ヴィクトリア家政の女装メイド   作:ゆうぐれ

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血反吐を吐きながら橘福福を出しました。やったぜ!

尚、マスターテープは全て無くなり、ポリクロームも壊滅した模様。次のピックアップ……間に合うかなぁ……(残り僅か数日)



29 ロスト・チルドレン

ここはヴィジョンによる地下鉄爆破工事の前線拠点。

 

カンバス通りの避難民を乗せた蒸気機関車が派手に突っ込み、同時に現場に居合わせたパールマンをあげた場所だ。

 

事件の後はヴィジョンの不祥事によって放置されたままであったが、このたび、事業を別の会社が引き継いだことで現場の後片付けと地下鉄の工事が再開された。

 

その会社というのが『白祇重工』である。

 

そして今日、彼ら社員はある物を待っていた。

 

まだ現場に誰も居ない朝の時間帯。

 

広い敷地には少女と男性、女性、クマのシリオンがそれぞれ1人ずつ立っていた。

 

何やら女性はそわそわとしながらその場をひたすら歩き回っており、そんな彼女へ少女は呆れた目を向ける。

 

「なあ姉貴、ちょっと落ち着けって。」

 

「ふふふふふ……いやだって、新しい重機が来るんだよ?それもまだ市場には出回っていない開発中の試作機と来た!これはメカニックとして燃える展開としか……じゅるっ……。」

 

ニタニタと笑みを浮かべながら涎を垂らしているのは白祇重工のメカニック担当、『グレース・ハワード』。

 

頭のゴーグルとヘソ出しのタンクトップ、そして何よりそれを押し上げる分厚い胸部装甲が特徴の美女なのだが、機械に目がないことが玉に傷である。

 

いわゆる黙っていれば花の典型例だ。

 

「グレース……間違っても勝手に解体するなよ?相手は富嶽重工の傘下なんだ。罰金なんて払う羽目になったら……。」

 

「分かってる、分かってるさ。勝手にはしないから。」

 

「本当に頼むよ……?」

 

そう言うと深く溜め息を吐くクマのシリオン。

 

右目には深い傷跡がついており、完全に潰れている。

 

首元にはジャラジャラとした金色のネックレスをぶら下げており、その茶色の体毛に包まれた逞しい身体も相まってカタギではない印象があった。

 

そんな彼の名前は『ベン・ビガー』。

 

実は見た目に反して社内での役職は会計士で、性格も非常に温厚だ。

 

「しかし社長、何でオファーを受け入れたんだ?高価な試験機を無償で貸し出すってのはちと怪しくないか?」

 

少女に対してそう聞いたのは左腕にドリルを装着した男。

 

仕事によって鍛え上げられた筋肉が作業着越しにでもよく分かる、如何にもな熱血漢といった雰囲気の彼の名前は『アンドー・イワノフ』。

 

施工現場の監督を担うベテラン中のベテランだ。

 

「大丈夫、話し合いに親会社の富嶽重工自ら出てきたんだ。信用しても大丈夫だろ。それに大企業がウチの事業に噛んでると知れば、例の嫌がらせも少しは減るだろうさ。」

 

アンドーの質問に答えたのは3人の中でも1番歳下の少女。

 

右目の眼帯とクマ耳のカチューシャ、赤い髪を束ねたツインテールが特徴の、まだ子供と呼べる見た目をしている。

 

しかしこれでも彼女、『クレタ・ベロボーグ』はこの会社の社長であり、皆を率いる立場にある。

 

確かに見た目にそぐわない貫禄を持っており、周囲の大人達に負けず劣らずだった。

 

「あと、手数が増えることは別に問題ないだろ?」

 

「でも新人君には何を任せる気なんだい?」

 

「ホロウの外で簡単な雑務をやらせる。で、ウチのはホロウ内で作業に集中する。これなら問題も起こらない筈だ。」

 

「それを素直にあちらが受け入れてくれれば良いんだがねぇ……。」

 

「ん、おい、来たんじゃないか?」

 

「おぉ!やっと来た!」

 

