ヴィクトリア家政の女装メイド   作:ゆうぐれ

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どうも、ガンダムジークアクスを見て大興奮の作者です。

もうね、ただでさえエヴァの制作会社のカラーが作ってるって聞いただけでも期待値マシマシだったってのに、何なのよあの予想外の展開は!(歓喜)

ハイ、もっかい観てきます。ニャアン可愛い。



20 ガーディアン強奪

地下から戻ったスズツキとジェーンは朱鳶が収監されている独房に来ていた。

 

ジェーンがこれから『オハナシ』をするから人払いをしてほしいと、色っぽい仕草で看守に囁けば、単純な野朗共は何を想像したのかあっさりと堕ち、インコのように首を縦に振る。

 

気付けば元は倉庫だった広い空間には自分達を除いて誰も居なくなっていた。

 

余りにも鮮やかな手腕に唖然とするスズツキの手を引いて、ジェーンは部屋のひとつへ入る。

 

中にあったのはベッドと椅子がひとつずつと、ベッドに腰掛けている朱鳶。

 

今は拘束を解除されており、顔を上げてきた彼女と目が合う。

 

「失礼するわ。元気にしてた?」

 

「……私の尋問を撮る気かしら。」

 

「いいえ、あいにくとカメラは持ってないわ。ここも倉庫を転用して作られたものだから、設備は碌についてないのよね。」

 

ジェーンがそう言うと、敵対的なフリをしていた朱鳶の態度が軟化する。

 

「何か進展は?」

 

「ありまくりよ。スズツキちゃんがスゴいのを見つけちゃったの。」

 

地下にあったものについて説明すると、朱鳶の表情が険しいものへと変わる。

 

「まさか核爆弾があるなんて……流石に予想外ね。レイザーはそれで何をするつもりなのかしら?」

 

「自分の国を宣言するつもりよ。馬鹿げているけど、核をチラつかせれば冗談ではなくなるかもしれないわ。」

 

「どうします?ミサイル本体くらいだったら破壊出来るかもですが。」

 

「爆薬があるのですか?」

 

「はい。」

 

スズツキはスカートの裏に手を突っ込むと、某汎用猫型決戦兵器の如くゴソゴソと何かを探し始め、長方形の薄いブロックを何個か取り出す。

 

それは軍用の可塑性爆薬ことプラスチック爆弾だった。

 

もちろん個人が持つには違法中の違法なものであることから、朱鳶は呆れ顔になる。

 

「貴女本当に……いえ、今はそれどころではないわね。」

 

「朱鳶、スズツキちゃんは法を作る人間を操る人間に仕えているの。気にするだけ無駄よ。」

 

「分かってる。その爆弾で破壊は出来るのかしら?」

 

「えっと……多分起爆させることは不可能になるかと。精密機械の塊ですし。」

 

「大丈夫なの?そのままボーンってアタイ達まで吹っ飛ばない?」

 

「いえ、確か核は中の物質同士をぶつけ合うか、圧縮させることで爆発が発生する仕組みだった筈です。なので普通の爆弾みたいに誘爆はしないかと。」

 

補足だが、核爆弾とはウランやプルトニウムなどの核分裂性を持つ物質を用いて核分裂を連鎖的に引き起こし、その際に放出される膨大なエネルギーを兵器として利用したものだ。

 

発動方式として砲身型と爆縮型の2つがあり、ここでは詳しい説明は省くが、どちらも火薬を起点にしている。

 

そのため爆薬で爆破した場合、内部の撃発装置が誤作動を起こして起爆する、なんてことも否定出来ない。

 

まあ映画とアニメから齧っただけの、専門的な根拠の無い推測ではあるが、少なくとも碌なことにならないことは確かだ。

 

「なるほど……爆破さえ不可能にしてしまえばただの置物になると……。」

 

「ふふ、すごく物知りね。お姉さん、感心しちゃうわぁ。」

 

ジェーンの手がスズツキの頭に乗せられる。

 

