ゼンゼロのキャラって名前に日本中華の東洋系とか、英米露の西洋系とか満遍なく色々使われてて良いよね。
ちなみに主人公の名字はライカンと同じ独圏です。
名前の由来は某特甲児童が元ネタだけど……知ってる人いるかな?
エレンはまどろみの中に居た。
今は何時だろうか、もう起きるべきだろうかと。
次第に思考が回復していき、面倒なことも思い出していく。
しかしここで自身の現状に疑問が残った。
いつどこで寝たのかを覚えていないのだ。
まあ少なくとも頭部と身体の左側面にそれぞれ枕と布団のような柔らかさを感じることから、寝具のある場所で横になっていることは確実である。
「……ん?」
だが記憶を辿っていく度に自分が家や拠点へ帰ってないことに気付く。
一体今まで何をしていたのか。
ここでエーテリアスの姿と奴等との戦闘が一気に思い起こされた。
「あっ……!」
嫌でも目が覚め、瞼を開ける。
最初に視界へ捉えたのは何か嗅ぎ慣れた匂いのする黒い布だった。
ゆっくりと顔を動かし、周囲を見渡していく。
「すぅ……すぅ……。」
「……コイツ。」
ほっと息を吐く。
上を見上げれば寝息を立てているスズツキの顔があった。
どうやら自分は今、彼の膝を枕に横になっているようだ。
「道理で寝心地が良いわけか……。」
もう一眠りしようかと瞼を閉じるが、やはり今はやめておく。
腕の端末を点け、あらかじめ測っていたタイマーを見ると、既にホロウ突入から150分が経過していることが分かった。
「良かった……最大活動時間まではまだ余裕がある……。」
エレンとスズツキが居たのは駅に停まった在来線のひとつ。
よく通学に使っていた副都心線の車両の中だった。
どうやらホロウは路線の一部まで飲み込んでいたらしい。
「ここどこなんだろ……。」
名残惜しさを感じながらも身体を起こし、向かいの座席に置いてあった大型鋏を手に取る。
ここでエレンは複数の足音を検知した。
またエーテリアスが来たのかと得物を構える。
「ストップストップ!敵じゃねえよ!」
「……戦術人形?」
「正確にゃ機械人だがな。民間軍事会社のポンコツとは一緒にしないでほしいぜ。」
駅のホーム側から顔を覗かせてきたのは赤いジャケットを羽織った自律型の知能機械人。
エレンが刃の切っ先を向けると彼はすぐに両手を上げた。
少なくともエーテリアスではないことは確かだろう。
「ビリー?誰か見つけたの?」
「あ、ニコ、中に誰か居る。」
「えっ……メイド?」
更に後から追加で2人の少女が現れた。
どちらも年齢はこちらと同じくらいに見える。
だが人間であることは確定しても、盗賊やテロリストなど、犯罪者の可能性は残っていることからエレンは警戒を崩さず、背後のスズツキを揺さぶった。
「ん……んぁ……?」
「銃を取って。」
「うぇっ……?」
寝ぼけ眼を擦りながらスズツキは起きると、胸のホルスターから拳銃を抜く。
それを見てか相手方の動きが止まった。
「ま、待って!私達は怪しいやつじゃないわ!」
「ニコ、そのセリフは映画で敵がよく言うやつ。逆に怪しまれる。」
「じゃあ、どーしろってのよ?」
緊迫した状況が続く。
だがその時、ドアの影からひょっこりと1体のボンプが姿を現した。
「ん?このボンプ……。」
見覚えのある白黒のカラーリングと身体に巻かれたオレンジ色のスカーフが特徴のそれは2人の前まで歩いてくる。
そして喋った。
ンナンナではなく、人間の、それも少女の声で。
[あー、エレン……だよね?昨日ぶりだね!]
「わっ!?」
「ボンプが喋った……というかどうして私を知ってるの?」
[それはねー……ちょっと秘密かなー?]
