「あっカノンさん!こっちですよー!」
今日は休日。デュエマシティの都心部で誰かがカノンを呼ぶ声が響いた。声の主はルピコである。
「ごめんなさい。少し遅れてしまったのだわ。」
「カノンさん、おはようございます!大丈夫ですよ!私たちもさっき着いたばかりだったので。」
初めて給料を貰った後、カノンはすぐにルピコへと連絡をして予定を会わせて遊ぶ約束を交わした。いきなりの事で少しビックリしていたが、快くルピコはその誘いを受けてくれて今に至る。
「おはよう、ルピコ。それに……」
挨拶を交わした後、カノンはルピコの隣にいる人物に顔を向け
「久しぶりね、プレイヤー!あの時はお世話になったのだわ!」
プレイヤーなる者に挨拶を交わしたのだった。
「それで、カノンさん。そちらの方がもしかして……?」
カノンが挨拶をし終えた後、ルピコはカノンの後ろで妙にそわそわしていた少年に目を向ける。少年は自分の事訊かれた瞬間、少し挙動不審気味になってしまい、少年はルピコ達に背中を向けてカノンとなにかこそこそと話し始めた。
(お、おいっカノン!あ、会わせたい人達ってル、ルピコちゃんとあの、プレイヤーさんのことだったのか!?)
(そ、そうですけど……ど、どうかしたんですか?)
(いやいや!どうしたもこうしたもないって!ルピコちゃんって言うとあれだろ?デュエマシティのナビゲートをやってるこの町の顔って思う人もいるくらいのアイドル的存在!)
(へ、へぇ……)
(それに、プレイヤーさんはというと、あの試練の塔を最速でクリアした掟破りの天才デュエリスト!噂によるとどの守護者もあの人には全くもって叶わないと言う……)
(そ、そうなんですね……)
カノンは進の勢いに圧倒されていた。なにかすっごく焦っている?ような興奮しているような様子で説明をしている。カノンは何をそんなに焦っているのかを訊こうとしたのだが
「あの~……どっ、どうしたんですか~?何か問題でもありましたか~?」
それを困惑した表情で眺めていたルピコに阻まれてしまった。
「あっ!?いっいやっ別に、なんでもありません!」
ルピコがそう言って訊いてみた瞬間、進は即座に振り返るが取り乱してしまいしどろもどろな対応をしてしまう。
「なら、いいのですが……あっそうでした!もう一度お訊きしたいのですが、えーっと、貴方がカノンさんが言っていた白守進さん、ですか?」
「はっはい!あってます!僕がし、白守進です!」
「やっぱり!カノンさんの言っていた通り優しそうな人です!私はここ、デュエマシティのナビゲーターをしているルピコと言います!よろしくお願いしますね、進さん!」
そう言って、進の前にてを伸ばしてきたルピコ。
「は、はいぃ!よろしくお、お願いしますぅぅ!」
一方進の方はとういうと、未だになれないと言った様子で何とか言葉を振り絞りながらルピコの手を両手で握り、ベコリと綺麗なお辞儀を疲労していた。
「そ、そこまで固くならなくてもいいですよ……」
進の焦りようにルピコも少々困惑気味に返答した。そんな様子を見ながらカノンは心の中で思う。
(私も、初めて働いてたときはあんな感じだったのかなぁ。何だか、店長さんやお客さん意外であそこまで畏まってる先輩を見るの、すごく新鮮だわ。でも、どうしてあそこまで焦る必要があるのかしら?)
