ヴィクトリア家政の女装メイド   作:ゆうぐれ

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やっだぁぁぁぁ!!ガチャ券95コ集まっだよぉぉぉ!(歓喜)

どうも零号ホロウを荒らしまわってきた作者です。コメントでのアドバイスありがとうございました。これでピックアップの片方は手に入りそうです。やったぜ。



19 敵地浸透・EMP爆弾を発見せよ!

ここは零号ホロウ『リンボ』。

 

新エリー都の前身であるエリー都を丸ごと飲み込んだことで、未だ大半の都民にとって記憶に新しい『旧都陥落』を引き起こした諸悪の根源であり、周辺のホロウの親玉的存在でもあるそれ。

 

濃い藍色からなるドーム状の外壁を越えれば、薄鈍色の空の下に広がる巨大な廃墟が見えて来る。

 

街は全て当時のままの姿で残っており、今さっきまでそこに人の集団が居たのではないかと錯覚させるほどに、逆に言えば『瞬時にその場から人だけが居なくなってしまった』かのように、ほとんどの物や構造物が綺麗な状態を維持していた。

 

ただひとつ普通の都市とは明らかに違うことは、沢山の瓦礫が列を成して宙に浮いていることと、丸いコアを頭部に据えた異形の生物達がそこらを闊歩していること。

 

街中のどこを探しても彼らを除いて動く者は存在せず、たまに例外としてホロウ調査協会の調査員やホロウレイダーが外界から入ってくるが、大半が零号ホロウの外縁部に活動を限定している。

 

何故なら人間の数に比べてエーテリアスはその何十倍何百倍もいるから。

 

またリンボというエーテル値の高いホロウであるため、そこに居るエーテリアスは他の共生ホロウに比べて圧倒的に上位個体の割合が多い。

 

更には奥へ行くに連れて不可視の空間の裂け目が、どこへ繋がっているかも分からないワープゲートがあちこちに点在しており、一見して普通の街でも複雑怪奇な迷路と化しているのだ。

 

正しい道の解析を行いながら強力な敵と戦うなど、余程の人員を割かない限り、または対ホロウ6課のような人間離れした強力な手札を使わない限り奥へ進むことは不可能に近いと言える。

 

しかしホロウの中枢付近、広大な敷地を持つ軍の駐屯地の中には不思議と動く影が複数あった。

 

それもH.A.N.Dやホロウ調査協会のような正規の装備を着た専門家ではなく、裏社会でコピー品として広く流通している安価な耐侵食装備を身に纏った如何にもなゴロツキ共。

 

それぞれ独自のグラフィティを描いたヘルメットを被り、手にはそれぞれシモノフ・カービンやサイガ・ショットガンを持った彼らは建物から出て来ると一列に整列する。

 

そこへ現れたのはゴロツキ共とはまた違う耐侵食装備を、この基地に放置されていたひと昔前の軍用品を流用して作られたそれを身に纏った大柄な男。

 

装備のカラーリングは階級の高い武装親衛隊を示す暗い青色を基調としていた。

 

「お疲れ様です!」

 

「うむ、早速通してくれ。ボスへの伝言がある。早急に伝えたい。」

 

「はい!ただいま!」

 

ロータリー奥のエントランスには大きなガラス扉が据え付けられており、それが自動で開くと、一行は室内へと足を踏み入れて行く。

 

中ではゴロツキ共と同じような格好をした沢山の構成員が行き交っていた。

 

男が通ると全員が手や足を止め、気を付けの姿勢で立ち上がる。

 

施設の先へ進んでいくと、途中から構成員の装備と武器が安価で簡易的なコピー品から質の良い正規品へと変わっていった。

 

最終的に到着したのは元々会議室だった大きな部屋。

 

ライフルを持った番兵に用件を言って通してもらうと、ノックの後に扉を開ける。

 

「失礼します、ボス。」

 

「……少し待ってくれ。」

 

