ヴィクトリア家政の女装メイド   作:ゆうぐれ

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ガンダム2回観ちゃった……そして気付いたら文に起こしちゃってた……。

まあ、先行上映だけじゃストーリーが分からな過ぎるからすぐにストップするだろうけど。(書かないとは言っていない)



21 漢同士の闘い

施設の最深部で起こったゴタゴタであったが、普通なら山獅子組の総力を動員すれば簡単に収拾がついた筈だった。

 

しかし現状においてレイザーの支援に向かっていたのは偶然エレベーターの付近に居た一般の構成員のみ。

 

他の組員と親衛隊の大半はまだ地上に居たままだった。

 

というよりも地下で裏切り者と治安官が協力して兵器の奪取を試みているとは露ほどにも知らなかった。

 

何故なら彼らも彼らで混乱の最中にあり、回線の切断と欺瞞情報の蔓延による指揮系統の分断が起こっていたからだ。

 

[何!?治安官は確保したんじゃなかったのか!?]

 

[馬鹿言え!さっきクリティホロウへ繋がる裂け目に入ったって言ってただろ!早く行くぞ!]

 

[お前こそ何言ってんだ!今ボスが外でデュラハンと戦っているから増援を……!]

 

通信機から聞こえて来るのは混乱した敵の声。

 

イアスはヘッドセットを耳に当てながらほくそ笑んだ。

 

振り返ると、床に倒れ伏した敵オペレーター達と、キャスター付きの椅子に腰掛けながら居眠りをしているエレンの姿が目に入ってくる。

 

今現在、2人はスズツキの反応が途切れたことと、アジト内が騒がしくなっていたことから混乱に乗じて侵入を果たしていた。

 

そしてスズツキ達が行動を起こしていることに気付き、彼らの援護の為にコントロールルームのひとつを占拠したのだ。

 

[エレン、攪乱は上手く行ったよ!]

 

「そう、アイツの状況は分かった?」

 

[ちょっと待ってて……もう少しで管理者権限を確保出来るから……。]

 

リンはフェアリーの手助けによって監視カメラの記録を手に入れると、今度はそこに目的の人物が映っていないか探す。

 

しかし中々メイド姿は見つからない。

 

[あれ〜?スズツキくん、どこにいるんだろ?]

 

「ん……ちょっと見せて……。」

 

目を擦りながらエレンは立ち上がると、イアスの隣に並んでコンソールを操作し始める。

 

すると彼女は記録映像の中で慌ただしく動いている構成員の集団から雰囲気の違う1人を目ざとく見つけ出した。

 

他よりもスラリとした身なりの、その人物は大きな木箱を乗せたカートを押して施設の奥へと入り込んでいく。

 

角を曲がる時の挙動から荷物には重量があることが分かる。

 

「見つけた……あの泥棒ネズミ。」

 

[えっ、どこ?]

 

「ほら、これ……施設の中央に向かってる。多分、話にあった地下施設が目的だと思う。」

 

[おお、さっすが!エレンの浮気チェッカーは伊達じゃないね!カノジョでもないのに!]

 

「犯罪者が何言ってんの?それより早くエレベーター探して。」

 

[はいはーい。]

 

リンが解析を続けると、施設の地下へ繋がる階段を発見した。

 

それを前にエレンは武器を手に取ると、部屋のドアを蹴破り、カチコミを再開した。

 

 

 

 

 

 

⬛︎

 

一方、スズツキとレイザーのタイマンは始まると同時にほとんど鬼ごっこへと変貌していた。

 

鬼がレイザーで、逃げる方がスズツキだ。

 

それも弾丸とミサイルの雨で尻を叩きながら。

 

「どうした!戦う気は無いのか!?」

 

耳をつんざく轟音が連続で響くと、アスファルトが砕け散り、コンクリートがハチの巣のように穴だらけに加工されていく。

 

建物の影に飛び込み、弾幕をどうにか回避したスズツキだったが、息を整える暇もなく、今度はミサイルが飛来してくる。

 

またまた急いで走り出し、遅れて背後で発生した爆炎と爆風に機体を叩かれると、バランスを崩しそうになった。

 

「はぁ……はぁ……飛び道具はズルいって……!」

 