昔を懐かしみながら自己紹介をしている進をカノンは眺めてみていた。
「そして、こちらがプレイヤーさん、と言います。」
「はっはいっ!存じしております!そりゃもう貴方ほどの有名人でしたら!えぇ!はい!………?な、なんでデッキを取り出して………え?自己紹介にはデュエマが一番だからデュエマをやろう?い、いいんですか!?もちろん、やらせていただきます!」
「ははは……プレイヤーさんらしいですね……」
「そういえば、私も初めてあったときデッキを渡されてデュエマをさせてもらったっけ。」
様々な反応を見せる面々。まだまだ自己紹介には時間がかかりそうだ。
「くっ……ぐわぁぁぁ!」
「勝負あり、ですね!」
「プレイヤー、前よりも更に強くなっているのだわ……」
数分後、プレイヤーとの決着が着いた。結果として進は負けてしまったようだ。
「いやー……やっぱり強いな………流石試練の塔をクリアしただけはある。」
「でも、進さんもなかなかのデュエルでしたよ!ここまでプレイヤーさんと戦えるなんて、ビックリしちゃいました!」
「えぇ、先輩もすごかったです!私もまだまだ頑張らなくちゃ……!」
「いやいや、プレイヤーさんは俺の何手も先を読んでて全然敵わなかったよ……手も足もでなかった……え?いい勝負だった?もっと自信をもって良い?……そ、そんな……プレイヤーさんには敵いませんよ……」
どうやら、熱い勝負を繰り広げているうちに進は緊張が取れており、素の進としての口調に戻っていたようだ。それぞれがデュエマの感想を言い合っていたところで、ルピコが今日の本題へと入るべく口を開いた。
「それで、カノンさん。今日はどこで遊びましょうか?」
「あっそうだったわ。私、今日のために気になる場所にはこうやってマークを付けていたの。」
そういってデュエマシティの都心部のマップを取り出し、気になる場所には丸い印を付けている様子を皆に見せた。
「あぁそこなら私に任せてください!ナビゲーターですのでどんな場所にあるかはすぐにわかります!近い道を案内しますよ!」
「それは助かるのだわ!じゃあ早速いきましょう!」
ルピコからの心強い発言に感謝を伝えるカノン。しかし、その話を聞いていた進はまだ何かしらの不満があるように見えた。
「先輩?どうしたんですか?早くいきましょうよ。」
「ちょっ、ま、待ってくれカノン。今日の予定ってプレイヤーさんとデュエルさせてくれることじゃなかったのか?」
「え?いや、あのデュエマは成り行きといいますかなんといいますか……私もあそこでデュエマをするとは思っていませんでしたよ?」
その言葉を聞いた進は、今まで見たことがないような表情でカノンへ質問を続けた。
「てことは…………マジで俺ルピコちゃん達と遊ぶの!?」
「は、はい。その通りです。」
当たり前だと言うような表情で応えるカノンを横目に、進は今世紀最大と言っても良いような驚きの表情を見せる。
「ま、マジかよ……もっとオシャレとかしてくればよかった……人生最大の失敗だっ……!」
油断していたがために準備できなかった自分の過去を悔いている進を見ていたカノンは、そんな言葉を聞いて焦って進のフォローへ回ろうと言葉を掛けた。
「だ、大丈夫ですよ先輩!十分その普段着姿でもかっこいいですから!」
「…………え?マジ?」
白守進はちょろかった。いや、女の子にかっこいいと言われて舞い上がるなと言われる方が無理のある話かもしれない。
「かっこいい……これでも十分……」
何やら呪文のように同じ言葉を繰り返し呟いていた進だった。その時
「カノンさーん!早くいかないと置いていっちゃいますよー!」
いつまでたってもついてこない二人を見かねたルピコが、カノン達を呼び止める。
「あっい、いま行くからちょっと待ってて!ほら、先輩も一緒にいきますよ!」
「あ!?お、おいちょちょちょ!まだこ、心の準備がぁぁぁぁ……!」
悲痛な叫びもむなしく、女の子とは思えない力でカノンに引っ張られていくのだった。
しばらくゲームセンターやシティだけにある限定的なファッションブランドをみて楽しんだり、デュエマのパックを買ってみて運試しなどをしていた。しかし、そろそろ昼時になるのでカノンの気になるスイーツ店へいくこととなりルピコに案内して貰っていた。
