先程までカノンの話を深く勘繰りながら質問してきていた一同が何も言えなくなっていた。
「進は私の首を力強く締め付けて来たわ。皆がどれだけ呼び掛けても進は聞こえてないのか私の事を殺そうとより一層力を込めるだけだったのだわ。」
カノンの発言から少しの間が空く。
「……余りこのようなことは言いたくなかったが…屑だな。サスペンスの素性は少し知っている程度だったがまさかここまでするとは思ってもみなかった。無駄な行動は避けるのがサスペンスのポリシーにも近い特徴だったんだがな…まるで別人みたいだ。それとも復讐に囚われ過ぎていたのかも知れないが……誤差だろうな。」
最初に声を上げたのは修羅丸だった。余りの悪魔の所業に若干引いている様子である。
「くっそ…聞いてるだけでむかっ腹が立ってくるぜ…!あいつ、そんなに根が腐ってやがったのか!余興とかいってんのも許せねぇ!」
「大切な者の手で殺すとは……サスペンスは実に悪趣味なのじゃ。流石にわらわも憤りを隠せないのじゃ。」
後の2人も続いて感想を溢した。当然鬼丸もプリンプリンも怒っており、カノンを殺しかけたこと、そして何より親しい間柄の人間を殺人に用いたその悪辣な行為にもはや呆れすら感じていた。
「でもよぉ、話を聞いてる感じじゃもうなす術無しに思えるんだがどうやってその場を乗りきったんだ?カノンがここにいるってことは多分逃げられはしたんだろ?ってことはサスペンスはまだ生きてたりする…なんて事もあるんじゃねぇか?」
鬼丸の意見に修羅丸とプリンプリンは深く頷いた。恐らく3人が一番気になっている部分はそこだろう。カノンがこの場にいて元気に話をしている。これが過去の事件を乗りきっただろうと言いきれる最大の証拠であった。
質問せずに話を聞こうと言っていたのに気持ちが先導して質問をしてしまった鬼丸の事は後で叱ろうと修羅丸が考えていたのはまた別のお話。
兎に角、核心に迫る質問はしたのだ。カノンはそこの要点を話してくれる筈。今はその事に集中しよう。一同の気持ちは一つだった。
「鬼丸の言う通りよ。確かに進はサスペンスに操られていたわ。でもいきなりその洗脳が解けたのか首を絞める力が弱まったの。何が起きたのかは分からなかったけど…進は正気に戻ったのだわ。」
カノンの話す内容に取り敢えず一同は安堵した。しかし、直ぐにまた緊張した空気が張り詰める。
「目が覚めた進はサスペンスに凄く怒っている様子だったのだわ。あれは……今思い出しただけでも恐ろしかったわね。」
「うぐっ」
何気ない一言にショックを受ける進。そんな進に誰一人気がつくことなく話を進んでいく。
「でも、怒っているだけじゃないなって…そう思ったの。その時の私は、進は非現実的な光景を目の前にして冷静さを失っているんだと考えて、必死にサスペンスの方へと向かっていく進を呼び止めていたの。でも、分かっていなかったのは多分…私の方だったんだと思う。サスペンスは洗脳をふりきった進に怒って突進して来たのだわ。ゼニスレクイエムで強化されたその体は、スピードも力も何もかもが並外れたものになっている。だから私は一気に進に死が近づいて気がして怖くなって……一瞬だけ目を閉じちゃったの。でも、次の瞬間目の前に広がっていた光景は私の想像していたものとは大きく違っていたのだわ。進はその攻撃を──華麗に避けて見せたの。」
「「「!?」」」
大きく目を見開く3人。凡そ信じられないといった思いをを3人の表情から見て感じ取れた。
「それどころかサスペンスを更に挑発して今度は直接戦おうとしていたのだわ。」
「はぁ!?な、何言ってんだよ!?進は人間だろ!?それにデュエリストの力を持っているようにも見えねぇ。たまたま攻撃を避けられたって可能性もあるってのに、んな無茶なこと本気でするつもりだってのかよ……!」
「私だって最初は信じられなかったわ。だから今すぐここから逃げてほしいって思っていたのに…進はサスペンスと戦って……生身でサスペンスの胴体を殴り付けて──そして腕を貫通させたの。」
「マジかっ!?」
「と、とても信じられんな……」
「何が…起きておるのじゃ……?」
困惑を隠せない3人。3人はさながら物語のどんでん返しな展開をみて圧巻されている様に見えた。
「その攻撃が致命傷になって──いや、止めになったのだわ。サスペンスは倒れて、進が私に勝ったって大きな声で伝えてくれた。私は走ったわ。全身に走る痛みを無視して全力で走った。辛かったけどもう終わったんだって思うとどれだけ苦しくても少しは楽に思えた。そしてやっと進の近くにまで行けて、そして──」
誰もがここで終わるだろうと確信していた。当事者ではない3人もそうだが、カノンの進だって当時は本当に終わったんだと思っていた。だからこそあの時の悲しみは……計り知れない。
「進が、サスペンスに射たれたのだわ。」