試験場の中央へ逃げていき、建物が密集している区画へ入ると、一部が崩れたビルの中に身を潜める。

 

すると道路の方からレイザーの乗るパワードスーツの駆動音が近付いてきた。

 

「このまま通り過ぎてくれよ……。」

 

息を殺していると、レイザーはそのまま通り過ぎていく。

 

ホッと安堵の息を吐くスズツキ。

 

その時、コンコンとコックピットハッチが向こう側から叩かれた。

 

そして画面に大きく映り込んだものに腰を抜かす。

 

「っ……ジェーンさん……!?」

 

[スズツキちゃん、ここ、開けてほしいわ〜。]

 

「は、はい!」

 

スクリーンに映っていたのはジェーンだった。

 

カメラを下へ向けると、ガーディアンの足元に朱鳶も居ることが分かる。

 

スズツキがハッチの開閉レバーを引くと、空いた隙間からジェーンがするりと入り込んできた。

 

もちろん2人が入る隙間なんて無いため、必然的に色々と密着する羽目になってしまう。

 

ぴったりと身を寄せながら、彼女は耳に囁いてくる。

 

「じぇ、ジェーンさん……?」

 

「すぐそこにレイザーが居るから手短に話すわね。まずはありがとう、守ってくれてカッコよかったわ。それでなんだけど、私達はエレベーターを確保するから時間稼ぎを頼むわ。」

 

「分かりました。」

 

「くれぐれも気をつけてちょうだい。あと万が一に核が奴に渡るようなら……起爆しなさい。このアジトも一緒に吹き飛んで一石二鳥だわ。」

 

「……はい。」

 

ジェーンの表情はいつにもなく真剣なものだった。

 

その凄みと覚悟を前にスズツキは息を呑む。

 

だがジェーンはすぐに雰囲気を緩ませると、いつもの彼女へと戻った。

 

「冗談よ、そんな緊張しないで。心配しなくても、最悪私達がどうにかするわ。だからもう少しだけ頑張れるかしら?」

 

「ええ、もちろんです。何なら倒しちゃいますよ。」

 

「ふふ……ホント、男の子は頼りになるわね。」

 

そう言うとジェーンはハッチの向こう側へ消えてしまう。

 

スズツキはハッチを閉めると、遅れて違和感に気付いた。

 

「えっ、ジェーンさん、今何て……。」

 

聞き返そうとするが、左のスクリーンにレイザーの影が小さく映り込んだことで慌てて口を噤んだ。

 

「ようし……次はこっちの番だ。」

 

再び敵の姿が見えなくなると、スズツキは不意打ちを狙って動き始めた。

 

 

 

 

 

 

⬛︎

 

レイザーは建物がひしめく区画を歩いていた。

 

両腕の重機関銃と背面のミサイルポッドを周囲へ指向しながら道を進んでいると、エレベーターのある入り口の方向から銃声が響いてきた。

 

おそらくは裏切り者のジェーンと治安官が部下と交戦しているのだろう。

 

だがレイザーは彼女達の処理は彼らに任せて先にガーディアンを仕留めるべきと考えた。

 

「ぬっ……!?」

 

その時、ガチンと何か大きな石が落ちる音が聞こえてきた。

 

レイザーは音の発信源であろう前方の交差点へ急いで走り出すと、角から身を乗り出し、機関砲をバラまくように発砲した。

 

バラバラとペットボトルサイズの空薬莢が落ち、大口径弾からなる凄まじい弾幕にたちまち道路上の全てのものが穴あきチーズへと加工されていく。

 

「……いない。」

 

しかしそこにガーディアンの姿はなかった。

 

あれだけの巨体がどうやって隠れているのだろうかと、不思議に思っていると、答えはすぐに分かった。

 

次の瞬間、バガッッッ!!!と、真隣のアパートが吹き飛んだ。

 

レイザーに向かって飛来する大量のコンクリート片に紛れて現れたのはスズツキの乗ったガーディアン。

 

建物と言っても柱などの基礎を除いてスカスカのハリボテであった為、こっそりとその内側に隠れていたのだ。

 

「この……!!」

 

「ぐあっ!?」

 

抱き込むように飛びかかったスズツキはそのまま全身でレイザーを押し倒し、勢いのまま反対側のコンビニへ突っ込んだ。

 