「ここですね!最近できた人気なスイーツ店は!」
「ありがとう!早く中に入ってスイーツをたべてみましょう!」
ルピコがスイーツ店まで案内してくれたこともあり早めに着いたので、店内はそれほど人がいなかった。チャンスだと思い足早に店内へとはいるカノン達。
「いらっしゃいませ!何名様でご来店を?」
お店の人が此方へとやってきて、来店人数を訊いてきた。
「えーっと、カノンさんとプレイヤーさんと進さんと私なので、4人です!」
「畏まりました。申し訳ないのですが、生憎当店には4人席と言ったものがなく……」
「あぁ、全然大丈夫です!」
「畏まりました。では、こちらへ。」
ルピコが店員との対応を終える。話を聞く限りでは、どうやら4人席がないらしい。なら誰と座ろうかと進が考えていた時
「ルピコ、私が先輩と一緒に座ろうと思ってるんだけど、いいかしら?」
「はい、わかりました。なら私はプレイヤーさんと一緒の席に座ることにしますね!」
どうも、カノンがルピコと決めてしまったらしい。個人的にはプレイヤーさんと一緒にデュエマトークをしたかったのだが今日会ったばかりなので、気まずくなる瞬間もあるかもしれないしそれで良いかと思った進。
「先輩はそれでいいですか?」
「おう!全然それで、大丈夫だぜ!」
カノンが確認を取ってきたのでそれに同意していた進は、案内されていた席へと着く。
「よいしょっと……あぁ~……まだ午前しか動いてないのに結構疲れたな~」
「そうですね……私も結構疲れちゃいました。」
席に着いた二人はお互いの状況を報告しあう。2人とも相当はしゃいでいたのか午前中だけで相当疲れていたようだった。
「あっ先輩、これメニューです。先に頼みたいもの決めちゃって良いですよ。」
そういってメニューを渡してきたカノン。進はそれを受け取り礼をいった。
「おう、ありがとな。」
暫くメニュー表とにらめっこしていた進だったがここで重大なことに気がついた。
「あ」
「先輩?どうしたんですか?」
「いや、それがさ……」
どうしたのだろうと、見つめてくるカノンを横目に進は衝撃の事実を告げた。
「俺、スイーツ食ったことないんだよ。」
「え?…………えぇぇぇぇぇええ!?」
カノンの驚く声が店内を木霊した。それに気づいたカノンが恥ずかしそうに口をおさえ、声のボリュームを落として進へと質問する。
「もしかしてい、一回もたべたことないんですか!?」
「いやっ、一回もっていうかプリンとかは食ったことあるけど……こういう系は一度も……」
「プ、プリンって……」
カノンが驚くのも無理はなかった。かくいうカノンもカノンでスイーツと言うものをたべたのは割りと最近になる。デュエマシティに来たばっかりの時、ルピコに紹介されて初めてスイーツを口にしたのだが、あのときの感動は忘れられないだろう。クリーチャー世界にいるときはあんな贅沢なものを口にしたことはなかったのだが、そのせいもあって虜にされるのに時間はかからなかった。スイーツの虜にされたカノンは、バイト代の一部をスイーツに宛ているほどだった。だからこそしんじられなかったのだ。この世界を生きている人たちは皆たべているものだと思っていた。
「なら、私が先輩用にスイーツを選びましょうか?」
わからないのならばしょうがない。カノンも初めてたべるまではどれを頼めばいいのかわからなかったので、気持ちはわかる。そんなときにスイーツを選んでくれたのはルピコだ。ならば私も同じようなことを先輩にしてあげようと、そう思っての提案だった。
「お、助かる!こういうのは女の子の方が強そうだしな!頼んだわ!」
「わかりました。じゃあ、好きなように選んでもいいですね?」
「おう!全然いいぞ!カノンがおすすめするならきっと美味いんだろうしな。」
先輩からの許可を貰ったので、好きなように選ぼうと思いメニューを見てみるカノン。気になっていたお店なこともあってどれも美味しそうだ。
「うーん……これおいしそうだなぁ……でも、こっちも捨てがたい………え!?な、なにこれ……!こんなものまであるの!?」
