「パ~ゴ?」
「これがテラパゴス……?」
「あらっ結構可愛いじゃない」
「……不思議なポケモン」
長年の目覚めから覚醒したであろうテラパゴスは周囲の状況を確認するかのようにキョロキョロと視線を巡らせている。見た目は抱えられそうなほどに小さな亀のポケモン、これがゼロの秘宝と言われる程の存在なのかと言われたら首を傾げてしまう。
「おおっおおおおおっ!!?それが、それがテラパゴス!!?ああっもう少し近くで、あああっ何でしまうんだ!?済まない悪かった!!落ち着くからお願いだから閉めないで、ああっ~!!!」
念願だったテラパゴスをこの目にしてテンションが上がるブライアだが、デスカーンはこのテンションに見覚えがある。自分たちが住んでいた古代遺跡の内部を探検していた際のテンション、下手したらどえらい事になるかもしれないので確りと確保しておく事にしたらしい。
「ナイスですデスカーンさん、それはそこで確りと確保しておいてください。くれぐれも外に出さないように」
「デス」
「そんな~!!?」
最初からこうしておくべきだっただろうか……という後悔が過るがそれを振り解いて、テラパゴスを見る。見れば見る程に可愛いポケモンにしか見えない。
「か、可愛いっ……!!」
「これが本当にゼロの秘宝とか言われる存在なんですかね……?」
「まあンな事言ったら可愛い癖にえげつない能力を秘めてる存在なんてポケモンには五万といますからね……ねぇっサトシさん」
「えっ?ああまあ、俺の場合だと……そうだな、ジラーチっていう1000年に一度目覚めるポケモンは願いを叶える力がありましたし、その力でとんでもない事になったりもしましたから」
サトシの口から言われると説得力がエグいなぁ……とラビは思う。そう思いつつもテラパゴスに手を差し出すと此方へと歩いてきて掌を舐めて来る。
「パ~ゴ」
「お腹が空いてるのかもしれませんね……えっとおやつ用のマゴの実なら丁度いいかな?」
ちょっとしたおやつにも最適なマゴの実をテラパゴスへと差し出してみる、少し警戒しながら匂いを嗅ぎ続ける。そんなテラパゴスに同じマゴの実を齧ってみせる。
「ほら、大丈夫ですよ」
「……パゴ(シャクシャク……)パァアァァ!!テラア!!」
「気に入ったみたいですね」
マゴの実を少しずつ千切るようにして食べるテラパゴスにシロナとアオイは母性を刺激されているのか微笑ましい笑みを浮かべている。確かに愛らしい姿だ。
「だけどこいつ、此処で静かに眠ってたのを起こしちゃった事になりませんかね。そうなったら俺達悪い事した事になりません?」
「それは多分ないと思うわ。あの時自然に大型結晶から落ちたように見えたし、その時に周囲からエネルギーを集めたようにも感じたわ。だから休眠から目覚めるタイミングでもあったんだと思うの」
元気にマゴの実を食べるテラパゴスを見守りながらも見解を語るシロナ、この辺りその物がテラパゴスが生み出したフィールドで自身を守る壁だけではなく、目覚める為のエネルギーを集める役目もしている可能性は高い。
「こいつ、如何する?」
「如何するも何も……私はそのテラパゴスを発見する為に此処まで来たのですが?!」
今回の発起人たるブライアとしてはこのままテラパゴスを放置する事など言語道断。是非とも研究したいの一言に尽きる訳なのだが……。
「じゃあこの子を誰かがゲットするという事でいいんですかね?」
「そうして貰えると有難い!!」
ブライアの意見は放置するとして……テラパゴスをこのまま放置するのも良い事とは思えないので保護という意味合いでのゲットは有りという事になった。だが問題は誰がゲットするかという事なのだが……
「ならラビさんがゲットすればいいんじゃないですか?」
「えっ俺?」
サトシの言葉に思わず素で反応してしまった。
「だってテラパゴス懐いてるみたいですし」
「パァ~ゴッパゴパゴ」
「ああっもっとね、はいはい……単に餌付けしてしまっただけのような気もしますが」
マゴの実のお代わりを所望して来るので追加を上げつつもそう答える。懐いているというよりも餌付けしてしまっただけな気がする、と言ってもこの中で断トツでテラパゴスが触れあっている人間である事は確か。
「わ、私としてもラビがゲットに賛成する!!そうしてくれると私も研究が助かる!!」
「貴方の意見はこの際どうでもいいです、う~ん……」
「パゴッ?」
悩む自分に首を傾げるテラパゴス、如何するべきなのだろうか……自分としても興味深いのは確かなのだが……
「サトシさんは良いんですか?この場合発見したのは貴方みたいなもんですよ?」
「いや俺はいいですよ。それにテラパゴスは多分この地方に居た方がいいでしょ?俺はその内また旅に出ちゃいますし、それを考えるとこの地方に身を置く人がゲットした方がいいですよ」
「それならアオイさんやハルト君の方が」
「う~ん……してみたくはありますけど、ラビさんから引きはがすのもなんか忍びないですし」
「同じくです、というか俺達は俺達でブルベリーグ攻略に集中したいですしまだまだ学園に留学するつもりですしそれを考えるとラビさんの方がいいですよ」
悉く外されてしまった、ならばここはテラパゴス本人に確かめてみるしかないだろう。
「貴方は如何したいですか?私と来たいですか?」
「パゴッ?テラァパゴ!!」
「行きたい、ですって」
「何でわかるんですかサトシさん」
「旅の経験じゃ負けませんから」
それを出されたら誰も勝てない、まあ本人がそう言っているなら致し方ない……と思って折角だからと懐からあるボールを取り出した。
「あっそれウルトラボールじゃないですか、アローラにも行った事あるんですね」
「ええ、そこで記念にね」
取り出したウルトラホールから出現したポケモンを捕獲する際に使われるウルトラボール。アローラを旅した際に記念に贈与されたものでこれが最後の一個、オシャボ勢ではないが折角だからこのボールで捕まえる事にしようと思ったのだ。
「それじゃあはいっ」
「パゴッ」
テラパゴスはニコやかに笑いながらボールをタッチして中へと入っていった。ボールは数回揺れるとゲット音が鳴り響いた。
「テラパゴス、ゲット。これで調査も終わりですかね」
「ウムッ!!って待ってくれまだ結晶の採取が終わってない!!デスカーン出してくれ、採取は私の手でやりたいのだ!!ってああっ雑に結晶を採っちゃだめだって!!って棺の中に仕舞わないでくれ私がいるんだって!?絶対ワザとやってるだろ!!?」
「ガガガガ~ガガガガッ!!」
「ちょっとラビ止めてくれ!!」
「さてと、テラパゴス出ておいで。これからよろしくお願いしますね」
「パァゴ!!」
「無視しないでくれ!!?」