えっ、という言葉が重なる。鬼丸とプリンプリンの声だった。修羅丸も無意識になっ、と声を漏らしていた。
「最後の力を使って態々進を狙った攻撃だった。右腕が千切れて取れて…血が止まらなかった。明らかに駄目な状態だった。どんなに頑張っても死んでしまう……それを悟るのに時間はかからなかったのだわ。時間は迫っていって、やがて進は──」
私の腕の中で静かに息を引き取った
「「「っ……!」」」
もう、反応するのも疲れる位の衝撃だった。伏し目がちに、気まずそうにカノンから目を逸らす3人。しかし、気まずかったのもその一瞬だけだった。直ぐに矛盾に気がついた鬼丸が
「待てよ、じゃあここにいる進は何なんだ?ちゃんと本物…何だよな?それとも只のそっくりさんか?もしくは本当は死んでなかったとか……だあぁっ!!もう訳わかんねぇ!」
とありもしない考察を次々に述べた。そしてその考察の馬鹿さ加減に嫌気がさす鬼丸。
「ふふっ、そっくりさんではないのだけれど…死んでいなかったというのは半分正解で半分不正解?かしら。」
「?」
「その時はどう考えても死んでいたわ。心臓が動いていないし、体も冷たかったもの。それから数日経って、お葬式を上げる事にもなった。」
「ふむ……こちらの世界でいう弔いか。何かで聞いたことがある。」
修羅丸の考えを肯定するようにカノンは頷いた。
「でもその時だったのだわ。皆が集まって、進のお母さんも揃ったその瞬間──さっきまでピクリとも動いていなかった進が起き上がったの。」
「……益々意味分かんなくなっちまった。聞いてたら分かるって、逆に謎が増えちまってるじゃねぇか。」
「それはそうじゃな。だが、恐らくその出来事があったお陰でお主……白守進は今もこうして生きておるのじゃろう?一先ず──良かったのじゃ、最悪の事態を回避できて。カノンの悲しんでおる姿など見たくないからの!」
「ふっ、姉上のいう通りです。確かに考えなければならないことも多いが、今はこの平和な時間を共にまた過ごせている事に感謝しなくてはならないな。」
「まぁ、それもそうか!俺もカノンが嫌な目に遭って悲しんでるのは見たくねぇし!良かったぜ、大事にならなくてよ。」
「皆……!そこまで思ってくれるなんて…ありがとう、嬉しいのだわ。」
カノンへの労いの言葉をかける3人。3人は安心しきった表情をしており、それが如何にカノンを心配してくれていたのかを示していた。
「あぁっ、言い忘れていたのだわ!進が生き返った話なんだけど、本人が余り詮索してもらわないでほしいって言って……ここまで話を聞いてもらって悪いのだけど、この事については深掘りして貰えると助かるのだわ。大丈夫!カイトが念のため進に危険な隠し事かどうか聞いてたけどそんな理由ではないって言っていたのだわ。だから心配しないで。」
「なるほどの。気になるとこではあるが…話を聞く限りでは怪しい隠し事でもなさそうじゃし、何より友の願いじゃからな!カノン、その願い承ったのじゃ!お主らもそれで良いか?」
「姉上がそう言うのであれば…私もそれに従うまでです。私も一向に構いません。」
「俺も別にいいぜ。カノンがそこまで言うんだ、悪い奴じゃないのはもう分かってる。だから変に首突っ込んだりしねぇよ。」
3人の心遣いにカノンは感謝した。この優しさがカノンの心を解かしてくれたのを思い出す。
(私がここにいるのも、プリンプリン達のお陰なのよね。こんな私をゴールデンエイジは受け入れてくれた。そこからクリーチャー達の頑張っている姿をみて、プレイヤーにデュエマを教えてもらって……そして今がある。)
色々なことがあった。本当に、本当に色々なことがあった。楽しかった思い出ばかりじゃないけれど、それでも今の今までこうして生きていてよかったと、そう思わずにはいられなかった。
そうして少しの間感傷に浸るカノン。そのせいで、外部からの声が頭にまで届いておらず
「───ノン?カノン?おーい、カノン~?」
「はっ!」
鬼丸の大きな声でやっと我に返ることができた。
「どうしたんだ?急に黙っちまって。」
「ううん、なんでもないわ。」
「そうか?ならいいけどよ。」
あんなに重い話をしたからだろうか。何だか3人の様子がよそよそしい。やはり、友達と言えどここまでの事を話されたら言葉を選んでしまうのだろうか。そんなことを考えていると、プリンプリンが口を開いてこう言った。
「それにしても…カノンは良い友を持ったな。確か話を聞くに、進はバイト仲間というやつなのじゃろう?困ったときは手を差し伸べ助けてくれたという話はわらわも感動したのじゃ。カノンもかなりお主を信頼しておるように見える。これは負けていられないの!わらわももっとカノンと親睦を深めねばならん!」
それはいたって普通の話題だった。進はプリンプリンからしてみてもかなりの好印象だったというだけの話である。そこに突っ込みどころなど何一つとしなかった。
