「……」
手にしていた紙をぐしゃぐしゃにすると近くにいたウルガモスへと向けて投げてやる、ウルガモスは喜んで火を吐いてそれを一瞬のうちに消し炭にした。拍手が送られると嬉しそうにしながらもファイアローと一緒に大好きなアニメへと向かい始めた。
「あれ、今のラビ宛の奴じゃなかったっけ?」
「如何でもいいゴミだ、気にしなくていいさ」
「ゴミって……でもブルベリ学園のマークあったよ?」
「だから、ゴミなんだよ」
ラビの下へとやって来た手紙、それは母校でもあるブルベリ学園からのものだったのだ。最近色々と自分が話題を作りまくっているからそれらに関する事やOBとして顔を出して欲しいという要望だったのが……自分にとってはゴミ同然でしかない。
「レベ達に会いに行くなら考えてもいいけど、ブルベリ学園に行く事自体が嫌だ。絶対騒がれる」
「まあ、ナンジャモさんを超える位の人気配信者になっちゃったもんね、別の方向性で」
ラビの配信は超VIPが出まくるのでナンジャモとは別の方向性で大人気になりつつある。それだけではなくバトルや研究者として有力な情報を発信し続けている為か、登録者数の伸びがエグい上昇曲線を描いている。
「どうせ目的はガチグマとかだろ、頼まれたって絶対連れて行かねぇ」
「ブルベリ学園って研究施設って側面が強いんだっけ?」
「ああ、確実に目的はガチグマとかだろうからな。だったら尚更向こうの希望を叶えてやる筋合いはない」
行くとしても連れて行くのはガチグマとかは一切なし、普通のガチ編成で行く位だろう。そもそもガチグマとかを抜きにしても自分はブルベリ学園で色々とやらかしているのだからそっちで騒がれるのは目に見えている、またレンタルバトル42連勝をやれとか言われたら絶対に嫌だ。自分の時だって1週間に分けてやったのだ、それを一日でやれと言われたら十数時間は余裕でかかるだろう……。
「そう言えばさ、担任の……何先生だっけ?」
「ブライア先生か?」
「そうそう、凄く辛辣だったけど何か理由あるの?」
「……飛び級する為の単位稼ぎでな、あの教師が調べたいっていうのに同行するのがあったんだよ、んでその時は土地神とされているポケモンの調査だったんだよ」
その調査は現地の人に話を聞いたりフィールドワークをしたりと面白いのもあった。そして肝心の土地の守り神とされているポケモンが祀られている社、その写真を撮ったりどんな祀られ方をしているかを調べている時だった。
『フムフム実に興味深いな……』
『先生足場が悪いから気を付けてくださいね?』
『ハハハッ心配ありがとうね。だけど心配無用さ、そんなドジは踏まな―――キャン!!』
『オイイイイイイイイイィィィィィ!!!!!????』
物の見事に泥濘に脚を取られて転倒、その拍子に社の一部を壊してしまったのだ。
『そら見た事か!?そら見た事か!!?そら見た事かぁ!!!??アンタ何盛大にフラグ立てたと思った直後に回収してんだバカバカバカァ!!?』
『あわわわわっワザとじゃないんだ!!?気を付けようとしたら……』
『マジで何してくれてんのこの人!?絶対に荒らすなって言われたよね!!?管理人さんが口を酸っぱくして注意してくれましたよね!!?荒らしたらどんな事が起きるか―――』
『『あっ』』
「そ、それで如何なったの?」
「……先生はポケモンを持ってなかったから俺がダイケンキを出して必死の応戦だよ……何とかなったと思ったらあのバカなんて言ったと思う?素晴らしい、君達の戦いぶりは輝いていたよ!!だぞ、感謝でも謝罪でもなく称賛だぞバトルへの」
「あ、あらぁ……」
ラビがブライアに対して辛辣なのはこの時の事が決定的だった。唯のドジだけならまだ許せる範囲ではあったのだ、実際に足場も悪かったから致し方ないとムリクリ納得しただろう。だがその直後の対応で信頼が地に堕ちた。最初は美人な先生の手伝いをしつつも単位が稼げるから美味しいと思った、だがそんな事を思う事は無くなった。
「まあ単位確保の為に参加はしてたが……担任ではあったがもう関わり合いたくはないな」
「……頑張ってたんだねラビ」
「皆さんこんにちは、今日もポケモン育ててますか?まだまだな貴方もこれからの貴方も、此処をきっかけに一歩踏み出して行きましょう。今回紹介するのは此方」