さわさわと撫でくり回されて、スズツキは恥ずかしそうに頬を赤らめた。

 

「ちょっ……こ、子供じゃないんですから……。」

 

「あらあら、背伸びかしら?本当に可愛いわねぇ……食べちゃいたい……。」

 

「ひうっ……。」

 

ジェーンからギラついた視線を、以前にエレンから向けられたものに似たそれを受けて怯むスズツキだったが、すんでのところで朱鳶の咳払いに助けられる。

 

「ジェーン?」

 

「冗談、冗談よ。」

 

「まったく……それで結局どうするのかしら?」

 

「善は急げだわ。こういうのはどう?」

 

ジェーンは考えた作戦を話し始めた。

 

 

 

 

 

 

 

⬛︎

 

「ふあぁ……。」

 

[眠うぅ……。]

 

今は早朝の時間帯。

 

昨夜から始まった潜入作戦は2日目に入っていた。

 

零号ホロウ付近のコインパーキングに停められたヴィクトリア家政保有のキャンピングカーで夜を越えたエレンとイアスは再度監視の為にホロウの中へ足を運んでいた。

 

昨日のうちに調べておいたルートを通り、エーテリアスを避けながら先に進んで行けば、目的の巨大な施設が目の前に現れる。

 

[エレン、侵食症状は大丈夫?]

 

「大丈夫、出る時に抑制剤は飲んできた。最大8時間は保つ。」

 

[スズツキ君の為とはいえ、ホロウの中で監視するのはしんどいねー。]

 

「ホントそれ……休みも返上だし……。」

 

近場の雑居ビルに入り、最上階のオフィスで腰を落ち着かせるエレンとイアスだったが、ここで監視対象である山獅子組のアジトで異変らしきものが発生した。

 

窓越しに施設を見ていたイアスがそれに気付く。

 

[ん?エレン、何か変だよ。]

 

「何?」

 

[敵が走り回ってる。サイレンみたいなのも鳴ってるし。]

 

エレンは耳を澄ますと、かすかに甲高い音が聞こえてくる。

 

「あー……確かに。というかスズツキの盗聴器を使えば?もう通信可能範囲まで戻ってきてるんじゃないの?」

 

[そうだね。13時間ぶりのスズツキ君の生声……ぐふふ。]

 

「やっぱアンタ変態だよ。」

 

[エレンには言われたくないな……っと!]

 

何かを操作したのか、イアスのスピーカーからやかましい音が響いてくる。

 

どうやら何か有事のことがあったのは事実らしいが、肝心のスズツキの声は聞こえない。

 

取り敢えず2人は様子を伺うことにした。

 

 

 

 

 

 

⬛︎

 

「捕虜が逃げたぞ!」

 

「お前たちはあっちだ!絶対に逃がすな!」

 

アジトの中は喧騒に包まれていた。

 

今から十数分前、朝の見回りをしていた看守は突然独房から破裂音がしたことに気付いた。

 

彼が慌てて現場へ行くと、そこにあったのは鍵が爆薬で吹き飛ばされたドアと誰も居ない部屋。

 

もしも治安官がホロウの外まで逃げ延びたともなれば、アジトの具体的な位置が晒されるかもしれない。

 

それは山獅子組にとって絶対に避けたい事態であった為、全員が血眼になって逃亡者を隅から隅まで探し回っていた。

 

しかしこれだけの人員を割いても目的の人間は施設にも、施設の外周にも中々見つからなかった。

 

理由は単純。

 

最初から逃げてなどいなかったのだ。

 

「……スゴい慌ててますね。」

 

「私に報告されることが恐ろしいのでしょう。でもここまで場を掻き乱してくれるのは好都合です。」

 

スズツキと朱鳶の姿は狭くて暗い空間の中にあった。

 

それは移動しており、時折りガタリと揺れる。

 

光が漏れ出てくる隙間から外を覗くと、廊下をすれ違う沢山の構成員の姿があった。

 