どうやら気になるものがありすぎてなかなか決まらないらしい。カノンが迷っている様子を気長に眺めていたら、こちらの方を向き申し訳なさそうな顔をしたカノン。どうやら気を遣わせてしまったようだ。
「カノン?別に焦らなくていいからな?時間ならいくらでもあるし選んで貰ってるんだし、全然待てるからさ。ゆっくり選んで決めてくれたものをたべたいしな。」
「先輩……はいっ!任せてください!」
カノンの目付きが変わった。どうやら本当に真剣に選んでくれているようだ。なんだか、ここまで必死になって自分の事を考えてくれている姿をみると嬉しいような、恥ずかしいような気がしてくる。
「よしっ……!先輩、決まりました!」
どうやら長い時間の格闘の末に、ようやく決まったらしい。カノンは進に決まったスイーツをメニューで見せてきた。
「これにします!王道のイチゴパフェ!」
「おぉ!なんか定番って感じがするな!いや~なんか、悪いな。こんなこときめさせちゃって。」
「いえ、大丈夫です!それに、もしかしたら先輩をこっち側に連れていけるかもしれないし……!」
「ははっ、まぁおいしかったらそっち側にいっちゃうかもな。」
そんな会話を交わす2人。そしてカノンが呼び鈴を鳴らし店員を呼んだ。
「お待たせいたしました。ご注文をどうぞ。」
「えーっと、この王道のイチゴパフェを2つ下さい。」
「2つですか?」
「はい。2つです。」
カノンの注文を訊いていた進があることに疑問を抱く。
(あれ?カノンもおんなじものを頼むのか?てっきり俺は初めて食べるから王道を選んだのであって、カノンは別のものを頼むものだと思っていたんたが……)
そんなことを考えていながらぼーっとしていたらいきなり声を掛けられたので現実へと連れ戻される進。
「せんぱーい?あのーせんぱーい?」
「…………!ん?どうした?」
「どうやら、同じものを頼む際は一皿に2人分の量を乗せて提供できるらしくて、そっちのパフェの方がお得らしいです。どうします?」
そんなことをいわれる進だが、スイーツ初心者なのでお得ならそっちのほうがいいと思うのでそっちを頼んで貰うことにする。
「あぁ、いいと思うよ。それで、全然。」
「わかりました………………じゃあその2人分のものでお願いします。」
「畏まりました。少々お待ちください。」
どうやら注文をし終えたようだ。
「お待たせいたしました。王道のイチゴパフェでございます。」
暫くカノンと会話を楽しんでいたが、漸くきたようだ。店員の言っていた通り、2人分といえる程の量がひとつの皿に収まっている。
「お、きたか!どれどれぇ……?」
「わあぁ~!これは……とってもおいしそう!」
進は一体どんなものなのかと興味津々にパフェを眺めており、カノンはこれまでで一番の大物をみたかのようなキラキラした目でパフェを見つめていた。
「先輩、先に食べてみてください!」
カノンが先に食べるように、提案してきた。しかし一番楽しみにしていたのはカノンのほうなのに先に食べてしまっても良いのだろうか。
「え、でも……いいのか?一緒に食べたほうが……」
進は、何だか申し訳なさそうにカノンに質問する。だが、カノンにも考えがあるといった様子の表情で応えた。
「いいですって!先輩、パフェを初めて食べるんですよね?ならどれだけおいしいのかって感想と、食べたときの反応を見てみたいんです!だから、気にすることありませんよ!ほら、早く早く!」
なんだか、いつもよりテンション上がってないか……?普段少し大人しめなカノンからは想像もつかないくらいの勢いと口調だ。それほどこのパフェはすごいものなのだろうか……
そんなことを考えながらも、カノンがそう言うのならと進は人生初のパフェを食べることにした。
「そこまでいうんなら……じゃ、早速……」
そういってスプーンですくいパフェを食べようとする進だったが、何故か手が止まってしまっていた。不審に思ったカノンはどうしたのだろうと思い進に声をかける。
「……‥先輩?ど、どうしたんですか?」
未だにスプーンをもってあたふたしていた進は
「いやっ、それが………ど、どこから食べたらいいのかさっぱりわからないんだ……」
少し恥ずかしがりながら言いにくそうにそう告げる。そんな、彼の顔を見ていたカノンは何だかいつもより進がかわいく見えて、少し笑ってしまった。
