『ツール・ド・インフェルノ!レーススタート!』
司会者がマイク越しにそう叫んだ瞬間、9台のマシンは一斉にエンジンを唸らせ、土煙を上げながらスタート地点を飛び出した。
凄まじいエンジンの咆哮と共に一番手へ躍り出たのはトライアンフのチーム。
次に続くのがカリュドーンの子。
そしてそのすぐ後ろにつけているのが、モンテフィーノグループことヴィクトリア家政だった。
リバーストライクのサイドカーに収まったスズツキは手元の端末を注視していた。
通信越しにライカンの声が聞こえてくる。
[スズツキ、何か異常は?]
「現在、ホロウまでのルートに不審物は確認出来ません。他に、映像中継用のドローンが飛んでいます。ここでは敵も仕掛けて来ないのでは?」
[敵が組織的な攻撃をしてくる存在とは限りません。個人による突発的な犯行も考えられます。ドローンの反応からは目を離さないように。]
「了解です。」
スズツキは画面へ視線を戻す。
最も高く飛んでいる1番機の映像には、荒野を疾走する自分たちが映っていた。
今は舗装された道が続いているが、この先はただの荒地が広がっている。
ホロウまで進むルートはチームによって変わってくるだろう。
またホロウへ入る場所によっても、ゴールへの道のりは大きく違う筈だ。
案の定というか、道路から外れた途端、それぞれの陣営はバラバラに行動し始めた。
「ボス、カリュドーンが針路を変えました!おそらく、ルートCを使うものかと!」
[分かりました。方向はこのまま。付かず離れずで行きましょう。]
荒野をひた走りながら、スズツキは双眼鏡を覗く。
遠方に見えたのは3台のバイク。
乗っているのはシーザーとライト、ルーシー。
あとリンが操作しているであろうボンプのイアスだった。
ジッと観察していると、ふとイアスの顔がこちらへ向いてきた。
「えっ。」
視線の先ではイアスがブンブンと手を振ってきていた。
それに気付いたのか、シーザーも片手を上げて反応してくる。
ルーシーはというと、こちらを一瞥しただけで、すぐに視線を前へ戻した。
「嫌われたもんだな……。」
「何か言った?」
「いえ、何でもないです。」
それからもスズツキ達はカリュドーン陣営の追跡を続けた。
遂にはホロウが目の前に迫り、紫色の壁が迫ってくる。
ホロウ内部へ突入すると、途端に周囲の景色が変わった。
今まで何もなかった平坦な荒野から、高低差のある岩だらけの地形へと。
一行は岩のわずかな隙間を縫うように走っていく。
[スズツキ、ドローンは?着いてきていますか?]
「2機はいます。しかし、3機目が突入直後に空間の変化に巻き込まれたようです。今は離れた位置を飛んでいます。」
[すぐに呼び戻してください。この地形は少し厄介です。待ち伏せに最適でしょう。]
ライカンの言葉にスズツキは身体を強張らせる。
落伍していたドローンに合流の指示を出し、目を皿のようにしながら3つの画面を眺め続ける。
だがしばらく経っても不審物は全く見つからず、ただ岩と石だけが転がっていた。
「……あれ?」
緊張が抜けかけた、その時だった。
合流途中のドローンの映像から何かを見つける。
スズツキ達の前方、カリュドーン陣営の頭上。
近くを飛ぶ2機のドローンからは見えない影の位置に、不自然な人工物らしきものが並んでいたのだ。
すぐにドローンの高度を下げ、スキャナーにかける。
出て来た結果を前に、スズツキは息を呑んだ。
「ボス!爆弾を見つけました!位置は800m先の岩の上!」
[カリン!出番です!]
[はいぃ!]
