無垢の守護者と甘い恋   作:しゃべる

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知の結集

あの日からというものの、進はたまにカノンと散歩をしては出会い散歩をしては出会いを繰り返していた。ダピコの友達やジャスミン、守護者がたまたま連れていた切り札クリーチャーやドラグナーと一部のドラグハート・クリーチャーなど、その出会いの数は多岐に渡る。

 

ジャスミンがトンデモ能力持ちの隠謀論者みたいだし、Q.E.D.が思ったよりもバk…おもしれー女だったりと、進の解釈とはかなり違う者も居た。だが、それはそれで面白いので別に思うことはなかった。

 

一番興奮したのはやはりグレンモルトだろう。生で見たグレンモルトの迫力は恐竜博物館の骨組みよりあると思う。熱血ムキムキゲキツヨ主人公なんて、正に男の至るべきである最高到達点の一つだ。当然握手を求めたし、なんと友達にもなってくれた。そして冷静になって思うのだ。早くアイラの気持ちに気付いてやれよ、と。

 

クリーチャーを知った経緯や、その他諸々の説明とカノンとの関係は大体の人にはしてある。それこそ、シティの住民なんかもそうだ。改めてすごいと思ったのだが、この街は広いくせに住民皆が顔見知りの如く仲が良い。デュエマ好きが集まった街であるせいもあるのだろうが、それでもこんなご近所付き合いをする見たいな感じで接する人たちが余りにも多すぎやしないかと疑問に思った。

 

閑話休題

 

兎に角、知り合い、友達となっていくであろう人たちは殆どが進の事情を知っているのだ。まぁ、シティの住民にはクリーチャーの存在は明かせないので只の自己紹介で済ませているのだが。それでもカノンに恋人ができたという事実にはかなり驚かれた。そうして説明及び自己紹介をしていた中で最も印象的だったのがグレンモルトとアイラだった訳で……その際に気持ちに気づいてやれよと強く思ったのだ。

 

今でも覚えているのだが、カノンが進との恋愛エピソードを話している時、アイラがとても羨ましそうにしていた。流石に鈍感な進でも気づくレベルに顔に出ていたというのにも関わらず、当の本人はカノンの話に夢中で全くアイラのことを気にかけていなかった。寧ろ、グレンモルトが熱血系過ぎるせいでカノンと進の少し湿っぽい恋愛に突っ込みを入れるくらい集中して聞いていた。カードによる背景ストーリーで多少は2人の感情の向き方に知識があるからこそ恋人がいる進にとって、とてももどがしく歯痒かった。あと、欲を言えばヒビキにも会ってみたかった。猫耳少女は進にガンメタなのだ。

 

そして現在、進の自宅

 

「あ~、つっかれたぁ!」

 

今日も今日とてデュエマシティで遊び呆けていた進は、家に帰ったのと同時に大の字になって寝っ転がった。

 

「やべぇ、最近楽しすぎる。」

 

1人呟く進。その表情はひたすらにニヤけており、変な笑い声も出ていた。

 

「うへへへへ…なんか何もかもが満たされたキ・ブ・ン♪」

 

心の中で今の自分がどれだけ気持ち悪いのかを何となく自覚しながらも、その高揚した気持ちを抑えられなかった。

 

「はぁ…」

 

一旦己を落ち着かせようと一息吐く。

 

(この街に来てほんとに良かった。七年?八年?ま、どっちでも良いか。あんなの覚えとく価値もないし。いやぁあん時はまさかこんなに幸せになるなんて思いもしなかったよなー。これも全部カノンのお陰か……今思えば、シティって可愛い子かなりいたよな。だってのに全然心が揺れないのは、やっぱ俺がカノンにベタ惚れしてるからなんだろう。あーーー!!まっじで可愛い俺の愛しの彼女がぁぁ!!!……でも、最近なんだかちょっと恥ずかしいっていうか…カノンを直視すると顔が熱くなっちまうんだよなー。喋ってるときはそうでもないのに、カノンの事よーくみると思わず目をそらしてしまう。何でなんだろ。もしかしてこれも恋のせいなのかー!?ってなると恋ってスゲーよなー!こんなに人間変えるんだもん。)

 

目論見失敗、落ち着く所かさらに気分が高まってしまった。

 

「……あらら?そういやもうすぐ母さん帰るんだっけ。」

 

何となく目に入ったカレンダー。そこには母帰宅と書かれていた日付があった。

 

「なんか…寂しくなるな。」

 

親が離れていくと思った途端、先程まで高まっていた気分が落ちていった。

 

「なんとなーく虚しくなっちった。やめよ、これ考えんの。」

 

過去にも似たような感情を抱いた気がした。だが、それが何時だったのかは思い出せない。割りと最近の出来事だったような気がするのだが、なかなか思い当たるシーンを見つけられず、1人寂しく過去を思い出しながら感傷に浸る進だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

広く豪華な空間。装飾品がどれも高価そうなものばかりで、キラキラ光っている。その空間には一つの長い机があり、何十という椅子が置かれている。そしてそこにはその椅子の数と同程度の人影があった。だと言うのに、その空間は余りにも静かだった。

