無垢の守護者と甘い恋   作:しゃべる

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本作には多少ですがデュエプレには出ていないかなり未来のカードが2、3枚くらい出ます。どうしてもはずせないのでそこら辺はご了承ください。知らなくても楽しめるとは思いますが、知っているとより楽しめると思います。小ネタみたいな感じになるのでそこまで難しく考える必要はないです。


無知

「はぁ~……今日も今日とて働きましたな~」

 

時刻は夕暮れ時。今日もバイトが無事に終わりいつものように帰路に着いている進。

 

「明日は休みだし家でゴロゴロしようかなー」

 

明日は土曜日。やはり疲れた体を癒すには家でゴロゴロするに限ると思い、明日の予定をゴロゴロする日と決定した。気分が良いし、天気も良いのでつい、綺麗な夕日でも見ようと思い、顔を上へと向ける。

 

「ん?なんだ、あれ?」

 

ふと見上げた空に、見慣れないものが浮かんでいていたのを視認して、一体何だろうと目を細めて観察してみる。

 

「は!?なんだよあれ!?……虫…か?それにしては大きいな………」

 

空に浮かぶ虫のような生き物は遠くから見ていても、明らかに他のものとは一線を画す程の大きさを誇っていた。それに、虫にしてはあまりにも大きすぎる。鳥ならばわかるが虫が鳥レベルに大きいのは見たことがない。足も6本はありそうだ。

 

「鳥……ではなさそうだよな………きもちわるっ」

 

空を飛ぶ鳥級の大きさの虫なんて見たことがない。しかし、何度見ても造形が鳥とは思えないのだ。それに移動速度がとても遅い。とどまって見えるほどゆっくりだ。鳥が空中にホバリングできるなんて聞いたこともない。トンボ辺りならホバリングしているところを見たことがあるし、姿形的にも虫と解釈した方がしっくりくる。

 

「なんか気になるし、ついてってみるか。」

 

謎が増えていくが、考えてもしょうがないのでついていってみることにした。若さ故の好奇心と言うものなのだろう。暫く空を飛んでいる謎の生き物についていっていると、生き物に変化が表れた。

 

「ん?降りていってる……何があるんだ……?」

 

暫く空を飛んでいた生き物が、突如高度を下げながら飛行し始めたのだ。一体何があるのかと思い、それが降りていった場所に目を向けてみる。

 

「人……?」

 

そこには、普通に町で歩いている人がいた。それに一人だけではなく、そこらじゅうに普通に生活している人々がいたのだ。しかし、違和感がある。

 

「なんで誰もアイツに気づいていないんだ……?」

 

住民は誰一人としてその場にいる異常なほどの大きさの生き物に目を向けていなかったのだ。あのクラスの生物に見向きもしないのは、住民が見慣れているのかとも思ったがここに住みはじめてそんな生物を見たことなんて、一度もない。進この説は心の中では却下する。

 

「一体なにするつもりなんだ?」

 

暫くその謎の生き物を観察していると、町中で大人と同じくらいの目線の高さで飛行していた生き物が動きをみせた。漸く動いたかと思ったのも束の間で、その生き物は周囲にいた人の1人に近づきに行く。

 

「あんな近くにいるのにやっぱり気づいてない……あれくらいの大きさの虫は普通なの…………っ!?」

 

住民の不思議な反応に疑問を抱いていたら、人に近づいていた虫が突然細い足に謎の白い物体を出現させ、それを近づいていた人に埋め込んだ。

 

「は……!?なんだあれ……?今、石みたいな物を体内に埋め込んでたよな……?」

 

虫にしては大きすぎる事についても混乱していたのに、石のようなものを体内に埋め込む光景を目にし、遂に頭がパンクする。埋め込む瞬間その石のような物は溶けるように体内へと入り込んでいき、それが出てくることはなかった。

 

「訳わかんねー…………夢かなんかか……?いつっ」

 

念のため頬をつねってみたがやはり、現実のようだ。現実離れした光景についていけなくなりそうだが自分の勘がこのまま観察していた方がいいと判断したので、このまま後をつけていくことにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ここ、何処だよ…………」

 

暫く後をつけていた進だったが、いつの間にかよくわからない森のような所に入ってしまった。幸いデュエマシティの建物が目立つのでシティ自体には帰れるだろうが、相当遅くなることは覚悟しなければいけないだろう。

 

「でも、なんか見逃しちゃいけない気がするんだよな……」

 

なんとなく、そんな気がした。ただそれだけだった。己の勘に従って追いかけていた進は妙な胸騒ぎがしていた。

 

「お、なんか見えたぞ。あれは……洞窟か?」

 

急に視界が開ける。そこで目にしたものは、崖にぽっかりと空いていた洞窟のような穴だった。生き物はその穴へと入っていく。

 

「あそこになんかあるってことか?」

 