「ゴウガァ……!!」
「ゲッコウガです」
| ・おおっゲッコウガ!! ・アイエエエエ!!ニンジャニンジャナンデ!!? ・誰じゃ!? ・俺じゃ!! ・グレニンジャ!! ・何この流れ。 ・つうか、黒くね? ・あれ、確かに黒い……? ・日焼け? ・真っ黒を日焼けとは言わねぇよ!!? |
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「ゲッコウガは水と悪の複合タイプです。矢張り特徴と言えばマフラーのように巻いているこの長い舌ですね。この舌は空気の流れを感じ取るセンサーとしての役割を果たします、そしていざという時はこれを解いて自由自在に動かせるワイヤーのように使います。あっついでに色違いです」
| ・ついでみたいに言うなよ!!? ・いや実際についで感覚で言ってる。 ・何この人……。 ・ナンジャモ:流石にこれだけ色違いいると羨ましい……あ、あの電気タイプとかいる? ・ナンジャモが狙っておられるぞ!! ・ナモ公がいます!! ・駄目だ!! ・ナンジャモ:それどういう意味だぁ!!? |
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「そして最大の特徴といえば身体の各部から水を金属並に硬化させる性質を持つ粘液を分泌している事です。これによって得意技である水手裏剣や水の苦無などを生み出したりします」
| ・あっあれってマジで水だったんだ。 ・サトシさんのゲッコウガも居合切りは苦無でやってたな。 ・じゃああれ実質タイプ一致なん? ・ど、如何なんだろう……? ・分からない。 |
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「さてこれほどまでに精悍な出で立ちと勇ましい戦いをする事が出来るゲッコウガですが、その性格は平和的で基本的に無駄な争いを好みません。戦いの時以外はボンヤリとしている事も多いですね、私のゲッコウガはそういう所は余り見せてくれませんが」
| ・なんか、意外だな。 ・サトシさんのゲッコウガなんて鬼神みたいな戦い方するのにな ・メガジュカインという二重の意味で辛い相手に勝ってるのにな。 ・マジであれ何で勝てるんだよ、水技4分の1だぞ。 ・しかも水手裏剣がフィニッシュブロー。 ・コレガワカラナイ ・分からんのかこの戯けが |
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「さて、ゲッコウガの特性は激流。そして私のゲッコウガの特性こと、夢特性は変幻自在です」
| ・変幻自在? ・なんか忍者っぽくてカッコいいな!! ・でも名前からはどんなのかは全然だな。 ・たまにあるよな、全然分からないの ・筋金入りとか意味分かんねぇよ ・それもマジで分からないよ。 |
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「変幻自在は技を繰り出す直前に放つ技と同じタイプになるという物です。例えばゲッコウガが冷凍ビームを撃てば氷タイプに、燕返しを撃てば飛行タイプにもなります」
| ・はああああああああああ!!!? ・タイプ変わるとかそんなのあり!!? ・嘘だろそんなのどうやって対処したらいいんだよ!!? ・グリーンだよ、じゃなくて無理ーんだよ!! ・マジで無理!! |
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「と言っても、この特性はバトルフィールドに出てから一回しか機能しません。二度目の技を撃ってもタイプは変わりません、訓練を積みさえすれば何度も変更は出来ますが容易い道ではないですね、同じ効果の特性としてリベロという物がありますね」
| ・あ~……それならなんとか……。 ・でも熟練のゲッコウガはタイプ変えまくるんでしょ? ・キッツぅ…… ・リベロってなんだ? ・自由って意味だったと思う、スポーツで攻撃と防御どっちもするプレイヤー、な筈。 ・んじゃスポーツポケモン? ・エースバーンあたりかな、ぱっと思いつくのは。 |