 

「皆さん、よく集まってくれました。私達の為に時間を作ってくれたことに、まずは感謝します。」

 

代表者と思われる女性の無機質な声が響く。かなりの人数を前に、堂々としている。真剣な表情をしている彼女は、雰囲気を崩さずに話を続ける。

 

「用件も言わずに声をかけたので、何故このようなことをしたのか、分からないことでしょう。なので早速ですが、本題に入りたいと思います。」

 

その声の主の正体は

 

「皆さんを集めた理由、それは───どうすれば男性の気を惹き付けるのかを考えて欲しいからです!!」

 

「ちょっと、ウェディング!?意気揚々と勝手話を進めないで!!あと、なんでこんなに集まっているのだわ!?」

 

祝の「頂」ウェディングであった。その隣には無垢の守護者カノンもいる。

 

「成る程、面白くなりそうね。来て正解だったわ。」

 

困惑するカノンを無視するように口を開いたその人物は、闇の守護者ルカである。

 

「えっと…すみません、話が見えてこないのですが……何故ウェディングさんは男性の気を惹き付けたいと思ったのですか?」

 

次に声を発したのは、光の守護者エレナであった。因みにこの部屋を貸しているのはエレナである。

 

「ルカさん、あの発言だけで何を理解したのでしょうか?」

 

「さ~ね~。分かったなら早く教えてくれたら良いのに。ま、ウェディングの今やってることも謎すぎるから考えるだけ無駄かもね。」

 

そのやり取りを見ていたルピコとチュリンは、周りに聞こえないようヒソヒソと会話していた。

 

その場にいる他の者たちも殆どエレナと同意見らしく、ウェディングの次の言葉を待っていた。

 

「ふむ、詳細を省き過ぎてしまいましたか。何処から話したものか…そうですね、ならば簡単に話しておきましょう。そう、事の発端はカノンから相談を受けた時です。私はその時────」

 

こうしてウェディングによって現在に至るまで経緯と説明が開始された。話を要約するとこうだ。

 

カノンがウェディングにとある相談事をする

 

その内容とは、最近進が自分のことを見てくれなくなった気がしてしまうといったものだった

 

元気がなくなってしまったカノンをどうにかしようと考えた結果、シティにいる女性及び女性クリーチャーを集めようと思い至った

 

カノンに秘密でひたすら声をかけまくる

 

エレナに部屋を貸してもらって会議をする←イマココ

 

ということらしい。そして、今それを知ったカノンは思った。

 

(何で男性を集めなかったのだわ!?)

 

 

普通逆だろう。男性の気を引こうとするのであれば同性を呼んで考えてもらった方が良い筈だ。それがどうして、男の気持ちが分からない女性を呼んだんだろう。突っ込み所がありすぎて逆に突っ込めなかったカノンだった。

 

尚、『勝手に何しているのだわ!?』と思ったことに関しては抱いて当たり前の感情なため今回は無視しておく。どれだけゴネても多分今の自分に拒否権はない。場の雰囲気に身を任せるしかないだろう。

 

「そういうことですか…」

 

「協力、してくれますか?」

 

ほんの少し不安そうにエレナに訪ねるウェディング。

 

「私は別に構わないのですが…そのかわり1つだけお聞きしてもよろしいですか?」

 

「えぇ、大丈夫です。」

 

「何故、男性の気を引きたいのに男性の気持ちを分かっているであろう方々を呼ばず、私達のような女性ばかりを呼んだのですか?」

 

「成る程、確かにそこにも引っ掛かりますね。ちゃんとした理由はあります。その前に、人によっては不快になってしまうかもしれないと予め警告しておきましょう。して、その理由というのは───恋愛事情に対し頼りになりそうな有力な男性が私の周りには少なかったからです。」

 

ウェディングの説明に、その場にいた者たちが口を揃えて「あ~」と声を出していた。

 

「めちゃくちゃ失礼なんだろうが……分かってしまう自分がいるな。」

 

ダピコが後ろめたそうに呟く。

 

「理解。確かにマスターはこう言った色恋沙汰に興味がなさそうな部分が散見されている。それにグレンは縁のない話題。ウェディングの判断は合理的だと思う。」

 

「キ、キリコさん……言いますね。」

 

ルピコの突っ込みにキリコは「でも、実際この2人はかなり深刻。これでも心配している。」と2人が聞いたらさらに傷つきそうなことを喋っていた。

 

「はぁ…この感じだとモルトもその男性陣の中に含まれてるんだろうなぁ……ほんっと、どれだけアプローチしたら気づいてくれるんだろ。」

 

「げ、元気出してくださいっ!きっといつか芽吹く時がきますよ!それまでの辛抱です。」

 

「あはは…ジャスミン、ありがとう。」

 

先が思いやられると1人落ち込んでいたアイラに、たまたま近くに座っていたジャスミンが慌てて元気付けた。

 

「考えてもみなかったが、弟たちもかなり女っ気が無いというか…もしや結構不味い……かもしれないのじゃ。無理に作る必要はないにしても、それはそれで心配にもなるしの。わらわも帰ったら考えてみるのじゃ。」