看板以外は何も無いがらんどうの部屋に滑り込むと、天井を破壊しながら上体を起こし、拳を振りかざす。

 

しかしレイザーは足を蹴ってスズツキの拘束から抜け出すと、すんでのところでパンチを避けた。

 

反対の壁を機関砲で破壊し、外の駐車場に出て距離を取る。

 

「くたばれ!」

 

「マズいっ!!」

 

ドガガガガッッ!!っとレイザーが正面に指向した2門の機関砲から反撃の弾幕が放たれる。

 

対してガーディアンの装甲はこれを弾いていたものの、スズツキの目に映るコンソール上では、機体各所のコンディションカラーが緑から黄色へと変わっていった。

 

このままずっと攻撃を受け続けるのはマズいと、今しがた半壊したアパートの影に滑り込む。

 

「もう終わりか!?逃げてばかりではつまらないぞ!」

 

「じゃあ拳で戦えっての……!」

 

どうにか距離を詰められないかと考えていると、今度はミサイルまで飛んでくる。

 

この時、慌てて操作を間違えたのだろうか。

 

しかし今のスズツキにとっては良い方向へと働いた。

 

足の裏に装着されたローラーがせり出し、人間で言うふくらはぎの箇所から補助用の支持脚が降りてくると、今までよりも遥かに速いスピードで後ろへ下がり始めたのだ。

 

「と、止まれーー!!」

 

おかげで飛来したミサイルを全て避けることには成功したが、上手く制御が効かず、並んだ建物を削りながら後退を続け、そのまま突き当たりの住宅へ派手に尻から突っ込んでしまう。

 

「いてて……。」

 

半壊した家から腰を引き抜き、ゆっくりと立ち上がる。

 

すると前方の離れた位置に、今まで滑ってきた道路の先にレイザーが出て来た。

 

スズツキはまた逃げに転じようとするが、動かしかけた足を止める。

 

「一か八かだ……!!」

 

スズツキは覚悟を決めると、先程とは反対に、今度は前に向かって滑り始めた。

 

これにレイザーは機関砲とミサイルで応戦してくる。

 

だがスズツキは姿勢を屈めると、減速しないまま、むしろ加速し、放たれた矢の如く、レイザーに一直線で向かっていく。

 

全身の装甲に跳弾の火花が散り、内部へ貫通した一部の弾丸がパーツを剥離させる。

 

ガードした腕に被弾が続き、遂には右腕の肘から下が動かなくなってしまう。

 

コンソールに表示される機体のコンディションカラーがほとんど黄色に代わり、そこに赤色が混ざり始めても止まらない。

 

「ぬうぅ……捨て身の突撃か……!」

 

もう迎撃し切れないと判断したレイザーは回避しようと動き、ギリギリのところでスズツキと正面衝突するコースからは外れることに成功した。

 

だがスズツキはレイザーを逃さなかった。

 

姿勢を低くすると、壊れた右腕を横へ真っ直ぐ伸ばしたのだ。

 

話は逸れるが、今よりも遥か昔の、旧世界の時代から存在した娯楽にプロレスというものがある。

 

その選手が使う技の名前を借りさせてもらうとスズツキが繰り出した攻撃方法には『ラリアット』が当てはまるだろう。

 

まあ、あくまでもパフォーマンスの域を超えないプロレスとは違って、複合装甲の腕からなるその技は比べものにならないくらいの破壊力を持っているのだが。

 

「食らえぇぇぇ!!!」

 

「おごあっ……!?」

 

ゴッッシャッッ!!!!っと鉄同士がぶつかる鈍い音が響き渡った。

 

レイザーはヘルメットを粉砕され、パワードスーツはたちまち右腕を肩から全てもぎ取られる。

 

背面のミサイルポッドも接続していたバックパックの一部ごと引き千切られた。

 

一方、スズツキのガーディアンも無傷ではなく、ラリアットをかました右腕は肘から先が折れ飛び、ぶつかった衝撃からもんどり打って倒れてしまう。

 

そのままレイザーも転倒に巻き込み、2人して仲良くゴロゴロと転がっていく。

 

そしてスズツキはまたもや家に突っ込み、レイザーはしばらく道路を滑った後に停止した。

 