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「ゲッコウガは攻撃と特攻のバランスが良い上に素早さもありますので高速二刀流アタッカーというのが一番似合うでしょうね。タイプの範囲も広いですが、変幻自在の場合には単純なサブウェポンではなくメインにも変化するのが注目所です。タイプを変更した後は蜻蛉帰りで他のポケモンと交代、そこで再び再度発動可能にして戦うという選択肢もあります」
| ・そうなると変幻自在って扱いがかなり難しい? ・一発限りだと何処で繰り出すかも重要になりそうだなぁ…… ・熟練さえすればそれを気にせずに行けるって言ってもなぁ…… ・基本は一発限りと思うべきか。でも組み合わせで何度もいけるのか。 ・相性不利に一発入れて戻るのが良いかもな。 |
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「特殊では草結び、ヘドロウェーブ、神通力、冷凍ビーム。物理ではダストシュート、けたぐり、蜻蛉帰り、岩石封じ、アクロバット、影打ち、穴を掘る。激流だとしてもこのゲッコウガの技範囲の広さは魅力の塊です。水と悪というタイプの通りは非常にいいですしこの二つだけでも安定したアタッカーとしても通用します、そこに広い範囲の技が加わるとなると頼りになりますからね」
| ・うわ想像以上に広い。 ・これだけのタイプに変わると考えると末恐ろしいな……。 ・激流だとしてもこの範囲は魅力的だなぁ……。 ・水と悪って、マジで通り良いんだな今調べて分かった。 ・あれ、めちゃ強いじゃん。 |
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「これに加えて忍者らしく毒びしやまきびし、挑発や身代わり、煙幕に黒い霧、そして忍者の見せ場である影分身も使えます。忍者らしく相手を翻弄する戦い方を得意とするのがゲッコウガです」
| ・うおおおっ……つ、使いたい。 ・サトシさんのゲッコウガの事もあるから使いてぇ……。 ・ホントそれな ・マジであのゲッコウガ何なんだろうな。 ・サトシゲッコウガって言われたっけ? ・それ略称じゃね? |
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「文字通り敵に本性を悟らせずに一撃を加え闇に消えるゲッコウガ、如何でしょうか」
そんな所で配信を切る。雑談枠もやって欲しいという声もあるが、やってたら他の事もやりたくなるだろうから自重する事にしている。そんな事を考えている間もずっと直立不動のまま腕組みで待機しているゲッコウガ。静かに命令を待つ忍びそのものだ。
「お疲れさん、もういいぞ」
「ゴウガ……」
低い声で頷きながら瞬間的に姿が消える。基本的にゲッコウガは自分が呼ぶ事が無ければ姿を現さない。オノノクスと並び立つ程に自分に忠実でストイックな性格、思えば出会いもオノノクスのそれとそっくりだった。
「ゲッコウガ、何時も有難うな」
その言葉に頭を下げる。感謝するのは自分の方だ、同胞とは身体の色が違う、それだけの理由で追い回され、牢屋に入れられた自分をあの人は救い出してくれた。だが当時の自分は誰も信用出来ずにいた為に何度も暴力を振るってしまった。なのにあの人は許してくれた、抱きしめてくれた上、夜になれば震える自分と一緒に寝てくれた……感謝の感情しか湧かない。
「ゴウガッ……」
故に決めた。自分はあの人を護る、注いでくれた思いの分、いやそれ以上に護る。何があっても、主を御守すると誓った。今日も夜闇に紛れて邸宅に迫ろうとする不届き者へと水手裏剣を振るいながらも友であるロトムでそれらを撮影、ジュンサーへと流す。
「ゴウガ……!!」
主と奥方様の眠りを妨げはしない、全て静かに行う。そして朝になれば―――
「おはようゲッコウガ、早起きだな相変わらず……」
「ルルルガ!!」
「はいはい分かってるヘルガー……んじゃ後でな」
「ゴウガ……」
ヘルガーと共に朝の散歩に出かける主を見送る。それが一日の終わりであり、始まりなのだ。