ライカンが叫ぶと、バギーの助手席に座っていたカリンは、手元の操作盤のツマミを最大にまで回す。
後部座席に載せられた機器、アンテナがびっしりと立ったそれは大量の妨害電波を発し始めた。
たちまちドローンとの通信が切れ、息が詰まるような緊迫した時間が流れていく。
「先輩、爆弾が時限式だったらおしまいですよ!」
「コースは常に変わってる!なら、敵はアタリをつけて待ち伏せるしかない!きっと無線式だよ!」
「あぁ……神様仏様……!」
手を合わせて祈り続けるスズツキだったが、幸いにも前方を走るシーザー達の頭上で爆発は起きなかった。
同じくスズツキ達が爆弾のポイントを通っても。
爆弾の設置地点を通過した後、ジャマーを解除した。
ドローンとの通信が復旧すると、すぐに周囲を精査させたが、追加の不審物は確認できなかった。
スズツキはホッと安堵の息を吐く。
「ふぅ……ヒヤヒヤさせますね……。」
「まだ気は抜かないでよ。アンタの目にかかってるんだから。」
「分かってますって。」
エレンのサメの尻尾がスズツキの背中を軽く叩く。
物騒なレースはまだまだ始まったばかりだった。
⬛︎
時は少し遡って数分ほど前。
スズツキ達よりも先にリンとアキラのパエトーンが異変を感じ取っていた。
会場の一角、カリュドーン専用のピットの中に2人の姿はあった。
リンはビテオ屋『Random_play』の社用車のトランクに積み込まれたH.D.Dシステムの前に座り、五感をイアスと同期させている。
隣では兄のアキラが機器の状況を逐一確認していた。
だがある時、ふと彼は違和感に気付く。
それはガレージ内の壁に備え付けられたテレビの画面。
リアルタイムでホロウ内と接続できるH.D.Dシステムとは違って、通常の機器はそもそもホロウ内と通信は出来ない。
そのためホロウ外縁に中継機を置き、有線で内部と通信するのだが、それでも遅延は発生してしまう。
よってテレビには5分前のイアス達が映っている……はずだった。
「ん?これは……。」
[マスター、何かありましたか?]
自称AIアシスタントのフェアリーに対し、アキラはテレビの画面を指差す。
「僕たちが走っているのは岩場のはずだろう?けどテレビに映っているのは……。」
[ただの荒野に見えます。どうやら映像がすり替えられているようですね。]
中継にはエーテル結晶の立ち並ぶ広い荒地を走るシーザー達が映り込んでいた。
フェアリーがすぐに映像の出所を突き止めてくれる。
[マスター、イアスの映像記録との照合が完了しました。これは先日のテスト走行時のものです。どうやら私たちは空から盗撮されていたようですね。]
「何?フェアリー?お兄ちゃん?何かあったの?」
声が聞こえたのかリンが振り返ってくる。
その両目はイアスと同期したままなのか、青く光っていた。
「ああ、実は大会の中継が……。」
アキラはリンに違和感の正体を説明する。
その途中で今度はフェアリーが警告を発してきた。
[警告、強力な電波妨害に遭っています。同期に影響はありませんが、通信は不可能。]
「何だ!?敵の攻撃なのか?」
[不明、しかし妨害電波はイアスの付近から発せられています。どうやら移動しているようです。]
「移動してる……?」
リンは意識をイアスの中へと戻す。
シーザーの背中に掴まりながら後ろを向くと、岩場に紛れて疾走する別の集団を見つける。
スズツキ達ヴィクトリア家政だった。
「プロキシ!何が起こってんだ!?通信機がガーガー言い出したぞ!」
「まさかアイツら……レースの邪魔のためにこんなことを……!?」
ルーシーが鋭い視線を後方へと向ける。
シーザーもラックにかけた自身の武器に手をかけようとしていたが、その手をイアスが押さえる。
[待って!そうと決まったわけじゃない!きっとすぐに終わるよ!何かあったんだ!]
リンはライカンの言葉を思い出していた。
味方にはなれないが、敵でもないと。
つまり、レースで優勝を狙うこちらと目的が競合しないということ。
よってこのジャミングは単なる妨害とは考えにくい。
そしてリンの言葉通り、ジャミングは数分も経たない内に解除された。
「何だったんだ?」
[さあ……けど、何かはあったんだと思う。]
「買ってるんだな。アイツらのこと。」
[そりゃあ、私の推し兼お得意様だからね〜。]
「ほーん……。」
シーザーは興味あり気に後方へ視線を送る。
ちなみに先ほどの時点で爆弾の起爆と岩場の崩落から免れていたのだが、彼女達は知る由もない。
それからも順調にレースは続き、岩場を抜けると今度は大きめの町が現れた。
ホロウの外で見たポンプジャッキは、かつてこの町に住んでいた人々によって運用されていたのだろう。
ホロウ災害が発生し、ホロウに飲み込まれるまでは。
「うし、ここはボーナスステージだぜ!道路がある!」
「一気に飛ばしますわよ!」
シーザーとルーシー、ライトはバイクのハンドルを捻り、エンジンを高く唸らせる。
道がアスファルト舗装になったことで、水を得た魚の如くバイクは加速していく。
あっという間に町の中央を抜け、外縁部に達しようとする。
だが、その時だった。
ゴミやスクラップに紛れて、道路に並べられた板のようなものが見えた。
直後、ガギンガコン!!と、嫌な金属音が連続して響き、たちまち火花が発生する。
「……んなっ!?」
[ルーシー!?]