「な、なにも笑わなくたっていいだろ!ちょっと、ほんとにわからないんだよ……くぅ……」
「あっ、す、すいません!別にバカにしているとかって訳じゃなくって!なんだかいつもの先輩らしくないっていうか……」
「なんか逆にバカにされてる気がする!!」
カノンはバカにするつもりはなかったと弁明したつもりなのだが、進は恥ずかしさと情けなさの余り頭がショートしてしまい、正直に話したところですでにまともに意味が通るほどに会話が通じる状態じゃなかったようだ。
「と、とにかく!俺、どうやって食ったらいいかわかんないからスプーンですくってくれない!?」
「は、はい!任せてください!」
すくってくれと頼まれたカノンは、手元にあったもうひとつのスプーンで、食べやすいくらいの量にすくうことに成功する。
「へぇー……そんなとこから食べるのかー……」
進は妙に感心しながらも、カノンがすくってくれたスプーンに手を伸ばしたのだが
「はいっ先輩。食べてみてください!」
なんと、カノンは進に手渡すのではなく直接食べさせようと目の前にスプーンを移動させてきたのだった。
「は……?え?いやっ別に自分で食う…………」
進はいきなりのことで理解できなかったが、とにかくわかることはあと少しであーんをされてしまうということだ。別にやましい行為でもなんでもないのだがやはり、そういったことを気にする歳なこともあり、少しは意識してしまう。それにそんなことをされたら味の感想をいうどころではない位に恥ずかしくなりそうで、断ろうと思い口を出そうとしたのだが
「どうしたんですか?早くしないと溶けちゃいますよ?ほらっ早く食べてみてください!」
なにも思っていないのか、早く食べて欲しそうに純粋な瞳で見つめながらそう言ってくるカノン見て、何だか先程まで変なことを考えていた自分がバカらしくなってきた。
(うっ笑顔が眩しい!ええい、俺だって男(漢)だ!いいさ、食べてやるよぉぉぉぉぉ!)
心のなかでなるべくあーんされているということを意識しないよう心のなかで自分を鼓舞する。どうやら食べる覚悟はできたようだ。
「じゃ、じゃぁ……いただきます……あーん……」
ぎこちない面持ちでスプーンの上に乗ったパフェを口にする進。なにもしゃべらず暫く味わっている進を緊張した表情でカノンはじっと見つめていた。
「…………ど、どう、ですか?」
暫く無音の時間が続いたが、それに耐えられなくなったのかカノンが味の感想を訊くために口を開く。味わっている間特に大きな反応がなかったため、口に合わなかったんじゃないかと少し不安な気持ちになる。
「……………………………………」
「……………………………………」ゴクリ
不穏な空気が漂う。もしかして、本当に口に合わなかったんじゃ……?ネガティブな感情になりかけていたのだが、遂に進が口を開いた。
「カノン……」
「は、はいっ……」
「これ………………めちゃくちゃうめぇじゃん!」
「……!そ、そうですか!よ、よかったぁ~お口に合って!」
進からの感想はおいしいの一言。その一言にカノンは安堵した。
「いや、なんで俺こんなおいしいの食べて来なかったんだって位おいしかった!いやぁ~ありがとな、こんな店に連れてきてくれて!」
感謝の言葉を貰ったカノンは満更でもないような表情になる。
「それはよかったです!ならそろそろ、私も食べてみようかな。」
先に食べてとはいったものの、先程まで食べたい欲を我慢していたカノン。気になっていたお店のパフェを早く食べたくてしょうがなかったので、進に食べさせてるために使用したスプーンでパフェをすくおうとしたのだが
「ほら、カノンも食べてみろよ!すくってやったからさ!ほらっあーん!」
今度はお返しにと進がパフェの乗ったスプーンをカノンの前に差し出してきた。
「へ?せ、先輩?そんなことしなくても……」
「ん?どうした?別に、遠慮しなくていいぞ?」
わざわざそんなことをしなくても食べられると言おうとしたが、遮られてしまった。カノンは何だか今からすることが少し恥ずかしく感じる。
(……?別に恥ずかしいことでもないはずなんだけど……どうしてこんな気持ちに……?)