しかし、それはこの2人を除いた場合の話である。
「友達…?」
プリンプリンの発言の中にあった単語に引っ掛かりを覚えるカノン。そして考えるような仕草を行った後、進に対してカノンはこのような質問をした。
「ねぇ、私達の関係って友達……なのかしら?」
「へ?」
「は?」
「む?」
それは3人にとってとてつもない衝撃的な質問だった。すっとんきょうな声を上げる3人をカノンは気にも止めず話を進める。
「出会ってからまだ日は浅いかも知れないけど、流石にこの世界の定義からしても友達ではないわよね?ごめんなさい、私こう言った知識にはまだ疎くて…よく分からないのだわ。」
「あー…それで悩んでんのね。それはしょうがねぇか。」
ここで久しぶりに進が3人の前で口を開いた。出会った時とは全くといっていいほど異なっている振る舞い方に3人の中での進のイメージと激しく解離する。何が起きているのか分からず3人が困惑していると、進が気まずそうに、そして恥ずかしそうにしながら
「えーっとですね、あー俺はそのー…何というか……カノンとは、想いが合致していると言いますかなんと言いますか……か、簡単に言うとっ!俺達は──」
付き合ってるんです!!!
それでいて大胆に事実を告げた。
「「「なっ…なんじゃと~~!?!?(なにィッ)(なんだとっ)」
進の衝撃発言で、部屋中に3人の驚いた声が木霊した。
「──という経緯で私達は恋人になったのだわ。」
「「「…………」」」
楽しそうに過去の出来事を説明するカノン。3人は開いた口が塞がらなかった。恐らく、カノンと話し始めてから一番衝撃を受けた内容だったと思われる。
「み、皆?どうしたのかしら?」
固まっている3人にカノンは困惑する。
「いやぁ、だってよぉ…あのだな……」
最初に口を開いたのは鬼丸であった。しかし鬼丸にしてはどうにも珍しくしどろもどろな話し方になっている。
「カノンがゴールデンエイジから離れてまだ3ヶ月くらいしか経ってないんだぞ!?俺たちゃカノンがこっちでルピコたちと楽しくやってんだろうなとか思ってたってのによ!まさか全くクリーチャーと関係のない一般人…まぁ今はそうでもないが……とっ、兎に角!こんな短い期間でそこまでの関係になってる相手がいるなんて考えれるわけないだろ!?畜生っ!全くおめでたいぜもんだぜ!!!」
「い、祝われている…のかしら……?」
内に秘めていた感情を爆発させる鬼丸。どこか吹っ切れている様子の彼には清々しさすら感じられた。
「友所か恋人になっていたとは…ううむ、サスペンスの話よりも驚いたかもしれん。久しぶりの感覚だ。」
「わ、わらわもじゃ。少し違うが、てっきり鬼丸とオニナグリのような強い絆で繋がっている友だとばかり…いっても親友位だと思っておったのじゃ。世の中何が起こるか分からないの……」
修羅丸とプリンプリンも鬼丸と同様にかなり驚いていたらしく、若干ではあるが言動がたどたどしくなっていた。
「うむ、興が乗った!カノンが惚れた白守進という人物、わらわも知りたくなってきたのじゃ!どうじゃ?先ずは自己紹介からしてみないかの!」
進に迫るプリンプリン。未だに表情が少し暗く何かを抑えているように見えるが、それに気付いているのはカノンだけであった。
「あぁ、俺も気になってきたぜ!」
「私も少しだが気になるな。それに自己紹介もキチンと済ませた方がいいだろう。進は私達が一体何者でカノンとどのような関係なのか分からないだろうからな。お互い情報交換も兼ねて、どうだろうか?」
「えっ、あっえっと…その…」
「…?どうしたのじゃ?何か不都合な事情でもあるのかの?」
3人を前に何故か焦っている?様に見える進に首をかしげるプリンプリン。原因が分からず困惑するばかりの3人。しかし、それを傍で見ていたカノンはこうなってしまっている理由を察していた。
(進……迷っているのだわ。プリンプリンたちと会話(観察)をしてもいいのかどうかを。きっと進は今プリンプリンたちとまともに顔を会わせて言葉を交わしてしまうと…自分を抑えられなくなっちゃう。JJの時みたいになってしまうことを危惧している…ってことよね。)
カノンの考察は見事に的中していた。実際今の進の心境はというと
(うわーー!!!!!!あああの伝説とも言える姉弟がお、おお俺の目の前にィィィ!!!やべぇーー!!!プリンプリンかわいいい!!修羅丸、いやベートーベンと
プリンプリンたちに迫られながら己の欲望と必死に戦っていた。その様子にカノンは心を痛める。主に、自分のせいで進に余計な選択を課してしまっていることがカノンにとって酷く辛かった。
(さっき思ったばかりじゃない!私は大丈夫だって進に伝えなきゃって!!ここでじっとしている場合じゃないのだわ!感情を抑圧できるかどうかで不安になっている暇なんてないんだから!善は急げよ!)
