竜も鳴かずは撃たれまい TS少女と鳥の空戦記録 作:上殻 点景
[Briefing]────────
偵察写真を分析した結果、ハンカ湖周辺に基地があることが判明した。基地は森林の中に巧妙に偽装されており、爆撃への対策も確認されている。
そこで我がアメリア陸軍は地上と空からの同時作戦を決行する。
諸君らの任務は、作戦完了までの敵機の撃破および制空権の確保だ。
健闘を祈る。
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【ウーラジアストック港・食事場所/南側 [19:00]】
大鳥を失った俺達に出されたのは、待機命令。
おっさん曰く、あと2日もすれば飛べるようになるらしいのだが、空を飛べない俺にはやることがない。
というわけで、意味もなく港を歩き回っていると、一日が過ぎていた。
「あー、今日も一日がおわった」
「あー、今日もスクープはなかった」
横に座るは、記者のシルさん。
本人曰く、不当に捕まり、不当に尋問されたらしいのだが、横で酒を飲んでいるあたり、酔っ払いの戯言だろう。
「机上の飯、食ってもいいのか」
「構わん、構わん、私のおごりだァ」
「なんかヤケクソ入ってない?」
まあタダ飯なら何でもいいかと、手を伸ばす。
横からは自分より大きな手が伸びる。
(思ったより熱いな、これ)
そう思いながら、咀嚼をすすめる。
「もっきゅ (なぜ俺を見る)」
「もぐもぐ (なんかスクープの匂いがするからッ)」
「もっきゅ (無いぞ、そんなモノ)」
「もぐもぐぅ (嘘だァ)」
仲良く食べるは、おにぎりだ。
皿の上からは5つの炊きたての煙。
炊き込みご飯で、握られたおにぎりは栄養満点だ。
(旨いけど、食いにくい)
食っているとボロボロと具材が落ちていく。
せめて海苔ぐらいは巻いて欲しかったと思うのが感想だ。
「もぐもぐもぐもぐ (おにぎり旨い)」
「もっきゅもっきゅ (おにぎり旨い)」
ごくり。飲み込んで、皿を見る。
皿には最後の1つとなったおにぎり。
「ん?」「ははーん?」
お互いの視線はぶつかり、
伸ばす手。ふれたタイミングは同時。
ならば──
「「ジャーンケーン!!」」
「ぐー」「パー」
「シルさん、今の後出しだろ」
「なーにを言ってるのか分からないなー、謎ガールっ」
ひょい。おにぎりは口の中に奪われる。
「勝負事は勝った者が勝者なのだァ」
堂々とドヤ顔を決めるシルさん。
ポン。そんなシルさんに置かれる手。
「──なら代金も払って貰おうか、記者さん」
後ろには般若の形相のおばちゃん。
たしか、ここの調理係だったはずだ。
数秒後、おばちゃんに連行されるシルさん姿があった。
◇◆◇
【ウーラジアストック港・調理場所/南側 [19:30]】
「食った分は、働いて返せ」そう言われた、シルさん。
泣きながら連れていかれる姿は、滑稽で、哀れな、食い逃げ犯だったのだが──
「なんで俺まで」
「ふっふっふ、私が巻き込んだからだ」
なぜか仲間ということにされた。
少女とお姉さん。
仕事仲間にしては離れている年齢。なのだが、“私の弟子だッ”という意地汚いシルさんの一声で仲間扱い。身体検査もせずに仲間扱いは心外だ。
「ほら、受け取りな」
「お、おおっと」「はいやっ」
投げられるは、帽子。
紙でつくられた三角の帽子。
自分の頭部がすっぽりと入る帽子だ。
「髪の一本たりとも入れるんじゃないよッ!」
「「アイアイサーっ」」
「サーじゃない、マムと呼びなッ!!」
「「アイアイマ厶っ」」
アイアイマムって語呂悪いな。
(そもそもアイアイって訛った発言だったような......忘れた)
そんなことを考えながら、厨房へ、案内されるのであった。
◇◆◇
【ウーラジアストック港・厨房/南側 [19:35]】