「とぼけないで。これでも個人情報の扱いには……。」
エレンはボンプを持ち上げて、じっと見つめる。
直後、既視感の出どころを思い出した。
同時にこの聞き覚えのある、何か気に触る声の持ち主も。
おそらく部屋にあった大掛かりな機材は『ここ』に関する用途で使うものだったのだろう。
「アンタ……!」
「あっ、もしかして……もがっ!?」
「黙って。」
すかさずボンプから、正確にはイアスから手を離し、スズツキの口を押さえるエレン。
そのまま腕を掴むと、車両の端に連れていく。
「先輩……?」
「偽名を使って。もちろん初対面のふり。多分アイツはアンタに気付いてない。」
流石に奴へスズツキのことがバレるのはマズい。
女装してメイドをやっていると知られた場合、彼へどんな影響がもたらされるか分かったものではないからだ。
「アイツって……リンさんですよね?別に知り合いだから……。」
「いいから。バレると面倒なの。」
「わ、分かりました……。」
エレンの有無を言わさぬ圧にスズツキは大人しく首を縦に振った。
「あとさ、他の皆んなは?何で私達はここに居るの?」
「倒れた先輩を引っ張って別の裂け目に入りました。ブツだけは置いてきましたが、ボス達とは逸れたままです。」
「……分かった。」
話を終えるとイアス達の前に戻る。
[えっと……終わった感じ?]
「ごめん、彼女、新入りなの。それにしてもアンタ……リンだったっけ?何でボンプになってんの?」
[おっ、よく分かったね!これはまあ、特殊な装置を使ってるからで……。]
「ふーん……スゴいじゃん。それでさ、ここから出る方法知らない?詳しいことは言えないけど、訳あってキャロットが無いんだ。」
[ふふん、お安いご用だよ!]
ボンプは誇らしげに胸を張った。
[私は『パエトーン』だからね!]
⬛︎
エーテルによる侵食のタイムリミットを考慮し、一行はすぐに出発した。
今は『邪兎屋』と名乗った個人組織の3人と、リンが操作するイアスと共に出口へ繋がる線路の上を歩いているところだ。
スズツキは敷き詰められたバラストに難儀しながら足を進めていると、横合いからちょこちょことイアスが近付いてくる。
[ねえ、エレン達はこんなところで何してたの?]
「そこの3人と同じ。顧客からの依頼があったから来たってだけ。」
「へぇ……メイドのレイダーねぇ……。」
「ホロウにメイドの組み合わせなんて聞いたことねえな?新興チームか?」
「お宅らとは客層が違うの。だから普通のインターノットにも出回ってないだけ。」
「ふーん……。」
信じきれないのか、エレンへ訝しげな目を向けるニコとアンビー、ビリーの3人。
次にその視線が隣のスズツキへと映る。
「貴方も同じメイドなのかしら?随分若く見えるわね。」
「は、はい、入ったばかりですから……。」
「銃持って戦うメイドさんかぁ……何かイイな!」
「まるで映画に出てきそうな属性。」
[あはは……そういえばさ、名前まだ聞いてなかったね。何ていうの?]
イアスが足元から見上げてくると、スズツキはエレンの方に目を向ける。
彼女は『偽名を使え』と口パクしてきた。
「えっと……あ、アゲハっていいます!
母方の親戚の名前をベースに速攻で考えた偽名を愛想100%の笑顔で言う。
バレないか心配だったが、邪兎屋一行はもちろんのこと、面識のあるリンも怪しんだ様子はなかった。
[アゲハちゃんかぁ……可愛い名前だね!]
「そ、そうですかね、えへへ……。」
誤魔化すようにそっぽを向きながら胸を撫で下ろす。
それからも自身の挙動に気をつけながら出口へ歩き続けた。
しばらく時間が経って、最後尾で警戒をしていると、リンから再び質問が飛んでくる。
[ねえアゲハちゃん、兄弟とかっているの?]
「え?いえ、特には居ませんが……。」
[双子の兄か弟は?]
「いいえ?」
[そっか……急に変なこと聞いてごめんねー。何か私の友達と貴女が似ている気がして……勘違いかもしれないんだけどさー。]
ビクリとスズツキの肩が跳ねる。
化粧と変装をしていても完全には誤魔化し切れなかったのだろうか。
「ま、まあ……似てる人は結構いますよね、あはは……。」
[でもねアゲハちゃん、歩き方が微妙に『混ざって』るんだよ……それにメイド服で分かりにくいけど骨盤の位置が違うし、肩も少しガッチリしてる……。]
「な、何をいきなり……。」
[……ふふ。]
イアスは楽しそうにこちらの周囲をぴょんぴょんと跳ね回る。
かと思えばいきなり胸へ飛び込んできた。
「わわっ!?」
[っと、ナイスキャッチ〜。]
思わず抱き留めると、そのまま身体にしがみ付いてくる。
[うーん……おっぱいも硬いなぁ……。]
「ちょ、ちょっと!///」
すかさずイアスを放り投げた。
とんだスケベボンプである。
「何してんの?」
[あはは、ごめんごめん。何でもないよ、エレン。ちょっと推理ごっこ。お兄ちゃんが面白い映画を見てたからさー。]
「……あっそ。」
[アゲハちゃんもごめんね〜。あれただの冗談だから。]
「いいから離れて。」
バチバチと視線をぶつけ合うエレンとイアス。
以降は事務的な会話を除いて静かなまま出口へと進み続けた。
[あっ!あれがホロウの境目だよ!]