進も生き物に続くように洞窟の中へと入っていく。くらくて良く見えないが、生き物だけは見失わないよう目を凝らして移動していく。暫く後をつけていたら狭かった一本道が段々広くなっていった。

 

「なんだ、ここ……!広すぎだろ!」

 

いつの間にか狭かった空間は縦にも横にも言葉では言い表せないほど広がっており、最早洞窟とは思えないレベルにまでなっていた。

 

「っ!なにかいるのか……!」

 

何処か遠くで地面がミシッと音を立てたのが聞こえとっさに岩影に隠れる。おとのした方向をじっと眺めていると目が暗闇になれてきたのか、段々中身が見えてきた。

 

「目が慣れてきたな…………何かいるような気がするんだが……まだ良く見えない……」

 

音のした方向には、何かがいるような気がした。なんとなくシルエットも見えるような気がする。目を擦りながら何がいるのかを良く見ようとその『何か』がいそうな空間を凝視する。そのときだった。突然暗闇を薄暗い紫の光で照らされる。そのお陰で気になっていた『何か』の正体を見ることができたのだが。進はそれを今までの人生のなかで一番後悔したことになるだろう。

 

「うっ……!嘘だろ……?は、はは……!何かの冗談だろ……?」

 

目の前に広がっていた光景。それは、巨大な体にハエの顔のような生き物に、禍々しい紫色の光を発している三つの頭を持った龍のようなモンスターが追っていた虫と向き合っている物だった。先程までは鳥くらいの大きさだったので、新種の生物か何かで住まされる物だった。しかし、今目の前にいる化け物達は常識の範囲内を越えている。それこそ、デュエマのクリーチャーのようなものだと言われた方が納得がいく位だ。

 

「って、そんなこと考えてる場合じゃないだろ!何なんだよアイツら!」

 

あり得ないことの連続で逆に冷静になってしまったのか、進はそのまま化け物達の観察を続けることにした。なにやらあの追っていた虫が紫の化け物に何かを渡しているようだ。耳を澄ませているとなにやら声?のようなものが聞こえてくる。人間はこの場に1人しかいないはずなのだがどう言うことなのだろうか。暫く化け物達を観察しながら人のような声を聞いていると、その声が段々近づいてきているように感じた。それも後ろから。

 

「マジかよっ!くそっ!」

 

今隠れている場所は後ろからでは丸見えなので化物達からも、後ろから来る人にも見えないような位置に移動すべく、慎重に音を立てずに動く。段々近づいて来る声は、遂にこの広々とした空間に響くまでになっていた。そろそろ入ってくるのだろう。そう思い声のする方向をじっと見つめていると

 

「う~………あぁ~……」

 

と呻き声をあげながら入ってくる様子を確認した。一体なにをしているのか、考えてみるも答えが出るはずもなく、その間にもその人間は化け物達へと近づいていっていた。

 

「なにしてんだよ……!ぜったいやばいって!」

 

確実に良くないことが起ころうとしていると、直感でそう感じた時には既に遅かった。

 

「うぅ…………あ゛…あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ぁぁぁ!!?!?」

 

耳をつんざくような悲鳴を上げたかと思ったらなんと、人間の体がいきなり白くなり、それが体をどんどん侵食していく。

 

「あ゛、あ゛ぁ!?な、なにが、お゛ごっで!?」

 

正気に戻ったのか、悲鳴を上げていた人が目の前の状況がどう言うことなのか理解できずに混乱している。その様子を化け物達は嬉しそうに眺めていた。

 

「ぁ…………?」

 

最早理解などと言っている場合ではない。進は目の前で起きていることにただただ恐怖していた。心拍数も酷く上昇しており呼吸が荒くなる。体も酷く震えていた。

 

「ヨクヤッタ」

 

「!?」

 

この場にいる2人の声ではない別の声が洞窟内に木霊した。もう1人いるのかと周囲を見回すがそのような人物は見当たらない。じゃあ一体誰が……?

 

「だ、だれがっ!だ、だずげっ!」

 

未だに苦しみ続けていた人は、自身の体が白くなっていることに恐怖し涙を流しながら助けを求めていた。

 

「ウルサイ」

 

「ひっ!」

 

謎の声に糾弾され言葉がでなくなってしまった男は押し黙ってしまう。

 

「まさか……そんなことって……」

 

進は謎の声のが一体誰なのか、誰が発しているのか。それがわかったのか思わずその事実に戦慄してしまう。

 

「反応から見るに……しゃべってるのって、まさかアイツ……?」

 

男の視線を見るに恐怖を抱いているのはどう考えてもあの化け物達だろう。それに、謎の声に呼応するように男側も反応していた。ならば、先程の男を糾弾したのは必然的にあの化け物達と言うことになるのか……?

 

「オマエハワレノカテトナル」

 

「糧!?い、いやだ!死ぬのか!?いやだいやだいやだ!」

 

どうやら男と話しているのはあの紫色の化け物のようだ。それに、糧と言ったか?あいつはあの人をどうするつもりなんだ?