カノン自身、そういった知識には疎くあーんといった行為が恥ずかしいものだとかはわからないのだが、ただなんとなく、何故か少し恥ずかしいと感じてしまう。感じたことのない感情に戸惑いながらも、先輩を待たせても悪いと思い素直にその行為に甘えようと思う。
「じゃ、じゃあいただきますっ……はむっ………………!」
少し顔を赤らめながらパフェを口に含んだカノンは、大きく目を見開いた。
「お、美味しい~!」
「だろ!やっぱカノンが目を付けた店なだけはあったんだな~」
カノンの感想に共感するように応える進。
「えぇ、ほんとうに!今まで食べてきた中で一番おいしかったかも知れません!特にこのイチゴの甘さが絶妙で……」
「あぁ、そういやカノンはイチゴ食べてたな。じゃあ俺も食べてみようかな…………っと」
感想を聞きイチゴが気になった進はカノンに使用したスプーンを使おうとして、すんでのところで思いだしたかのように手を止めた。
(あぶねぇあぶねぇ……これカノンが使ったスプーンだったな……これじゃあの……か、間接キスになっちまうからこのスプーンはカノンに渡して、あっちのスプーンを俺が貰うことにしよう。)
「な、なぁ。このスプーンカノンが使ったやつだからそのスプーンと交換しない…………!?」
か、と言おうとした瞬間、進は信じられない光景を目にして驚きの余り固まってしまった。
「はむっ…………ん~やっぱりこの部分がとっても美味しいのだわ!…………ん?先輩?なにか言いましたか?」
進が交換しようといったとき、すでにカノンは進の使ったスプーンを使っていたのだ。それに間接キスにもすら気づいてないようすだった。
「え!?い、いやっな、なんでもないなんでもない…………うん……なんでも……」
天然なのか、それとも気にしてないのかはわからないが自分ばっかりこんなことを考えてしまっている現状にすごく不甲斐なさを感じていた。何だかバカらしくなってしまい、若干自暴自棄になりながらもパフェを楽しむことにした進は黙々とパフェを口に運んでいた。
「あぁ~食った食った。めちゃくちゃうまかったな~」
「ほんとに、おいしかったわ。来てよかったですね~先輩。」
パフェを食べきった2人はそれぞれの感想を口にする。これがよかっただの次来た時はこれを食べようかと話していたのだが、カノンを見ていてふと気になったことを訊いてみる進。
「なぁカノン」
「?」
「その、失礼かも知れんが……」
「はい?」
「カノンの格好結構大胆だよな。」
「え?格好?大胆?それってどういう……」
よくわからない質問をされて戸惑うカノンは意味を聞き返してみると進はぎこちなくだが説明してくれた。
「あーだから、その、カノンの私服?さ、えーっとあーそのー……へ、臍とかさ、結構面積出てんじゃん?結構肌寒いしさ、寒くないのかなーなんて……あーなに言ってんだろ俺(小声)」
初めてカノンの私服をみたときから薄々思っていた。しかし、流石に女の子にそんなことを言ったら失礼なるのはわかっていた。でも今の時期、長袖を着ている人が大半なのにこんな大胆にへそだしされてたら気になるじゃないか!と内なる言い訳をおさえる。それにスカートも短いし、タイツも…………これ以上は後戻りできなくなりそうなので止めておくが、とにかく気になったのだ。もともと気になったことには首を突っ込みたくなってしまう性格なのだが、これはやってしまったかもしれないと、今さら遅い後悔をしている進。いつになっても返事が来ないのでやっちゃったかも……と思いながら恐る恐るカノンの様子を確認する。
「だ、大胆ってそういう…………もしかして変に思われちゃってたのかな……わ、私この服しか着てこなかったから全然気にしたことなかった……」
なんと言っているのかわからないが、ボソボソとなにかを呟きながら手で臍回りを触りながら何かの確認をしているカノン。とにかく自分の質問に戸惑っていることは確認できた。もう迷惑をかけるのは止めようと思い、先程の質問を撤回しようとする。