困っている進を見るといてもたってもいられなかった。簡潔に自身の覚悟を決めると、カノンは意を決して口を開いた。
「進、私は大丈夫、大丈夫だから…思う存分、進自身のやりたいことをやって。貴方の幸せが、私の幸せでもあるの。このくらいどうってことないのだわ!」
満面の笑みを浮かべながら進と向かい合ってそう告げる。瞬間、進の表情が一瞬だけ申し訳なさそうなもとへと変わったのだが、その変化に誰も気が付くことはなくもう次の場面では進はニヤリと口角を少しだけ上に上げていた。
2人のやり取りをみて「ど、どうってことないって…俺達は進からすると一体何に見えてんだよ。」と突っ込む鬼丸。それに対しカノンは「あっ、ごめんなさい…」と気まずそうにしていた。
兎に角、3人は2人のやり取りをみて思うところがあったのか、進に自己紹介を迫るのは止めようと判断した。そしてプリンプリンが一言謝りを入れて手を引こうとしていたのだが──
「お、俺の名前はししっ白守進って言いますっ!!今は拘りプラックって喫茶店でバイトしてます!趣味は当然デュエマすることで…あとは……何言えばいいんだ?えーっと、そのー……」
進がカノンの言葉を皮切りに勢いよく話しかけてきた。さっきカノンと話していた内容はサスペンスが主な題材であったため進のことに関する説明は余り多くない。だからこそ3人は進の人物像が読めておらず、謎の熱気の高さに多少驚いていた。
「ふふっ、お主なかなか面白い奴じゃな!何も自己紹介にそこまで緊張する必要はないのじゃ。じゃが、その熱意は受け取った。これはわらわたちも相応のものを返さねばな!」
こうしてお互いのことを知るべく突如として自己紹介の言い合いが始まった。
「わらわはエイリアンと言う種族の姫であるプリンプリンという!カノンとの関係は戦友じゃ。よろしくお願いするのじゃ!」
「俺の名前は鬼丸だ。まぁ訳あって超獣世界にあるゴールデンエイジって組織のリーダーをやってる。何となく察しはついてるだろうが、俺はプリンプリンの弟だぜ。よろしくな!」
「私の名は修羅丸。私は鬼丸の兄でプリンプリンの弟という関係になる。よろしくお願いする。」
誰がみても普通の自己紹介だった。己の名を紡ぎ、そして少しだけ自身の情報を相手に伝える。たったこれだけだ。だというのに進の方は酷く興奮した様子だった。
「はっ、はいっ!!じじじ自己紹介ああっ、ありがとうございます!!いやぁ、まさかこんなタイミングでまさかこんなすっっっごい方たちと出会うことが出来るなんて!!!!ほんともう感激ですっ!!」
「んん?お主わらわ達のことを知っておったのか?……そうか、カノンから聞いたとかそういう感じじゃな。」
「いえ?私は進にプリンプリン達のことを話したことはないのだわ。強いて言えば、ゴールデンエイジとの戦いの詳細を少し話した位かしら。」
カノンの補足にプリンプリンは首をかしげた。では、何故己の事を知っているのだろう。悩むよりも本人に聞いた方が早いと考え、プリンプリンが進に話しかけようとしていたそのときだった。
「お、鬼丸さん!」
「んあ?どうした。あとさんは付けなくていいぜ。敬語も要らねぇよ。」
突然進が鬼丸の方へと向き合いその名を呼び止めた。
「あ、ほんと?って今はそうじゃなくて……お、俺っ!鬼丸に会えて、ほんとのガチにマッッジで良かった!!今滅茶苦茶嬉しいわ!」
そう言いながら進は勢いよく席を立った。
「うおっ!いきなりそれは驚くじゃねぇか。そ、それに俺に会えて嬉しいってどういうことだ?」
「あぁっ、そっか。突然こんなことされても困るだけだよな…ごめん。で、でもっ!本当に嬉しかったんだよ!俺、デュエマがすっげぇ好きなんだけどさ、鬼丸はその中でも特に多く使ってて……まず何より滅茶苦茶格好いい!豪快なイラス…じゃなくって、姿形?とか明らかに強そうな鍛え抜かれたその筋肉!そして極めつけはその超絶強い能力!俺はそれに何回も世話になったんだ!まぁ、とどのつまり…ファン?とかって言い方になると思う。だから、こうして本物と出会えて話せるっていうのがなんだか夢みたいでさ…こんな大物と縁が出来るかもしれないのがマジで嬉しかったんだ。」
「おー…マジか。俺にファン…ファンか……な、中々悪くねぇな。そうか…俺の事をそんな風に見てる奴がいるんだな。」