中に入ると目に入ってきたのは広い間取りと、端に置かれた大量の機材。

 

そして部屋の中央で大きな寝台に寝そべりながら部下の整備員に囲まれたとある人物、全身に特殊なアーマープレートと武装を装備した『山獅子組』のボスこと『レイザー』だった。

 

彼は親衛隊の男が現れたのを見ると、部下に武器の整備を中断させ、部屋から人払いをする。

 

その巨体が動き、肩幅の広い上体が起き上がってくる。

 

「報告しろ。」

 

「はい、ジェーンという女についてです。」

 

「ああ……新入りの割に有望な人材だったかと思えば、早速任せた仕事を盛大にしくじった奴か……。」

 

レイザーは開閉式のフルフェイスヘルメットを装備していることから表情は見えないが、ジェーンと聞いてスピーカーを介した彼の声色に苛つきの感情がにじみ出る。

 

「おい、報告というのはまさか奴が逃げたことじゃあないだろうな?」

 

「いいえ、どうやら例のキーを手に入れたと。」

 

「…………ほう、続けろ。」

 

レイザーは少し黙り込んだのちに、意外そうな声を漏らす。

 

親衛隊の男は心の中でホッと安堵の息を吐いた。

 

「彼女は元々のプランであった人質を使っての脅迫から、内通者を介して直にキーを盗み取ることへ変更したとのことです。」

 

「なるほど……奴は今どこに?」

 

「内通者と、途中で捕縛した治安官と共にホロウC41の第22番簡易中間拠点にて待機しています。いかがいたしましょうか?」

 

「通せ。直接俺の目の前まで持って来させるんだ。」

 

「承知しました。」

 

部下の男が出て行くと、レイザーは誰も居ない中、メットの内側でニヤリと笑みを浮かべた。

 

かと思えばくつくつと乾いた笑い声を漏らす。

 

「やっとだ……やっと山獅子組は……俺の軍隊へと変わる……!そして次は俺の国を……!」

 

気分を高揚させたレイザーは椅子から立ち上がると、両手を高々と上げた。

 

 

 

 

 

 

 

⬛︎

 

スズツキは正真正銘の男であり、見た目は可愛らしくても彼には立派な重力子放射線射出装置が生えている。

 

性別を正しく知っている仲間や知り合いは彼を男として扱い、一部は彼を異性の『男』として狙っている。

 

しかしその他大勢にとっては、特にメイド服を着ている状態では正確な判別は非常に難しい。

 

というよりまず最初から男と疑わないだろう。

 

リンのように骨格や挙動などから男であることを看破した者も居たが、彼女のような変た……プロフェッショナルは極一部だ。

 

よって今回の潜入任務においてもスズツキは『可愛い女の子』としかゴロツキ共の目には映らず、まさかロングスカートの裏に武器を隠し持ったエージェントとは微塵も疑われなかった。

 

ちなみにだが、スズツキは自身が男であると朱鳶とジェーンには明かしていない。

 

「……い、行けちゃいましたね。」

 

「ふふ、堂々としていれば大丈夫って言ったでしょ?」

 

「し、心臓に悪いです……。」

 

ここはホロウC41の外縁部。

 

ジェーンと朱鳶、スズツキの3人は山獅子組の拠点のひとつに潜入していた。

 

入り口に立っていた番兵はボスに近い立場にあるジェーンを見ると、即座に警戒を解き、スズツキと朱鳶に関しても軽い説明だけで通してくれた。

 

案内された部屋の中、椅子に腰掛けたスズツキは、今のところは事が順調に進んでいることに安堵の息を吐くが、ここで自分の『設定』を思い出す。

 

「あの……ジェーンさん。」

 

「なあに?」

 

「いやその……アレ……もう少しどうにかならないのかなって……。」

 

「あら、嫌だったかしら?」

 

スズツキが話しているのは自身の偽りの身分、要するに『設定』について。

 