「あ、そのっご、こめん!き、キモいよなこういうの!全然、応えなくていいから!てかもう忘れて貰っても……」
いいからな!と言おうとした矢先に、カノンが声を重ねてきて話を進めた。
「先輩……そんなに私の格好って変ですか、ね?」
さっきの間接キスのとき気とは思えないほど恥じらいながら訊いてくるカノンに対して、焦ったように反応を返す。
「い、いやっ!全然そんなことない!綺麗なお臍してるなって思うしカノンは結構かわいいからそのスカートもスッゴいにあってるし足も細くて美しいからタイツもめちゃめちゃにあってるし……」
それに、と付け加えようとしたのだがカノンをみて何故か口が止まってしまった。先程までさんざん早口で褒めちぎっていた進だが、それが逆効果だったらしくさっきよりもパフェに乗っていたイチゴのように顔を赤くしていて、顔を隠して俯いていたからだ。それを見た進は、とてもとても、彼女のことがかわいく見えた。普段からかわいいのにそんな反応されたら誰だって止まってしまうと思う。
「うぅ……き、綺麗なお臍って……スカート似合ってるの……かな…………それに足が細くて美しいって……」
「す、すまん!さっきのことは忘れてくれ!ほんとに悪かった!」
進は恥ずかしがるようなカノンを見て、失礼極まりないことをしたと思い速攻で謝罪。そしてお互い恥ずかしくならないように忘れようと提案した。
「わ、わすれろっていわれても……む、無理、ですよ…………ちょ、ちょっとうれしかったですし……(小声)」
しかし、忘れることはできないといわれてしまい軽く絶望してしまった。最後のほうになにか呟いていたがどうせ不満を呟いているだけだろうと自己解釈をしてこの話を早く切り替えようと試みる。
「な、なぁそれよりもそろそろさ!会計しようぜ…………」
なんとも甘酸っぱい空気が流れていながら2人は会計を済ませ店を後にするのだった。
「いや~パフェ、おいしかったですね~!」
「え、えぇ。とってもおいしかったのだわ。」
「あ、あぁほんと、おいしかったな~!来てよかった~」
店をでた後ルピコ達と合流し各々の感想を言い合う。そして、そろそろ終わりの時間も近づいてきた。もう遊ぶ予定の場所も無くなり、今はベンチに座って好きなように雑談をしていた。
「それにしてもカノンさん。ウェディングさんをみなかったのですが一体どこに…………」
いつも一緒にいたはずのウェディングが見つからずカノンに居場所を訊こうとしたのだが
「ちょっとまって!しー!静かに話して!…………ふぅバレてないようね……(小声)」
カノンが突然ルピコとの距離を詰め、小声で質問に対して待ったをかけてきた。何故そのようなことをするのか良くわからないが、なにか重大な知られたくない秘密でもあるのだろうか?と勘ぐってしまう。
「私もウェディングに一緒に行こうって言ったんだけど、誰と行くのか話した瞬間にその日は一緒に行けないって即答されちゃったの。」
「ええ!?一体どうして……」
こそこそ2人で話す2人。進はというと、プレイヤーとのデュエマ雑談に気を取られていたため、幸い怪しまれることはなかった。
「それが、先輩に自分の姿をみられたら確実にクリーチャーであることがバレるからって、お留守番することになったの。」
「なるほど……確かにウェディングさんは、大きな盾などを常に装備しているので疑われても仕方ないですよね……」
「そう。それに貴女ほど隠すことができる容姿じゃないから、言い訳が出来ないしクリーチャーの存在自体バレたら色々とまずいんでしょう?」
カノンの質問ににがい表情をうかべながらこたえる。
「そうですね……だから市長さんも姿を隠しているわけですし……」
「だから今日はウェディングはいないの。」
そこまでの説明を聞いたルピコはモヤモヤが晴れたような表情で相槌をうった。
「なるぼど、そのような理由があったのですね……でも、進さんにならいつか、話してもいいんじゃないかなって思います。」
