ヴィクトリア家政の女装メイド   作:ゆうぐれ

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49 いざ再点火へ

爆弾の位置がリンによって特定されると、一行は3つのグループに分かれて回収に向かうこととなった。

 

「また勝負だ!おっさん!」

 

「ふん、爆弾を忘れるなよ!小娘!」

 

ルーシーはライトのバイクに移り、ポンペイはその場にいたトライアンフの走り屋数人を連れ、それぞれ出発していく。

 

そしてスズツキ達が回収する爆弾は、最初にジャミングで無力化したものとなった。

 

道のりとしては今まで通ってきたルートを戻るだけだが、一番距離が離れている。

 

そして道中には、行きにはいなかったエーテリアスがわんさかと溢れていた。

 

もう迂回しているヒマはないからと、敵集団を強行突破していく。

 

リナのオフロードバギーが分厚いバンパーガードで敵を跳ね飛ばしながら血路を開いていく。

 

スズツキは横合いから迫ってくる敵をライフルで撃っていく。

 

だが敵の数は収まるところを知らない。

 

「この……まだ来るのかよ……!」

 

「多すぎ……。」

 

エレンは片手で薙刀を握り、すれ違い様に敵を斬り飛ばしていく。

 

そしてどうにか目的のポイントまで辿り着いた。

 

「この辺りの筈です。爆弾は見つかりましたか?」

 

「えっと……あった!あそこの上です!」

 

ドローンを使って周囲を捜索すると、岩の上に複数の爆弾があることに気付く。

 

それらは岩の周りに設置されており、爆発すれば一気に崩落が始まるだろう。

 

スズツキとライカンはハーネスを装備すると、斜面をゆっくりと登っていく。

 

「うぅ……リナさんに取ってきてもらえないんですかぁ……?」

 

「彼女の浮遊は足場あってのものです。空中を飛ぶことは出来ません。」

 

「ですよねー。」

 

ライカンは岩の上に登ると、敷設されていた爆弾を手に取った。

 

ブロック状の爆薬から信管を抜き、コードで繋がった無線装置を外すと、スズツキへと手渡していく。

 

「これ爆発しませんよね?」

 

「大丈夫です。勝手に起爆することは無いですよ。」

 

「それでもおっかないです……。」

 

爆弾を全て外すと、今度はシンダーグロウ・レイクへの帰路に就く。

 

どうにかエーテリアスの攻撃をかわしながら湖へ着いた時、すでにシーザーとポンペイ達の姿があった。

 

「おーい!遅かったじゃねえか!」

 

「早く仕掛けるぞ!結晶が湖を覆いかけてる!」

 

一行は回収時に取り外しておいた信管と受信装置を再び取り付け、爆薬をエーテル結晶へ固定していく。

 

作業が完了する頃には、湖はほとんど湖面が見えない状況だった。

 

爆発の影響を受けない岩陰まで下がると、リンが最後の説明を行う。

 

[これからエーテル結晶を爆破するけど、それだけじゃエーテル活性そのものは止められない!湖に入り込んだエーテル重合触媒を吹っ飛ばす必要があるの!だからこれを続けて投げ込んで!]

 

イアスの小さな手が2つの物体を取り出す。

 

それはキューブ状の爆薬。

 

カリュドーンとモンテフィーノ陣営それぞれの火打石だった。

 

既にリンが中身を調べており、細工の無いただの爆弾であることは確認済みだ。

 

「承知しました。」

 

「よし……。」

 

ライカンとシーザーは火打石を受け取る。

 

しかしシーザーは一瞬固まると、それをポンペイへと差し出した。

 

「……何のつもりだ。時間が無いんだぞ。」

 

「1位のアンタが投げた方がいいかと思って。」

 

「馬鹿言え。これはレースとは関係ない。全員でやったことだ。」

 

ポンペイはシーザーの背中を軽く叩くと、イアスの方へ目で合図を送る。

 

そして起爆装置を高々と掲げた。

 

「よし、全員伏せろ!耳を塞ぎ、口を開けるんだ!」

 

スズツキ達が指示通りの姿勢になると、ポンペイは手元の起爆装置を連続で握り込んだ。

 

直後、ドッッ!!!っと、衝撃波と轟音が周囲に響き渡った。

 

凄まじい風が吹き荒れ、湖から巨大な爆煙が立ち昇る。

 

エーテルの灰がキラキラと降ってくる中、すぐにリンが湖を覗き込むと、エーテル結晶は綺麗に破壊されていた。

 

真っ赤に燃える湖面がよく見えている。

 

[今だよ!早く投げて!]