 

プリンプリンも鬼丸と修羅丸のことを考えて少し危機感を持ったらしく、自分なりになにかできないかと後で考えてみることにしたようだ。

 

「男の気を引くねぇ。これってもしかして、イタズラするチャンス?だったらやる気出しちゃおっかな~。」

 

「今回はやめておきなさい。」

 

「え~……分かった。」

 

「ふふっ、偉いわね。」

 

「えへへっ」

 

ジェニーの不穏な計画を事前に阻止するルカ。そのかわりに頭を撫でると、とても嬉しそうにしていた。

 

「カノン様とくっつけるだけでもこれ以上無い幸せだというのに、なんて無礼なのかしら!カノン様!こうなったら私が直談判してくるのだわ!」

 

「そ、それはやめてっ!!」

 

カノン、迫真の否定。項垂れるコットンを見ながらカノンは既に疲れてしまったのかはぁ、と一息ついていた。

 

(バ、バラバラな人選なのだわ。共通点も無いし、取り敢えず呼べるだけ呼んだ様に見えるし……大丈夫なのかしら…?)

 

不安げな表情を浮かべるカノン。そんなカノンに誰も気づくことはなく、遂に話が進展を迎える。

 

「では聞いてみましょう。何か良い案のある方はいますか?あるのならば挙手をお願いします。」

 

ウェディングが全体に意見を求める。すると「はい!」と勢いよく手を上げた人物が3人程いた。1人はジェニー、1人はコットン、最後にアイラだ。2人の主張が激しく、はいを何度も連呼していたのを無視して、ウェディングはアイラに意見を聞こうと口を開いたその時だった。

 

「はーっはっはっ!皆さん、私の存在をお忘れですか?」

 

「……Q.E.D.ですか。どうしたのです、突然大声で笑ったりなどして。」

 

面倒臭そうに声のする方向へと体を向けるウェディング。そこには、龍素王と名高い天才Q.E.D.が仁王立ちでどっしりと構えていた。

 

「なに、思い付いただけですよ。白守進を惹き付ける方法をね。」

 

「は、早くないかしら?」

 

「やけに自信満々ですね。一体何処からその自信が湧いて出てくるのか……」

 

疑念の目を向けるカノンとウェディング。2人の疑いを晴らすべく、Q.E.D.は持論を語りだした。

 

「ふっ、天才に不可能などないんですよ。それで、その肝心の案ですが……簡単な話、惚れ薬を使えば良いのです!」

 

この時、この場にいた誰もが心の中でこう思ったらしい。

 

うわっ…マジかよコイツ……

 

 

全員ドン引きである。そんな冷めた視線に気づかず、淡々と説明を続けるQ.E.D. 。

 

「安心してください。精神に支障をきたすような物は使いません!少し、ほんの少しだけ女性が魅力的に見えてしまう薬を作れば良いだけなのです!なので最終的にカノンを我が物顔にするかは本人の判断に委ねることとなります。つまり、強制的に思考を支配している訳でもない為罪悪感なく薬を使用できるっ!これぞ、完璧な私の導きだした最適解!どうです?魅力的な案でしょう、カノン。」

 

どや顔ここに極まれり。見方によってはアホ面にも見えるだろう。

 

「却下するのだわ。」

 

「なっ、ええぇ!?そんなっ、何故です!?」

 

「当たり前なのだわ!!そこまでして私のことを見てくれたって、全然嬉しくないもの!私は進がもう少し構ってくれても良いんじゃ無いかなってウェディングに相談してただけで、何も薬を使う程の事じゃないのだわ!」

 

「そんな…私の完璧な計画が……」

 

崩れ落ちるQ.E.D. に対しウェディングが「貴女の案は少々オーバー過ぎるようですね。規模の大きさを履き違えているのを見るに、やはり貴女もドラゴンということですか。」とオーバーキルをかましていた。

 

「その…カノンさんに質問したいのですが、よろしいですか?」

 

「許可します。」

 

撃沈するQ.E.D. を無視して、次はエレナが口を開いた。何故かウェディングが許可を出して話を進める。

 

「カノンさんは具体的に、進さんの態度のどのような所が足りないと感じているのですか?以前との違いが知りたいです。」

 

「足りないと感じている所……」

 

暫しの間思考にふけるカノン。皆からの視線を一斉に受け取りながらも、焦ることなくゆっくりと考えたカノンは、真剣な面持ちをしながら語り始めた。

 

「前までは常に一緒に手を繋いだり頭をこう、わしゃわしゃ~~って撫でて貰っていたのだわ。後は、私のことを可愛いってすっごく言われたり、お願いしたら抱き締めてくれたりもしたわね。ちょっと恥ずかしいけど…キ、キスも……やってくれたり、とか?まぁ、回数はまだ少ないんだけどね。こんな感じかしら、以前の状況としては。」

 

「何時聞いても甘々よね、貴女たち。」

 

幸せそうに語るカノンに、率直に思ったことを口にするルカ。

 

