週刊エンジョイポケモン放送局   作:魔女っ子アルト姫

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ライジング:カキツバタ

「……オイラさ、なんつうかどうしたらいいのかシンプルに分かんなくなったんだよなぁ……」

 

カキツバタが吐き出したのはこれまで内に秘め続けてきたもの、祖父に言う事は出来ずにいた物。シャガの後継者として努力していた、才能は十分にあったしそれはジムリーダーの孫に不足ない物だった。ドラゴンタイプ使いとしての訓練も欠かした事はなかった、ボーマンダとサザンドラ。この二匹の背に乗り空を飛べた時、ドラゴン使いとしてその実力は揺るがないものになると言われ努力した。

 

「これでも頑張ってたんだよな、サザンドラは無理だったけどボーマンダの背中に乗る事は出来てたよ。まあ空は飛べなかったけどさ」

「いやそれ普通にやべぇ事だぞ、俺達の親父とお袋がサザンドラとボーマンダ持ってるけどあいつらの背中に乗るってマジで認められないと無理なんだぞ」

「さっすが先生たちのご両親だねぇぃ……おっと悪い逸れた、だからまあさ爺ちゃんからもよくやったって褒められたんだよ、何れ乗れるようになるって」

 

そんな日を夢見ていた、だが夢に見たのはそれではなく祖父に褒めて貰う事だったのかもしれない。それを自覚したのは此処に来てからだった。ある日、シャガが少女を連れてきた。それがアイリスだった。才能ある少女、それを伸ばすべきだという祖父の意見は分かるし自分と競わせる意図もあった、自分も負けないように努力した、したが―――

 

『流石アイリスだ!!』

 

アイリスのそれは自分を遥かに上回っていたのだ。自分はドラゴンタイプの事が好きだったし好かれているという自覚がある、だがアイリスは愛され、愛していたのだ。ボーマンダどころかサザンドラすら容易に乗りこなし空を舞う、まるで龍の姫君、アイリスを祖父が明るく褒め称える事にどうしようもなく、嫉妬した。

 

「馬鹿だったんだよなぁオイラ。ンでそっから余裕を完全に無くしまったんだ。だからボーマンダも乗せてくれなくなった。いや分かってんだよ、あの時のオイラが乗っても怪我するだけだからって乗せなかったんだ。爺ちゃんにも慰められたけど……オイラ、ムキになったっつうかバトルをしたんだよアイリスと……それで―――負けたんだよ」

 

危うい心は驚異的な力を持つドラゴンタイプを相手にするには致命的な事になりかねないのは分かる、だけどその時の自分は分からなかった。ボーマンダが自分を気遣ってくれた事も、そして―――アイリスとのバトルで自分は敗北した。その時にシャガは言った。

 

『カキツバタ、如何して負けたか分かるか。お前はドラゴンポケモンを使おうとしたのだ、共に戦おうとせずにな。アイリスのように共に戦う事が正しいのだ……だが次はお前もそう出来る筈だ、今までそうして来たんだ、大丈夫だ』

 

でもその時にはもう自分には聞こえていなかったんだろう、シャガだって自分の事を精一杯にフォローしてくれていたのに耳に入らなかった。そして―――自分は祖父の勧めでこの学園に来たが……きっと見放して欲しかったんだと思う。

 

「爺ちゃんがオイラに期待してくれるんのは分かる、だけどどうしてもアイリスへの嫉妬やら焦りやらオイラ自身への焦燥感とか不甲斐なさとかを消せなぃんだよねぇ……あの日の声が、どうしても消えねぇ」

 

夜、トイレに起きて自室に戻る途中でシャガの部屋の前を通った時の声。

 

『アイリスはこの前簡単に出来ていた、だが如何してカキツバタは……』

 

ポケモン専門学校を開講した身として如何したらカキツバタの才能を引き出せてあげられるかを考えている物……の筈だがどうしてもその言葉を忘れられなかった。まるで孫の出来の悪さに嘆いている、そんな風に当時は思ってしまった。

 

「それで3留か」

「馬鹿みたいだろぃ?実際馬鹿だと思ってるよ……なぁラビさん、オイラはあの時どうするべきだったんかね、腐らずに努力してたらどうにかなってたんかなぁ……」

 