「お嬢!」
ルーシーは下を覗き込む。
バイクの底部に大きな板状の物体が複数張り付いていた。
それは車体の下で路面を削りながら激しく火花を散らしている。
急激に速度が落ちていく。
アクセルを開けるがエンジンは唸るばかりで、一向に加速しない。
腹下に張り付いた板が錘となっている上、ブレーキのように車体を引きずっているのだ。
「しまった!罠ですわ!」
「待ってろ!そんなのすぐ剥がしてやる!」
すかさずシーザーはバイクを減速させようと、ブレーキに指をかける。
しかしルーシーはそれを制止した。
「シーザー!私のことはほっといて先へ行きなさい!予備のキャロットは持っていますわ!」
「馬鹿、何言って……!」
「行けと言っているのです!さあ!映画のワンシーンじゃねーんですのよ!」
ルーシーはイアスへと視線を向ける。
対してリンはイアスの小さな手でシーザーの肩を軽く叩いた。
シーザーは歯噛みしながらも、ブレーキから手を離す。
「……必ず追い付いてこいよ!」
「お嬢、また後でな。」
[ルーシー!ゴールで会おうね!]
シーザーとライトのバイクは再び増速していった。
独り残されたルーシーはハンドルから手を離す。
バイクはたちまちスピードを落とし続け、道路の真ん中で停車した。
「はぁ……まったく、こんな卑劣な罠を仕掛けるなんて……。」
バイクの状態を見ると、特段大きな損傷は見受けられない。
どうにかしてこの板を剥がせばすぐにでも再発進出来るだろう。
適当に拾った鉄パイプをバイクと板の間に捩じ込む。
作業をしていると、ルーシーの脳裏に罠を仕掛けた犯人についての予想が浮かび上がってくる。
とある男の娘を想起しながら彼女は拳を握り締めた。
「絶対に帰ってやるものですか……あんな場所なんかに……!」
ルーシーはいつにもなく焦燥感に思考を支配されていた。
だから気付かなかった。
ひたひたと、小さな足跡に。
その大きさに反して、あまり重さを感じさせないような彼らに。
「……っ!?」
ルーシーは息を詰まらせる。
視界に映ったものは、こちらへ近付いてくる人間らしきもの。
しかし肌は黒く染まっており、頭があった部位には藍色の球体が浮いている。
ホロウの住人ことエーテリアスだった。
それも1体や2体ではない。
ティルウィングやアルペカなど、低級とはいえ軽く数十を超えるエーテリアスが集まってきていた。
「な、なんで……まさか……!?」
ルーシーは周りを見渡す。
寂れたこのゴーストタウンの中で『綺麗な装置』がないかと。
そしてすぐに見つかった。
罠が置いてあった道路のすぐ隣に、廃材に紛れて錆ひとつないアンテナらしきものが顔を出している。
「エーテリアスの誘引装置……性格の悪いこと……。」
まんまと敵の罠に引っかかったことをルーシーは理解した。
悔しさに歯を食い縛りながらも、同時に罠にかかったのが自分だけであることに安堵した。
こんなに大量のエーテリアスを相手に戦うとなればタイムロスは避けられない。
それどころかレースを棄権する羽目になるだろう。
「誰だか知りませんが……これしきでくたばるタマではありませんでしてよ。」
いつものバットは持ってきていない。
代わりに鉄パイプを両手で持ち、迫り来るエーテリアスに構える。
こう見えてホロウには何度も出入りしている。
数体を倒して包囲を突破し、どこかに身を潜めるしかないだろう。
「大丈夫……実家を抜け出した時に比べれば、大したことないですわ……!」
自分を奮い立たせるように呟く。
そして、近付いてきたエーテリアスの1体に向かって駆け出そうとした。
しかしその前に不思議なことが起きた。
どこかから抑えられた破裂音が響いたかと思えば、その1体が頭のコアを撃ち抜かれ、たちまち全身を崩壊させた。
続いて2体目、3体目とエーテリアスが倒れていく。
近場の敵が倒れると、今度はエンジンの爆音がすぐそこから響き渡った。
音の方向を見ようとした時、1台のバイクがルーシーの前を過ぎ去っていった。
そこに居たエーテリアスを薙ぎ払いながら。
続いてバギーがルーシーの背後を取り、エーテリアスを電鋸で真っ二つにしていく。