「いやぁ、今日は人生においてかなり上位に来るくらい最高な日かも…いや、さいっこうの日だ!!」
進はこんなことを言っているが、実際はカノンと告白しあった病院での出来事があった日が人生の尤も最高な瞬間である。だが、それは本人も感じておりあまりにも最高すぎる瞬間だったせいで進の中では殿堂入りしているらしい。なので、実質今日の出来事が人生最高の瞬間だということになるのだ。
「へっ、へへへ!おうおう!そーかそーか、そんなに俺に会えたのが嬉しかったのか!ま、そりゃそうだよな。何てったって俺はめちゃんこつっえんだからよ!」
満更でも無さそうな鬼丸。進からの高評価に変な笑いが出てしまっていた。
「やっぱりこっちの世界でも鬼丸は強いのか!くぅ~…!!俄然興奮してきたぁぁぁ!!!な、なぁ!今まで戦ってきた敵の中で何が一番強かったとかあるか!?こ、答えられるならこたえてほしい!!」
「……おいおいねーちゃん、兄貴!遂に俺の時代到来しちまったぜ!!」
進に迫られている鬼丸は、小声で余りの嬉しさに2人に耳打ちした。
「そ、それは良かったのじゃ。」
「まさか…鬼丸にあそこまで興味を抱くなんて……そんな奴が存在したのか。」
「へっ!幾らでも言っとけ!」
『ぐっ(むぅ)…』と唸る2人。別に羨ましい訳では断じてない。断じてない…のだが、心の奥底から来る経験したことのない感情が2人の中に渦巻いていた。
(なるほど!3人で話し合って決めるってことか!そりゃそうだよなぁ~。この姉弟は三位一体!3人で1人、みたいなとこあるからな!(?)滅茶苦茶に強い3人の視点で考えた場合の最強の敵をきっと考えてくれてるんだ。いやぁワクワクするぜ!一体何が出てくる?ウェディング?サスペンス?それともライオネルか!?いや、やっぱシャングリラとか!?)
内緒話を始める3人をみて進は1人で勝手に理由を想像して勝手に納得し、そこから強いクリーチャーの予想までしてしまう。E2のクリーチャーが多いのは進的にはゼニスが敵としてかなりの強敵だからだと認識しているからである。
「っと悪い!今は進と話してんだったな。あの2人のことは置いといて……一番強い敵か。そうだなー…正直、俺1人で倒した敵ってあんまし居ないんだよな。仲間と協力してこその勝利が多かったからどれが一番強かったは一概には断定できねぇ。まぁ、強いて言うんだったら……やっぱシャングリラ辺りになるのか?俺と兄貴が合体してやっと同じ土俵に立てた訳で、そう考えるとシャングリラが一番強いと言っても過言じゃねぇかもな。」
「おぉ!やっぱシャングリラとは既に戦ってたんだな!それに修羅丸と合体って…それってもしかして鬼羅丸!?すげー!ちゃんと紙通りの情報がなだれ込んでくる!!あぁ、やっぱり本物なんだ…!」
「なぁっ!?な、何故わらわが命名したその名を知っておるのじゃ!?」
「これは……プレイヤーに似てかなりのデュエマ好きと見た。それも、進はカード一枚一枚を脳のメモリを余すことなく使い、無駄なく知識を詰め込んでいる。ふっ、やはりこの街は飽きないな。」
「なんかわかんねぇけど、進はファンどころか大ファンだってことか?よく俺の事を知ってるっぽいし、そういうことなんだろ?」
「も、勿論っ!そういうことそういうこと!男なら誰しもあんたみたいな漢に憧れると思ってるくらいだぜ!!」
進のべた褒めに鬼丸も気分が最高潮にまで昇っていった。
「おいおい、そんなに褒めたって何にもでないぜ?でも、そんなに俺のことが好きってんなら…なってみねぇか──俺と
(ぬぅ…上から目線で言いおってからに……明らかに調子に乗っておるの。)
「えっ…マ、マジ?」
「おう、大マジだ。」
「じゃ、じゃあさ……おお俺と、さ?あっ、握手…してほしいなーなんて……ほ、ほら!握手ってなんか友達感あるじゃん?そうすることでより俺は友達が出来たんだなって実感できると思うんだ。良い、かな?」
如何せんクリーチャーとの距離感を掴みにくい為、進はたじたじになってしまっていた。だが、それでも頑張った方だろう。そもそもとして、別世界の住民と出会ってすぐ仲良くなれるわけがないのだ。価値観から暮らしまで何もかもが違うというのに、打ち解けられる筈がなかった。