その時、入り口に大型のトレーラーが現れ、何か巨大なものを積んだ荷台を引っ張りながら敷地内に入ってくる。

 

続いて1台のバンも現れると、4人の前で止まった。

 

そしてトラックとバンのそれぞれから人が降りてくる。

 

「もしかしてあの子供がパイロットか?」

 

「まだおチビちゃんと同じくらいじゃないか。」

 

現れたのは社員らしき人物が5人。

 

その中から白いツナギを筋骨隆々の身体に纏った、ベン以上に身長の高い狼のシリオンが前に出てくる。

 

彼もまた眼帯を装着していたことから、いわゆる『本職』の人間ではないかと思わず身構えるクレタだったが、次に目に入ってきたのは1枚の四角い紙片だった。

 

「篠原重工の多足歩行式大型マニピュレーター部門から来ました。整備担当のライカンと申します。」

 

「あたしが社長のクレタだ。えっと……。」

 

クレタはライカンから名刺を受け取ると、交換の為にゴソゴソとポケットをいじくるが、目的の物は中々見つからない。

 

結局、アンドーが後ろ手にそっと彼女へ名刺を渡し、恒例の名刺交換を完了させる。

 

「じゃあ早速だが、お宅の商売道具を見せてくれないか?ウチのメカニックがうるさくてな。」

 

「運用は今日からということですね?」

 

「ああ、まずは雑務からやってもらう。今はとにかく搬入が多いからな。」

 

「承知しました。スズツキ。」

 

「は、はいっ!」

 

ライカンは振り返り、背後の()()へ視線を送る。

 

真っ白な作業服を着た『彼女』はびくりと肩を震わせると、踵を返してトレーラーの荷台へと向かう。

 

そこにかかっていたシートを取り外すと、少女の姿はどこかへと消えた。

 

かと思えば、荷台の油圧ポンプが音を立てて動き出し、ゆっくりと荷台が上がっていく。

 

徐々に見えてきた物体にクレタとベンは驚き呆れ、アンドーとグレースはキラキラと目を輝かせる。

 

「多分どっかのアニメで見たぜ……。」

 

「はぁ……こんなものが……。」

 

「おいおい……燃えるじゃねえか……!」

 

「スゴい!想像以上だよ!ウチのは安定性を考慮して四脚を選んだけど、まさか完全な人型を実用化しているなんて……!」

 

荷台がほぼ垂直の位置で止まる。

 

そこに載せられていたのは頭と手足が付いた、全長が6mほどの人型のロボットだった。

 

機体は工事車両と同じ黄色とオレンジで塗り分けられており、一部には黄色と黒の警戒色が施されている。

 

目を引くのが右腕の構造で、何故か左腕よりも一回り太く、一見して後付けのように思えた。

 

「うおっ……動いた。」

 

観察を続けていると、右足が動き出し、ズシンと一歩を踏み出す。

 

軍の無人歩行戦車『ガーディアン』をスリムにしたような、その機体は特段問題無く、安定した様子でクレタ達の前に歩いてきた。

 

「どうでしょう。お気に召しましたか?」

 

「くうぅ……わ、私の子供達は自律型なんだ!こんな二足歩行型とは一味も二味も……!」

 

「グレース……羨ましいのは分かるが、顔がスゴいことになってるぞ。」

 

「う、羨ましくなんかないっ!私の方が良いに決まっているさ!」

 

グレースの顔は発言とは裏腹に仕組みを知りたいという欲から頬が歪に吊り上がっていた。

 

そんな残念美人を晒している身内を横目で眺めながら、クレタは呆れたように口を開く。

 

「…………とまあ、ウチの技術者が狂喜乱舞しているってことは、大丈夫だってことだな。」

 

「それは良かったです。」

 

「おうよ。作業開始は1時間後だ。それまでにトレーラーと機材を端っこに寄せといてくれよ。」

 

「承知しました。」

 

全員がそれぞれ動き出し、例の『重機』も踵を返してトレーラーへと戻っていく。

 

だがクレタは独り機体をじっと見つめていた。

 

素人目にしても分かるくらいにがっしりとした、重量物の持ち運びや高速での走行に対応していそうな肩周りと脚。

 