次に上へ視線を移動させれば、ゴテゴテとした耐侵蝕装備を身に纏い、顔にグラフィティ入りのヘルメットを被った人物がカートを押しているのが目に入ってくる。

 

緊張から固まっていると、床の段差を超えたのか、いきなり空間が揺れ、後ろへ倒れ込んでしまう。

 

「うわっ……!?」

 

「大丈夫ですか……?」

 

直後、スズツキは自身の後頭部へ、ふにゅんと2つの柔らかい物体が当たっていることに気付く。

 

それが何か理解すると、慌てて起き上がろうとするが、背後から朱鳶の手が両肩を掴んできた。

 

「狭いので無理に立たなくて良いですよ。このまま寄りかかっていてください。」

 

「す、すみません……。」

 

上げかけた腰を下ろすと、再び例の柔らかさが伝わってくる。

 

スズツキはその感触を堪能しながら、人生で初めて自身の容姿に心から感謝した。

 

それから少しして、どうやらエレベーターに辿り着いたようで、カートの移動が止まる。

 

ガコンと扉が閉じると、頭上の蓋が外から開き、明るい光が入り込んでくる。

 

「出て良いわよ。」

 

「ふぅ……緊張しました……。」

 

「もっと良い方法はなかったのかしら……。」

 

「これが一番単純で成功率が高いの。それより早く準備なさい。すぐに地下へ到着するわ。」

 

カートを押していた人物がヘルメットを取ると、中からジェーンの顔が現れた。

 

彼女は偽装用に着ていた耐侵蝕装備を全て脱ぎ、ポーチに隠しておいたカランビットナイフを両手に握る。

 

朱鳶も箱に入っていた袋から拳銃とその他部品を手に取り、サプレッサーK22を組み立てていく。

 

スズツキはというと、スカートに手を突っ込み、ライフルとは違う小さめな銃器を取り出した。

 

ポリマー製のピストルグリップと折り畳み式のフォアグリップ付きハンドガードだけが装着されており、短い銃身の下にチューブ式のマガジンが並んでいる。

 

サイズは小さかったのだが、逆に口径は一見しても分かるくらいには大きかった。

 

「あら、可愛い見た目の割に物騒なのを持ってるのね。」

 

「はい、ボスが以前くれたんです。ゴム弾なら遠慮無く撃てるからって。」

 

「むうぅ……銃身が48.8cm以下です……。」

買ってもらったばかりのおもちゃを自慢する子供のように銃を見せつけるスズツキ。

 

そのおもちゃこと新しい武器の名前は87年式散弾銃という。

 

ヴィジョンとの戦いにおいて、銃を向けてきた敵とはいえ、同じ人間を惨たらしく殺してしまったことにスズツキが心を痛めた出来事から、新しくライカンが調達してきたショットガンだ。

 

これは隠し持てるように銃身を切り詰めたソードオフ仕様で、作動機構は信頼のポンプアクション式となっている。

 

弾丸のショットシェルにはゴム製の弾頭と少量の炸薬が込められており、通常の散弾とは違って殺傷力は高くはない。

 

頭や目を狙って撃たない限りは相手が死に至ることはほぼ無いため、ライフルや拳銃よりは気軽に撃てるだろうとの、ライカンなりの配慮だった。

 

まあ、当たればかなーり痛い上に怪我も普通にするのだが。

 

「なら充分に戦えると考えて良いのね?」

 

「もちろんです!」

 

「ちょっと、ジェーン……!」

 

「朱鳶、アンタも自分の身を守ることを最優先になさい。今回は少しハードになりそうだし。」

 

ジェーンがそう言った時、エレベーターが地下に到着した。

 

巨大な鉄扉が左右へ開いていき、警備兵に守られた例の入り口が見えてくる。

 

「じゃ、行きましょうか。」

 

「はい!」

 

「……そうね。」

 

スズツキとジェーン、朱鳶は落ち着いた足取りで外へ出た。

 

