週刊エンジョイポケモン放送局   作:魔女っ子アルト姫

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エンジョイ:ビルドフェアリーオーロンゲ

「ハァハァハァ……グぁ……ぁぁぁぁっ!!!」

 

筆に魂を乗せる、描く色彩は世界となって宇宙を彩る。最早アトリエに木霊するのは声というよりも咆哮のそれに近い。キャンパスに坐する神へと色を与える、絵を描く者にとってそれは特別な意味ではなく、当然のルーティンである筈のそれが命懸けの物へと変貌する。そこに描かれる神……それを本当の神として生誕させるが為に命を削っていると言われても納得してしまうだろう。

 

「……俺、何やってんだろうな……なんでこんなに苦しい絵、描いてんだろうなぁ……なんで、絵を描くだけでこんなに疲れるんだろうなぁ……」

 

このキャンバスに向けて筆を取る度にそんな事を口にしながらも動かす手は止まらない。止められない、苦しいと思っている筈なのにこの絵を完成させたいという思いが自分を突き動かしている。神を完全な形で表現したい、そんな思いと共に湧き上がる衝動を止める事が出来ない。

 

「後、少しで……完成、だな……」

 

本当に後一歩の所まで来る事が出来た、本当に後一歩……画竜点睛という言葉がある。事を完成するために最後に加える大切な仕上げという意味合いの言葉、残すは―――二柱の神の心臓部と言っても過言ではない宝玉のみ。

 

「……これで動き出したらギャグだな」

 

瞳を入れてしまったら竜は生きて天に昇ってしまう、というのが元とされている。この神にとって宝玉はそれと同義、象徴なのだ。最終的に居なくなってもいい、だけど……その時まではそこにいて欲しいと不思議と願ってしまっている自分がいて笑えて来る……普段通りにキャンパスを確りとしまってアトリエを出る。

 

「……また夜が明けちまったなぁ……」

 

この絵を描いている時は時間の感覚がまるで無くなっている、没頭しているのとは違う。文字通り、絵を描く事に取り込まれているかのような……そんな感触がある。もしもこの感覚を普段の仕事でも発揮できたらどんな絵に仕上げられるのだろうかと思わずにはいられない……。

 

「ケェン」

「ダイケンキ、おはよう」

「……ケン」

 

少し顔を見つめてくると呆れたような声を出しながらもタオルをよく濡らした物を顔へとぶつけてきた。これで顔を拭えという事だろう、余程酷い顔をしていたのだろう。夜の見張りをしてくれたゲッコウガなどが凄い顔でこっちを見ている。

 

「あと少しなんだよ、あと少し……そうなったらお前も祝ってくれるだろ?」

「ケンキ」

 

何当たり前の事言ってんだ、と答えるダイケンキには感謝しかない。自分には勿体無いほどによく出来た相棒だ。さてと……顔を拭いた事だし朝食でも作るとしよう……。

 

 

「皆さんこんにちは、今日もポケモン育ててますか?まだまだな貴方もこれからの貴方も、此処をきっかけに一歩踏み出して行きましょう。今回紹介するのは此方」

「……ゲン」

「オーロンゲです」

 

・オ、オーロンゲだ!!

・ガラルのアイドルマリィの相棒オーロンゲだ!!

・土下座に定評があるオーロンゲだ!!

・土下座と思わせて攻撃する事に定評があるオーロンゲだ!!

・そう書くともう最悪にしか聞こえないからひでぇ

・だけど大体あってるという事実。

 

「オーロンゲは悪とフェアリーの複合タイプ。全身を覆っているのは髪の毛で、進化によって全身に巻き付く程に伸びた物です。実はこう見えても髪の毛の下は結構細身な身体となっています」

 

・あっそうなんだ。

・というかフェアリーなのにこいつビルドアップポケモンなんだよな。

・なにその格闘タイプが背負うべき肩書。

・実際そう思った人は多い。

・フェアリーにしては人相も悪いし。

 

「と言っても実際にビルドアップポケモンの分類に偽りない力を秘めています。この髪は筋繊維のような役割をする事が可能で、見た目を大きくするだけではなく実際に強い力を発揮出来ます。どの位凄いかと言えばカイリキーをねじ伏せる程のパワーを出せます。更に髪は解いて触手のように使う事も可能なのでかなり万能です」

 

・いやカイリキーに勝っちゃダメだろ!?

・それ、タイプ込みですよね、素の筋力だとカイリキーの方が上ですよね!?

・そう信じたい……。

・う~ん……実際どうなんだろ。

・どっちなんだい!?