「やっとか……。」
「長かったです……。」
列車のトンネル内を進んでいると、前方に行きと同じ紺色の壁が道を完全に塞いでいた。
そこに全身を突っ込めば空気が変わり、外界に戻ってきたことを理解する。
「助かりました。ありがとうございます。」
[いいのいいの、困った時はお互い様なんだしさ。]
「じゃ、私達はここで。」
「さようなら。」
[
トンネルから外に出ると空は既に赤くなっていた。
エレンに引っ張られてアゲハもといスズツキは邪兎屋の面々と別れると、近くのセーフハウスを目指す。
歩きながらライカンに連絡を入れれば1コールで彼の声が聞こえてきた。
いつもより早口に感じるのは気のせいだろうか。
[どこに居ますか?]
「中央区と西区の境界あたりです。今は先輩と近くのセーフハウスに向かってます。」
[怪我は?]
「ありません。先輩が倒れたのも疲れただけとのことです。」
[そうですか……無事で何よりです。]
「あの……任務の方は……?」
[大丈夫です。回収物は無事に届けました。もちろん無傷です。]
「ああ……良かったです……。」
[ええ、ではセーフハウスで待機していてください。リナが車を回します。]
「はい、すみません。」
電話を切り、エレンの方を向く。
彼女は如何にも疲労困憊といった顔をしていた。
「あの……先輩。」
「何?」
「助けてくれて本当にありがとうございました。先輩が居なきゃ3回くらい死んでましたね。」
「こっちもぶっ倒れたからお互い様だよ……ありがと。」
今にも倒れそうな様子のエレンだったが、何か思いついたのか口端を釣り上げた彼女と目が合う。
もしかしなくとも、こちらへの要求があるのは明白だった。
「2回こっちが多いね。」
「……また黒鉢豚骨ラーメンですか?」
「私は命を救ってあげたんだけど?」
「せめて分割払いにしてください。」
「じゃあまずはパシリ追加ね。」
「別に良いですけど……また学校で噂になりませんか?」
「もうなってるからいい。むしろなってる方が……。」
「へ?今なんと?」
「うっさい、黙って。」
「へい。」
奴隷契約延長の約束をしてから少しして、こじんまりとしたセーフハウスに到着する。
中はいつもの拠点のように豪華というわけではなかったが、生活に必要な物は全て揃っていた。
何か飲み物はないのかとスズツキは冷蔵庫を漁り、エレンはソファーにダイブする。
「先輩も飲みます?」
「ジュースない?」
「原液を希釈して飲むタイプなら。ブドウとメロン味があります。」
「ブドウ味。比率は4対6。炭酸があったらそっちで。あと氷も忘れないように。」
「はいはい、濃いめですね。」
メイドらしく言われた通りにジュースを作りながら、先ほどのことを思い返す。
特にリンが言っていた単語を。
「そう言えば先輩、『パエトーン』って知ってますか?」
「何それ……最近リメイク版が出てたやつ?」
「それはTPSのシューティングゲームです。」
「……戦争映画?」
「それはプラトーン……ってよく知ってますね。旧世界の遺物なのに。」
「依頼主がコレクターだった時に少し見せてもらっただけ……で?結局何なの?」
スズツキは答える前にコップを持ってエレンの隣に腰を下ろす。
そしてジュースを渡すと共に、端末のウェブサイト上で検索した結果を彼女に見せた。
「へー、『伝説のプロキシ』……。」
「インターノットでは有名な存在ですよ。まあ、尾ひれがついたような話ばかりで信憑性は低いんですけどね。」
「じゃあ単にあの女が見栄張ってるだけ?」
「女って……でもリンさんがあのボンプに入ってたのは事実です。ボンプを遠隔操作なんて前代未聞ですよ。」
「あの事務室の機材を使ってねぇ……本人に聞いたことはないの?」
「少し前に入った時にはアキラさんの趣味とは言ってましたけど……。」
「ふーん……。」
心底どうでも良さそうに、と言うより考えるエネルギーすらマトモに足りていないようで、無反応にただジュースを呷るエレン。
一方、インターノットの流行や有名どころに明るいスズツキは『伝説』と呼ばれている存在を前に少し興奮していた。