そのようなことを言うルピコに首をかしげる。
「どうして?」
「私、何となくですが進さんなら受け入れてくれると思うんです。何て言ったらいいのかわからないんですが、こう、プレイヤーさんとどことなくにていると言うか……」
確かにルピコの言っていることはわかる。あそこまでのデュエマバカではないが、とっても優しい人だと思っている。指折りつきのお人好しだし、きっと彼ならクリーチャーの存在を知ったとしてもすぐに受け入れてくれるだろう。
「わかるわ、ルピコの気持ち。私が初めてあったとき、知らないことがあったときは優しく教えてくれたし、後輩の私に敬語は大丈夫って言ってくれたもの。でも……まだ不安なこともあるの。」
「不安なこと?」
「うん…………私はウェディングとは違って人間じゃない?」
「は、はい。そうですが……」
「もしウェディングのことが知られたら、デュエリストの説明やなったときのことの経緯を話さなくちゃいけなくなる。そんなときに私の犯してきた罪を先輩に伝えても、受け入れられないような気がして……とっても怖いの。」
「カノンさん…………」
カノンは、進がどれだけ優しい人物なのかをわかっていた。だからそれ以上にそんな人に突き放されるかもしれない可能性が怖かった。受け入れられないんじゃないかと言う想像がついてしまって怖かった。
「でも、今のままじゃダメだとも思っているの。今日はとても楽しかったわ。これからももっと遊びたいって思ってる。けど、本当の私を隠したまま誰かと付き合っていくって言うのはあまりしたくないの。自分を隠すってズルいと思うから。でも……なかなかその先へと踏み出すことが出来なくて……」
「大丈夫です!きっと、カノンさんなら仲良くなれますよ!」
「え?」
「私も最初はプレイヤーさんに、正体を隠していましたから。気持ち、わかりますよ。」
「ルピコ…………」
「確かにそのときの私とカノンさんとでは事情が異なっているますが、根本的な思いは変わってないはずです。」
「思い?」
「はい、思いです!私が正体を打ち明けた理由の根本には、仲良くしたい、という思いがつまっていました。それは、カノンさんも変わっていないはずです。」
「あ……」
そうだ、進に過去の過ちを打ち明けた後に受け入れられなかったらどうしよう、突き放されてしまったら、拒絶されてしまったらなどの暗い感情が渦巻いていたが、これらはすべて言い訳でしかなかったのだ。結局、仲良くできなかった時の免罪符を作っていただけだったのだろう。仲良くしたいと言う気持ちがあればきっと伝わるはずだと、ルピコはそういいたいのだろう。
「なので……きっと大丈夫です!いきなり打ち明けるのはあれかもしれませんが、徐々に仲良くなっていけばきっと自然に打ち明けられるようになるはずです!あとはカノンさん次第ですが……」
「ううん、ありがとうルピコ。お陰で悩みが少し軽くなったのだわ。そうね……私も勇気をもってみようと思う!」
「そのいきです!頑張ってくださいね!」
いつか来るであろう真実の打ち明けを、相談して幾分か楽になったカノンはどこかスッキリとした顔をしていた。
「おーい!そろそろかえりたいとおもってんだけどー?一緒に帰るかー?」
いきなりそんなことを言われるカノン。時計を確認してみると、もう五時を過ぎていた。
「もう五時!?ウェディングも、待たせてるしそろそろ帰らなくちゃ!」
「私もこのあと少し予定があるので、そろそろここでお開きにしましょうか。」
「そうね。」
そう言って帰る準備をする面々
「じゃ、今日は楽しかった!またいつか遊ぼうなー!」
「はい!カノンさんもまた遊びましょうね!」
「えぇ!私も今日はスッゴく楽しかったのだわ!また、近い内に遊びましょう!」
そう、別れを告げてお互い手を振りながら4人はそれぞれの帰路へとつくのだった。
なんかめっちゃ長くなってしまった。いやぁ筆が進むんですよ。
※いくつかの誤字を修正しました(8/1)