「あ……あぁ……こんちくしょ……。」

 

ぐわんぐわんと揺れる視界の中、スズツキはどうにかレバーを握り直す。

 

ガクガクと()()が発生し始めたスクリーンには少し離れた位置に倒れ伏したレイザーが映っており、それはすぐにムクリと動き出した。

 

ヘルメットは完全に壊れており、血で濡れたレイザーの顔が見える。

 

「まだ動くか……ん?」

 

しかしここで問題が発生した。

 

スズツキはレバーを操作したのだが、先ほどの激しい衝撃によって操縦システムが麻痺したのか、ガーディアンはピクリとも動かない。

 

再起動をかけるも、すぐには終わらなそうだった。

 

慌てる彼の目の前でレイザーはふらつきながらもパワードスーツを立ち上がらせ、残った左腕の機関砲を向けてくる。

 

「ひゅう……はぁ……て、手こずらせる……じゃあないか……。」

 

「早く動いて!頼むよ!」

 

「EMP爆弾を手に入れて……俺の山獅子組を……俺の国に……!」

 

「うわぁっっ!?」

 

コックピット周りの装甲にいくつもの火花が散る。

 

スズツキはただ頭を抱え込んで俯くことしか出来なかった。

 

だが急に銃撃が停止する。

 

レイザーにとっても意図せぬものだったため、機関砲を確認してみると、バックパックから銃の機関部に繋がっていた筈のベルトリンクが途中から切れてしまっていた。

 

だが千切れた右腕の機関砲には弾帯が繋がったままであった為、彼はそれを拾いに踵を返した。

 

これ幸いとスズツキはコンソールを操作し始める。

 

「早く……再起動でも何でも……何か使えるのは……。」

 

するとミサイルの文字が目に入って来た。

 

スズツキはジェーンの言葉を思い出す。

 

奪われるくらいなら撃ってしまえ、と。

 

「お願いだからこっち向かないでよ……。」

 

もうこれしかないと、ミサイルの項目をタップすれば、時限信管による直接照準のみと表示された。

 

炸裂までの設定を最大の10分とすると、ミサイルコンテナの中から発射器に保持されたミサイル本体が迫り出し、手動照準で弾頭をレイザーの方へ向ける。

 

十字のレティクルがレイザーと交わるのと、彼が振り向いてくるのはほぼ同時だった。

 

「なっ!?」

 

「これあげるっ!」

 

発射ボタンを押し込むと、ミサイルはファシュッッ!!っと火を吹きながらレイザーへと直進していった。

 

そして見事にパワードスーツへ直撃すると、爆発することなく彼を背中から横転させた。

 

ミサイル本体は軌道を変え、背後の建物へ突き刺さる。

 

「な、何が……。」

 

「うわぁぁぁ!!!」

 

システムが再び動き出すと、スズツキはレイザーが立て直す前にガーディアンを起き上がらせる。

 

そして残った左腕で打撃を繰り出した。

 

「ごっっっ!!?」

 

あいにくとレイザーにも、レイザーのパワードスーツにも、間近に迫ったパンチを避けられるだけの余裕は無かった。

 

マトモに拳を食らった彼はミサイルが刺さったままの建物に激突し、そのまま瓦礫に埋もれていってしまった。

 

「はぁ……はぁ……あっ、は、早く逃げないと……!」

 

終わったかと安心するスズツキだったが、コンソールには爆発までのカウントダウンが未だ表示されたままで、核そのものは稼働していることを示していた。

 

その時、通信機にジェーンの声が入る。

 

[スズツキちゃん、聞こえるかしら?]

 

「ジェーンさん!核を起動させちゃいました!爆発まであと9分程度です!」

 

[っ……分かったわ。既にエレベーターは確保してる。撤退出来るかしら?]

 

「はい!そちらへ向かいます!」

 

スズツキはガーディアンを滑らせ、入り口のある方向へとひた走る。

 

するとエレベーターを制圧した朱鳶とジェーン、そして何故かエレンとイアスの姿が見えてきた。

 

「先輩?リンさん?どうしてここに……。」

 

[アンタのサポート。ボスから言われたの。]

 

[へぇ……ホントに乗っちゃってるんだ。アニメみたいだね。]

 

[おしゃべりは後です。早く逃げましょう。]

 

エレベーターにガーディアンごと乗り込み、地下からの脱出を図る。

 

籠が終着点についてからはひたすらに暴れ回った。

 

通路を無視して壁と天井を拳で破壊し、地上に出てからも施設を敵ごとブチ抜きながら最短距離でホロウの中へと躍り出る。

 

[爆発までは!?]