侵入した時に敵へ本当の事情を話すわけにはいかないため、事前にでっち上げたものだ。

 

その内容は前回の襲撃で令嬢強奪に失敗したジェーンが、今度は令嬢の家に仕えていたメイドのスズツキを懐柔してカードキーを手に入れたというもの。

 

朱鳶はその途中で捕まえた治安官で、情報を聞き出すための捕虜として連れて来たという設定から目隠しと手錠が着けられている。

 

スズツキが特に気になっているのは『懐柔された』という部分で、要するにハニートラップでメロメロにされてしまったことを指しているのだ。

 

「た、例えばお金を積まれて寝返ったとかは……?」

 

「ただのパートタイマーならまだしも、高名な家系に仕えるメイドが金如きで堕ちることはまず無いわ。すぐに怪しまれて終わりよ。だから心を落としたって方が説得力があるの。」

 

「でもそれだと……私と……。」

 

「あらあら……貴方、『そういう』経験は無い感じ?」

 

「は、はい……そうです……。」

 

恥ずかしそうに俯くスズツキを見て、ジェーンは揶揄うような笑みを浮かべた。

 

まるで魔女や淫魔のような、ミステリアスで妖艶な雰囲気を漂わせながら彼女はスズツキの身体へ長い尻尾を這わせる。

 

「ふふ……大丈夫、それならアタイに全部任せておきなさいな。」

 

「わっ、ちょっ……ど、どこを触って……!」

 

こちらの腕や脚に絡み付いた尻尾が、スカートの内部まで入り込んで来ようとする。

 

すぐさま尻尾の先端を掴むと、急いで引っ張り出した。

 

「もう、そんなに嫌がらなくてもいいじゃない。お姉さん、傷ついちゃうわ。」

 

「ただのセクハラじゃないですか……だ、だからそんなにくっ付いてっ……。」

 

ジェーンは初心な反応を見せるスズツキに追い討ちをかけるが如く身体を擦り寄せ、色々と当てながらサワサワと両手で彼をまさぐっていく。

 

「い、いい加減にしてください……お、怒りま……ひゃうっ……!?」

 

「ふーっ……貴方、感度高いのね。ホントに未経験なのかしら?それに……。」

 

スズツキの耳元に息を吹きかけたジェーンは軽く笑うと、彼の襟を摘む。

 

それを軽く引っ張れば、白い肌についた真新しい噛み痕が顔を出した。

 

形状からして少なくとも犬や猫のものではない。

 

「こんな目立つ位置にマーキングされちゃって……余程独占欲の強い相手が居るみたいね。」

 

「いやその……それは……。」

 

完全にペースに乗せられてしどろもどろとなっていたスズツキだったが、今まで捕虜という設定から隣で黙り込んでいた朱鳶が助け舟を出してくれた。

 

「ジェーン?」

 

「はいはい、分かっているわよ。」

 

拘束が解かれ、スズツキはホッと息を吐く。

 

ここで外から足音が近付いてくると、部屋のドアが開かれた。

 

そこに立っていたのは他の山獅子組の構成員とは少し違う格好と装備をした大柄な男。

 

ジェーンはすぐに誰か分かったようで、椅子から腰を上げる。

 

「まあ、いきなり親衛隊が来てくれるなんてね。ということは『獅子のねぐら』へ行く許可が降りたのかしら?」

 

「そうだ。確かにカードはあるんだろうな?」

 

「ええ、もちろん。」

 

ジェーンはスズツキに視線を送る。

 

対してスズツキはその意図を汲み取ると、懐から1枚のカードキーを取り出した。

 

男は軽く頷き、今度は拘束された朱鳶へ目を向ける。

 

「そいつはどうするつもりだ?」

 

「最近治安局が動いているみたいだからね、ちょっと『オハナシ』して色々と聞くのよ。」

 

