女性だらけの逆転世界でコンビニで働いてる男。   作:夏のミカン

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今回は個性が強いギャルの男護、ルナさんの回になります。

『∋ □ = ノ 勹_φ(・(ェ)・。)♪』


4話

 

今日はコンビニの仕事が休みの日。

ぶっちゃけ今の職場はかなりホワイトだ。労働基準法をしっかり守ってくれるし、ちゃんと時間外労働した時には残業代も出てくれる。

 

そういえば、此処の面接しに行った時に、面接担当してくれたのは柊木さんだったな。今となっては懐かしいものだ。

 

確か、「どのくらい働ける?」って質問に、「朝から深夜まで大丈夫です。休憩時間が15分程度でも構いません。9ヶ間休み一切無くても、残業代出なくても働くので」って答えたら「どんなブラック企業ぉ!?」って突っ込まれたな…。

 

このコンビニは24時間営業でシフト制だ。店舗によっては、時短営業だったり、俺が働いてるこのコンビニは、働いてる従業員がかなり多く、シフト時間帯を朝、昼、夜、深夜と細かくシフトを区切っている。

 

このコンビニのオーナーで、店長でもある麗華(れいか)さんが言うには、このコンビニは俺のお陰?でめちゃくちゃ儲かっているらしい。

 

俺が働く前までは、かなり人手不足だったみたいで、『人数足りないから後3時間だけ入ってくれない?』なんて事が多々あった、と柊木さんが遠い目をしながら教えてくれた。

 

ぶっちゃけ、俺はそっちの方が羨ましい。この間なんて、揚げ物の唐揚げが不足してたから折角揚げようとしてたのに、同じシフトの従業員の人に、『油が跳ねて天使の様なご尊顔が火傷したら大変ですわ!ここは私にお任せ下さいまし!』なんて、訳の分からない理由で揚げる作業を取り上げられてしまった。

 

男が希少で、どれだけこの世界に取って重要な存在なのかは、コンビニで働く様になってから、この世界の女性に分からせられつつあるが、それでもやはり過保護が過ぎる気がする。

 

接客や商品陳列なんかを任されてはいるけれど、何か妙な気を遣ってるというか…。まぁ、別に悪い気はしないし、コンビニの仕事、結構楽しいけどさ。大切にされているってのも分かるから良いよ?

 

でも、仕事量が足りないんだよなぁ。もっと働かせろ!

 

「取り敢えず、今日は何をしようかな」

 

特に予定を決めていなかった為、何をしようか迷う。部屋の掃除はさっき暇過ぎて済ませてしまったし、外に買いに行く物も特に無い。

 

マヤ姉が暇つぶしになるだろうからって、置いていってくれたゲーム機とゲームは、大分前に全クリしてしまった。

 

そもそもこのゲーム機、予約制で今の世の中何処も品薄状態だってのに、マヤ姉はどうやって手に入れたんだか……。

 

確か、平気で9〜10万はするってニュースで言ってたよな。こっちの世界のマヤ姉って何の仕事してるんだろ。

 

聞くタイミングは何回もあった筈だけど、前世と同じだったら嫌だなって思って、未だに聞けていない。

 

マヤ姉は前世だと、若くして大手の化粧品会社の女社長にまで上り詰めた有能ウーマンで、入社してトントン拍子で出世して行って、部下を何人も抱える立場にもなった凄い人だ。

 

女社長になって数年後。とある大企業のイケメン専務からプロポーズされると言う、出来事が起きる。だが、マヤ姉はイケメン専務なんて全く眼中に無くて、「興味無い」って、速攻で専務の男の告白を断ったらしい。

 

告白を即断われ事に逆ギレしたそいつは、顔に痣が残る程マヤ姉に暴力を振るい、騒ぎを聞きつけた社員達によって身柄を取り押さえられた。

 

その専務は傷害罪で逮捕されたけど、マヤ姉はそこから激しく男を嫌う様になって、精神的にも病んでしまった。

 