 

「あと3分です!このままじゃ間に合わないので乗ってください!」

 

ガーディアンの腕と手にジェーン達は掴まると、機体は脚部のローラーを展開し、基地からの離脱を開始した。

 

誰も居ない街を走り、時折りエーテリアスを轢き殺しながら、一目散に逃げ続ける。

 

そして遂にコンソールに表示されたタイマーがゼロを示した。

 

直後、世界が揺れた。

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーズン!!!!!!

 

 

 

 

 

 

比喩抜きに、地面が海のように波立った。

 

コップに注いだ牛乳へ水滴を垂らした時のように、爆心地から四方へ波紋が広がっていく。

 

道路も家もビルも、地上にあった全ての物体が一瞬ふわりと持ち上げられ、形を崩しながら地面へ叩き付けられる。

 

スズツキ達の周りも例外ではなく、少しの浮遊感の後、たちまち周囲の建物が砂煙と轟音を撒き散らしながら崩れ始めた。

 

ガーディアンを四つん這いにさせ、ジェーン達をその下に退避させる。

 

[うわぁぁぁ!!!]

 

「身体を低く!頭を守って!」

 

「はあぁ……どうして毎回こうなるんだか……。」

 

「ふふ、いつにもなく刺激的な体験ね。」

 

激しい揺れがその後も続き、少しずつそれは収まっていく。

 

数分もすれば、いつもの静寂が戻っていた。

 

スズツキは機体を降りると、近くで崩れていたアパートの残骸に登る。

 

そして見えてきた光景に息を飲んだ。

 

唖然としていると、隣にジェーンが並んでくる。

 

「あの……。」

 

「なあに?」

 

「これは……終わったんですか?」

 

「ええ、山獅子組はおしまい。レイザーの野望は立ち消えたわ。」

 

スズツキの視界に映っていたのは大きなクレーターだった。

 

いや、正確に言えばカルデラのような陥没した跡と言った方が正しいだろうか。

 

地下実験施設での核爆発はそのまま施設を丸ごと崩落させてしまったようで、穴の底には元々山獅子組のアジトだった建物の残骸が積み上がっていた。

 

地下試験場に居たレイザーはもちろんのこと、施設に残っていた構成員はもれなく全員蒸発したか、生き埋めのどちらかだ。

 

スズツキはそのことを心苦しく思っていると、背後から伸びて来た手が肩に添えられる。

 

横を見上げると、朱鳶と目が合う。

 

「スズツキ君、貴方がやったことは紛れもなく正しいことよ。おかげで都民全員の命が守られた。ありがとう、治安局を代表してお礼を言わさせてもらうわ。」

 

「…………はい、僕はお役に立てましたか?」

 

「もちろん。スズツキちゃんが居なかったら私も朱鳶も危なかったわ。これは追加のご褒美が必要かもね。」

 

「ああ、依頼料についてはボスに……えっ?」

 

その時、頬へ何か柔らかい感触が広がった。

 

視界の端に映るジェーンの顔と鼻腔に広がる香水の良い香り。

 

スズツキは遅れて状況を理解すると、顔を真っ赤にした。

 

外野から朱鳶の驚く声とリンの絶叫音、エレンの舌打ちの音が耳に入ってくるが、思考の一切がホワイトアウトしてしまったスズツキには何も認識出来ていなかった。

 

我に返ると、隣でくすくすと笑うジェーンの姿が。

 

「あ、あの……今のは……。」

 

「ご褒美よ。ボクには少し刺激が強過ぎたかしら?」

 

「い、いえその……ありがとうございますというか何というか……あ、あと僕が男って……。」

 

「最初から身体付きで気付いてたわよ?変装は良かったけど、次から挙動は直さなきゃね。特にロボットを前にしてキラキラ目を輝かせるところとか。それじゃ、私はこれで。」

 

そう言うとジェーンは踵を返す。

 