「……分かった。だがアジトには連れていくな。尋問はここか他の拠点でやれ。」

 

男はジェーンの言わんとすることを理解すると、あからさまに嫌そうな反応を見せてきた。

 

というのも今まで山獅子組はレイザーの意向から秘匿性を最優先としてきた為、治安局から目の仇にされないよう過激な行動を、特に故意的な殺人や暴行、拉致、拷問などを厳禁としていた。

 

目的を完遂したら余裕があっても調子に乗らず、さっさと逃げるを基本方針とし、民間人や治安官への余計な被害は極力抑えていたことから比較的目立たずにここまで勢力を伸ばせたのだ。

 

組内ではこれら決まり事を『掟』と呼んでおり、違反した者は投獄や追放、最悪の場合は処刑など罰は非常に厳しい。

 

よって山獅子組は犯罪組織であるにも関わらず、まるで軍隊のように規律正しく動いており、レイザーのカリスマ性も相まって他のストリートギャングとは一味も二味も違っていた。

 

ただもちろんジェーンもそのことを理解している。

 

そこで彼女はあらかじめ考えておいた言い訳を話し始めた。

 

「待って。目的は尋問だけじゃないわ。彼女は特殊なの。」

 

「……というと?」

 

「内通者になってもらうのよ。こっちのカワイコちゃんみたいに……ね?」

 

「ひゃっ……!?」

 

ゆらりと軽い身のこなしでスズツキの背後に回り込んだジェーンは彼に抱き付き、色々と押し付けながら、尻尾も使っていやらしく身体をまさぐる。

 

ここは合わせるべきかとスズツキは抵抗はせず、わざと艶かしい声を発しようと考えるが、その前にジェーンのテクニックが上手すぎて演技無しに顔が赤くなり、色っぽい声が出てしまっていた。

 

服越しに敏感な箇所をいじられ、長い尻尾がスカートの下から入り込み、中で複雑に絡み付きながら胸のボタンの隙間より外に出てくる。

 

「あっ……やめっ……じぇ、ジェーンさん……いまはっ……。」

 

「ふふっ、見られて興奮しているの?変態さんねぇ。」

 

「はうっ……ほ、ほんとに……。」

 

いきなり展開され出した百合空間(第三者視点)に男は固まり、部屋の外に居た構成員が開いたドアの隙間から団子になって凝視してくる。

 

やはり男女比が99対1以下の山獅子組で女は非常に珍しい上に、ホロウというネットの使えない環境では『溜まる』のか、誰もが釘付けになっていた。

 

ちなみに朱鳶は聞こえてくる矯声に頬と耳を真っ赤に染め上げていた。

 

少しして男がハッと我に返り、怒り気味に制止してくる。

 

「分かった!やめろ!もういい!」

 

「じゃあ連れて行っても?」

 

「目と耳を完全に塞ぐことが条件だ!ボディチェックも忘れるなよ!」

 

「心配しなくていいわ。昨日裸に剥いたばかりだし。」

 

「あ、あと規律を乱すような言動は慎め!お前たちもいつまで見ているつもりだ!さっさと持ち場へ戻るんだ!」

 

男の怒号を浴びてギャラリーの面々は即座に姿を消す。

 

スズツキはジェーンから解放されると、くたりと膝をついた。

 

というか膝をつかないと拙かった。

 

性的な興奮に伴ってナニがとまでは言わないが、砲身内部を構成する海綿帯へ血液が充填され、発射形態へと移りかけていたのだ。

 

息を整えていると目の前に手を差し伸べられる。

 

「ごめんなさいね。やり過ぎたかしら?」

 

「……ええ、すっごく良かったですよ。」

 

「分かったわ。じゃあ次は2人きりの時に、ね?」

 

「そういうことじゃないです……。」

 

立ち上がると、少し前屈みになって歩き始める。

 

それからは遂に山獅子組の本拠点への移動を開始した。

 

 

 

 