 

リンの言葉に合わせて、ライカンとシーザーはそれぞれの火打石を手に大きく振りかぶる。

 

そして力いっぱい投げ付けた。

 

2つの火打石は綺麗な放物線を描き、重力に従って湖へと落ちていく。

 

そしてその姿が完全に消えた時、湖全体が激しく鳴動し始めた。

 

火打石の爆発が地中のガスに着火し、更なる爆発を引き起こしたのだ。

 

次の瞬間、巨大な火柱が目の前に持ち上がった。

 

たちどころにエーテル結晶も重合触媒も、何もかもを高温で焼き尽くしていく。

 

その壮観な光景に誰もが目を奪われている中、リンだけがホッと安堵の息を吐いていた。

 

[エーテル活性反応……消失。エーテル値も上昇が止まったよ。ホロウが飽和することも無くなった。]

 

「つまり……ホロウ災害を防げたってことか?」

 

[うん、ひとまずは安心していいかも。]

 

「本当か!?やった!」

 

シーザーは嬉しさを隠さず、勢いのままイアスを抱き上げた。

 

他の面々も胸を撫で下ろしたり、肩を組み合って状況の打破に歓喜する。

 

スズツキは緊張の糸が切れたように、近場の岩へ座り込んでいた。

 

そこへルーシーが近付いてくる。

 

「隣、よろしいかしら?」

 

「あ……もちろん。」

 

ルーシーはスズツキの隣に腰を下ろす。

 

「大手柄でしたわね。さながら現代版の覇者伝説といったところかしら。」

 

「でも、誰も湖に飛び込まずに済みました。犠牲者は出ていません。」

 

「ん?初代覇者なら普通に生還していますわ。その後も長く生きたそうですし。」

 

「えっ。」

 

スズツキは思わず素っ頓狂な声を上げた。

 

「何というか……初代覇者の自己犠牲的な伝説じゃないんですか?」

 

「そんなわけありませんわ。まず郊外の人間がそんなあっさり死を受け入れてたまるもんですか。どんな状況でも生きて生きて生き抜く、それが郊外の常識ですわ。都市の映画じゃあるまいし。」

 

「ホント、強(したた)かですねぇ……。」

 

「ええ……でも今回ばかりは厳しかった。」

 

ルーシーはそっと握手の手を差し出した。

 

「貴方のアイデアが無かったら私達は郊外を諦めていた。礼を言いますわ。」

 

「そんな……僕はただ思い出しただけですよ。後はみんなのおかげです。」

 

スズツキはこそばゆさに頬を緩ませながら、ルーシーの手を握った。

 

対して彼女も口角を上げる。

 

「もう、他人からの評価は素直に受け取っておくべきですわよ?」

 

「えへへ。」

 

「……特に相手が主人なら。」

 

「それはまあ……え”っ。」

 

スズツキが会話の違和感に気付いた時、既にルーシーはその場を後にしていた。

 

慌てて後を追いかける。

 

「ちょ、ちょっと!別にその勝負は……!」

 

「あら、条件は私たちのチームが勝つことでしょう?」

 

「でも、まず勝ったのはトライアンフで……。」

 

「『優勝』とは言ってませんわよ?1位がトライアンフ、2位が私たち、そして貴方が3位ですわ。よって勝ったのはわたくし。というわけで、これからもよろしく頼みますわね、下僕。」

 

「ぼ、暴論だ……。」

 

ガックリと膝を落とすスズツキだったが、ルーシーは口に手を当てて意地悪く笑う。

 

その様はまるで悪役令嬢のようだった。

 

「おほほ……今度から約束というものはよく確認すべきですわよ。では、ごめんあそばせ。そちらも『事後説明』が大変でしょうから。」

 

「えっ……あ、ちょっ……まだ話は……!」

 

その時、スズツキはガシリと肩を掴まれた。

 

既視感のある流れに冷や汗をかきながら、恐る恐る後ろを向く。

 

そこにはエレンとカリン、イアスの姿があった。

 

今回は更にリナまで加わっている。

 

「え、えと……リナさん?これはどういう……。」

 

「スズツキちゃん、別に貴方を責めるつもりはないの。ただ依頼主様にとっての最重要人物とスズツキちゃんの間に何があったのか、ちょっと教えてくれないかしら?」

 