通路に配置された敵の構成員は親衛隊のジェーンと、治安官の朱鳶が一緒に歩いてくることに困惑の反応を見せる。

 

これが大きな隙となった。

 

気付けば1人が鳩尾にジェーンの膝を打ち込まれ、もう1人は足と腹にそれぞれゴム弾が直撃した。

 

突然の痛みに敵は悶え苦しみ、そこを朱鳶が引き倒すと、結束バンドで拘束していく。

 

「じぇ、ジェーン姐さん……どうして……。」

 

「ごめんなさいね。こっちにも事情があるの。」

 

中に入ってからは早かった。

 

残っていた構成員を無力化し、技術者の集団を銃で脅すと、核がある場所へ案内させる。

 

例の核搭載型ガーディアンは試験場の街の一角に台ごと移動させられており、広い敷地に寝かせた状態で整備と解析が行われていた。

 

首と胸の装甲が変形しており、布がかけられているおかげで中は見えなかったが、コックピットが開いているようだった。

 

「これは動くの?」

 

「え、ええ。」

 

「ミサイルは撃てるのかしら?」

 

「は、はい、ですがシステムの一部が劣化で壊れているので、今は無誘導の時限式しか使えないです。」

 

「分かったわ。もう行って。」

 

非戦闘員を追い払い、もぬけの殻となった試験場で3人は破壊の為の作業を開始する。

 

ミサイルコンテナの側面にペタペタと粘土状の爆薬を貼り付け、セットでペンのような信管を刺していく。

 

しかし準備が完全に終わる前に例の野太い声が聞こえてきた。

 

「ジェーン!どういうことだ!」

 

「げっ……もう来たの?」

 

ガーディアンの影に隠れながらそっと入り口の側を伺うと、そこには親衛隊を引き連れたレイザーの姿があった。

 

両腕にはそれぞれ追加の武装を備えており、見た目が更にゴツいものとなっている。

 

朱鳶はサプレッサーK22の銃口を向けようとするが、ジェーンの手が銃身を押さえてきた。

 

「このまま作業を進めておいて。私が時間を稼ぐわ。」

 

「気をつけてよ。」

 

「ええ、スズツキちゃんを頼んだわ。」

 

ジェーンはガーディアンを乗せていた台から降りると、堂々とした足取りでレイザーに向かって近付いていく。

 

すかさず親衛隊の面々が手に持ったカラシニコフやバラライカを彼女へ向けるが、レイザーが手を上げて制する。

 

「ジェーン、いたずらにしては度が過ぎているようだが?」

 

「ええ、だっていたずらじゃないもの。」

 

「愚かな……まさかEMP爆弾を奪うつもりなのか。」

 

「アレをEMP爆弾としか認識出来ないアンタの方が愚かよ。」

 

「?どういうことだ。」

 

「核……と言っても分かるかしら?」

 

ジェーンの言葉にレイザーも周りの親衛隊の面々も首を傾げる。

 

「何だそれは。何かの兵器か?」

 

「……それだけの認識しかないのなら、尚更アンタの手に渡すわけにはいかないわね。」

 

ジェーンはカランビットナイフを構える。

 

対してレイザーは部下に銃を下ろさせると、軽く両肩を回した。

 

「ボス?」

 

「お前達、掟は覚えているな?裏切り者はどうするかを。」

 

「死ぬよりも過酷な目に合わせる……ですよね?まさかボス自ら?」

 

「そうだ。コイツは俺がやる。お前はここの全員を率いて爆弾を制圧しろ。敵の生死は問わん。」

 

「了解です。ご武運を、ボス。」

 

親衛隊が下がると、レイザーは右手のハンマーを握り直し、左腕の武装を展開させる。

 

「あら、『決闘』ってところかしら?」

 

「ああ、お前は俺が倒すに値する。」

 

「ふーん……それは光栄ねっ……!!」

 

「ぬっ!?」

 