通常の重機のような四角いガラス張りの解放型ではなく、頭部の光学センサー類を用いたであろう完全密閉式のコックピット。

 

身体の各所に施された分厚い装甲。

 

「…………ぜってー軍用じゃねえか。」

 

クレタは明らかな違和感を覚えながらもその場を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

⬛︎

 

数日後、ジリジリと日が照る中、工事現場には沢山の作業員が行き交っていた。

 

ショベルカーやブルドーザーが履帯をキュラキュラと鳴らしながらトンネルへ入っていき、構内の障害物を除去していく。

 

使えない古い線路は全て撤去され、トンネル内が真っ平らな状態になると、次に腐食した内壁の補修に取り掛かった。

 

様々な物資がトラックによって敷地に運び込まれ、作業員がせわしなく積み下ろしを行う。

 

そこに混ざる形で一際大きな影が。

 

それはトラックの荷台に積まれた太い鉄筋の束をひょいと掴み上げると、のっしのっしと歩き、指定された場所に置く。

 

他の工事車両と同じように黄色く塗装されたその機体は、少し前まで核搭載型の大陸間弾道弾を背負っていた、記憶に新しい例のガーディアンもどきだった。

 

あれから回収されたのち、せっかくの高性能機を解体するのは勿体無いからと、ヴィクトリア家政の戦力に組み込まれ、富嶽重工と東亜重工の協力の元、修復と近代化改修が行われたのだ。

 

壊れてしまった右腕は新規に作り直し、外観を重機風にペイントしたというわけである。

 

「あぁ……やっと終わった……。」

 

周囲の景色をヘルメットのバイザー内部への直接投影に改造したことでモニターが全て無くなり、完全にただの箱となったコックピットの中、スズツキは作業の完了に安堵の息を吐く。

 

新たに支給された精密作業用のグローブがあるおかげで、手と腕の操作は楽々行えるとはいえ、いつバランスを崩して尻餅をつかないか冷や汗ものだった。

 

冷たいクーラーの風に当たりながらペットボトルの水を口に含んでいると、誰かから通信が入る。

 

「はい、こちらスズツキ。」

 

[スズツキ、午前の分はこれで終わりです。もう休憩に入っていいでしょう。]

 

聞こえてきたのはライカンの声。

 

周囲を見渡せば、プレハブの事務所の窓から彼の姿が見えた。

 

「はいボス、それで収穫はありましたか?」

 

[まだですね。もう少し探る必要がありそうです。]

 

「こっちも至って普通の会社って感じです。皆んな良い人ですし。」

 

[ふむ……やはりそうですか。詳しくは後で話しましょう。]

 

「了解です。」

 

スズツキは機体に敷地の端っこで駐機の姿勢を、いわゆる土下座一歩手前の四つん這いのポーズを取らせる。

 

そして装備一式を脱ぎ、カリン特性の手作り弁当を片手に外へ出ると、すぐにハッチを閉めようとした。

 

何故こんなに急いでるのかと言うと……。

 

「あっ!ちょっとくらい見せてくれてもいいじゃないかぁ!」

 

「だからダメですって。企業秘密ですから。」

 

スズツキがハッチを閉じた瞬間、物陰から現れたひとつの人影がびたんとコックピットへ張り付く。

 

例の残念美女メカニックこと、グレースだった。

 

彼女は膝をついたままスズツキへ擦り寄ると、上目遣いで懇願するような視線を向ける。

 

「なぁ、スズツキ……いいだろう?ちょっとくらいさぁ……。」

 

「だ、ダメなものはダメです。」

 

「シートの先っぽ!先っぽだけでいいから!ね!?」

 

「うえっ……ちょっ……!?」

 

グレースはスズツキの脚へしがみつき、その豊満で柔らかい部位を押し付けてきた。

 

ちなみに今の彼はポニテの作業着スタイルとなっており、外向きの設定上では女だっため、グレースとしては色仕掛けをしたつもりはなかった。

 

しかし当人としてはやはり当てられるのは良くはないもので、みるみるうちに顔が赤くなっていき、とある部位にベークライトが充填され始める。

 