そしてあっという間に敵は掃討されてしまった。
「なっ……あ……!?」
ルーシーは空いた口が塞がらなかった。
自分を助けた相手の手際の良さと、その正体に。
「あ、貴方達……どうして……!?」
ルーシーの周りにバイクとリバーストライク、バギーが停まる。
バイクから降りてきた隻眼の狼のシリオン、ライカンはうやうやしく一礼した。
同じくエレンとリナ、カリン——そしてスズツキも。
彼だけは明らかに目を逸らしていたが。
「お初にお目にかかります、ルシアーナ様。私、ライカンと申します。」
「貴方、このままだとレースに負けますわよ。」
「構いません。我々の目的ではないので。」
「……そう。」
このレースで負ければ、モンテフィーノグループの郊外支配の道は絶たれる。
得る筈だった利益も全て水泡に帰す。
にも関わらず、実家が送ってきたチームは自分の目の前でのんびりとしている。
この時、ルーシーの中でとある仮説が立ち上がった。
が、それを確認する前にバキン!という大きな金属音で意識を引き戻されてしまう。
何事かと思えば、エレンが例の誘引装置に薙刀を突き刺していた。
スズツキが壊れたそれを手に取り、まじまじと眺める。
「ボス、この型は旧式ですが、軍や協会の規格品です。デコイとしては相当に優秀なやつですよ。」
「ふむ、どうやらそのようですね。」
ライカンが周囲を見渡すと、町のあちこちからエーテリアスが姿を現していた。
それも低級だけでなく、ちらほらと中級の大柄な個体も混ざっている。
このままでは再包囲されるのも時間の問題だろう。
すぐにライカンはルーシーへ向き直る。
「ルシアーナ様、エーテリアスが迫っています。今はここを離れましょう。貴女様のバイクは後で我々が回収しますので、ご心配なく。」
「……分かりましたわ。どれに乗ってもよろしくて?」
「貴方様のお好きなように。」
ライカン達はそれぞれの車両へと戻っていく。
ルーシーもそれに続いた。
おそらく彼女はライカンのバイクか、リナのバギーに乗るだろうと、その場にいた誰もが考えていた。
さりげなくライカンは尻尾を横にズラし、カリンはバギーの後部座席の片方を開ける。
しかしルーシーが足を向けたのはそのどちらでもなかった。
「少し失礼させてもらいますわね。」
「えっ。」
「……は?」
エレンが乗っているリバーストライク。
その右側に接続されたサイドカー。
そこに収まっていたスズツキの上からルーシーは腰を下ろした。
ライカンはギョッと目を見開き、リナはあらあらと口に手を当て、カリンはオロオロと慌てふためき、エレンは真っ黒なオーラを放ち始める。
スズツキはただ固まっていた。
様々な反応を見せるライカンたちにルーシーは平然と口を開く。
「どうしましたの?言われた通り、私は好きな場所に座りましたわ。さ、早く出発してもらっても?エーテリアスがすぐそこまで来ていますわよ。」
「しょ、承知しました。」
ライカンが先に発進すると、リナも後に続く。
だがエレンは動かない。
ただ不満気にルーシーへ視線を送っている。
サメの尻尾は機嫌が悪そうに左右へ揺れていた。
しかしルーシーは意に介さなかった。
「お仲間は先に行きましたわよ?早く出発なさないな。」
「……せめて私の後ろが良いんじゃないんですか。オジョーサマ。」
エレンからの精一杯オブラートに包んだ諫言。
某ロームリの言葉を用いて要約すると、1秒でも早くそこから離れろこの〇〇〇〇。
だがルーシーもすぐに言葉を返す。
「ああ、まだ知らないのでしたのね。彼、私の下僕になりましたの。主人が下僕に何をしようと勝手でしょう?」
エレンの尻尾がピクンと反応する。
ルーシーの背後ではスズツキが冷や汗をかいていた。
「い、いやあの……下僕ってのはまだ……!」
「お黙りなさい。勝負は勝負。勝つ気が無いのなら私の勝利は確実ですわ。つまり貴方は私の下僕になった。お分かり?」
「……ハイ。」
もうこれ以上、この場をこじらせまいとスズツキは押し黙る。
シャワー室のハプニングという特大地雷が残っているからだ。
「さ、早く出してくださいまし。エーテリアスが来ますわ。」