先に仕掛けたのはジェーンの方だった。

 

あっという間に距離を詰めると、ナイフを振りかざす。

 

彼女の放った斬撃はレイザーの右腕によって阻まれてしまったが、その装甲に深々と爪痕を残した。

 

直後、レイザーのカウンターパンチが飛んでくる。

 

電気を纏ったそれをジェーンはひらりと軽い身のこなしで避け、地面に着地すると同時に一撃離脱を狙って飛び込んでいく。

 

「……ちょこまかと!」

 

レイザーの足元に入り込んだジェーンは彼の脚を狙ってナイフを斬り付ける。

 

彼の装備はパワードスーツのように機械の補助があるわけではなく、単に自分の骨と筋肉であれだけの重武装を支えているのだ。

 

とんだ筋肉ダルマだが、あくまでも肉の塊には変わりない。

 

無防備な足さえ奪ってしまえば武器そのものが重い枷となるだろう。

 

「ふん……素早いな。」

 

「あらあら……思っていた以上に元気そうね。」

 

しかしジェーンが振り返ると、ピンピンした様子のレイザーが変わらぬ姿で立っていた。

 

斬りつけた箇所に目を向ければ、想像していたよりも遥かに小さな切り傷がついているのが見える。

 

表面へ僅かに血が滲んだだけの、ほとんどダメージの入っていない自身の脚を眺めたレイザーは鼻で笑う。

 

「ふっ、そんな爪楊枝では俺の肉は通らんぞ。」

 

「そうね。じゃあ爪楊枝でも通る場所を狙うとしましょうか。」

 

「やれるものならな!」

 

今度はレイザーが巨躯に見合わぬ素早さでジェーンに殴りかかった。

 

左腕の兵装が展開し、大量の電撃を纏ったパンチが打ち出される。

 

「っっ!?」

 

ジェーンは楽々と避けるが、拳はそのまま地面のアスファルトを容易く叩き割り、放電による眩いスパークを発生させた。

 

勢いよく飛散した破片が、拳大の石からなるそれらが彼女の身体へ幾つも直撃し、バランスを崩して着地に失敗してしまう。

 

地面に倒れ伏したジェーンを眺めながら、レイザーは打ち込んだ腕をゆっくりと引き抜いた。

 

「ふぅ……久しぶりのこの感覚……腕が痺れてたまらんな。」

 

「げほっ……女性の扱い方がなってないわね……。」

 

「なら手加減するべきか?」

 

「冗談……。」

 

立ち上がったジェーンはナイフを逆手に握り直し、尻尾の先端に装着された金具から銛のような刃を展開させる。

 

そして再びレイザーに向かって駆け出した。

 

 

 

 

 

 

 

⬛︎

 

「行け!行け!爆弾を確保しろ!」

 

一方、レイザーの親衛隊はガーディアンを取り囲むと、銃を構えながらジリジリと近付いていた。

 

しかし彼らが見たのはお互いの顔と銃口だけ。

 

台の下も探してみるが、2人の姿は無い。

 

「どこだ?」

 

「居ないぞ!?」

 

「まあいい、それよりEMPを確保しろ。」

 

ガーディアンに近付いていく親衛隊だったが、その1人がミサイルコンテナに複数の何かがついていることに気付く。

 

技術者集団が装着したセンサーだろうかと眺めていると、それの粘土のような歪な形が目に入ってくる。

 

コンマ数秒後、彼らの脳裏にプラスチック爆弾という2文字が浮かび上がった。

 

「っ!?伏せ……!」

 

直後、けたたましい破裂音と共に爆風が彼らを襲った。

 

しかし不幸中の幸いと言うべきだろうか。

 

爆発した爆薬に破片は練り込まれておらず、また軍用の防護服を着ていたおかげで身体が吹き飛ぶことは無かった。

 

ただ至近距離からの爆風によって意識が混濁し、地面へ身体を打ち付けた痛みも相まって全員が伸びてしまった。

 

「やったかな?」

 