元々、学生の頃からマヤ姉は頭が良い人で、運動神経も抜群という隙のない完璧超人だった。個人コンクールでよく賞を貰っていて、特に秀でた才能もない平均的な俺は、常に姉と比べられていた。

 

マヤ姉も『麻耶香さんは凄い人だけど、弟君は…ねぇ?』等と周りからは比較されていたみたい。

 

「他人からの評価なんて気にしなくていいから」と、初めはマヤ姉も慰めてくれてはいたが、俺やマヤ姉への陰口は無くなる所か、増えるばかりだった。

 

人間はその人がコンプレックスだと思ってそうな部分をネチネチと攻撃する。実際、俺がマヤ姉にコンプレックスや劣等感を持っていたのは確かだ。

 

マヤ姉へ陰口が集中していたのは、単純にマヤ姉が羨ましいからだろう。

 

自分にはない者を沢山持っている人間。羨ましいという感情は、深まれば醜い嫉妬へと変わる。『悪口を言われたら勝ち!』『こいつは悪口を言われるくらいが丁度いい!』

 

そんな考え方があるくらいだ。

 

 

『貴方はいつもいつも…!』

 

 

…………止めよう。

 

前世の事を思い出したって、嫌な記憶が甦るだけだ。

 

ピコン!

 

「ん? Rainの通知?誰だろ…。ひょっとして、ルナさんかな? 休みが合う日に会おうって約束してたし」

 

スマホを確認すると、案の定ルナからのメッセージが届いていた。

 

『ユウ君、おっは〜! ねね、今日って空いてる?もし空いてたら今日会お?ダメ…かな?σ( ̄^ ̄)』

 

「今日か…。どうせ家に居てもやる事なんてないし、丁度いいか。えーと…」

 

『ルナさん、おはようございます。今日空いてますので大丈夫ですよ。待ち合わせ場所はどうしますか?』

 

『駅前とかはどお?確か、ユウ君が、働いてるって言うコンビニの位置から近かったよね?』

 

『そうですね。では、駅前で待ち合わせにしましょう。時間は何時にしますか?』

 

『じゃあ、11時で!』

 

『分かりました。では、また後程』

 

ルナさんとのやり取りを終えて、俺はベッドに寝転がったまま天井を見上げる。

 

「ふあ……」

 

最近、コンビニの業務を効率的に済ませる方法や、この世界について夜遅くまでネットで色々調べていたせいか、少し身体がダルい。いや、甘えた事は言ってられないな。

 

エナジードリンク飲んで今日も一日頑張るか…。

 

 

〜〜〜〜〜〜

 

 

「可愛い〜!ねね、今暇かな?良かったお姉さん達と遊ばない?」

 

「絶対退屈させないよ? 私達がリードしてあげるからさぁ」

 

駅前に設置されたベンチに座っていたら、金髪のギャル二人組が俺に話しかけてきた。…困ったな。こういう輩は無視が一番良いんだけど、なんか面倒臭い感じになりそうだし、適当に相手をして諦めてもらおう。

 

「すみません。連れを待っていますので…」

 

「そんな事は言わずにさぁ〜」

 

「ほら、行こ?」

 

強引に腕を引っ張られて連れて行かれそうになる。流石にちょっとしつこくないか?力ずくで振り払おうとしたその時…

 

パシッ!

 

突然現れた誰かが、俺の手を掴んでいる女の手首を掴んだ。

 

「あたしの彼氏君に何か用事かな?ん〜?」

 

ふんわりした肩先まである長い桃色の髪を揺らしながら、可愛らしくコテンと首を横に傾ける。よくと女性の髪を見れば、桃色の髪に黒が所々に混ざった不思議な配色だった。

 

首元にはハート型のアクセサリーが付いた黒いチョーカー。下は黒いブーツに、デニムのショートパンツ。上は白いキャミソールに、チャックの空いた水色のパーカー。その上には黒色のブルゾンを羽織っている。

 