 

 

⬛︎

 

アジトへ行く方法は非常に簡単だった。

 

それは建物の中にあった空間の裂け目へダイブするだけ。

 

いつも通り視界が暗転したかと思えば、次の瞬間には零号ホロウの中に居た。

 

10年以上昔にホロウへ呑み込まれた少し古めな街並みを眺めながら足を進めていると、とある大きな施設に辿り着き、見張りの兵の横を通って中に入る。

 

するとエントランスらしき広い空間に親衛隊の男よりも更に大きな人物が、綺麗に整列した大量の構成員と親衛隊員に囲まれながら立っていた。

 

筋骨隆々の身体には各所に鎧のようなプレートを装着しており、頭と胸、左腕は厳ついアーマーで覆われている。

 

スズツキはジェーンに聞かずとも、目の前の巨漢が誰なのかすぐに分かった。

 

「れ、レイザー……。」

 

放出される恐ろしい覇気を、エーテリアスとはまた別のそれを前にして思わずそう呟くと、ヘルメットにつけられたいくつもの光学センサーがこちらへと向けられた。

 

のっしのっしと、装備も含めればライカン以上の巨体が迫ってくる。

 

彼はスズツキの眼前で止まり、ヘルメットの正面部分を展開させると、案の定というか、悪人らしい強面と刈り上げた頭髪が目に入ってきた。

 

「そうだ。俺がレイザーだ。お前が内通者か?」

 

「は、はひ……。」

 

「キーは?」

 

「こ、これです……。」

 

震える手でカードキーを差し出すと、太い指がそれを攫っていった。

 

彼はカードを眺めると、ジェーンの方を向く。

 

「ジェーン、よくやった。人質の拉致には派手に失敗したが、経過がどうであれ結果を出したのなら俺は評価する。お前の希望通り、親衛隊への加入を許可しよう。」

 

「光栄だわ。」

 

会釈するジェーンに背を向けるレイザーだったが、足を止めると再び振り返ってくる。

 

「そうだ。成果には正当な報酬が必要だな。親衛隊加入とはまた別に褒美をくれてやろう。何か欲しいものはあるか?金、宝石、薬、諸々何でもいいぞ?」

 

「なら『例のブツ』を見るところに同行しても良いかしら?」

 

「ふむ……まあいいだろう。おいお前、あの治安官を独房に入れておけ。ただ、手荒なマネはするなよ。」

 

「分かりました、ボス。」

 

「よし、ジェーンとそこのちんちくりんはついて来い。他は解散だ。」

 

レイザーのひと声でその場に居る全員が足早に自らの持ち場へと戻り始めた。

 

スズツキは歩きながらこっそり手首の端末を点けると、それぞれ朱鳶とジェーンが装備している発信器が動いているかを確認する。

 

そして自身の腹を触り、服の裏に金属の板のような硬い手触りを感じると、カチリと音が鳴るまで指で軽く押し込んだ。

 

「ジェーンさん。」

 

「ふふっ、準備はいい?」

 

「もちろんです。」

 

レイザーに続いて歩き始めると、ジェーンは一度朱鳶に駆け寄る。

 

「また後で会いましょうね?治安官さん?」

 

「……むぐ。」

 

朱鳶は頭に被せられた布袋と口に噛まされた猿轡のおかげで意思の疎通は不可能だったが、了解と聞こえた気がした。

 

彼女と別れて施設の奥へ進み始めると、一気に雰囲気が暗くなり、階段を降りる度に空気が澱んでいく。

 

通路が全面コンクリート張りの無機質なものへと変わると、ガンガンと何かが動く音が木霊してきた。

 

「ここは?」

 

「兵器工場だ。隣の基地で使っていた武器の整備や、新しい兵器の開発を行っていたらしい。」

 

「じゃあ親衛隊や貴方の装備も……。」

 

