ヴィクトリア家政の女装メイド   作:ゆうぐれ

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最後まで書き切ったのにボツを3回くらい繰り返したので、めっちゃ時間かかりました。題名にもあるように、今回もテンポ良く新キャラをブチ込んでいきます。話が進む前にどんどん原作の方が先へ進んで行っちゃうからネ。(この作品、まだ2章に行ってないってマジ!?)

あと最新の5章、めっっっちゃ良かった、最高、感激しましたわ。(語彙力喪失)

ちなみに雅ガチャは1回天井まで引いて猫又が出た時はついFワードを吐いてしまいましたが、それから30連でお迎えすることが出来ました。ん?完凸?雅専用音動機?何それオイシイノ?



17 無ケツとネズミ、パシリとサメ

ここはルミナスクエアの一角に位置する治安局のルミナ分署。

 

スズツキとエレンの姿はその建物の一室にあった。

 

「……では、ご令嬢の送迎を狙われたと?」

 

「ええ、そういうことですね、ハイ。」

 

「それ以外何も無いでしょ……。」

 

ニコニコと愛想笑いを浮かべながら必死に表情を取り繕っているスズツキ。

 

足を組んで椅子にもたれ掛かり、イラついた様子で棒付き飴を咥えているエレン。

 

そして2人の目の前でパソコンを片手に事情聴取を行っているのは治安局都市秩序部捜査課特務捜査班班長こと『朱鳶』だった。

 

ピッチピチパッツパツの制服が特徴的過ぎる彼女だったが、キーボードを打つ手を止めると、少しの操作の後に画面を閉じる。

 

ここでエレンが口から飴を離し、席から立ち上がった。

 

「報告書は書き終わったでしょ?もう帰らせてもらうから。」

 

「待ってください。まだ話は終わっていません。」

 

「えー?」

 

エレンが渋々ながらも再び椅子に座ると、朱鳶は次にタブレットを取り出した。

 

「貴方達が乗っていた車、確認出来ただけでも機関銃が2丁と対車輌用の小型爆弾、火炎放射器が装備されていました。ボディは特殊複合装甲で窓は防弾ガラス、更には車体各所に軍用の防壁発生装置まで……ボンドカー顔負けですね。」

 

「それがどうかした?ナンバープレートはちゃんと運輸局発行のものだけど?」

 

「どう見たって新エリー都の公道を走って良いものではありません!まず個人で所有することすら不可能です!それに運転していた貴女、18歳未満ですよね?」

 

朱鳶の鋭い視線が次にスズツキへと向けられる。

 

「え……あ、いやぁ……そんなことは……。」

 

「この拳銃についてもです。条例において個人の銃器所有はホームディフェンス用の一部の武器を除いて禁止されています。そのライセンス取得だって20歳からです。」

 

ビニール袋に入ったスズツキの銃、一七式拳銃の軽量コンパクト版である二六型が机の上に置かれた。

 

ちなみに新エリー都において銃は厳しく規制されているものの、いつ起きるかも分からないホロウ災害に備えて護身用の限定火器を自宅に置くことは合法である。

 

だから街中でガンショップを見かけることは珍しいことではない。

 

しかし小型の武器は別だ。

 

ポケットに隠し切れるような小さい拳銃や機関拳銃は犯罪を誘発させ、またどちらにせよエーテリアスには有効ではないからと、治安局や軍など一部の公的機関を除いて所持が禁止されている。

 

まあ、逆に言えばバッグやポケットに隠し切れないほどの大きさを誇る大型の回転式拳銃や大口径オートマチック拳銃は規定に沿った上での使用は合法となっている。

 

ビリーの使っているリボルバーがその最たる例だろう。

 

あれは拳銃というには余りにも大き過ぎた為、登録した役所ではストックを外したリボルビング・カービンライフルの扱いとなっているのだから驚きだ。

 

「えと……。」

 

そんな朱鳶の詰問に対して、明らかに狼狽えながら視線を明後日の方向へと向けるスズツキだったが、彼を庇うようにエレンが会話へ割り込んだ。

 

「あのさ、分かんない?」

 

「何がですか?」

 

「軍の装備が載ってる時点で普通じゃないってこと。まず運んでたの白い粉じゃなくてお宅の装備品も作ってる大企業の令嬢だよ?そーゆーお堅い規則の向こう側の存在って分からない?」

 

「だからと言って……!」

 

「朱鳶。」

 

その時、部屋にの太い声が響く。

 