髪色から服装から何からにまで、全身派手目な格好をしていた女性が、満面の笑みで二人組に話し掛ける。

 

「(派手な見た目…。もしかして、ルナさん…か?)」

 

「ふーん? あんた、この男の子君の彼氏なの? その割に彼はきょとんとした顔してるけどぉ?」

 

手首を掴まれていた片方の女が、強引に腕を払い除けると、ニヤニヤ笑みを浮かべながら、ルナさんに向かって話し始める。

 

「安っすい嘘は止めなって〜。仮に本当にその子の彼女なんだったらさぁ、こんな場所にポツンと一人にしないんじゃないの?」

 

「おー。頭軽そうに見えるけど、意外と観察眼あるねぇ。でも、それだったら、貴女達も人の事は言えないんじゃないかな? 嫌がる男の子の手を無理やり掴んで、何処に連れて行くつもりだったのかにゃ〜?」

 

おどけながら話しているが、目が全然笑ってなかった。めちゃくちゃ怖い。なのに、この二人組は一切怯んだ様子がなかった。

 

「うざ……。別に何処だっていいじゃん。つか、さっきから何なのあんた?邪魔でしか無いんだけど」

 

「邪魔だなんて、辛辣だなぁ。ぶっちゃけ、私もそろそろ堪忍袋の緒が切れそうなんだよね」

 

「は? 何、殺る気?いいよ、やる? 私も隣のこの子も、喧嘩慣れしてるから、あんたがボコられるだけだと思うけど?」

 

「うわぁ…。そうやって『喧嘩慣れしてる』とか謎の喧嘩強いアピするヤツ、マジでダっサいから」

 

「上等だゴラァ!」

 

挑発された二人が同時に飛び掛かる

 

「危ないっ!!」

 

思わず叫ぶ。が、次の瞬間、信じられない光景を目の当たりにした。二人の攻撃を難なく避けると、そのまま流れる様な動作で、二人を一瞬で地面に叩きつけたのだ。

 

「うわ!?」

 

「いったぁ!?」

 

痛みに悶絶する二人を見下ろしながら、ルナさんが口を開く。

 

「言ってなかったけど…。あたし、男護だからそこら辺の女よりもずっと強いよ。何なら第二ラウンドいっちゃう?」

 

「だ、男護ぉ!?」

 

「やっべぇ!面倒な事になる前にとっとと逃げるぞ!」

 

その言葉を聞いて、二人は顔を真っ青にして、一目散に逃げて行った。

 

「ふうー…。ま〜じダルいなぁ、ああいう自分は最強です、みたいな勘違いしてイキっちゃってる奴。ふざけんなし…って、やっば!それ所じゃなかった!」

 

呆気に取られていると、ルナさんは背後を振り返り、大慌てで俺に駆け寄ると、心配そうに目尻を下げて尋ねてくる。

 

「ユウ君、大丈夫?怪我はない?ごめんね、怖い思いさせちゃったね」

 

「あ、いえ…その。大丈夫です。助けてくれてありがとうございます。ルナさん」

 

先程までの強気な口調とは打って変わって、弱々しい声で謝ってきた。ギャップが凄すぎて困惑してしまう。

 

「そっか…。あ、お互いに自己紹介しとこっか。あたしは天崎瑠奈(あまさきるな)! この通り、派手な見た目してるから、初対面だと結構怖がられがちだけど、中身は至って普通の女の子だよ。趣味は温泉巡りと、美容と、ファッションかな。よろろ〜♪」

 

天崎さんは俺の言葉を聞くと、安心した様にホッと息を吐いた。

 

「マヤ姉から話は聞いてるかとは思いますが、弟の西原悠斗です。こちらこそよろしくお願いします。天崎さん」

 

「あっは♪緊張してる?ピュアでおにかわ〜!こりゃたかし(確かに)だわ。バカ真面目の麻耶香が溺愛するのも分かる気がするなぁ。ねね、敬語使わなくて良いよ? あたしの事は瑠奈って呼びなよ!」