「そうだ。先日お前に渡したEMP発生装置もここに放置されていたのを回収した。もちろんそれだけじゃない。見ろ。」

 

道を曲がると、一気に開けた空間へ出る。

 

通路は空中に敷かれた鉄製の橋に繋がっており、視界に映った眼下の光景に思わず息を呑む。

 

元は何かの生産ラインだったのだろうか。

 

大小様々な機械に沢山の構成員が群がり、ライフルや弾薬、防弾衣、ヘルメットなど、あらゆる物品を製造していた。

 

「銃を作ってるんですか……?」

 

「ああ、この施設は良いぞ。何たって高性能な工作機械が揃い踏みだ。ここに山獅子組お抱えの技術者が加わればカラシニコフでもマカロフでもRPGでも、とにかく何でも作ることが出来る。」

 

「……どうりで末端までマトモなやつを使っているわけだわ。ダクトテープでぐるぐる巻きにしたハンドメイドの粗悪品なんて誰も持っていないもの。」

 

ジェーンの驚き呆れた声に、レイザーは得意げに鼻を鳴らす。

 

「ふっ、俺の山獅子組は軍隊だ。ごっこ遊びしかやらないストリートのハリボテ集団と一緒にされては困る。」

 

「資金面において不自然なまでに潤沢なのもこれを売っているおかげなのね。」

 

「ああ、お前はもう親衛隊だから話すが、先日もトライアンフとエーテル爆薬の取引を行った。郊外の連中は毎回金払いが良くて助かる。今後しばらくは安定した活動が可能になるだろう。」

 

「ねえ、もしかしてヴィジョンの一件にも関わってたり?」

 

「奴等には信頼出来る第三者の個人バイヤーを通してライフルを売っただけだ。虐殺未遂には手を貸していないし、まず事件に関してもニュース以上のことは知らない。」

 

「そ、なら良かったわ。」

 

工場を通り過ぎると、再びコンクリートの通路へと戻る。

 

そして立ち入り禁止の文字が書かれた扉を抜けると、目の前に機材搬送用の大型のエレベーターが現れた。

 

レイザーがボタンを押せば巨大な扉が開き、家のリビングルームよりも広い籠が目に入ってくる。

 

「まだ下に潜るのかしら?」

 

「すぐに着く。」

 

扉が閉じると、ガコンと音を立てながらエレベーターは下降を開始する。

 

乗っていたのは1分ほどだっただろうか。

 

無言ということも相まって非常に長く感じられたその時間を超えると、ようやく扉が開き、これまた薄暗い空間に出る。

 

「ここだ。」

 

目の前にはジェーンが撮った写真と同じ、巨大で分厚い鉄扉があった。

 

レイザーが壁の横の壁に埋め込まれたコンソールをいじり、カードキーを挿入すると、機械の駆動音が響き始めた。

 

「おお……。」

 

「さぁて、鬼が出るか蛇が出るか……。」

 

扉が完全に開くと、一行は中に入った。

 

バツンバツンと電気が点いていくと、そこに広がっていたのは目を剥くほどの、半径数百メートルはありそうな広大なドーム状の空間。

 

ありし日のエリー都を再現しているようで、数々の家やビルが立ち並んでおり、実験や訓練の跡による破壊の痕跡がいくつも見られた。

 

外縁に沿っていくつか通路の穴が空いており、目的の兵器保管庫はその先にあるようだった。

 

「すごい数ね……。」

 

「部下を連れてくるべきだったな。まあいい、片っ端から開けろ。ここの記録によれば、EMP爆弾は何らかの車両に乗せられている筈だ。」

 

キーを使って開錠し、レイザーが扉を力づくで開けていく。

 

中に入っていたのは試作品らしき兵器や武器の数々。

 

しかしハッキリ言って見た目は古臭く、型落ちが大半だった。

 

「スゴい……本で見た試作兵器ばかり……。」

 

「知ってるの?」

 

「ええ、マイナーなものばかりですけど。」

 