他の女の名前を、それもエレンにとって要注意人物であるリンの名前を出すという愚行を無意識のうちに何度も行ってしまう。
おかげで最初は大人しく静止していたサメの尻尾が、段々と不機嫌そうに揺れていく。
「やっぱり僕、今度ビデオ屋に行って直接リンさんに聞いて……!?」
「うるさい。」
スズツキが横を向くと、すっかり不機嫌モードになったエレンがすぐそこに居た。
一応補足だが、彼女の方が力も背丈も上だ。
ガシリと肩を捕まればそれだけでもう身動きが取れない。
「せっ、先輩……?」
「ねえ、デリカシーって知ってる?あの女のことばっか話してさ。」
「す、すいません……。」
「分かったらほら、早く。」
「えっ……。」
今度はソファーに押し付けられる。
かと思えば太ももに何かが乗ってきた。
言わずもがなエレンの頭であり、何故か膝枕をさせられていた。
ちなみに、このソファーの大きさだとサメの尻尾が背もたれに干渉してしまう為、スズツキの方を向いて寝ている。
「あの……この状況は……?」
「さっきやってくれてたでしょ?じゃ、リナが来たら起こして。」
「いやまあ、確かに寝心地悪そうだったからしましたけど……ってもう寝てるし。」
あっという間に寝息を立て始めたエレンを前にスズツキは軽くため息を吐く。
それからはリナが来るまでひたすら耐久レースだった。
色々な意味で。
⬛︎
「ねえ『フェアリー』、今日の任務記録は録った?」
[はいマスター、言われた通りオフラインのものを含めてバックアップを複数用意しました。]
「うん、ありがと!それで例の照合は出来た?」
[はい、ですが提示された人物の画像データは新エリー都に在住するどの市民とも合致しませんでした。]
「ホント?都庁の第一本庁舎へ侵入したのに?」
[はい、近隣の地方自治区も調べますか?]
「うーん、そっちはいいかな。じゃあさ、中央区にある都立第一総合高等学校の一貫部1年D組出席番号11番の生徒は出せる?」
[可能です。しかし顔が全く違いますが、それでも実行しますか?]
「うーん……そっちも改竄されちゃってるのかぁ……ならウチの監視カメラ群で撮ったのを使ってみて。私のコレクションから出していいからさ。」
[分かりました……照合完了。アゲハ・シュマルツ・シャルンホルストとスズツキ・ナイドハート・グナイゼナウの適合率98.4%、服装や見た目は違いますが、同一人物と考えて良いでしょう。]
「へぇ……ふーん……やっぱりスズツキ君だったかぁ……。」
[マスター、やはり貴方の行動は少し目に余ります。まるでストーカーのような……。]
「フェアリー、相手を知ることは大事なことだよ?それに戦いの大半は情報戦だって言うじゃん。趣味嗜好、得手不得手、性癖に体質……使えそうな情報は少しでも集めておかなくちゃ。」
[それはエレン・ジョーに対して有利に立つためでしょうか?]
「当たり前じゃん。私とスズツキ君の時間を邪魔してきた奴……今日は膝枕なんかしてたし……!」
[マスター、直接彼に私的な誘いを行うことを提案します。そちらの方がもっと効率的に……。]
「えっと……それは……恥ずかしいというか……。」
[手をこまねいていると貴方様が先月に見ていた同人誌のように目の前で彼がエレン・ジョーに⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎……。]
「うああああぁぁぁ……!分かった、分かったから!お願いだから脳破壊された時の記憶を掘り起こさないで……!」
[送信する文を作成しましょうか?]
「自分でやるよ!それよりあのメイド服に関する組織の洗い出し、頼んだから!」
[承知致しました。]
スタッフルームのドア前)
アキラ「最近、妹の様子がちょっとおかしいんだが。」
6号『ご主人、介入しないことをお勧めするよ。あれはダメだ。』
18号『なになに〜?何かあったの〜?』
イアス『良い匂いだったなぁ……。』
セーフハウス内)
エレン「すうぅぅぅぅ……ふぅ……zzz……。」
スズツキ「せ、先輩……そんなにお腹……吸わなっ……///」
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