 

「流石にその辺りは個体差によって違いが出てしまいますが、少なくとも私のオーロンゲはガラルのジムリーダーであるサイトウさんのカイリキーと真っ向から勝負して勝ってますね」

「……ゲン」

 

・うわあああああカイリキー!!?

・怪力ポケモンがビルドアップポケモンに負けたぁ!!

・そう書かれるとややこしい……。

・カイリキーからしたら何て複雑な……

・タ、タイプ相性もあるから……。

・尚悪タイプ複合だから相性普通な模様。

 

「因みに一般的にオーロンゲは進化しても悪戯好きな性格なのは変わらず、くだらない悪さと悪戯が好きな模様です。大きくなっても変わらない悪ガキとも言われる事もあります。まあ私のオーロンゲは寧ろ悪戯とか大嫌いなタイプですが」

「……オン」

 

・なにそれのアイデンティティの放棄。

・たまにいるよな、主流な流れに敢えて逆らう系な奴。

・中二病かな?

・ポケモンの場合ってなんていうの?

・さあ……?

 

「オーロンゲの特性は悪戯心にお見通し、そして夢特性は悪い手癖です。前述二つは既に紹介済みですので悪い手癖について……これは直接攻撃を仕掛けてきたポケモンさんの道具を奪うという特性ですね」

 

・うわ悪戯心持ち……

・あ~……これは悪戯心が優先、かな?

・面白そうな特性ではあるけど、攻撃受けないとダメなのか……

・それはキツい。

・何だったらお見通しの方がまだ需要ありそう。

 

「実際オーロンゲは悪戯心が安定という意見が大多数ですね、私のオーロンゲもそうですし。加えて、オーロンゲ自体が悪タイプでもありますので相手の悪戯心を無効化出来るというのも大きな利点ですね」

 

・悪タイプ相手だとダメなんだっけ?

・そう、悪戯心唯一の弱点。

・そうなるとオーロンゲミラーって不毛?

・実際変化技が使えなくなるから依存する技構成だと酷い事になる。

・泥仕合確定。

 

「悪戯心に目が向きがちですけど、攻撃面がかなり優秀なポケモンさんでもありますのでそちらを活用するのもいいでしょうね。壁を張りながらもその攻撃力を存分に生かすという選択肢もありなのです。じゃれつく、イカサマ、不意打ち、アームハンマーに瓦割りにドレインパンチ、三色パンチ、地団駄、猫騙しとかなり豊富です。加えてソウルクラッシュという技は相手の特攻を下げる事が出来ますので役割を多くこなせます」

 

・こいつも多いなぁ……!!

・クレッフィと同じような立ち回りが出来るのか……

・あいつもあいつで凄かった……

・ああ凄かったな……ナンジャモの泣き顔。失礼ながら、フフフッ勃◯、しちゃいましてね

・変態だぁぁぁぁぁ!!!!

 

「相手の攻撃と特攻を下げつつ交代できる捨て台詞、挑発に両壁、電磁波にトリックに身代わりと変化技主体でも十二分に立ち回る事が可能です。こうなるときついのは同じオーロンゲ対面になりますね。相手の出方を伺いながらどんな技を通すのかがトレーナーの腕の見せ所ですね」

 

・カ、考える事が多い……!!

・そういえば、ガラル地方でマリィとオーロンゲミラーで激戦してたトレーナー居たような……

・あれ、そういえばあのトレーナーもラビって名前じゃ……

・……なあ、もしかして各地方のリーグ映像漁れば主いんじゃね?

・探してみるか、よし次スレのネタはこれだな。

 

 

配信を切りつつながらも好い加減に自分のあれこれが本格的にバレつつあるのか……と思う一方でもうあまり気にする気にもなれなかった。別にバレた所で困る事でもない、その時はその時だし……そもそもチャンピオンズリーグにまで進んだ段階で諦めているようなもんだ。敢えて言及していないだけで自分は以前から目立つ存在ではあったのだから。

 

「オーロンゲ、お前は……いやいいや、気儘にやってくれ」

 

 

言われるがままにオーロンゲは好き勝手に動く事を決めている。そもそも自分は別に悪戯やらが嫌いな訳じゃない、だがレベルが低く幼稚で愚かな事で馬鹿笑いしている同族が嫌いなだけ、敢えてその場の空気を乱して、空気を悪くするのが嫌なだけ。本来の自分は―――

 

「ゲゲゲゲゲッ……!!」

 

先手先手で相手の動きを妨害し、苛立ち交じりに此方のペースを乱そうとした相手が最後には成す術もなく情けなく力を削がれながらも必死な抵抗をする様を見る事が大好きなだけなのだから。久しぶりにその姿も見たくなってきた……今度、ラビにバトルに連れて行って欲しいと交渉するとしよう。

 

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