「そーそー、下僕とか何とか。」

 

「あうぅ……じ、尋問はしたくないんです。出来れば……。」

 

[さ、早いとこ喋っちゃうことをお勧めするよ。報連相は大事だからねー。]

 

全員、別に怒ってはいなかった。

 

だがここで黙秘を決めればどうなるか分からない。

 

スズツキは大人しく連行されることを選んだ。

 

 

 

 

 

 

⬛︎

 

結局、ルシウスが捕まることは無かった。

 

新エリー都へ続く道路上で、モルスと共に目撃されたのが最後だったらしい。

 

それ以降の足取りは途絶えており、今頃は都市外縁部のストリートへ紛れ込んでいるのだろう。

 

しかし彼らの企みは完全に潰え、副次的なホロウ災害も未然に防がれた。

 

幸いにも町ではレースの異変に気付いた人間はほとんどいなかった。

 

皮肉にもルシウスが中継映像をすり替えたことが、パニックの誘発を抑えたのだ。

 

そして次の日、ポンペイは現地メディアを通じて、改めてレースの真相を公表した。

 

レースの不正、ルシウスの裏切りと指名手配、郊外の危機……。

 

中でも最も人々に衝撃を与えたのが、新しい覇者についてだった。

 

「しかし、本当に良かったのか。覇者の座を明け渡して。」

 

ポンペイの私室の中、ソファーに腰かけているのは高級スーツを纏った壮年の男。

 

襟にはモンテフィーノ家の家紋があしらわれたピンが光っている。

 

彼——ヴィットリオ・プルデンティウス・テオドロ・デ・モンテフィーノはウイスキーの入ったグラスを回しながらそう呟いた。

 

対面のソファーに座っていたポンペイはグラスを傾けると口を開く。

 

「今回の一件で我々トライアンフは次期リーダーを失った。奴と共に有望な幹部もいなくなってしまった。つまり、現場を回す人間がごっそりと抜け落ちた。カリュドーンの連中と我々、どちらが覇者に適しているかは明確だろう。」

 

「だが、覇者の名前自体は変わっていないな。」

 

ここでポンペイは軽く笑った。

 

「無欲な小娘よ……実務だけ請け負って、覇者の座を突き返してきおった。名誉も名声も手に入れられるというのに。」

 

「今どきでは、稀有な種類の人間だな。良くも悪くも。」

 

「ああ……そこは貴様の一人娘が支えているようだから、問題無いと思うが。」

 

「我が娘として誇らしく思うべきか、一族の恥と責めるべきか……難しいところだ。」

 

ヴィットリオは溜め息をつくが、そこに失望は含まれていない。

 

それを見抜いてか、ポンペイは言葉を続ける。

 

「年頃の子供というのはそんなものだ。いつの間にかやりたいことを見つけて、家を出ていく……父親に出来ることはただ見守って応援するだけ……いつか大人になって帰ってくることをな。」

 

「分かっているとも……まさに私がそうだったんだ。」

 

「それなら何故……あぁ、なるほど。お前のように、伴侶を連れて来ないか心配なのか。」

 

図星だったようで、ヴィットリオは押し黙った。

 

「いいじゃないか。お前だって好きなようにさせてもらったのだろう?」

 

「……だが私は男で、娘は女だ。リスクの大きさが違い過ぎる。貴様も義娘がいるなら想像出来るはずだ。ろくでなしに引っ掛けられた時のことを。確か今は澄輝坪(ちょうきへい)にいるのだろう?あそこは悪いところではないが、やさぐれた連中も多くいる。」

 

「む……。」

 

ポンペイの動きが急に止まる。

 

それ見たことか、とヴィットリオは口角を上げた。

 

「やはり、親としてある程度の指針は決めてやらんとな……例え本人から嫌われようとも。」

 

「お前の立場や地位を考えれば道理だが、過干渉は毒になるだけだ。」

 

「分かっている。選択の権利は娘にさせるつもりだ。提示する選択肢も全て最良のものを取り揃える。不快には絶対にさせない……。」

 

ヴィットリオはグラスの中身を一気に煽る。

 

だが彼が再び顔を上げた時、父親ではなく経営者の顔へ戻っていた。

 

ポンペイもまた、覇者としてヴィットリオと向き合う。

 

「さて、雑談はここまでとしよう……本題に入るとしようか。」

 

「御託はいい。既にモンテフィーノ・モービルの郊外進出のことは聞いている。それが莫大な雇用創出に繋がることも。大方、トライアンフ傘下の町にパイプラインを通したいのだろう?」