しかし、進は諦めなかった。仲良くなるための第一歩を進は考えに考え抜いていたのだ。
鬼丸は恐らく熱血系の性格だろう。グレン然り鬼丸然り、こういった性格の人は己も熱をもって接してみれば案外早くに打ち解けたりするものだ。(偏見)そして、その狙いは見事に当たった。機嫌の良くなった鬼丸は頬を緩め、まるで以前から居た親友のような気さえしてくる程フランクな振る舞いをみせているではないか。あまつさえは鬼丸の方から友達になろうとの言葉まで飛び出す始末。進は心の中で盛大に歓喜した。あとはもう流れ作業だ。一度はしてみたかったよく見る男同士の友情からくる熱い握手を交わし、憧れのクリーチャーとの友達ライフを楽しむだけ……
白守進
全ては揃った。あとは鬼丸の反応を待つだけである。鬼丸が口を開くまでのコンマ数十秒が進にとっては一時間にも二時間にも感じられていた。
「おう、いいぜ!」
「マジ!?や、やったぁぁぁぁ!!!」
結果は最高という他なかった。握手できるとなったら善は急げだ。早く鬼丸の元へと近づかなければ。席から立ち上がりいそいそと鬼丸へ近寄る進。こんなにカノンの家のテーブルが広かったことに感謝したことなど後にも先にもこの瞬間だけだろう。
「うおぉぉぉ…こう、改めて近くで見るとでけぇしかっけぇ……!人間とは何もかもがちがうんだなぁ。」
自然とそんな感想を溢してしまう。もはや心の声が駄々漏れだった。
「んじゃ、さっさとやっちまおうぜ。ほい」
そう言って手を差し出す鬼丸。進は若干手を震わせながらゆっくりと手を伸ばし
「うし!握ったな。改めてよろしくするぜ、進ッ!」
「お、俺の方こそお願いな、鬼丸!!」
熱い握手を交わすのだった。
「ひやぁぁぁ…触っちまったよ……!あの!鬼丸に!俺が!!」
「ふふっ、良かったわね進。」
「あぁ…!こうして3人に会えたのもカノンのお陰だ!本当にありがとうな!」
「えへへ、どういたしまして♪」
面と向かってお礼を言われたカノンは満面の笑みを浮かべ嬉しそうにしていた。若干頬も紅く染まっている。その様子を見ていた3人は、本当に2人は恋人同士なのだと確信した。
「その…姉上。」
「ん?なんじゃ、修羅丸。」
ほほえましい光景が広がっているなか、突然修羅丸に話しかけられるプリンプリン。何があったのだろうと不思議に思いながら修羅丸に向き合う。
「そろそろ我々の目的を果たしておきませんか?」
「ハッ、そうじゃった。すまぬな、遂カノンらの話しにのめり込んでしまった。それにしても…まさかここ数ヵ月の間でこうも変化が訪れるとはの。やはり、この世界は面白いのじゃ。」
感慨深そうに呟くプリンプリンに修羅丸は静かに同意した。
「水を差すようで悪いのじゃが、カノン側の話は一旦ここで止めてもらってもよいか?わらわたちがここに来た目的も果たさなくてはならなくての。」
「えぇ、構わないのだわ。私たちもかなり長く話してもらわせちゃったしね。」
「感謝するのじゃ。」
和やかだった雰囲気から一転、またもや不穏な空気が漂う。姫という立場からくる発言の際に発揮される威圧感は一般人の進からしても感じとることが出来た。
「では、わらわも話すとしよう。わらわたちがここに…いや、カノンに会いに来た理由、それはじゃな───」
謎の緊張感が進を襲う。デジャヴとはこのことを差す言葉なのだろう。先程までプリンプリンたちが感じていた気持ちを今度は進は味わっていた。そして次の瞬間、その重要そうな言葉が紡がれることとな
「単なる復興状況の報告じゃ。」
ることはなかった。訂正させてほしい。重大でもなんでもない。それに、緊張感が襲っていたのも進だけだったのでデジャヴでもなかった。その証拠に、カノンは余り驚いている様子ではなかった。街中でプリンプリンに遭遇したときにカノンも驚いていた筈なのに、例の目的を聞いたときは妙に納得したかのような表情で、割りと静かにリアクションをとっていた。1人単なる壮大な思い違いをしていた事実を恥じている進の傍で、プリンプリンは淡々と事を述べていく。
「覚えておるか?カノンがゴールデンエイジを離れていく際、酷く皆の機嫌を気にしていたことを。」
静かに頷くカノン。