どうしようもない気持ちを無理矢理言葉に変えてラビへとぶつけてみる、それは過去と今の両方を求めている。ラビはどう答えるのかラバイも気になった。ラビは少しだけ考えて言った。

 

「如何だろうな……デケェ才能の前に努力が潰されるなんてよくある事だ、努力は絶対に報われる事はない。才能だけで世界を取っちまう奴だって存在する」

「そう、だよなぁ……」

 

実際アイリスはイッシュ地方のチャンピオンだ、途轍もない才能が遺憾ない程に発揮された結果が―――「だけどな」その言葉に思わず顔が上がる。

 

「えっ?」

「成功した者は須らく努力している、お前だって努力はしてるんだろ。シャガさんはそれを知ってる、アイリスの凄い所はお前より一歩がデカい、お前の凄い所はアイリスよりも足跡が多い所だ」

「それって、凄い事かね?」

「間違いなく」

 

自分が凄いなんて考えた事もなかったし言われて胸が熱くなる事もあの時を境になかった筈なのに無性に嬉しくなってきた。なんでなんだろうか。

 

「それだけ踏みしめる経験をしてる、つまり失敗しても直ぐに立ち直れるって事だ。立ち直れるってのは結構凄い事なんだぞ」

「凄い事、か……」

 

そんな風に考えた事なんてなかった、あの失敗だらけの経験が凄い事か……まあ立ち直りが早いというか痛みやら辛さを受け流すのばかり上手くなった自覚はあるが……そうか自分が凄いのか。

 

「凄いねぇ……そう煽てられるとアローラのナッシーを登っちまうぜオイラ」

「おっそうしてみるか?」

「みるかねぇ……だけどまああんがとねラビさん、気が楽なったぜぃ」

 

一先ず、ずっと抱えて来たものを吐き出せてすっきりしたような気はした。心なしか軽くなったような気がする。それに思い出した事もあった……サザンドラを見て思ったのだ、サザンドラのトレーナーになりたいと純粋に思っていたあの頃の自分を。

 

「ラバイ先生」

「何だ?」

「あ~……その、えっと……授業サボっちまってすんませんでした……リーグ部のあれこれ、とかもやらないで」

「謝罪する気があるならせめて俺の授業位は出ろよ、罰として手本として俺とバトルだ」

「ラバイ先生の砂パはレベ以上に手強いからねぇ―――本気で勝ちに行くとするぜぃ」

 

そう言いながらカキツバタは上へと伸びていた髪へ無造作に指を突っ込んで下ろした。目元を隠しながらもその奥からは何処かギラついた瞳が見え隠れしている。

 

「一先ずオイラ決めたぜ」

「何を?」

「本気でチャンピオンになりに行くぜ、ラビさんアンタらの弟妹に勝ってな」

「舐めるなよ小僧、あいつらがそう簡単に負けるかよ」

「下してやるさ―――これがオイラの滝登りさ」

 

そう笑いながら少し駆け足に出て行った。今まで見た事のないカキツバタの瞳にラバイは驚きを隠せなかったがそれ以上の楽しみが出来てしまった。あの昼行灯が本気になったのだ、これは大幅なランキングの変動もあり得る。

 

「あのカキツバタをやる気にするなんて、兄さんも教師に向いてるんじゃないか?」

「たった一度の事だけで語られてもなぁ……俺はイラストレーターで十分だ。顧客もいるし」

「そうかぃ、ってカキツバタの移っちまったよ」

 

それから数日後、ブルベリーグランキングの変動が起こった。それは恒例行事であるレビとレベの物ではなく、カキツバタがスグリとロルを下してランキング3位になったのだ。

 

「さあ登ってみようかっ天辺って奴によぃ!!」

「ジュラァァァ!!!」「ギャアアアアアアア!!!」

 

その日から、カキツバタの手持ちにギャラドスが加わったという。

 

 

 

「お祝いに私の大好きなドラゴンを紹介しますね」

「おっマジかい?そりゃ嬉しいねぇ」

 

 

「皆さんこんにちは、今日もポケモン育ててますか?まだまだな貴方もこれからの貴方も、此処をきっかけに一歩踏み出して行きましょう。今回紹介するのは此方」

「グガァァァァ!!!」

「クリムガンです」

「―――なんか意外なチョイスで吃驚だよぃ」




カキツバタの事書いてたら此処まで膨れ上がった……一応曇らせとかは自重したつもりです……。
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