(うわぁ~いいなぁ…詳しい話初めて聞いたけど、恋人ってそんなことするんだ。私も撫でたりはされたことあるけど……付き合ったら一緒にいる時間も増えるし、好きなだけ甘えることもできるんだもんね。モルトに抱き締められたりでもしたら私、どうなっちゃうんだろ。)

 

羨ましそうにカノンの話を聞くアイラ。隣にいたジャスミンはその哀愁漂うアイラの雰囲気に何となく居心地の悪さを感じていた。御愁傷様である。

 

「でも、最近はなんだか……よそよそしいっていうか、何となく距離を感じるの。あっいや、別に嫌われてるとかではないのよ?今でも進の愛は伝わってくるし、ちゃんと私のことを好きでいてくれているんだなってのは分かるの。ただ…可愛いって言われる回数が減った気がするし、それに前は進の方からも自発的に抱き付いて来ていたのに、それもめっきり無くなってしまったのだわ。最近は外によく出掛けることも多いから私のことだけをずっと見れないのは理解できるんだけど……それでも、少し不安になっちゃって、こうしてウェディングに相談したのだわ。私ってやっぱり…魅力が余りないのかしら……」

 

 

『………………』

 

沈黙が辺りを包む。例外としてウェディングが

 

『なんという悲劇ッ…!カノンを悲しませた代償、どう清算してくれましょう……!!』

 

と怒りを露にしており、コットンが

 

『あ、あり得ないのだわ…カノン様に魅力がないわけ無い!私なら絶対一日中、いや永遠の時をカノン様のお側で過ごすのだわ。これ以上の幸せを手放すなんて……』

 

と進の態度に呆れていた。しかし、それ以外の面子はこう思ったのである。

 

 

これ、絶対恥ずかしくなってるだけだ!!

 

 

 

 

悲しいかな、恋愛経験のれの字もないゼニスと盲目信者には一生理解のできようもない事実だろう。因みにQ.E.D.は自信のあった提案を却下されてからかなり落ち込んだのか応答がなかった。恐らく、話が耳に入っていない。

 

余りにも簡単な答え合わせに一同はなんだか拍子抜けしてしまった。てっきり進が悩み事を抱えていてカノンに構う時間が減っているのではないかとか、そういった方面での問題があるのだとばかり考えていた。だが、話を聞く限りではカノンの言うことは確実に深刻な悩みでは無いことは明らかだった。

 

「あ、あの~カノンさん?非常に申し上げにくいのですが……」

 

先陣切って会話を試みたのはエレナだった。

 

「…?どうしたの?」

 

「私の推測になってしまうのですが……恐らくそれはカノンさんに魅力がないとか、構うのが面倒だという訳ではなく単純に進さんが恥ずかしくなってしまったからなのではないでしょうか?」

 

「えっ、それってつまり進は私といると恥ずかしい思いを抱いてしまう…ということ……?」

 

「はい。相談に乗ってしまった手前、余り口にすべきではないのかもしれませんが、カノンさんのお悩みはそこまで気にする程の事ではないと思いますよ。」

 

「…………」

 

言いすぎてしまっただろうか。押し黙ってしまうカノンを不安そうに見つめるエレナ。暫く俯いていたカノンだったが、やがて顔を上げたかと思うと

 

「でも、それでも嫌なのだわ…!!」

 

と複雑そうな表情を浮かべながらエレナにそう告げるのだった。

 

「あ……ご、ごめんなさい!折角エレナが私に丁寧に教えてくれたのに、それを否定するようなことを言ってしまって。」

 

「ふふっ、大丈夫ですよ。お気になさらないでください。ですが……成る程。私の考えも少々間違いだったかも知れませんね。今回のお悩み、かなりな難題と見受けられました。発言を改めます。」

 

取り敢えず穏便に事は済ますことができた。

 

「進展はなし、か……結局私たちはカノンの為に現状を打破する方法を考えなきゃいけないってことね。2人の関係自体に問題があるわけでもなさそうだし、今回はかなりの長考になりそうだわ。」

 

「そうと決まれば、まずは情報収集を推奨する。2人の普段の接し方を知らなければ何も出来ないと思う。」

 

「そうね。助言感謝するわ、キリコ。」

 

「えっへん。」

 

ルカが現在の進展状況を再確認する。それにキリコが便乗し、新たな目的を提示した。

 

「なんか面白くなってきたね!よぉ~し、僕も張りきって手伝っちゃおうかな!」

 

「私も!乙女の悩み事は繊細だからね!頑張って考えちゃうよ!」

 

「わ、私も頑張ります…!恋愛にはアジサイさんとスノーフェアリーの中では定石ですが、少しはお力になれる筈!」

 

「ブツブツ……ハッ!も、勿論私も参加するのだわ!カノン様の為ならなんでもします!」

 

「おぉ、皆さんやる気全開みたいですね!」

 

次々に声を上げる皆にルピコも触発されたのか、やる気を出していた。士気が上がり、全員が協力的になったので雰囲気も良くなった。この勢いのまま一同は問題解決へと一歩踏み込み始めるのだった。

 

因みに、Q.E.D.が一番最後に声を上げていたのだが、その一言が「ふっ、任せてください。この私がいれば百人……いえ、百万人力です。」と凡そ天才とは思えない発言だった。