「滅茶苦茶にした世界の復興をお主が手伝うのは当然のことじゃろう。じゃからこそお主のような優しき心を持つ者は出ていく際に罪悪感を感じ、周りの思いを気にしてしまう。それでもお主にはやりたいことがあった。そう、ルピコらにお詫びをしたいという目標じゃ。それを聞いたときわらわは思ったのじゃ。カノンをこの場に、世界に縛っていてはいけないと。なにより、友の気持ちを尊重したかった。」
「プリンプリン……あの時、そこまで私の事を考えてくれていたんだ。本当に感謝してもしきれないのだわ。」
「良いのじゃ、友として当然の事をしたまでだからの。ただしかしじゃな…そのせいでわらわもカノンの事を常に気にかけてしまうようになってしまっての……もしかするとカノンの中では未だにゴールデンエイジの面々がお主を恨んでいるのだと思ってしまっているのではないかと不安になってしまったのじゃ。そんなとき、鬼丸と修羅丸が言ってくれたのじゃ!『なら、さっさと情報を伝えに行けば良いじゃないか。』とな!」
「あそこまで心配する必要でもないかもしれねぇが、不安要素は無くしとかないとな。んで、現状のゴールデンエイジの状況を伝えりゃ少しはカノンも安心してくれるんじゃないかって思ったんだ。」
「しかし、姉上1人に行かせるわけにもいかない。そこで白羽の矢が立ったのが我々だった、ということだ。」
「うむ!ドラゴンを呼んでもよかったのじゃが、どうせ説明するなら現場を近くで見ておる2人を連れた方が何かと都合が良いとおもっての、わらわ直々に指名したのじゃ。」
「ったく俺らマジでビックリしたんだぜ?提案しただけだってのにねーちゃん『お主らも発言した者として責任をとるのじゃ!』とかいきなり言ってきてよー。俺らまで居なくなったら誰がゴールデンエイジの管理するんだよって突っ込んじまった。」
ハハハと苦笑する鬼丸。カノンはプリンプリンの行動力の高さに振り回される2人に少しだけ同情した。まさにおてんば姫様と言った言葉が相応しい人物だろう。
「さて、経緯の説明はここまでにしておいて……そろそろ本題に入るのじゃ!といっても、正直言って話すことは少いんじゃがの。」
「あら?そうなの?」
「ここまで長々と話したおいてなんじゃが、ゴールデンエイジの近況を報告すると──復興は順調に進み続けており、特段気にする問題も起きていないのじゃ。少々人手が足りないという課題がありはするも、このままいけばいつか完璧に元通りになるとのことじゃ。カノンが居なくなった後も変に争いが起こることもなく、至って平和じゃな。つまり……カノンはこの先もわらわたちのことを気にして生活する必要はないということじゃ!」
困った様子もないところを見るにプリンプリンの言うことは事実なのは明白だった。カノンは報告を聞きホッとする。
正直、毎日意識して生活していたわけではないがたまに気にかけてはいた。最初この世界で働くとなっていたときは、タイミングを見て超獣世界に帰りプリンプリンたちの復興を手伝うと決めていたのを思い出す。しかし、それは最早叶わない決め事となってしまっていた。そう、帰れない理由が出来てしまったのだ。それは、この世界で生きている普通の人間がカノンの恋人となってしまった事である。いきなり消えても心配をかけるだけだし、自分の都合で進を危険な世界に連れていくというのも何だか気が引けた。だからこそプリンプリンからの報告であっちの世界の事を知れて安心したのだ。
「そうなのね…よかった、なんともなくて。態々私のためにこんなところにまで来てくれてありがとう。」
感謝の言葉を述べるカノン。安堵の表情を浮かべるカノンを見てプリンプリンもまた安堵した。
「つーわけだ。カノンは引き続きこの世界での奉仕活動に専念してくれ。無理にこっちに戻ってこなくても良いってことだな。」
「そうだな。カノン、お前はお前のやりたいことをしてくれ。我々という過去に囚われる必要はないのだ。」
「じゃが……たまには、たまには帰ってきてほしいの。無理強いはしないが、あの世界はカノンの生まれ故郷じゃからな。その時は何時でも歓迎するのじゃ!」
「皆…えぇ!!有り難く、そうさせて貰うのだわ!」
元気よく返事をするカノン。この声音は力に満ち溢れていた。迷いのない、良い返事だった。
「ふぅ、すっかり話し込んでしまったのじゃ。それでは、そろそろ退散するとしようかの。」
「えっ、もう帰っちゃうの?」