どうにか振りほどこうとするも、エレンはもちろんのこと、カリンにすら力負けするよわよわな細腕では何も出来ず、むしろ彼女に今度は腰へ抱きつかれてしまう。

 

むにゅうと、リナや朱鳶に匹敵する一対の果実がスズツキの下半身を圧迫してくる。

 

もはや嘘がバレるのも時間の問題かと思われたその時、ゴンと、グレースの頭へ小さな拳が打ち込まれた。

 

「あだっ……!?」

 

グレースが頭をさすりながら後ろを向くと、そこには白祇重工の若き社長、クレタの姿があった。

 

「馬鹿、他社の機密を覗こうとするな。」

 

「だぁってぇ……!」

 

「だってもクソもない。何かあったら開発部の経費から抜くぞ。ほら、行った行った。」

 

「うぅ……おチビちゃんのケチ……。」

 

トボトボとグレースがその場を離れると、クレタと目が合う。

 

「すまん、ウチのがまた迷惑かけたな。」

 

「いえ、そんな、もう慣れましたよ。」

 

「次は無いように言っとく。」

 

そう言うとクレタは踵を返す。

 

かと思えば振り返ってきた。

 

「なあ、ちょっと飯に付き合っちゃくれないか?」

 

「え……まあ、大丈夫ですけど……。」

 

「よし、行くぞ。」

 

とても同じ年齢とは思えないクレタの貫禄に少しビクつきながらついて行き、日影のある適当な場所に腰掛ける。

 

お互いに弁当を広げていると、先に口を開いたのは彼女の方だった。

 

「仕事はどうだ?上手くいってるか?」

 

「え、ええ、アンドーさんが細かく指示を出してくれるので、すごく助かってますよ。」

 

「そうか、それは良かった。」

 

ここで早速会話が途切れてしまう。

 

しかしスズツキは任務のことを思い出すと、少しでも情報を集めんと、今度は自ら話を切り出す。

 

「社長。」

 

「ん?」

 

「その……スゴいですね。多脚式の重機とか、あと自律式の無人機も。」

 

「そりゃグレースの作ったウチの目玉商品だからな。まあ、お宅のも十分スゴいと思うがね。」

 

そうクレタは得意げに話す。

 

白祇重工は工事の請負だけではなく、機械の製造も行っており、中でも彼らが誇る分野が多脚式の重機だ。

 

普通重機には履帯か車輪が付いているものだが、ホロウ内の不整地での作業を想定し、昆虫のような脚を装備しているのだ。

 

そして今は更に論理コアを搭載した無人式のタイプまで開発しているようで、スズツキも作業中に誰も乗っていない多脚重機がそこらを行き交っているのを見ていた。

 

「名前とかはあるんですか?今日もグレースさんが足付きのショベルカーみたいなのでホロウに入ってるのを見ましたけど。」

 

「ああ、ありゃ『ハンス』って機体だ。ウチの自律式の中では初めての正規実用型だな。他にも『グレーテル』と『フライデー』ってのが居る。」

 

「へぇ……カッコいいですねぇ……!」

 

女装をしていても男心を揺さぶられるものには抗えないようで、興奮気味に鼻息を荒くさせるスズツキ。

 

そんな彼をクレタはもの珍しそうに眺める。

 

「お前はグレースと気が合うタイプかもな。」

 

「へへ……かもしれませんね……。」

 

「ちなみになんだが、そっちの機体に名前はあるのか?」

 

「あー……方式番号だけですね。そういえば」

 

本当は方式番号すら無い。

 

ただ暫定的に歩行型火力支援ユニットと呼ばれているだけだ。

 

「愛称とかも無いのか?」

 

「無いです。」

 

「おいおい、それじゃ愛着も湧かないだろうに。適当でもいいから何か付けてみたらどうだ?」

 

「ふーむ……なら(はやぶさ)は?」

 

「見た目がずんぐりむっくりしてるからな……素早い鳥のイメージじゃない。」

 

「じゃあ……月光!」

 

「そいつも良いが……なんか違うな。」

 

「……飛燕(ひえん)?」

 