「ふーん……どれも同じにしか見えないわ。」

 

軍用車両を除いて今はレアなガソリンエンジン搭載式のバイク、正式採用のコンペで負けたAFV、来年から退役が始まる主力戦車の先行量産型、まだ完全自律制御システムが搭載されていなかった頃のガーディアンタイプの歩行戦車。

 

倉庫は兵器だけではなく、兵士の個人火器やパワードスーツ、工作車両、輸送車両などあらゆる物が置かれていた。

 

ただ肝心のEMP爆弾に関しては小規模な電磁パルス発生装置はあっても、爆弾と呼べるほどに強力な代物は中々見つからない。

 

レイザーとジェーンが一生懸命辺りを探している中、スズツキは自らの設定も忘れ、鼻息荒く楽しそうに先へ先へと進んでいく。

 

すると『危険』の文字が大きく書かれた一際重厚な扉を通路の最奥で見つける。

 

好奇心を抑えられず、他の2人を待たずにレバーを下げれば、けたたましいサイレンが鳴り響き、ゆっくりとそれは横へスライドしていく。

 

「わぁ……!」

 

鉄扉が開き切ると、スズツキは歓喜の声を漏らした。

 

所々電球が切れた薄暗い空間の中、視界に映ったのは男なら、いや、漢なら人生において誰しも一度は夢見るもの。

 

何と人型のロボットだった。

 

全高はだいたい6から7mほどで、カラーリングは試作機を表しているのか、暗闇でも非常に目立つオレンジ色と白。

 

角ばった身体や重厚な太い脚、全身に張られた鎧のような装甲など、軍において現役で運用されている自律歩行戦車・ガーディアンに所々似ている。

 

違う点としては頭が存在しており、身体つきは八頭身で、寸胴短足のガーディアンとは対照的にスタイルが良い。

 

目付きは眼力を感じさせるくらいに鋭く、胸周りにはひと1人が収まりそうな膨らみがあった。

 

興奮気味に眺めていると、後ろからサイレンの音を聞いてレイザーとジェーンが追いついてくる。

 

「これは……!」

 

「あらあら……でも目的のEMP爆弾ではないわね。」

 

「いや、これだ。これに違いない。」

 

「?爆弾なんてどこにも……。」

 

「よく見ろ。背中についているじゃあないか。」

 

ロボットは傾いた台車へ寄りかかるように乗せられており、横に回り込むと背中に四角い大きな装備がついていることに気づく。

 

バックパックにしては不自然なまでに大きく、ロボットから向かって右の方には何かが収められていそうな太くて長い筒が埋め込まれていた。

 

「ミサイル……?」

 

「EMP爆弾……いや、EMPミサイル搭載型の二足歩行戦車か……予想の斜め上のものが来たな……。」

 

「良い広告塔になりそうじゃない。男は好きなんでしょ?こういうロボット。」

 

「知らん。それより一度戻るぞ。技術者連中にコイツを見せる。あのチビを連れてこい。」

 

「ええ。」

 

レイザーが踵を返すと、ジェーンはスズツキを探す。

 

彼はロボットを裏側から見上げる位置に居た。

 

「行くわよ。今は戻りましょ。」

 

「あ……ジェーンさん。」

 

「ん?」

 

スズツキはジェーンに気付くと、ロボットに向けて指をさした。

 

彼女はそちらを注視するが、先程のチューブ式ミサイルコンテナがあるだけで、特に変なものは無い。

 

「何かあるかしら?」

 

「いえ、表面を見てください。」

 

「んん……?」

 

よく目を凝らしていると、隣のスズツキが携帯端末のライトで機体を照らしてくれる。

 

するとジェーンはミサイルコンテナの表面へ何かのマークが施されていることに気付いた。

 

黒い線で縁取られた黄色い円の中心には、ぽつりと小さな黒点が打たれており、その周りには切り分けたバウムクーヘンのような扇状の黒い物体が等間隔に3つ並んでいる。

 