そちらを向けば縦横共に大きな筋骨隆々の制服姿の男がお付きの婦警を連れて立っていた。

 

朱鳶はコンマ数秒ほど固まると、バネ仕掛けのように飛び上がり、慌てて敬礼をする。

 

「ブリンガー長官!?な、何か御用ですか?」

 

「朱鳶、このお二方を解放するんだ。」

 

「は……はっ!?」

 

思わず素っ頓狂な声を出す朱鳶の目の前、ただでさえ背の高いブリンガーの背後からヌッと更に大柄な影が現れる。

 

するとスズツキとエレンは親の迎えが来た時の子供のような、嬉しそうな笑みを浮かべた。

 

「あっ、ボス!」

 

「ボス、ごめん。」

 

「問題ありませんよ。それより早く帰りましょう。お嬢様も車で待っています。」

 

ブリンガーはライカンを横目で眺めると、朱鳶へ言い聞かせるように言葉を続ける。

 

「朱鳶、今日起こったことは主人に仕えるメイドが襲撃してきた敵を撃退しただけだ。つまり単なる正当防衛で、非は死体袋に入っている連中にしかない。」

 

「し、しかし……!」

 

「はいはーい、通りますよー。」

 

尚も食いつこうとする朱鳶だったが、彼女を押しのけてエレンは外に出て行く。

 

スズツキも銃を回収すると、エレンの後に続いた。

 

残された朱鳶は離れていく3人を唖然とした様子で眺め、彼らの背中が見えなくなるとブリンガーへ詰め寄る。

 

「今回の事件は単なる拉致未遂とは違います!大量の銃火器が使われた極めて組織的な犯行です!逮捕は無いにしても、せめて彼女達から今回の事情について詳しく聞くべきだと……!」

 

「朱鳶、メイド達が護衛していた人物はあの富嶽重工の御令嬢なんだ。変に動いて彼らの機嫌を損ねようものなら……な?選挙も近付いてきているんだ。どうか分かってくれ。」

 

話は終わりだと、会話を切り上げ、踵を返すブリンガー。

 

朱鳶は彼の後を追いかけようとしたが、お付きの婦警によって行手を阻まれてしまう。

 

「貴女、ちょっと退きなさい……!」

 

「まあまあ、そう熱くならないの。」

 

「何を……っ!?」

 

次の瞬間、婦警の背後から何か尻尾のような長い物体が飛び出てくると、人さし指を当てるように朱鳶の口元へ軽く添えられた。

 

朱鳶は驚きながらも改めて目の前の婦警を観察し、彼女の正体が自分のよく知る人物であることに気付く。

 

「ジェーン……!?」

 

「シーッ……まずは場所を変えましょ?」

 

「わ……分かったわ。」

 

そこに居たのは特務捜査班で犯罪行動外部顧問という肩書きを持っており、秘匿性の高い任務を請け負っていることから治安局でも表向きには存在せず、顔を知っている人間も非常に少ない人物。

 

通称、名無しの権兵衛こと『ジェーン・ドゥ』だった。

 

 

 

 

 

 

⬛︎

 

令嬢も含めたスズツキ達一行は屋敷に帰ると、休む暇も無く夕食を始めとした残りの仕事を片付け始めた。

 

全ての職務が終わったのは日もすっかり落ちた時刻。

 

スズツキは自身に割り当てられた部屋の中、ベッドの上で手足をいっぱいに伸ばしていた。

 

これから数日の間、メイドらしく泊まり込みで家事をするのだと、初めての体験を前に新鮮な気分に浸っていると、ドアが突然ノック無しに開かれる。

 

案の定というか、入ってきたのはエレンだった。

 

「ちょっと失礼させてもらうね。」

 

「えっ……おぶっ!?」

 

彼女がボフンと勢いよくベッドに座ると、後ろの尻尾がこちらの腹に激突してきた。

 

このサメの尻尾は普段から軽々と動いてはいるが、見た目に反して内部には自重を支える為の骨と筋肉がみっちりと詰まっており、重量も小さな子供と同じくらいある。

 

直撃すればたまったものではない。

 

ちなみに上記の事情からエレンの総重量は同年代の男子の平均体重を遥かに……。

 

「スズツキ、話をする前に、女子の禁忌に触れたらどうなるかを教えてあげようか?」

 

「先輩の重さを例えると翼デス。」

 

「よろしい。」

 

「……原子力空中空母の。」

 

「は?」

 