朱鳶が止めると、彼女は振り返りながらホロウの外縁部を指さした。

 

「もうすぐ軍が来るわ。アンタ達は良いけど、アタイは山獅子組親衛隊所属のホロウレイダーなんだから早く逃げなきゃ。」

 

「あぁ……そうだったわね。気をつけて。」

 

再び背を向けるジェーンだったが、そこへスズツキは声を張る。

 

「ジェーンさん、またどこかで!」

 

対してジェーンは軽く手を振ると、瓦礫の山から飛び降りた。

 

そこから下を見下ろすと、既に彼女の姿は無かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

⬛︎

 

ここはスコット前線基地。

 

零号ホロウの監視とエーテル資源の採集を目的とした大規模な複合拠点で、敷地内では軍の兵士や車両、民間エネルギー企業のトラックなどがあちこちを行き交っている。

 

そんな中、並んだテントのひとつにはとある人物の姿があった。

 

長い狐の耳が特徴的なシリオンの少女、星見雅は椅子に腰掛けながらフォークを手に持ち、眼前に置かれたメロンをつついていた。

 

そこへ眼鏡をかけた女性がテント内へ入ってくる。

 

「課長?駄目ですからね?」

 

「むぅ……ひと口くらい……。」

 

「もうブリーフィングが始まりますよ?今回の任務はオブシディアン大隊との共同作戦なんですから課長にも出席してもらわないと。半時間前の地震についても協議するとのことですし。」

 

「柳、これは如何に美味しくメロンを食べる修行で……。」

 

「課長?」

 

柳と呼ばれた女性は眼鏡をキラリと光らせる。

 

対して雅は親に詰められた子供のようにしゅんと俯いた。

 

そこへ訪問者が現れる。

 

「差し入れは気に入ってもらえたようね。」

 

「む。」

 

「あら……11号さんでしたか。」

 

振り返るとテントの入り口に11号が立っていた。

 

彼女の背中には既にヒート・ブレードを始めとした各種機材が装備されており、準備万端と分かる。

 

「11号、これを寄越してくれたことに感謝する。」

 

「いいのよ。この手の嗜好品はすぐに腐ってしまうから誰かに食べてもらったほうがいいわ。それより、今日の強行偵察は頼んだわよ。」

 

「分かっている。陽動隊のそちらにも大量のエーテリアスが向かうだろう。くれぐれも気をつけてくれ。」

 

「ええ、既に継戦に重きを置いたガーディアン隊を……ん?」

 

その時、ホロウの突入口から調査隊の一団が戻って来た。

 

何やら調査隊員の他に数人の人間を引き連れており、後ろのガーディアン2機は更に大きなガーディアンを引きずって歩いていた。

 

3人は興味有り気な視線をそれら人物とロボットへ向ける。

 

特に11号はメイド服の少女らしき人物へ、雅は治安官の格好をした女性へそれぞれ注目する。

 

「あれはホロウレイダーでしょうか……って課長?」

 

「柳、少し行ってくる。懐かしい顔を見つけたものでな。」

 

「えっ、ちょっと課長……!」

 

「私も行ってくるわ。会議には遅れると伝えてちょうだい。」

 

スタコラとテントを出ていく2人と、テントに独り残される柳。

 

彼女は大きく溜め息を吐いた。

 

 

 

 

 

 

 

⬛︎

 

「ねえスズツキ、何が言いたいか分かる?」

 

[スズツキくーん……。]

 

「な、何ですか?」

 

「とぼける気?そんな口紅の跡つけてさぁ……。」

 

「これはその……こ、今回頑張ったことに対する正当な報酬ですから!」

 

[それなら私にも同じ報酬が欲しいなー?]

 

「はいはい、アンタはもうボスから金を受け取ったでしょ。それよりスズツキ、こっちに来ようか。まずは頬に付着した汚染物質をアルコール除菌しないと。」

 

「い、嫌です!今日一日は洗いません!」

 

「へぇ……抵抗するんだ。なら力づくでやるしかないね。」

 

「ふふん、やってみろです!」

 

「……手加減しないから。」

 

「そんなのしなくてもいいですよ。ほら、さっさとかかってこ……ふぎゅっ!?」

 




今後はまた日常パートに入ります。この作品、何か戦ってる方が多い気がするので。


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