「………え?」

 

彼女は一瞬それが何か分からなかった。

 

何故なら『それ』はエリー都が繁栄していた時代、つまり1つ2つほど前の世代が現役だった頃にはその多大な危険性と、エーテルを始めとした代替エネルギーの発見から完全なる廃絶が行われており、EMPと同じく一般人の記憶からは意図的に消し去られていたからだ。

 

例外として工科大学の専門書や高等学校の歴史書、数少ない旧世界のフィクションに載ってはいるものの、それらを読む人間は非常に少ない。

 

ジェーンとスズツキはその少数派だったおかげで『それ』について理解が出来てはいたが、おかげで同時に恐ろしさを感じていた。

 

民間向けに平和利用すれば大きな都市を賄えるほどの莫大なエネルギーを生み出し、戦争で軍事利用すればその大きな都市を凄まじい熱線で丸ごと焼き払ってしまう。

 

そんな光と闇の二面性を持つ『それ』。

 

スズツキはもちろんのこと、今まで幾つもの修羅場を超えてきたジェーンでさえ声が震えていた。

 

「う、嘘でしょ……EMP爆弾って……。」

 

「核爆弾の高高度爆発による電磁パルスの放出……けれどもし普通に新エリー都の上空で爆発させると……。」

 

「旧都陥落の比じゃない規模の死人が出るわ……。」

 

爆風と熱線で破壊の限りを尽くされた都市、街のあちらこちらに放置される炭化した肉塊、制御を外れて活性化を続ける無数のホロウ。

 

2人の頭に最悪の予想図が浮かび上がった。

 

「……山獅子組に持たせるにはあまりにも強すぎる力です。」

 

「正しく言うと、力を持つのはレイザー個人よ。歴史を見ても1人の人間が巨大な力を独占すると碌なことにならないわ。」

 

「どっ、どうしますか?」

 

「一度戻ってから考えましょう。流石にこれは予想外だったわ。」

 

「分かりました。」

 

スズツキとジェーンは現場を後にする。

 

背後ではロボットの目が光を反射して不気味に光っていた。

 

 

 

 

 

 

⬛︎

 

[あっ……やめっ……じぇ、ジェーンさん……いまはっ……。]

 

[ふふっ、見られて興奮しているの?変態さんねぇ。]

 

[はうっ……ほ、ほんとに……。]

 

「……………ねえ、リン。」

 

[今脳破壊されてるから話したくない。]

 

「アイツ1回()()()()()方がいいかな?誰の庇護下にあるかって。」

 

[……………そういうのは他言しない方がいいんじゃないの?]

 

「アンタが手を出したら即豚箱行きだから心配してない。」

 

[ふーん……でもバレなきゃいい話だよね?]

 

「は?何?ボコされたい?」

 

[いやいや?流石に私も馬鹿じゃあないよ。そこでひとつ提案なんだけどさ、ここで当ても無くいがみ合っているより、共同管理して先に利確した方が……って動き出したね。]

 

「空間の裂け目があるみたい。あっ、声が聞こえなくなった。」

 

[もう移動した感じかな?ライカンさんがスズツキ君に持たせた発信器がちゃんと動いてくれるといいけど……。]

 

「ボスが用意したのなら大丈夫だよ。早く行こう。」

 

[はぁ……今度は零号ホロウかぁ……。]

 

「依頼を受けたのはそっちでしょ。あと、アイツは私のだから。誰にも渡さない。」

 

[もっと賢く行こうよー。じゃないと漁夫の利されちゃうかもだよ?]

 

「やだ。」

 

[はいはい。]

 





ここはシャドーモセス島でもトリントン基地でもありません。零号ホロウの中です。ちな作者はGP-02がすこです。


よろしければ高評価又は感想をお願いします。作者のモチベが爆上がりするので。

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