 

「話が早くて助かる。利益の配分だが……。」

 

「ただし、条件がある。」

 

ポンペイは語尾を強めに、ヴィットリオの話を遮った。

 

何か強請られるのかと身体を強張らせるヴィットリオだったが、次の瞬間、彼にとある物体が放られてくる。

 

両手でキャッチすると、それは金属製のボトルだった。

 

「条件はそれだ。そのパーツをまた作ってほしい。儂だけで独占するのは卑怯な気がしてな。」

 

「……そんなことでいいのか。」

 

「儂のところの人間がお前の娘を危険に晒した。その代償としては十分過ぎるだろう。」

 

「後からゴネるなよ。」

 

「二言は無い。」

 

ポンペイとヴィットリオは固く握手を交わす。

 

テーブルに置かれたボトルには『NOS』の文字があった。

 

 

 

 

 

 

⬛︎

 

同時刻、場所は変わってブレイズウッドの一角、『カリュドーンの子』が使用する拠点の中。

 

地下の一室でパイパー・ウィールはソファーに寝そべっていた。

 

傍らのリビングテーブルには食べかけのピザやブリトーが冷えたまま放置されている。

 

部屋の隅ではテレビが点いており、郊外限定の地方番組がツール・ド・インフェルノの顛末について話していた。

 

しかしそれらの内容は全て彼女の右耳から左耳へと流れていた。

 

「ふわあぁ……ヒマだぜぃ……。」

 

パイパーの呟きにソファーの向こう側から恨み節たっぷりな返事が聞こえてくる。

 

「それならワシを外に出させてくれ!もう何日もここに缶詰なんだぞ!」

 

「んー?それはちょっと無理な相談だなぁ……。」

 

「日の光を浴びたいんだ!ビタミンD不足で死んでしまう!」

 

「その栄養素ならさっきお前さんが食べたサバ缶に入ってたぜい……まあそうカリカリしなさんなって。」

 

パイパーはリビングテーブルからグラス2つと瓶を回収するとソファーから立ち上がる。

 

そして背後のダイニングテーブルへ足を向けた。

 

そこに座っていたのは1人の小柄な男。

 

白い髪と髭、小太りの体型が特徴の人物。

 

一時期ヴィジョンの社長として悪い意味で名を馳せたチャールズ・パールマンだった。

 

パイパーは彼の対面に座ると、瓶の中身を注いだグラスを渡す。

 

グラスの中では琥珀色の液体が揺れていた。

 

「……なんだこれは。」

 

「ニトロフューエル。バーニスの特製品だぜい。飲んでみな、飛ぶぞぉ。」

 

「はぁ……もう飲んでないとやってられんな……。」

 

パールマンはやけくそでグラスを一気に傾けた。

 

その豪快さにパイパーも目を見開く。

 

「おぉ……やるねぇ。じゃ、あたしも。」

 

続いてパイパーもグラスの中身を煽った。

 

次に2人がテーブルにグラスを置いた時、双方の吐息はアルコール臭に塗れていた。

 

「ぶはぁ……か、辛いが……なかなか悪くないな。」

 

「おっ、この味が分かっちゃう?いいね〜。」

 

続いてパイパーは2杯目をグラスに注いでいく。

 

対してパールマンも間髪入れずにニトロフューエルを喉へ流し込んでいった。

 

次第に酌をしてもらっていたのが、彼自ら瓶の中身をグラスにつぎ始めた。

 

急激なアルコールの摂取に、顔が赤くなり始める。

 

「まったく……わしはなぁ……社長なんだぞぉ……!えらいんだぞぉ!」

 

「うへへ……そうかもねぇ……よっ、元社長!」

 

「うるせえっ!誰が容疑者だ!くそ……んぐっ……!」

 

気付けば瓶の1つが無くなり、パイパーは次の四角い缶を開ける。

 

その缶もすぐに無くなり、更に新しい缶が開封される。

 

パールマンの視界は完全に揺れていた。

 

「うぅ……ちくしょお……どいつもこいつも全部あいつらのせいだぁ……!」

 

「えぇ?どいつだってぇ?」

 

「あいつらだよ!あの……なんだ……フリフリの……白黒の……スカートで……!」

 

「んぅ?パンダ?」

 

「違う!人間だ!古臭いふざけた格好した連中だ……!」

 

その時、部屋の扉がガチャリと重々しく開いた。

 