「空飛ばないし、あんなちんちくりんじゃないだろ。てかさっきから渋いのばっかじゃねえか。もっとこう……カッコいいのはないのか?」

 

「これも十分カッコいいですよ。そういう社長はどんな案があるんですか?」

 

「うーん……バルキリーとかフェニックスとか?」

 

「なんか響きが厨二臭くないですか?それ。」

 

「誰が厨二だ。ジジ臭いよりはマシだろうに。」

 

「あれは個人の私物じゃないんです。会議でウチのボスがネオアームストロングサイクロンジェットアームストロング号とか言ってたら馬鹿みたいじゃないですか。」

 

「そりゃその名前がおかしいだけだろ。」

 

それからクレタとスズツキはガーディアンの名前について、ああでもないこうでもないとお互いの意見を言い合った。

 

候補として屠龍(とりゅう)呑龍(どんりゅう)ドレッドノート(恐れ知らず)インディファティカブル(不撓不屈)チェルミナートル(破壊者)など、もはや重機につけるには物々しい名前ばかりが並んでいく。

 

次第にネタが切れていき、双方の口の動きが止まる。

 

「……やっぱりもっと縁起が良さそうな、シンプルなやつにしようぜ。」

 

「うん……そうっすね……単純に英雄とかヒーローとか……?」

 

「なんかダサい……ああ、なら……!」

 

寝そべっていたクレタは何か思いついたようで、急に起き上がってくる。

 

しかしすぐに再びゴロンと寝転がった。

 

「何ですか?」

 

「いや……やっぱり忘れた。」

 

「さいですかい。」

 

それからは完全にネタ切れになり、大人しく弁当の残りを片付けることに。

 

だがスズツキはおかずの唐揚げを味わっていると、ふと思いつく。

 

「あっ、これはどうですか?」

 

「ん?」

 

鍾馗(しょうき)、神様の名前です。魔除けとか厄除けの力があるんですよ。」

 

「ホロウから皆んなを守るってか?」

 

「ええ、個人的にはカッコいいと思いますがね。」

 

「いいんじゃねえの。軍用なんだし。」

 

「……どういう意味ですか?」

 

スズツキの言葉に対してクレタは寝そべったまま返してくる。

 

「気付いていないとでも?何を企んでるかは知らんが、少なくともお宅は全くの畑違いの人間ってことはすぐに分かったよ。」

 

「いえ、元々工事には関係していなかったですから……。」

 

「にしたって機械関係にしちゃあ、あまりにも小綺麗過ぎるんだよ。お前も、あの社員達も。」

 

「それは勘違いですよ。ウチは歴とした組織です。」

 

「そうかい……まあ別にお宅が何であろうと仕事を邪魔さえしなければいいさ。ただ、他の企業の連中みたいに何かしてくんなら……。」

 

突然の詰問に状況を読めないままでいると、その時、耳をつんざく大きな音が響き渡ってきた。

 

スズツキとクレタは何事かと周囲を見渡す。

 

「あっ、社長!あれ!」

 

「……おいおい、今度は何なんだ?」

 

2人の視線の先、同じ敷地の中で土煙が発生していた。

 

「あっ、あれって……!」

 

直後、粉塵を突き破ってひとつの大きな影が現れる。

 

バケットとロータリーフォークを装備した双腕作業機に4本足を生やしたような、白祇重工の誇る自律式の無人重機、デュアルショベルこと『ハンス』だった。

 

人間と会話することも出来る高度な論理コアを搭載し、ホロウ内での長時間作業も考慮された優秀な機体であった筈が、今の状態は明らかに制御を離れて暴走しているように思えた。

 

「スズツキ!」

 

「は、はい!」

 

「お前は早く自分の機体を避難させろ!いいな!」

 

「社長は!?」

 

「グレースを探す!ほら、行け!」

 

「わ、分かりました!」

 

クレタに尻を叩かれてスズツキは走り出す。

 

どうやら今回の任務でもトラブルは避けられなかったらしい。

 

スズツキは自らの運を呪った。

 




個人的に撃震がすこな作者です。コトブキヤさん、立体化ハリー!

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