「ひいっ、地獄耳!」

 

「あーあ、先輩に向かってそんなこと言っちゃうんだぁ。せっかく見逃してあげようと思ってたのに。」

 

這って逃げようとするスズツキだったが、背後からエレンがのしかかると圧倒的な力と体重の差から、呆気なく身動きが取れなくなってしまう。

 

スズツキの背中に跨った彼女はドスンと腰を下ろし、脚も長い尻尾が押さえ込んだ。

 

「暴れるな。」

 

「ちょっと……お、重……うひっ!?」

 

その時、さわりと、偶然エレンの指が脇腹に這わされた。

 

それだけでスズツキの口から変な声が漏れてしまう。

 

「ふーん……へぇ。」

 

「せ、せんぱ……いっ……!?」

 

何か面白いものを見つけたかのようにニヤリと笑みを浮かべるエレン。

 

嫌な予感がしたスズツキはどうにか逃げ出そうとするが、その前に彼女の手が伸びてきた。

 

「ほーら、こちょこちょー。」

 

「ははっ!ちょっ……そこ弱……いひっ……!」

 

「ふーん、くすぐりに弱いタイプだったんだ。」

 

「そ、そうで……ひひっ!」

 

「じゃあこのまま本題に入るけど……スズツキさぁ、最近調子乗ってるよね。」

 

「な、何のことっ……ですか……。」

 

「ビデオ屋には1人で行くなってあれほど言ってるのに……何しれっと最近だけで3回も行ってるの?」

 

「ど、どうしてそれを……ひゃっ!?」

 

「へー、行ったんだー。」

 

「あひっ!?うひひっ!」

 

エレンの絶妙なテクニックによって脇腹をくすぐられるスズツキ。

 

それが1分ほど続くと一度解放される。

 

「何?ずっとリンとイチャイチャしてたわけ?」

 

「ぜぇ……はぁ……い、いえ、ビリーとゲームセンターへ行くついでに……。」

 

「はいギルティ。」

 

「はははっ!や、やめっ……!」

 

「嘘は良くないよ。ホシは上がってるんだから。」

 

「う、嘘じゃな……いひひ……!」

 

それからもエレンによってただひたすらくすぐられ続ける。

 

更に2分後、そこには掠れた喉で必死に息を整えるスズツキの姿があった。

 

そんな彼の目の前にとある画像を映した携帯端末が突き出される。

 

喫茶店の座席に向かい合って座っているのは私服姿のスズツキと、ヘッドホンをつけた銀髪の少女。

 

ひとつ横にスクロールすると、今度は猫のシリオンの少女とラーメンを食べているところが映る。

 

「こ、これ……!」

 

「ホシは上がってるって言ってんじゃん。癪だけど、今さっきリンから送られてきた。それにしてもアンビーと猫又ねぇ……いつの間に仲良くなってたんだ……。」

 

「あ、アンビーさんとは映画の趣味が合ってて……で、でも猫又さんは単に会ったってだけで……ビリーと遊んだのも事実です!」

 

「ふーん……男ってバラしたの?」

 

「いえ……その……アンビーさんに最初から気付かれていたみたいです……。」

 

「で?あっちから連絡してきたと?」

 

「まあ、デッドエンドホロウで連絡先は交換してたので……。」

 

「……そう。」

 

エレンは言いしれぬ不快感で心がいっぱいになっていた。

 

このままではせっかくの捕食対象が取られてしまうと。

 

メンバー(かぞく)とルビー達を除いて他人に、特に異性に対して全く興味を持てなかった自分が初めて意識を向けた相手が。

 

初めて『欲しい』と、自らの手で『汚したい』と思った彼が。

 

「そっか……そうだね……。」

 

エレンの視界に映っているのは自身の下に寝そべっている、脂の乗った美味しそうな被食者。

 

現状は完全に背中を見せており、無防備極まりない。

 

その光景を前によくよく考えると、数あるライバルの中でもこれほどまでに近い距離感を持っている者はまだ誰もいないことに気付く。

 

つまりやろうと思えば、いつでも『モノ』に出来るのだ。

 

手段が多少強行的になるかもしれないが、彼を取られるよりは遥かにマシと言える。

 

「ねえ、スズツキ……ちょっとそのままでいて。」

 

「え?あ、はい。」

 

気付けば既に第一案を実行に移していた。

 

肩まであるカツラの黒髪をかき上げると、今まで隠れていたうなじが見えてくる。

 