「……スズツキ、後でしっっかり聞かせてもらうから。」
「は、はいぃぃ……っ!?」
エレンはスズツキの返事を待たずにアクセルを全開にする。
リバーストライクは急発進すると、スズツキの叫びを置き去りにして、あっという間に小さくなっていった。
⬛︎
レースは最終局面へと向かっていた。
トライアンフとカリュドーンの激しい一騎打ちがコース上で繰り広げられていた。
会場や酒場、個人宅のリビングなど、様々な場所で人々は大いに盛り上がっていた。
例外として、ダークホースとされていたモンテフィーノグループに全賭けしていた面々——特に新エリー都から出張ってきた某『Gentle House』の女社長は顔を真っ青にしていたが。
ここはブレイズウッドに位置するダウナー、チートピアの一角。
テーブルの上で彼女、ニコは突っ伏していた。
「うわ”ぁ〜……あたしのお金ぇ〜……ふざけないでよぉ〜……。」
「お、親分!まだスズツキ達の負けが決まったわけじゃあねえよ!」
「そうだぞニコ!アイツなら絶対逆転してくれる、はず……にゃ。」
「ん……郊外のバーガーも捨てがたい……。」
ニコを励ます従業員2号と3号こと、ビリーと猫又。
そして独りチートピアのハンバーガーセットを頬張る従業員1号、アンビー。
彼らの頭上では、シンダーグロウ・レイクへの道を爆走するシーザーとポンペイの様子がテレビに映し出されていた。
既にライトやベルラム、ルシウスのバイクは後方に引き剥がされており、それぞれのボスの行く末をただ見守っている。
この映像は通信遅延の影響で5分ほど前の映像であるため、今頃ホロウ内では決着が付いているだろう。
「はあぁ……きっと今は火打石を投げてるのかしら。」
「まあ、アネゴが勝ってるだろうな。」
「こんなになるんだったら、素直にビリーの古巣に賭けとくべきだったわ……。」
べしゃあと、溶けたアイスのように机へ崩れ落ちるニコ。
ビリーと猫又はテレビに視線を向けていた。
が、アンビーだけは別のものに興味を向けていた。
ハンバーガーではない。
彼女が常に装備しているエーテルのセンサー機器だった。
それの数値が大きくなっていた。
ここはホロウの外だというのに。
「ん……これは……。」
アンビーは席を立つと、ダウナーの外へ出る。
遠くに臨んだのは今しがたレースが行われている巨大な共生ホロウ。
心なしか活発に脈動しているようだった。
まるでホロウ災害が起きる時のように。
⬛︎
[おい!どうなってる!シンダーグロウ・レイクのエーテル値が異常増進してるぞ!]
[知らねえよ!センサーが壊れたんじゃねえのか!?]
[敷設した14個のセンサー全てが?ありえないわ!それにあれは都市から手に入れた正規品よ!]
[やべえ!この勢いだとホロウが『産まれる』ぞ!それもこんなに人が集まってる状況で!]
[湖が埋まるのが先だわ!私たちの石油がダメになっちゃう!]
[ボスは!?ルシウスさんとベルラムさんもまだ中に居るんだぞ!]
[早く警戒警報を出せ!動けるヤツをかき集めろ!レースどころじゃない!]
「はぁ……始まっちゃったね。どうしようか……このまま指咥えて見てるのも……ん?」
[ボス、ホロウの——かしいです!この——険値に入っちゃいます!]
[後には戻——先に進むしか——スズツ——。]
「……ま、貸しを作るっていうか、良い顔を見せとくのも悪かないかね。依頼とはいえ、お嬢ちゃんには悪いことしたし。」
よろしければ高評価や感想などをお願いします。作者のモチベが爆上がりするので。
1話ごとの文字数ってどれくらいが読みやすい?
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8000字くらい
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6000字くらい
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4000字くらい
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それ以下