 

「ということで……先ずは情報収集からね。私が気になっているのは、貴女たちの距離感よ。常にベタベタしているという事はないでしょうが、人には干渉されたくない瞬間がある筈。貴女の事だからないとは思うけれど、一応聞いておくわ。貴女、進に対して無理にくっついたり圧力をかけたりはしてないかしら?」

 

「それは大丈夫。私だって1人になりたい時もあるし、ある程度弁えて進と接しているのだわ。それに無理な我が儘も言わないし、気の赴くまま自由に関わっていると思っているのだわ。」

 

「ふぅん、ということはエレナのいう通り…白守進がカノンから離れたしまった理由は、羞恥心から来るものにあるのね。さて、どうしたものかしら。」

 

うーん、と考えを捻り出そうと唸る一同。すると

 

「はいはいっ、私思いついちゃった!」

 

アイラが一番最初に案を思い付いたのか勢いよく手を上げた。

 

「ふむ、アイラの意見を聞いてみましょう。よろしくお願いしますね。」

 

「まっかせといて!じゃあ早速発表するね。私が思い付いた案は───ズバリ、自分に正直になって接してみる作戦よ!」

 

「正直で…って?」

 

カノンが首をかしげる。その反応を見せたのはカノンだけではなく、その場にいた全員が不思議そうにアイラを見つめていた。

 

「今カノンの抱えている悩み?隠し事?…って訳じゃないのかもしれないけど、やっぱりお互いの蟠りとか煮え切らない問題だとか……そういうのって先延ばしにすればするほど悪化するんじゃないかなって思うの。」

 

「成る程、一理ありますね。情報の報連相はどの立場、状況においても必要不可欠な要素。ならば当然、恋愛にもそれに関して通ずるものがある筈だということですか。」

 

「そうそう。だから私もモルトと付き合えてない訳だし……って!そうじゃないそうじゃない!……あー、コホン……い、今のは忘れて。」

 

Q.E.D.からの突然のヤジにペースを乱されるアイラ。すこし気まずい空気感にしてしまったことを後悔しながらわざとらしい咳払いをし、取り敢えず場を持たせることに成功した。

 

「兎に角、カノンが自分に正直になって進と関わる事によって、私はこの問題も解決できるかなーって思ったんだ。」

 

「その、詳しく聞かせてくれないかしら?具体的に正直になってどうやって進と接っすればいいのだわ?」

 

「あっ、ごめんね。いつの間にか私基準で話を進めちゃってた。そうだなー…ほら、私って火文明のクリーチャーでしょ?性分、っていうのかな。思い立ったら何でも先ずは行動してみる。それが私なの。ま、それでもモルトにはまだ告白できないんだけどね。」

 

あはは、と自嘲気味に笑うアイラ。

 

「私の見立てじゃ、カノンは自分に正直になって進と接すると、ポロっと不満を口にすると思うんだ。自分の気持ちになってこそ、正直ってものだしね。何気ない日常に投下されたちょっとした爆弾は、きっと進が掃除してくれる筈だよ。こうしてお互いに寄りを戻していって、気づいたときには以前よりも良好な関係を構築している……って感じかな。」

 

「それがアイラの考えたルートということか。」

 

「うん、そうだね。」

 

「信頼しあっている二人だからこその作戦なのでしょうか?どちらにせよ、私はとっても素敵な案だと思います!」

 

「あぁ、私も良いと思ったぞ。」

 

ファイアーバード姉妹が口を揃えてアイラの提案を褒める。ルピコはプレイヤーが、ダピコはディーが重なったのだろう。2人の間にある関係というものにとても深く理解を示していた。して、肝心のカノンの反応はというと

 

「ご、ごめん…なさい。ちょっと無理、だと思うのだわ…」

 

意外にも否定的だった。一同はカノンの見たことのない一面にすこし驚く。念のために言っておくが、一同はちゃんとどうすべきか悩んで案を出そうとしている。死ぬほど頑張った訳じゃないが、それでも真剣だったのだ。一同のイメージには、カノンは駄目なところがあったとしてもポジティブに物事を考え何でもやってみようとする、割りと活発的な部分もある人物に見えていた。だからアイラの案も悪いところが少しあったとしても、本人がやるぞーっ、意気込み頑張るんだろうなと無意識下の元にある深層心理で皆そう思っていた。だからこそ、一同はカノンの反応に違和感を覚えたのだ。

 

「意外ね、断っちゃうのかしら。私にも魅力的な提案に聞こえるのだけど。」

 

一同の思いを代弁するかのように、真っ先に口を出すルカ。それに対して、カノンは非常に申し訳なさそうにしながら話を続けた。

 

「えっと……じ、自分でも変だとは思っているの。こんなに進に構って欲しいと思っているのに、理由は分からないけれど何故か最近私が進とイチャイチャしようとすると恥ずかしくなっちゃって……勇気を出して進と寄り添いたいなーとかって気軽に言えなくなっちゃったのだわ。それで結局進の方から構ってきてくれて、でもそれも最近少なくなってきて……ずっと!ずっと気まずいの…!だから私は進にもっともっと構って欲しいっ!甘やかして欲しい……ここまで強く想っているのにっ…素直に伝えようとしても直前で思い止まってしまうのだわ。」