 

人懐っこい笑みを浮かべて瑠奈さんが言う。派手な見た目から想像出来る様に、瑠奈さんはギャル系の雰囲気を放っている。ギャル特有の距離感の近さに、まだ少し慣れていない俺は、戸惑いながらも話を続ける。

 

「えっと、分かったよ。瑠奈ね。俺の事は好きに呼んでくれていいよ」

 

「じゃあ、ユウ君って呼ぶね♪立ち話もあれだから、とりま落ち着けるとこ入ってゆっくり話そ。あ、お金の事は気にしなくて良いよ。あたしが全部払うから!」

 

「いや、流石にそれは…。割り勘にしま…しない?」

 

「へ?割り勘?」

 

「うん。流石に奢って貰うのは申し訳無いし……」

 

「…プッ! アハハハハッ!」

 

突然腹を抱えながら笑い始めた瑠奈さんを見て、首を傾げる。

 

「どうしたの?」

 

「はー、おっかしい!ユウ君ってさ、本当に面白い子だよね。男なのに女の子に優しいし、高圧的にもならないし、ましてや我儘でも無い。おまけに、奢って貰うのが申し訳ないから割り勘にしよう?……アッハハ!あー駄目だ!駄目だ!なーんかツボに入っちゃったかも」

 

目に涙を滲ませながら笑う瑠奈さんの姿に、俺は目をパチクリとさせる。そんなに可笑しかったのだろうか?

 

「俺って、そんなに変なの?」

 

「うん、変。すっごく変。そもそも男の子なのに、『コンビニで働こう』なんて思うぐらいには変人だもんねキミ。でも、あたしはそういうの、嫌いじゃないよ。ありよりのあり!」

 

満面の笑みで瑠奈さんが言った。綺麗な笑顔だったせいで、心臓がドクンと跳ねる。

 

「……っ」

 

「ユウ君?」

 

「あぁ、ごめん。何かボォーっとしてた。い、行こうか」

 

平静を保つ為にも、急いで瑠奈さんの隣に立つ。すると瑠奈さんは悪戯っ子の様な笑みを浮かべながら、「どうせなら…手でも繋いでみる?どうする?」と尋ねてきた。

 

「…無理。恥ずかし過ぎて俺が死ぬ。そもそも、それは恋人同士がやるものだろ?あんまりそうやって年下をからかわないで」

 

「ふふ、麻耶香も弄ると面白い反応をしてくれるけど、君も負けず劣らずに良い反応をしてくれますな〜。姉弟揃ってからかい甲斐があるっていうかさぁ」

 

「……からかっただけ?」

 

「ごめんごめん、怒らないで?」

 

「別に怒ってはいないけど…」

 

「そう?それでね、麻耶香ったらさー…」

 

「(え、嘘だろ…。 まだ喋る気でいるのか!?)」

 

喫茶店に着くまで、瑠奈さんは終始楽しそうに話し続けた。かなりお喋りが好きなのか、一回喋り出したら口が止まる事が無い。今まで関わった事のないタイプの人間で、どう対応すればいいのか分からない。

 

コンビニで色んなお客の接客してたから大丈夫だろう、なんて高を括っていたけど、全くそんな事は無かった。

 

「(マヤ姉にギャルの友達がいたなんてね…)」

 

生真面目が服を来て歩いている様な人間だと思っていたから、正直意外だった。普段の二人は一体どんな会話してんだろ…?

 





天崎瑠奈。

麻耶香の親友。
ピンク髪に黒が入り交じった、派手な髪色をしたギャルの男性保護警護官。陽気で人懐っこいが、掴み所がない飄々とした性格の持ち主。何を考えてるのかイマイチよく分からない。

髪色を上司からしつこく注意されてるが、一向に改善が見られない。

男性保護警護会社きってのトラブルメーカー。
警護官としたの腕はあるが、見た目が派手な為に男性からは恐怖の対象として見られている。
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