寂しそうな表情を浮かべるカノン。ころころと変わる彼女の様子にプリンプリンはふっと笑いながら口を開く。
「元より、今回は遊びに来た訳ではないからの。報告をしたら直ぐに帰る予定だったのじゃ。それに、この家に入る際にも用がすんだら即刻帰ると約束したしの。」
「そっかぁ、残念ね…」
「ふふっ、そう悲しむでない。近いうちに遊びに行くのじゃ。それまでしばしのお別れとなるだけ。それだけの話なのじゃ。」
そういってプリンプリンたちは立ち上がった。各々が玄関へと向かうために足を揃えて移動を開始するのだろう。それをカノンは見送る。
これが次に起きる出来事で、変えられようのない運命なのだろうと、この時のカノンはそう悟った。
「世話んなったな、んじゃ俺たちは帰るz「ちょっ、ちょっとまてぇぇい!」…!?」
「「「!?」」」
全員が声のした方へと顔を向ける。するとそこには
「なーんか帰ることになってるけどさ、まだ俺やってないことあるんだよ!!只のわがままってのは分かってんだけど、もう少し待ってくれないか!?」
さっきまで蚊帳の外となっていた進が焦った様子で必死に3人を引き留めるための言葉を吐いていた。
「や、やってないこと?なんじゃ、まだ何か大事な話でもあったり…するのかの?」
3人の代表としてプリンプリンが率先して質問する。
「あー話って訳じゃないんだけど…マジで只のわがまま何だけどさ───あとプリンプリンと修羅丸にクリーチャーの話聞けてないなって思って。」
「へ?」
「ん?」
本日2回目のすっとんきょうなこえを出すプリンプリン。修羅丸も何を言われているのか理解できず固まっている。それを見ていたカノンは密かに理解していた。進の思惑を。
「いやだってさ、鬼丸とはダチにもなれて貴重な話だって聞けたよ?でもそれだけで終われなくね?流石に。ここにはあのエイリアンの姫であるプリンプリン、そしてハチャメチャにカッコいい最強の修羅丸がいるんだぞ?只で帰しておくものかッッ!!」
「はっ?お、おい待て進。お前、俺のファンだったんじゃねぇのか?だからあんなに俺に迫ってきてくれてたんじゃ……」
「ん?あぁ、そりゃもちろんファンだぜ。鬼丸はマジでロマン溢れるカードだし、火文明のまさに頭って感じだもんな。」
「じゃ、じゃあなんでねーちゃんたちにも話を聞こうなんてしてんだよ…?」
「え?いや、さっきも言ったじゃん。エイリアンの姫とカッコよくて最強の修羅丸がいるのに帰せないって。」
「いやだからっ、それはそうなんだけどそうじゃなく「鬼丸。」?ど、どうしたんだ、ねーちゃん?」
混乱?する鬼丸に声をかけるプリンプリン。その声音はどこか自信に満ちていた。
「どうやら今度はわらわたちの時代が"到来"したようじゃ。すまぬが暫く口を挟まないではくれぬか?」
「なっ!?」
開いた口が塞がらない鬼丸。助けを求めよう修羅丸の方へと顔を向けるとそこには居た筈の修羅丸の姿が見えず
「で!?で!?その鎧ってやっぱ身につけるだけですっげぇ強くなるのか!?」
「まぁそうだな。以前は多少のデメリットも存在したが、今では完全に制御しきっていて生身よりもさらに強大な力を行使することができるようになっている。そうだ、折角なら触ってみるか?」
「ほんとか!?」
「あぁ、減るものでもないからな。飽きるまで触ってみてもいいぞ。」
いつの間にか進に迫られていた修羅丸が目に入った。それも、満更でもなさそうである。なんなら進んで発言している。
「鬼丸、お主は見落としておる。進は確かに鬼丸が好きなのだろう。しかし、それよりも何よりも先にあやつはデュエマを愛しているのじゃ!!従って、わらわたちにも進が迫ってくるのも必然!なんら不思議なことではないということなのじゃ!!」
「なん…だと……」
何故か酷くショックを受ける鬼丸。その後、鬼丸はチクショォォーー!!!!と叫んでいた。
「何でかしら、プリンプリンたちが進と深く関わっているのを見ても余り邪な感情が沸いてこないのだわ。うーん……どちらかというと独占されているというより、進がプリンプリンたちを独占しているから……とか?うーん、嫉妬って難しいわね……」
鬼丸が嘆き、その他2人が嬉々として進の元で話し込んでいるという中々なカオスな状況の中、カノンは慣れてしまっているのか呑気に嫉妬のことについてを考えていた。