 

……なんて少女だ。恥ずかしげもなく普通ここまで言えるだろうか?聞いてるこっちが恥ずかしくなってしまうくらいの熱量だった。それと同時に、一同はカノンという存在が一体どれだけ進にぞっこんであるのかを再認識した。そして、如何にカノンが未熟であり大きな成長を遂げている最中なのかも。(ウェディングとコットンを除く)

 

恐らく、カノンと進は思春期の学生のような状態なのだろう。思い返すと、2人が付き合い始めた要点には、その場の勢いと若干のノリ、後は状況が状況なだけに断る可能性が限りなく0に近しいものだったというものがあった気がする。勿論他の要因もあるのだが、一つ言うと付き合い始めてから2人は、その告白当時の状況の熱が今の今まで冷めていなかったのだ。しかし、月日が経ちその熱も段々落ち着いていき、今になって羞恥心が多量に押し寄せて来ているのだ。

 

そして、その感情に対応できない理由はやはり、カノンが恋愛というもの自体に知識がなく、未知の経験ばかりしてきた弊害でカノン自身の頭が上手く事を処理しきれないからだろう。戸惑うのも無理はなかった。その事を加味して、一同は今一度作戦を練り直し始める。

 

「お、思ったより複雑ね……はぁ、折角イタズラしようと思ってたのに、これじゃ私の出る幕はないかなー。」

 

「あ、あのJJさんが空気を読んだ…!?」

 

「うっさいわね!ルピコ、アンタのことバラバラにしてあげようかしら!?」

 

「ぴ、ぴぇぇ~!すみませんー!!」

 

と、こんなやり取りが発生しつつも時間は過ぎていく。その間に出てきた案は……何一つとしてなかった。そして、そんな一同に重くのし掛かる一つの単語が浮かんできてしまう。

 

 

私たち、もしかして無力?

 

 

それは、女にとって最大の屈辱のようにも思えた。恋愛相談をされておいて、良いこと一つ思い付けやしない。いくら恋愛経験が皆無だからと言っても、さすがにこれはないだろう。時間が経つに連れこの場の空気に妙なプレッシャーがかかっていくのを感じる。その空気感に耐えかねたカノンが口を開いた。

 

「あの……皆、私のために一生懸命考えてくれてありがとう。でも、もう大丈夫なのだわ。その何とかしてあげようっていう優しさだけで十分元気をもらったわ。私のことは私が何とかして見せる。だから心配しないで。」

 

気遣いから出た言葉なのか、それとも諦めから出た言葉なのか。どちらにせよその発言に一同は納得できる筈もなく

 

「ま、待ってください!その、今回の件…どうか私たちに委ねてみてはもらえないでしょうか?」

 

「え?」

 

「私もエレナの意見に便乗せてもらうわ。カノン、これはもう貴女だけの問題じゃないの。私たちの戦いでもある。そう、プライドをかけた戦いのね。」

 

「ル、ルカ?何を言って──」

 

「そうだね。この問題を解決できなくて、モルトを好きだとか言えないよ。」

 

「え、えぇっと……私はなんだかアジサイさんに負けたくないので、全面的に協力的したいです。それにしても、スノーフェアリーとしての対抗意識でも芽生えたのでしょうか……?」

 

「わらわも頑張るのじゃ!姫として、一個人の恋愛相談すらまともにできない者にはなりたくないからの!」

 

「わ、私も精一杯お手伝いしたいですっ!カノンさんは友達ですから、そう易々と見捨てられません!」

 

「私も手伝おう。力になれることがあれば好きに言ってくれ。」

 

「キリコも手伝う。」

 

「皆…!ありがとう、そこまでいうのなら任せてみるのだわ。」

 

感謝の言葉を述べるカノンに、無言で頷く一同。エレナが「皆さん、今回のお悩み必ず解決しましょう!」と一言告げると「おぉー!」と声を上げていた。

 

それを傍から眺めていたのは、今回の問題に協力できそうにない者達だった。

 

「ここまで自分が感情を持っていないのが恨めしいと思ったことはありませんね。私もいつか、カノンの気持ちが分かるようになる日がくれば良いのですが……」

 

「だ、大丈夫なのだわ!きっとウェディング様もカノン様と対等になれるのだわ!だって、こんなにもカノン様のことを想っているんだもの!」

 

自嘲気味に呟くウェディングを激励するコットン。ウェディングは感情が理解できない、コットンは恋愛事情に疎すぎると言う点で今回の作戦会議を辞退していた。

 

「あーあ、今回は僕戦力外かなー。」

 

「え?さっきまでやる気満々だったじゃない。どうして?」

 

「単純に事の大きさに僕の能力が見合ってないなって思ったからだね。カノンの気持ちも分かると言えば分かるんだけど、流石に矛盾を孕んだお悩みまでは解決しきれる自信はないんだー。」

 

「なるほど、まぁ確かにちょっと予想外ではあったか。…………で、アンタはなんでこっちにいるのよ?」

 