狙うはその露出した首筋。

 

間違っても折ってしまうなんてことがないように、緊張を抑えながら彼の右肩と頭を掴むと、ぐいと左右に引っ張る。

 

そして白磁の如く真っ白な肌へ自分のモノと主張するためのマーキングをつけてやらんと、ゆっくり顔を近づけていく。

 

「せ、先輩……?」

 

「大丈夫……すぐに終わるから……。」

 

がぱりとエレンが口を開けると、横に並んだいくつものサメの鋭い歯が顔を覗かせてくる。

 

奥歯を除いた全ての歯が犬歯のように尖ったそれらが刺されば、軽く力を込めただけでもくっきりとした赤い痕がつくだろう。

 

誰がやったのかは一目瞭然だ。

 

しかし結局のところ、歯がスズツキの肌に突き立てられることはなかった。

 

「エレンー?お風呂がわきましたよー?」

 

「……ちっ。」

 

聞こえてきたのはリナの声と共に近づいてくる足音。

 

あと少しというところで仕方なく口を閉じる。

 

「……スズツキ。」

 

「な、何ですか?」

 

「火遊びは程々にしてよ。じゃないと……。」

 

エレンはスズツキの耳元へ低い声で囁く。

 

「……いつか喰われることになるから。頭の天辺から足のつま先まで、全部。」

 

それだけ言うと、スズツキの反応を待たずにエレンは部屋を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

⬛︎

 

朱鳶は正義感の強い女性だ。

 

治安官になったのも街の人々を守る為であり、それはキャリアを積み始めた今でも変わらない。

 

まあ思っていた以上に犯人を捕まえることよりも書類仕事を片付ける方が圧倒的に多かったのだが、それは自分の必要が無いほどに街が平和なことを示しているからと、今では素直に受け入れている。

 

しかしそれでも万が一のために日々の鍛錬は欠かさず、いつでも出動に対応出来るよう準備してきた。

 

備えを忘れた時に限ってアクシデントは起こるものなのだ。

 

そして今日、今まで積み重ねてきた努力が実る時がやってきた。

 

遂にアクシデントとやらが起き、意外な形で本格出動することとなったのである。

 

「はあぁ……。」

 

ただそれにも関わらず、今の朱鳶は気分が乗っていなかった。

 

歩きながら深い溜め息を吐くと、カツンカツンと前から響いていた足音が止まり、懐中電灯の眩しい光がこちらへと向けられてくる。

 

「もう、せっかくの任務よ?少しくらいやる気出したら?」

 

振り向いてきたのは闇に紛れるような暗めの色をした上着とズボンに身を包んだジェーン。

 

彼女に対して朱鳶は叫びたくなるのを我慢しながら心中の思いをぶちまける。

 

「だって……初めての本格的な任務が上の許可も得ていない上に、こんなコソコソ隠れて行くなんて……!」

 

朱鳶は周りを見渡す。

 

壁と天井、床の全てがレンガによって構成されているこの空間は住民の大半が富裕層で占められるスロノス区の地下を通る下水道の中。

 

頭上に並んでいるのは特一級の高級住宅地ばかりで、住んでいる人数が少ないおかげか、水路に流れている汚水の量も少ない。

 

それでも臭いは酷いものだったが、足元の歩道が浸かっていないことは幸いだった。

 

合流式の古い下水路である為、もし近日中に雨が降っていれば、雨水によって足首が浸るほどに水かさが上昇していただろう。

 

朱鳶はそんな状況の中、口と鼻の両方から思いっきり息を吸ったことで、軽く咽せてしまう。

 

「ごほっ……げほっ……どうしてこんなことに……。」

 

「でも事件を解決したいんでしょ?」

 

「それはそうだけど……。」

 

「ならこれが手っ取り早いわ。普通のやり方じゃ、選挙活動が終わるまで到底解決は無理なんだし。」

 

「……そうね……そうよね。」

 

渋々と首を縦に振る朱鳶。

 

今の彼女は治安官の制服ではなく、ジェーンと同じような暗い色の私服を見に纏っており、身分証明の手帳はもちろんのこと、サプレッサーK22を始めとした装備も持っていない。

 

代わりにあるのは目元を隠すためのキャップ帽とジェーンから受け取った密造拳銃(トカレフ)だけ。

 

つまり今やっていることは完全に私的な行為であり、捜査の為の正式な許可は取っていなかった。

 