「そのようですね。」

 

近くの建物の中からひょっこりとスズツキと朱鳶が顔を出す。

 

足で蹴ってみても呻き声を上げるだけで、完全にノックアウトされていた。

 

「こっちは大丈夫です。」

 

「上手く排除出来ましたね。それより爆弾は……。」

 

「……駄目みたいです。」

 

敵とミサイルの排除を狙っての爆破だったが、2人の視線の先には表面が少し凹んだだけのミサイルコンテナがあった。

 

「やはりプランBで行きましょう。一旦脱出した後に増援を呼んで、ここを検挙させれば……。」

 

「その前にレイザーが何をするか分かりません。碌な知識も無く軽はずみに使われたら新エリー都はおしまいですよ。」

 

「ではどうしろと?」

 

「それは……うむっ!?」

 

「敵です!」

 

いきなりスズツキは朱鳶によって彼女の胸に押し付けられると、近くの建物の中まで引き摺られる。

 

ドーム入り口からは新手の構成員がワラワラと出て来ており、レイザーとジェーンを避けながらこちらへと近付いてきていた。

 

朱鳶は窓からサプレッサーK22を突き出すと、手当たり次第に発砲していく。

 

「それで何か考えが?」

 

「ぷはっ……あ、アレを動かします!」

 

スズツキは外のガーディアンを指さした。

 

対して朱鳶は驚きから目を見開きながらもすぐに頷く。

 

「私が援護します。行ってください!」

 

「はい!」

 

朱鳶が制圧射撃を始めると、スズツキはショットガンを抱えながら駆け出し、ガーディアンの身体をよじ登る。

 

機体にかけられたシートを取り払うと、開いたハッチと、その向こう側のコンソールやレバー、座席が並んだコックピットが目に入ってくる。

 

画面は白く明滅しており、電源は既に入っていた。

 

「やった!こいつ、動くぞ!」

 

スズツキにとってはまだ余裕があったものの、大人1人が入るのがやっとなコックピットに滑り込むと、ショットガンを足元に置き、適当にスイッチを触ってみる。

 

すると頭上のハッチが閉じ、周囲のモニターに外の景色が映り込んだ。

 

「お願いだから動いてくれよ……。」

 

左右にあったレバーを握り、ペダルに足をかける。

 

適当にコンソールを弄っていると、エーテル反応炉の文字が、現在では条例において発電所を始めとした平和利用が厳格に定められている筈のそれが、画面に表示されていることに気付く。

 

勘でその項目を触ると、ガーディアンに火が入った。

 

「動いた!」

 

その時、朱鳶と交戦している敵からの銃撃の一部が機体を叩く。

 

「やばっ……!」

 

慌ててレバーを握り直し、前後へ動かす。

 

「このっ……立ってくれ……立てよ……!」

 

ガーディアンはスズツキの意志を汲んでくれたのか、それとも単にコンピューターが状況を把握したのか、大きな足がゆっくりと動き出し、地面へズシンと着地した。

 

むくりと上体が起き上がると、敵も異変に気付いたようで、こちらの方を注視してくる。

 

「な、何だ!?誰が乗っているんだ!?」

 

「対戦車兵器を持ってこい!ライフルじゃ相手にならないぞ!」

 

「馬鹿!EMP爆弾ごと破壊したら……うわっ、立った……!」

 

一方、コックピットの中ではスズツキが鼻息を荒くしていた。

 

「す、すごい……本当にロボットに乗ってる……!」

 

夢にまで見たシチュエーションに感動を覚えていると、耳のインカムから朱鳶の声が聞こえてくる。

 

[スズツキさん、聞こえていますか?]