同じく元々辞退組であったJJに加えチュリンも追加され、2人もある程度協力組と距離を離して見守っていた。その会話の途中で、JJが奇妙なことを言い出す。その言葉のかけられた先へと目線をやるとそこにはなんと

 

「……えっ!?」

 

「なにしてんのよ。アンタよアンタ!キョロキョロしても誰もいないわ!」

 

あの自身のことを天才と称し先ほどまで百万人力だとかふざけたことをぬかしていたQ.E.D.がいた。挙動不審な彼女に警戒心を露にするJJ。

 

「天才とか言ってたアンタがなーんであの輪に入ってないワケ?」

 

何かを企んでいるのではないか、それとも他の何かの……と言った可能性も無きにしもあらずである。一応質問してみるJJに対して、Q.E.D.は気まずそうに目線をそらしていた。

 

「JJ、そのようなこと聞かずとも分かりますよ。」

 

「え、ほんと?」

 

何も話さないQ.E.D.を尻目に、ウェディングが口を開く。好奇の視線を送るJJ。嫌な予感がしながらも、Q.E.D.はウェディングの言葉を待つ以外できることはなかった。

 

「考えてもみてください。彼女のような者に恋に落ち、付き合う者がいるわけがないでしょう?Q.E.D.は確かに天才ですが、それまでだったと言うわけです。経験に勝る知識なんて無いんですよ。」

 

「ひ、ひどいっ!!ウェディング言うねぇ…」

 

「あー……そ、そういうこと…ね。」

 

その説明は余りにも信憑性が高く、それと同時にかなりの殺傷能力を秘めていた。

 

「う、うぅぅぅぅ……!」

 

唸り声をあげるQ.E.D.。屈辱に耐えられなかったのか、小刻みに体も震えていた。

 

「しょうがないでしょう!?恋愛なんてしたこと無いし、書物を読み漁っていた時にチラッと恋に関する知識を取り入れていたくらいなんですよ!?専門外なんです、私は!」

 

若干涙目になっているQ.E.D.の必死の弁論に、かわいそうになってきたチュリンが声を上げた。

 

「あー、ド、ドンマイ!人生まだまだこれからなんだからさ、Q.E.D.って良く見たらかなりのビジュいいから新しい出会いがきっとあるよ!」

 

「うぅ、ちゅりんさぁん……。私だって、私だって一度くらい経験してみたいですよっ…こう見えて私もちゃんと女なんですから、興味がないわけありません。でも……カノンさんみたいにあんなに私のことを愛してくれる男性なんて早々見つかりませんしぃ…」

 

「うんうん、吐き出しな、その不満全部。」

 

フォローをしただけだったのに、そのチュリンの優しさに抱えていた気持ちが爆発してしまったらしい。Q.E.D.はチュリンに背中をさすられながら凡そドラゴンとは思えぬ弱言をぶつける。それを見ていたJJとウェディングはQ.E.D.の意外な一面に少し……いやかなり驚いていた。

 

辞退組はこれくらいにして次は協力組だ。皆で試行錯誤していると、一人が声を上げた。

 

「その、一つ思ったんだがいいか?」

 

「えぇ、是非教えて。」

 

声を上げたのはダピコだった。カノンが返事をすると、ダピコは話し始めた。

 

「私たちが考えているのは、どうすれば進が此方を意識し構ってくれるのかというものだ。つまり、今回のカノンは受け身じゃなくて攻めなんだ。」

 

「せ、攻め……」

 

アイラがゴクリと唾を飲む。ダピコの言葉選びに何か思うところがあるようだった。

 

「そこで思った。進が無視できないくらい、大胆なことをすればいいんじゃないかってな!」

 

「ダピコ、それじゃただの脳筋。」

 

キリコがツッコミを入れる。

 

「でも、それ以外に何があるんだ?ハッキリ言うが、2人とも不器用だと言う他ないんだぞ。遠回しにコソコソと策を練ったところで、気づかれないか恥ずかしくてスルーされるかのどっちかだと思うんだが。」

 

「む…確かに、一理ある……かも?」

 

ダピコの説明にキリコは首をかしげながらも納得の意を見せようとしていた。

 

「それで?カノンが攻めにいくとして、その攻め方は考えてあるのかしら。」

 

「すまない、そこまでは分からなかった。だが、この考え方が今回議論する内容としての方針で固まって欲しいと思ってな。話させてもらった。」

 

「なるほど、確かにダピコのお陰で話す内容も狭い範囲に絞れた。そう思うとかなりの収穫ね。」

 

「助かります、ダピコさん。」

 

ルカがダピコの言ったことをまとめ、エレナがお礼をする。役に立てていたのが嬉しかったのか、ダピコは『あぁ!』と力強く返事をしていた。

 

「皆、聞いてくれんかの。わらわも考えたのじゃ。」

 

次に提案をしたのはプリンプリンだった。

 