だがジェーンから提供された情報によれば状況は非常に逼迫しており、今後どうなるかは余談を許さないところまで来ているとのこと。

 

朱鳶は正義の為には仕方ないだろうと、自身を無理やり納得させ、再び足を進め始める。

 

それから少しして、ジェーンの言う目的地に到着した。

 

「ここよ。」

 

「……すごい錆びてるわね。」

 

「そりゃそうよ。庭の茂みに埋もれたせいで、管理者から忘れ去られちゃったんだから。」

 

ジェーンが懐中電灯を向けた先にあったのは天井を突き抜けて地上へと伸びている古い梯子。

 

それを登るとマンホールを押し除けて外に出る。

 

目に入ってきたのは洋風な豪邸と、周りを取り囲む広い庭だった。

 

「ここは……。」

 

「富嶽グループの邸宅のひとつよ。貴女が逃したメイド達もここに居るわ。」

 

「本当に上手く行くのかしら……。」

 

「じゃあ明日本社ビルの受付嬢に頼み込んでみる?捜査に協力してくれって。」

 

「分かってる。どうせ追い出された挙句に上からしょっぴかれるだけよ。早く行きましょう。」

 

「ええ。」

 

朱鳶は黒い帽子を目深に被り、ジェーンも同じようにすると、邸宅への侵入を開始した。

 

庭を通り、建物の壁に到達する。

 

「どうするの?窓を破る?」

 

「断熱性、防音性、防弾性を備えた二重強化ガラスを?一応不可能ではないけど、それは最後の手段ってことにしましょ。」

 

「随分と詳しいのね。」

 

「『副業』をしていると色々知識がつくのよ。それより空いてる窓を探してちょうだい。」

 

「分かったわ。」

 

長方形の形をした建物の周りを回っていくと、3階の端っこの部屋が窓を開け放されたままになっていることに気付く。

 

電気は消えており、中から音は聞こえない。

 

これはしめたとジェーンは鉤爪付きのロープを投げ、容易く窓の縁に引っ掛ける。

 

「ロープ登りは出来る?」

 

「当たり前よ。」

 

2人は垂れ下がったロープを何の支持も無しに己の身体のみを使って登っていく。

 

窓に到達すると、音を立てないように床へ着地した。

 

「……えっ。」

 

「あっ……。」

 

そして目が合った。

 

暗闇の中、ベッドの上でイヤホンを着けながら端末を眺めていた黒髪の少女らしきメイドと。

 

 

 

 

 

 

 

⬛︎

 

風呂上がりの湯気を漂わせたエレンは廊下を歩いていた。

 

彼女の格好はサメのパジャマとなっており、初めてスズツキを含めたメンバー全員での泊まりの任務だからと、念入りに選別してきたものだ。

 

せっかく少しは、いや、かなり楽しみにしていたのだから、先程までの不快な感情を歩きながらどうにか切り替える。

 

代わりに寝る前に彼と何をして遊ぼうかと、様々な妄想を頭の中で膨らませていると、いつの間にか目的の部屋に到着していることに気付く。

 

「スズツキー、お風呂空い…………。」

 

今度もノック無しに勢いよく扉を開ける。

 

すると薄暗い部屋の中で、ベッドに横になったスズツキの姿が目に入ってきた。

 

ついでに彼と組んず解れつの組体操を繰り広げている若い長身の女性2人も。

 

前後からその豊満な身体に押し潰されているおかげでスズツキの姿勢や表情はよく見えなかったが、少なくともエレンの堪忍袋の尾を寸断するのには十分過ぎる光景だった。

 

おっぱいに挟まれていることから、彼の場合、襲われていたとしても楽しんでいる可能性が高いだろう。

 

「……………………………へぇ、言ったそばから新しい女と。」

 

「げっ。」

 

「ん?」

 

「んむっ……んぐー……!!」

 

ゆらりとエレンの周囲からドス黒いオーラが放たれる。

 

彼女は近くに置いてあったハンガーラックから鉄製のハンガーを2つ手に取ると、それを両手に構えた。

 

「スズツキは後でお仕置きとして……取り敢えずアンタらはブチのめす!!!」

 

直後、邸宅内にいくつもの激しい破砕音が響き渡った。

 

これに対してカリンはすぐにスズツキの部屋へと直行し、ライカンは深刻そうに頭を抱え、リナはくすくすと笑みを浮かべた。

 

 





さぁて、地雷をどんどん敷設していって、スズツキ君の周りを地雷原にしてあげましょう!



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