「すげぇっ!!俺色んな所旅して来たけどこんなの初めて見たかもしれません!!」
「ピィカァ~……」
遂に足を踏み入れた大洞窟、その全貌が明らかになった時にサトシの言葉が如何に大きな感動を受けているのかを良く表現してくれていた。これまで多くの旅をしてきたトレーナーに此処までいわせる圧倒的な大自然、それが作り出した神秘的且つ幻想的な光景は見た者に絶対的な感動を植え付ける。
「確かに凄いわ……なんて幻想的なのかしら……写真を撮ってしまいたくなる光景ね、撮らないけど」
「……良い奴、多い」
レッドが視線を向ける先にはキョジオーンやキラフロル、ノココッチにクエスパトラ、ガバイトなどのポケモンが多くみられる。通常の野生で見られる個体よりも何処か大きく逞しく映っているのかレッドの声色は弾んでいるのが分かる。
「ここが、エリアゼロの最奥部……!!此処の最も深い所にあるのだね、ゼロラボが!!」
「ありますけど」
「ここを越えるのも中々にきついのも事実ですよ、ほら」
時折発生している野生同士のバトル。今は夜のルガルガンとジヘッドがバトルをしているが、通常のそれよりもずっと荒々しく狂暴な戦いが繰り広げられている上にパラドックスポケモンもうろついている。これらを突破してゼロラボに辿り着く事は容易ではない。
「ムムムッ……見たこともないポケモンが……あれはムウマ、か?だが妙に大きいし一部が妙に長いな……あれはデリバード?それにしては―――ラ、ラビ私の見間違いか?い、今首が……!!?」
「帰るんだったら喜んで送りますけど?」
「い、いや此処まで来ておいて手ぶらでは帰れないさ!!必ず何か見つけて帰らなければ態々護衛してくださってる皆さんに申し訳が立たん!!」
そう思ってくれるのは嬉しいけど、少しでも自分に申し訳ないと思うなら早く帰ろうと言い出しそうになったラビを止めたのは―――
「リザードン火炎放射!!」
「グオオオオオオオオッ!!!」
首が伸びるデリバードこと、テツノツツミが放つハイドロポンプを火炎放射で押し返すレッドのリザードンであった。相性で言えば最悪の一言なのにハイドロポンプと拮抗し、僅かに押されたところで一気に押し返してテツノツツミを逆に黒焦げにしてしまったリザードンの炎。それを見てリザードンは吐き捨てるように小さい炎を出しながらも瞳の奥の闘志を更に燃え上がらせてしまった。
「レッドさんのリザードンの火炎放射を押しましたよ今!!あいつ、相当に特攻高いですよ!!」
「そんなのがウジャウジャいると思うとのんびり感動している暇なんてないわね、ガブリアス!!」
「ガァァアアアブッ!!」
「ウオノラゴン、君に決めた!!」
「ウラララララ!!!」
「よし、ブライア先生ミライドンに乗ってください!!」
「わ、分かった!!」
「ラビさんこっちに!!」
「分かりました、一気に突破しますよ!!」
ブライアを連れている以上、グダグダとやっている暇はない。機動力があるポケモンを出してそれに乗って駆け抜ける作戦にした。
「俺が一番先に行きます!!このまま道なりに下ればいいんですよねラビさん!!」
「ええ、そのままです!!」
「よし、ウオノラゴンダッシュだ!!」
「ウ~ラァァァ!!!」
サトシに頼られた事で益々やる気になったウオノラゴンは凄い速度で走りだした、それはミライドンとコライドンのダッシュにすら匹敵しそうなほどの猛スピード。寧ろ此方が置いていかれない様に全速で走って貰う。
「ガブリアス、私達は後方を警戒よ!!」
「ガァブッ!!」
「リザードン、俺達は中央」
「グオオオオオオオオッ!!」
「いやというか速っ!?ウオノラゴンはっや!!?」
「ってちょっと先行き過ぎって来てますサトシさん!?」
爆速で駆け抜けていくウオノラゴン、その速度とウオノラゴンの叫び声は大洞窟に響き渡っているので当然注意を引く。縄張りを侵されたと解釈されたのかウオノラゴンの真正面から今度はドンファンなどではなくイダイナキバが猛スピードで突進してきた。
「ファァァアアアアアドッッ!!!」
「エラ噛みだ、正面突破ぁ!!」
「ウララァァァァァァ!!!」
なんとウオノラゴンはイダイナキバと正面衝突、ではなくイダイナキバの突進を完全に上回るパワーを見せ付けながら吹き飛ばしてみせた。流石はレッドのフシギバナのハードプラントを自慢の顎で粉砕した上で倒した実力者だ。
「ガブリアス、瓦割りよ!!」「リザードン、鋼の翼!!」
「ガアアブァ!!!」「グオオオオンッ!!!」
頭上から迫ってきたのはなんとトドロクツキとテツノブジン。まさか過ぎる強襲だが、それに素早くシロナとレッドは反応した。しかも二人は初見である筈のパラドックスポケモンの弱点を的確に突いているのだから驚くしかない。これがチャンピオンか……と素直に感心してしまうアオイとハルトだが―――
「ダイケンキ、シェルブレード!!」
「ケェェンキッ!!!」
意識が反れてしまったアオイとハルトの隙を突くかのように迫ってきたテツノコウベとサケブシッポ、それを許すかと言わんばかりに飛び出したダイケンキは一刀で二匹を仕留めてみせた。
「二人とも油断厳禁!!」
「ご、ごめんなさい!!?」
「もうしません!!」
「も、もう少しゆっくり行ってくれぇぇぇぇぇ!!!?」
「もう直ぐゼロラボ、そこまで我慢なさい!!」
「ひえええええええええ!!!?」
ブライアの悲鳴が木霊しながらも駆け下りていく一同、そして遂に一際巨大な結晶に取り込まれている施設、ゼロラボの前にまで到達した時―――それはまるで番人であるかのように待ち構えていた。同時に力を解放し、周囲が一気に明るく、地面には無数の電気が流れるフィールドが展開されていった。
「―――やっぱり、こいつらだ」
レッドは嬉しそうに口角を持ち上げながら言った。大洞窟に入る前に感じた気配は間違いなくこの二匹の物だった。それらはゼロラボを守ろうとしているのか、それとも強者の波動を発している男へ戦いを挑もうとしているのか、それとも一度は自分達を退けた同族へのリベンジなのかは定かではない。明確なのは楽園の守護竜たるコライドン、ミライドンが立ち塞がっている事だ。
「こ、これは彼らの同族か……?」
ブライアは余りのスピードに酔っているのか気分が悪そうにしながらも必死に状況を観察しているが、それよりも前に立った二人が居た。レッドとシロナだった。
「こいつの相手は俺、譲らないから」
「それなら片方は私が相手するわ、私も初めて見るポケモンとのバトルはしたいもの」
このエリアゼロにおいて紛れもない強者であると見抜いたレッドにとってこれを逃すなんて事は有りえない。リザードンと共に前へと出る、それに続くようにシロナもガブリアスと共に出た。彼女も彼女ので強いポケモンと戦いという思いはあるのだ。
「ギャアアアアアアアアアアアス!!」「アギャアアアアアアアッス!!!」
「リザードン、行くぞ……!!」「舞いなさいガブリアス!!」