 

「朱鳶さん、これスゴいですよ!」

 

[ええ、よく見えています。それより早くジェーンを連れて脱出しましょう。敵が集まってきています。]

 

「はい!」

 

スズツキはペダルを踏み込む。

 

意外にも操作系は単純化されていたようで、直感的に動かしてみると、ガーディアンもそれに従ってくれた。

 

オートバランサーの補助のもと、一歩一歩確実に歩き出し、ジェーンとレイザーが戦っている現場へ近付いていく。

 

「くっ……。」

 

「どうした、その程度なのか?」

 

そこではジェーンは苦戦を強いられていた。

 

膝をつく彼女に向かってレイザーはゆっくり歩いていくと、左腕の武装を展開し、電気を纏ったそれを振りかざそうとする。

 

しかし次の瞬間、その手が止まった。

 

彼の視界に映ったのはサッカーボールを蹴ろうとする時のように、脚を後ろ側へ上げているガーディアンの姿。

 

「くらえっ!」

 

「おごっ!?」

 

放たれた蹴りは見事にレイザーへクリーンヒットし、彼をボールのように弾き飛ばした。

 

そのままレイザーは近くの壁に激突し、激しい砂煙が発生する。

 

「あら……もしかしなくてもスズツキちゃん?」

 

[ジェーンさん、動けますか?早く逃げましょう!僕が先導します!]

 

「ふふ、頼もしいわね。」

 

一行はスズツキの動かすガーディアンを盾に敵集団の突破を図った。

 

スズツキは敵が隠れている建物を蹴って破壊し、崩れた瓦礫を手で掴んでまた別の敵へと投げつけ、突破口を開いていく。

 

相手にとっては爆弾を背負ったガーディアンを迂闊には攻撃出来ないのと、暴れ回るその巨体を前に足がすくんだのか、ほとんどが蜘蛛の子を散らすように逃げていった。

 

やることが無くなった朱鳶とジェーンは暴れるロボットの背中と、時折り宙を舞うコンクリート片や敵構成員を眺めながらゆっくりと後をついていく。

 

「スゴい……圧倒的じゃない。」

 

「治安局にも1体欲しいわね。あの小さい警備ロボットだけじゃ物足りないわ。」

 

「オーバースペックよ。まず誰と戦う気?」

 

「怪獣?いや……それこそ大型エーテリアスに対抗可能出来るとは思わない?」

 

「討伐は軍のガーディアンで十分、まずあれだけの巨体を動かすガスタービンの燃料代にどれだけの血税が使われることになるのやら……。」

 

「経費経費って……公務員はいつも世知辛いわね。」

 

「私も貴女みたいに定期的な報告だけやって、あとは気ままに生活してみたいわ……。」

 

「オススメはしないわよ?素で話せる人間が激減するもの。今だって何も考えずに話せるのは上司連中を除いてせいぜいアンタと青衣先輩くらい……あっ、スズツキちゃんが居たわね♪」

 

思い出したようにハッと顔を上げると、嬉しそうに微笑むジェーン。

 

そんな彼女を朱鳶は訝しげに眺める。

 

「ジェーン……何度も言うけど、貴女に『同性』の趣味があっても未成年に手を出すのだけはやめてよね。」

 

「あら?私にそんな趣味は無いわよ?確かに可愛いのは好きだけど、どうせなら異性の方が良いわ。」

 

「?でもずっと……その……いちゃついてるじゃない。」

 

「ん?ああ……。」

 

微妙に話が噛み合っていないことに疑問符を浮かべるジェーンだったが、すぐにズレの正体に気付くと、揶揄いの笑みを浮かべる。

 

そして朱鳶の耳元へ小さく囁いた。

 

「一応言っておくけど、彼女、ああ見えて男よ?」

 

「………………ん?」

 

予想外の言葉に目を点にする朱鳶。

 

思わず足を止めた彼女へジェーンは同じことをもう一度言う。

 

「だから男だって。最初に押さえつけた時点で分からなかった?まずロボットにあそこまで興奮する女の子が居るかしら?」

 

「え……えっ……じゃあ、す、スズツキさんではなく……スズツキ君だったと……?」

 

「そういうことね。それでどう?久々に触った異性の感触は?」

 