厨房は、野外にある。
正確には公園に、移動式のキッチンを数十台置き、そこを厨房としている。
移動式キッチン。4輪の上に炊事設備が搭載されたワゴン。
4つのコンロは魔力で簡易的に着火でき、サイドには水道管から水を引くためのホースもついている。この設備をフィールドキッチンという。
「アンタは受け取りでもやっときな」
おばちゃんの一声で配属されたのは、レシートの受け取り係。
レシートには今日のメニューが書かれており、食べたい物に○をする仕組みだ。
「割と暇だな」
料理を作るわけでもなく、配るわけでもない。ただひたすらにレシートを貰う。
渡してくる兵士には、じろじろ俺を見るヤツもいれば、さっさと他の列に並ぶヤツもいる。
(こうやって見ると色々な兵士がいるな)
そんな感じで暇つぶしに、人間観察をしていると見慣れた男性が並ぶ。
「ほい、嬢ちゃ......」
「なんだ、文句あるか」
所々破れた軍服を着る、細目少尉だ。
「いや、なにやっとるんや」
「バイトだ」
「いや嬢ちゃん、一応、獣医やろ」
「一応だから問題なんだよ」
実は、戦場で獣医と証明できる方法はない。
昔は医師のマークを付けていたらしいのだが、戦場で優先的に狙われたため、現在は廃止されている。
よって、俺は周囲の雰囲気だけで獣医と思われてい。本当に見せかけの獣医である。
「まあ、ええわ」
ほい。渡されるレシート。
メニューは、小さい○で囲まれている。
「パン派なのか」
「米より手軽に食えるさかい」
「おにぎりだって手軽に食えるぞ」
「手、ベタつくやろ。アレが嫌いや」
細目少尉はそう言って去ってしまった。
◆
「で、次はパーマかよ」
「なんだ急に、文句かよ」
次に来たのはパーマ少尉
渡されたレシートには、大雑把な○。
「お前さんが、ご飯なのか......」
「えっ、問題あったか?」
「いや、ないけど」
アメリア本土の人間がご飯を食べるのは珍しい。
彼らにとってパンが食べれなければ仕方なくなモノなのだが。
「腹持ちの問題だぜ、嬢ちゃん」
「大食いって事?」
「ほら飛行士って長時間飛ぶだろ」
「ああ、なるほど」
要は、米の方がパンよりお腹が空かないからという理由。
「あれはな、前の戦争だったか、俺が「おい、早くしろッ」──あっ、すいません」
パーマ少佐は慌ててどこかに行ってしまった。
話の続きが気になってしまったのはナイショだ。
◆
最後に来たのは、大柄の男性。
軍服は新品同様に近い。
「げ、おっさん」
「何やってんだ、レコ」
トリノ大尉はあきれた目で、レシートを渡す。
「おっさんは......飲み物だけなのか」
囲われていたのは、水のみ。
キレイではないが、丁寧な◯で囲ってある。
「飯は意外と美味しいぞ」
「ああ、知ってるよ」
「ならなんで?」
好き嫌い以外で、食べない理由は存在しないと思うのだが。
「いいかレコ」
「なんだよ」
おっさんは真剣な目で話す
「日頃から配給に慣れていると痛い目を見るぞ」
「えっ? どゆこと」
「──戦場で絶望したくなければ、マズい飯を食え」
そう言い切ると、おっさんはレーションを取り出すのであった。
周囲の兵士達は、頷き、涙をながす。
「いや、どゆこと?」
別名Dレーション。味覚や食感は考慮されていない、悪魔(Devil)のDレーションである。
もちろん常食するものではない。
[Message]────────
作戦は成功だ。同時進行で行われた攻撃により、ハンカ湖周辺の敵基地は壊滅した。基地発進の大鳥が少なかったことより、敵軍は完全に不意を突かれたようだ。
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ここまで読んでいただきありがとうございます。
作者はご飯派です。
誤字脱字報告があると作者が喜びます。