しかしパールマンはそれに気付かず、尚も喚き続ける。

 

「そうだ!思い出した!メイドだ!それと執事!アイツらのせいでワシは……!」

 

「お呼びでしょうか?」

 

「あぁ?なんだお前……。」

 

パールマンが振り返ると、そこには壁があった。

 

否、よく見ると執事服に包まれた屈強な肉体だった。

 

赤い隻眼が彼のことを見下ろしてきている。

 

その背後には件のメイド達が揃っていた。

 

パールマンの酔いが一瞬のうちに醒める。

 

「……へぇ?」

 

「ではご同行を。貴方には聞きたいことが山ほどありますので。」

 

「え……えっ!?」

 

パールマンは助けを求めるようにパイパーへ視線を送る。

 

しかし返ってきた言葉は非情なるものだった。

 

「良かったじゃあないか。これで日の光を浴びれるぜい。あ、でももう夜か。」

 

「ちょ、ちょっと待っ……!?」

 

ガタリと、パールマンの椅子が引かれる。

 

そのまま彼は執事とメイド達に連行されていった。

 

騒がしかった部屋が一気に静かになる。

 

すると入れ違いでシーザーが入ってきた。

 

「おっ、新時代の覇者さんじゃないかぁ。」

 

「ちげーよ。覇者はあくまでもポンペイのおっさんだ。オレ様はただの代理。」

 

シーザーはドカリと椅子に座り込む。

 

「で、彼らにパールマンを渡して良かったのかぁ?」

 

「プロキシと一緒に尋問するらしいぜ。プロはおっかねえな。」

 

「あらら、そりゃ大変。」

 

パイパーは飲みかけの缶をそのままシーザーに手渡す。

 

「ちなみにだけど、彼らはどんな連中なんだ?信用できるのかぁ?教えてくれよ。」

 

「都市の連中だが、良い奴らさ。今回のことだってアイツら……特にスズツキがいなけりゃヤバかった。石油も町もダメになってたかもな。」

 

「スズツキ……あぁ、あのメイドの男の子のことかぁ……。」

 

「そうそう……メイドの男……。」

 

シーザーは缶を直に傾けたままフリーズした。

 

そして再び喉を鳴らし始めると、一旦缶をテーブルに置く。

 

「ん?ライカン……じゃなくてか?」

 

「いや、あの子だよ。プルクラに攫われてた子……あっ。」

 

ここでパイパーは自らの失言を自覚した。

 

シーザーは見た目に反して恋愛観は思春期女子以下なのだ。

 

しかし時既に遅し。

 

目の前ではバグを起こしたシーザーの姿があった。

 

「え……男……メイドなのに男……あれで男?いや……でも……確かに……。」

 

「し、シーザー、勘違い。あたしの勘違いだから。きっと、うん。」

 

「男……オレ……男とシャワー……え……!?」

 

「待ってくれぃシーザー。恋人だから肌を見せるってのは分かる。それは道理。けど肌を見せることで相手が恋人にはならんの。十分条件であって、必要条件じゃ……。」

 

その直後、シーザーはオーバーヒートした。

 

ゆでダコのように顔を真っ赤にし、瞳はグルグルと渦巻いている。

 

結局、彼女が取った行動は眼前の缶の中身を飲み干すことだった。

 

「ぶはぁ!ぱ、パイパー!お代わりだ!」

 

「ありゃりゃ……こいつぁ、バーニスを連れてきた方が良さそうだなぁ……。」

 

諦めたようにパイパーは新しい缶を開けると、シーザーへ渡す。

 

その日、ブレイズウッドで行われた覇者代理就任祝いで、シーザーはひとしきり飲み明かしたそうな。

 

 

 

 

 

 

 

⬛︎

 

「あれ?どうした?こんな時間に?」

 

[さっきテレビを見たの。だからお義父さんに電話したんだけど、全然出なくて……何かあったの?]

 

「ああ、心配しないで。親分なら友達と飲み明かしてるだけさ。レースの一件でも怪我はなかったし、みんな無事だから。」

 

[そうなの……良かった。]

 

「うん、親分には俺っちが後でよろしく伝えとくから。」

 

[ありがとう。こんな遅くにごめんなさいね。おやすみなさい、ベルラム。]

 

「イドちゃんも、おやすみ。」

 




ハイ、今作初の生存改変でした。だってイケおじが足りないもの……公式さん、いつか原作でも実装お願いします。


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