朱鳶の脳裏から忘れかけていた記憶が急速に掘り返されていく。

 

確かに言われてみれば腰回りの形が直線的だったとか、手の脂肪が少ない代わりに角ばっていたとか、男とも取れなくもない絶妙な声色とか、色々と思い当たる点があった。

 

同時に仕方がなかったとはいえ、何度もボディタッチを繰り返していたことを思い出すと、頬があっという間に朱色へ染まってしまう。

 

「ふふ……良かったわね。男に触られると技をかけてしまう致命的な癖、少しは克服出来たんじゃない?」

 

「あ……いや……それは……。」

 

すっかりしどろもどろになっている朱鳶だったが、直後、背後から聞こえて来た怒号によって緊張感を取り戻す。

 

後ろへ振り向くと、そこにはボロボロの状態ながらもしっかりと2本足で立っているレイザーの姿があった。

 

光学センサーが散りばめられたフルフェイスヘルメットは損傷しており、一部のパーツが脱落した箇所からは彼の鋭い瞳が覗いている。

 

ジェーンと朱鳶はすぐさまそれぞれの得物を手に取った。

 

「ふぅ……はぁ……まだ終わってはいないぞ、ジェーン!」

 

「中々にしぶといのね。アレのキックをモロに食らってまだ起き上がるなんて。」

 

「当たり前だ!これしきのことで俺は倒れん!」

 

レイザーは右手に持っていたハンマーらしき武器は喪失しており、左腕の打撃装備も壊れていると一目で分かるくらいにベコベコに凹んでいたが、戦意だけはまだまだあるようだった。

 

対して今度こそトドメを刺さんと、両手にナイフを構えるジェーン。

 

しかし彼女が飛び出す前にレイザーは武装をパージした。

 

不思議に思っていると、レイザーの背後から彼よりもひと回りほど大きい人型の機械が現れた。

 

それはスズツキのガーディアンのように頭が存在せず、代わりに機体中央に人ひとりが収まりそうなスペースがある。

 

いわゆるパワードスーツというやつだった。

 

「ふん……まさかこれに頼ることになるとはな。」

 

「軍の強化外骨格……あんなものまで……。」

 

「奥の手ってところかしら。」

 

「そうだ。お前たちも、あのガーディアンも、俺が全て始末してやる!」

 

パワードスーツにレイザーが乗り込むと、2mほどだった身長が一気に倍近くまで大きくなった。

 

彼の動きに合わせてスーツが動き出し、両腕に装備された機関砲がジェーン達へ向けられる。

 

「ジェーン!」

 

「分かってる。」

 

2人が隣の建物に飛び込むと、弾丸の雨が彼女達を襲った。

 

[ジェーンさん!そっちは大丈夫ですか!?]

 

「スズツキちゃん、ちょっと助けてほしいかも。レイザーがまた来たわ。それも装備をアップデートして。」

 

[っ……分かりました!]

 

雑兵を追い払っていたスズツキのガーディアンがくるりと反転し、レイザーに向かっていく。

 

人間相手だと圧倒的な大きさの差があったが、今のレイザーに相対すると、小学生と大人くらいまでに縮まっていた。

 

「やはりそっちをぶつけてくるか……。」

 

「こんにゃろめ……さっさと逃げたいのに……。」

 

距離を取った状態で静止し、見つめ合うこと数秒。

 

レイザーとスズツキはそれぞれ行動を起こした。

 





ちなみにレイザーのパワードスーツとスズツキのガーディアンのイメージをそれぞれ例えると、マトリックスのAPUとナデシコのエステバリスです。

作者はロボットの大きさとしてはフルメタのガーンズバックとかパトレイバーのイングラムくらいが好みでしたが、ゼンゼロのガーディアンより2倍以上デカくなるためやめました。


よろしければ高評価又は感想をお願いします。作者のモチベが爆上がりするので。

1話ごとの文字数ってどれくらいが読みやすい?

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  • 4000字くらい
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