 

「お、俺をどうする気なんだよ!」

 

「ハナトナリワレノモノニナル」

 

「は、花?」

 

「ソウダ。ソロソロダゾ。」

 

花になるとはどう言うことなのだろうか。もうわからないことだらけだ。しかしこの謎は最悪の形で解明されることとなる。

 

「あ、あ゛ぁ!?か、体が!」

 

「嘘だろっ……!?」

 

おおよそ半分位が白くなり始めた頃、異変が訪れた。なんと、白くなっている部分がゴツゴツとどびだしており、岩のような見た目に変貌していっている。

 

「し、じにだぐない゛!じにだぐない゛!」

 

もう動かなくなっている足をバタバタ動かしているように見えるほど暴れていた男だったが遂に侵食が首もとにまで迫り

 

「あ゛!?」

 

首もとから長い棒状のものが貫通するように突きだし、それを最後に言葉を発っさなくなってしまった。声帯がイカれてしまったのかもしれない。もう男の体は人間とは思えないようなものとなっており、身体中がゴツゴツしていて本当に岩のようだ。そして最後に、頭も侵食されてしまい

 

「ヤットカ」

 

「え……?」

 

頭がまるで花のような形へと変形してしまった。さっきまでおぞましいものを見ていたように感じていたのに、なぜかその花のようなものは不気味に見えるどころか美しく思えてしまう。そんな自分が少し嫌になる。

 

「デハモラオウ、コノチカラ」

 

「な、なにやって……」

 

化け物がそう言った瞬間、化け物はその変形してしまった男をペロリと平らげた。

 

「うっ……!くっ!」

 

グシャリ、グシャリと咀嚼音が聞こえてくる。その様子を見ていた進は吐き気を催したがすんでのところで我慢した。あまりの怖さに涙もでている。

 

「サスガダ、スイショウノハナヨ」

 

「水晶の、花?」

 

食べ終わったのか、化け物がそんな感想をこぼした。水晶の花、とは何なのだろう。考えても埒が明かない。とにかく進はここから逃げ出したかった。ゆっくり、ゆっくりと出口の方へと移動する。

 

「頼む!頼む!」

 

そう願いながら歩いていたのだが

 

ジャリ……

 

「ダレダ!」

 

「っ!……」

 

視界の悪いなか砂利を踏んでしまったのか音が響いてしまう。それに気づいた紫の化け物が叫んだ。とっさに岩影に隠れたが先程のものよりも、ふた回りほど小さく足が見えてしまいそうだ。

 

「ミテコイ」

 

そう指示を出した化け物は、となりにいたハエの顔をした怪物をこちらへと向かわせてくる。巨大なため1歩1歩が重く、ズシン、と音を立てながらこちらに近づいて来るのがわかる。

 

「…………!」

 

思わず口をてで塞ぐ。恐怖で今にも叫んでしまいそうだった。呼吸が荒くなる。手の震えが止まらない。頬を涙が伝っているのがわかる

 

「ーーーーーーー」

 

ハエの化け物がこちらの岩影にまで近づいてきて来て遂に目の前にまで到着した。

 

「………………?」

 

音が止み、もう行ったのかと思い、確認しようとしてふと視線を感じた。上だ。なにか、いる。覚悟を決めて顔を上げる。

 

 

そこには、真っ赤な目をしながらこちらを覗いている化け物の顔があった。

 

「う、うわぁぁぁぁ!!!!」

 

「ーーーーーー!!!!」

 

進は一目散に逃げ出し全速力で出口へと走る。それを追いかけようとハエの化け物は聞いたことのない雄叫びを上げた。

 

「はぁ!はぁ!」

 

後ろが気になるが振り返っている場合じゃない。必死に森にでようと走り続ける。後ろから追っているような音がするが振り向かずに走り続けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「オウナ!モウイイ……」

 

追いかけようとしたところを紫の化け物が制止した。

 

「アイツハ、ヤクニタツ」

 

そう言って唇がないはずの口をニヤリとする化け物だった。

 

「ソレニシテモ、ニンゲンハヘンカガハヤイナ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

どれくらい走っただろう。気がつくと俺は家にいた。勿論記憶なんてこれっぽっちも残ってない。覚えているのはあの化け物のやっていたことだけだった。

 

「うっ!お゛ぇぇぇえ!!!!」

 

あの時に食べられていたときの音が忘れられず、トイレで嘔吐してしまう。

 

「はぁ゛っ!はぁ゛っ!」

 

吐くだけでも相当な疲れが体を襲う。

 

「う、うぅ……」

 

あの時の顔が忘れられない。男が花に変わる瞬間のあの何もかもを諦めきった、あの表情が。頭から焼き付いてはなれない。

 

「なんで……どうして……『あの人、今日変な石を入れられてた人だった』……」

 

進は、夜寝るときまであの顔が離れず良く眠ることができず、布団のなかで夜中、ずっとすすり泣いていた。

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