「以前カイトとカスミに、わらわがシティに居るとクリーチャーだと疑われる可能性があることを指摘されての、誤魔化しの効く方法を考えておったのじゃ。その時に飛び出てきた単語の中に"コスプレ"というものがあったのじゃが、それをさっき思い出してな───お主、進の気を引きたいのじゃろう?2人が言うに、コスプレとはかなり人を引き付けるものらしいのじゃが……これをカノンがしてみるのはどうじゃ?」

 

カノンの脳内に蘇るは、いつぞやの光景だった。久しぶりのプリンプリンたちとの再開。一悶着あったお互いの情報交換。確かその時気になったことを言っていた気がしていた。その当時の発言の意図を汲み取ろうとカノンは必死に思考する。しかし、一向に思い付くことはなく使った時間の意味は無へと帰していた。

 

「えっと、そのコスプレっていうのは一体なんなのだわ?」

 

カノンの質問にアイラも同調して『私も知らないよ!ナニソレ!」とプリンプリンに言い寄っていた。人間、又はこの世界での生活期間が長いものは分かっているようだ。

 

「む、知らぬのか?てっきりあの時の会話ですんなり流していたから知っているものかと……すまぬな。そうじゃの…わらわの方から説明したいところなんじゃが、如何せんわらわも完璧に理解しているかと言われるとそうでも無いのじゃ。ふむ……」

 

申し訳なそうに顎に手を添え考えるプリンプリン。するとそれを見かねたルピコが

 

「そういうことなら私に任せてください!仕事柄言葉の意味には強い方なので!」

 

と自ら説明役を名乗り出た。『おぉ、それは助かるのじゃ!』とルピコに感謝するプリンプリン。こうして発言者はルピコへと移り、更に話は進んでいく。

 

「コスプレというのはですね、所謂仮装の一種でして、例えばアニメのキャラクターだったりゲームのキャラクターだったりと、そういった一部のキャラクターの格好を真似ることを指すのです。プリンプリンさんに例えると、まぁ本人ではありますがこの世界の人達からするとデュエマというカードゲームのキャラクターの姿形に非常に酷似しているので、コスプレをしている、コスプレの定義に当てはまると、そうなるわけです。理解できたでしょうか?」

 

「なるほど……仮装ってことなのね。ありがとう、良く分かったのだわ。」

 

「へぇ~、始めて知った。中々ユニークな文化だね。」

 

2人とも完全に理解できたようだ。ホッと胸を撫で下ろすルピコ。その説明を聞いていた脱落組は

 

『っ!!!!!!!!カノンが仮装!?あの、あのカノンがですか!?……ふふっ、血が騒ぎますね…っ!!』

 

『カノン様の仮装っ…!これは歴史に残る1ページを目撃するかもしれないのだわ!』

 

『うわっ、何その反応。』

 

『ま、まぁまぁ…2人は進にも負けないくらいカノンラブなんだからそっとしておいてあげよ?』

 

『私がいながらにして、私の介入一切なしでここまで議論を交わし、果てには作戦までも簡単なものを立てられる……叡智を司る者として、ここまでの屈辱は未だかつてないものですよ……』

 

と完全に混沌を極めていた。

 

「でも、するにしてもどんなコスプレをすれば気を引けるのかしら?したことないから分からないのだわ。」

 

「はっ!た、確かにそうなのじゃ。ううむ、わらわもコスプレをしたことはないしの……すまぬ、提案したというのに抽象的な内容になってしもうたのじゃ。」

 

「そこまで考え込む必要は無いのではないでしょうか。」

 

プリンプリンが悩んでいると、そこにエレナが声をかけた。どう言うことかと聞き返すプリンプリン。

 

「カノンさんはコスプレをされたことがないのですよね?なら、最初から凝ったコスプレをさせるなんて酷だと思います。先ずは簡単なものから試してみては?」

 

「それがいいかもしれないわね。無理しすぎても進は良い思いをしないだろうし、なにより彼は貴女にゾッコンなんだから多少クオリティが低くても大丈夫でしょう。」

 

エレナの意見に賛同するルカ。明確なメリットを提示しつつ、会話を広げる2人を前にカノンは遂に意を決したようにこう答えた。

 

「分かったのだわ。ありがとう、皆。漸く私のすべきことを決めることができた。やってみましょう、コスプレを!」

 

それは、己の意思の表明だった。力強い眼差しを向けるカノンに一同は頬が綻ぶのを実感していた。

 

「なら善は急げだな。任せろ、私はこう見えてもバイトの都合上かなりの頻度でコスプレをしてきた身だ。ある程度は私に委ねてくれ。だが、準備をするのに必要な物を揃えなければいけないんだ。着いてきてくれるか?」

 

「あっ、わ、私も同行させて下さい!え、偉そうかもですけど、アドバイスを思い付いたんです。準備中にお話しさせてもらえませんか?」

 

「キリコも良いことを思い付いた。後で話してもいい?」

 

「実は私も考えてたことがあるんだ。着いてってもいいかな?」

 

ダピコが率先して声を上げた。それに続くようにしてジャスミン、キリコ、アイラが口を開いた。その熱量を感じ取ったカノンは何か熱いものが込み上げてくる感覚がした。心が温かくなるのを感じながら

 

「ふふっ、勿論なのだわ!」

 

と元気良く返事をするのだった。

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