「―――違う!!!これも違う、ぬぅぅぅぅっ……後一歩、後一歩な気がするんだが違う、これでは気品はあれど荒々しさがまるでなぃ!!!これはアヴァンギャルドではない、ノットアヴァンギャルド!!この色は違う何が足りないんだ深み鮮やかさ繊細さいやいやいやあらゆる物に細心の注意と考えられるだけの技法を凝らした末の物だというの何故それが足りないっ!!!」
「ブルルルルルルルゥゥゥウゥ!!!」
巨大なキャンパスに描かれている黒いレックウザ、だがそれはあくまでコピー。完成一歩手前の絵をコピーして黒のテストショットをしているのだが……やはり違う、何かが違うのだ。ラビもメープルもそれが痛感出来てしまっているからこそ悲痛な叫びをあげてしまっている。
「私からすれば、凄い完成度に思えるんだけど……でもなんか違うって言うのは分かる。色違いのレックウザ見た事ないけど」
「そう、大多数の者はこれを見て満足するがごく一部の者達、超一流と言って過言ではない人の目を感動させるには足りないっ……全てを魅了し、満足させ感動の渦へと至らせる!!それこそが、俺がコルさんから受け継いだアヴァンギャルドの魂!!そこに至らなければ私は作品を出す事は絶対に許せないそれが美学!!!」
呆然としているテラパゴスを抱きつつも困った顔をするサザレ、珍しく熱くなっているラビの姿は如何にも久しぶりに目にする。普段こそこの面を出す事はないが作品が上手くいかなかったりするとコルサの弟子らしくなるらしい。
「ぬぅぅぅぅっ……矢張り黒いレックウザを探すしかないか、だが当てもなく出掛けるなどあり得ないしポケモン達の世話やバカ共を放置する事など出来ないしそうなると誰かに探して―――あっフリードの事完全に忘れてたな」
「忘れちゃってたの!?もう直ぐ来るって話じゃなかったっけ?」
―――ピンポ~ン。
「お~いラビ、俺だフリードだ。いるか~?」
「……やっべ完全に忘れてた」
「ええっ……」
ここ数日は色の調合に熱中してしまっていたからかフリードから此方から訪ねると言った連絡が来ていた事を完全に忘却していた……社会人としてなんてあり得ない事を……と落ち込んでしまっているとテラパゴスが頬を舐めて慰めてくれた。
「有難うなテラパゴス、それと悪いけどボールに戻ってくれるか?一応な」
「パゴ」
「ありがと、後でマゴの実ポフィン沢山作ってやるからな」
テラパゴスに了承を得てウルトラボールへと戻す、フリードならば妙な手を出す事はないとは思っているがそれでも人の口に戸は立てられないから一応だ。一先ず出迎えるとしようと思っていると代わりと言わんばかりにピカチュウが肩に乗ってきた。
「分かった分かった、行こうか」
「ピピピ」
肩にピカチュウを乗せるサトシスタイルで玄関へと向かう、そして扉を開けると―――
「よっ久しぶりだなラビ」
「フリード、また厄介事じゃない事を祈ってたところさ」
「おいおいまだいうか?こいつめ、おっピカチュウ久しぶりだな。ウチのキャップも元気だぞ」
「ピカーチャ、ピピッチュ」
そこにいたフリードは自分の知っているのと変わらずの姿、何処か元気で暢気な姿に肩の力が抜ける。自分のピカチュウとも尻尾とハイタッチをする、ピカチュウの扱いは相変わらず上手い様だ。そしてそんなフリードの後ろでは少年少女が一方では目を輝かせ、一方では呆然と此方を見ていた。
「紹介するぜラビ、ロイにリコ。ライジングボルテッカーズの新しいメンバーだ」
「そうか、初めまして私はラビと言います。しがないイラストレーターをしている者です」
「ロ、ロイです!!あ、あのあのラビさんですよね!!?サトシさんとかレッドさんが出てきた配信のっ!!?」
「まあそんな所です」
「ほ、本物のっ……ラビしゃんっだぁ……きゅぅ」
「っておいおいリコ!!?おい大丈夫か確りしろって!?」
「あぅぅぅぅ……」
「アハハハッそれは大変だったね、まあ今やラビはイラストレーターじゃなくて配信者として凄いメジャーな存在だからね。それがいきなり目の前に現れたらびっくりして倒れちゃうって、はいゆっくり飲むといいよ」
「あ、有難う御座いますぅ……」
倒れてしまった少女リコ。如何やら彼女は自分の配信を毎回チェックしてくれているらしく、加えてかなりの古参でナンジャモとコラボする以前から見てくれていたらしい。
「フリードも久しぶり、キャップ元気?」
「元気さ、一応誘ったんだけど船を見てるから宜しくって言ってたぜ」
「あの子らしいね」
少年ロイと少女リコ、この二人がフリードが率いるライジングボルテッカーズの新メンバー。その顔合わせという訳でもないのだが……折角ファンの二人が会いに来てくれているのだからその辺りも確りと対応しなければ。
「それでフリード、バトルの特訓を頼みたいって言ってたがこの二人の事か?」
「ああそうだ」
「「ええっ!!!?」」
フリードの言葉に驚愕するリコとロイ、一方でキョトンとするフリード。
「まさか特訓の相手ってラビさんなの!!?」
「んっそうだけど、あれ言ってなかったか?」
「聞いてないですよ!!?旧友さんがバトルとポケモンに詳しくて頼りになる位しか聞いてないです!!?」
「フリード……」
「ホント変わらないねぇ君も」
「いやぁ悪い悪い、でもこれで俺が推す理由も分かっただろ?」
二人は文句を言う口を噤んだ。配信で取り上げたポケモンの数は知れず、極稀にバトルの配信を行えばその時に確認できる技量の凄さには目を見張る、ジムリーダーを相手に逆に翻弄、圧倒する事も少なくない。
「黒いレックウザを追う為には強くならないと駄目だからな、特訓する相手もキャップだけじゃ駄目だ。色んなポケモンを持ってるラビは最適だと思ってな」
「黒いレックウザ……その話、本当なんだろうな」
「本当なんですっ!!このボールから出てきたんです!!」
まだ信じ切っていないラビの言葉に強く反応したロイはバッグからボールを取り出して見せた。それは現代のボールとはまた違った装飾が成されているボール。
「初めて見る型……ヒスイのボールとも違うわね」
「……マギアナに似てるな」
「マギ、なんだって?」
「なんでもない、そのボールからレックウザが出て来てそれを追っていると」
「はいそうなんです!!この古のモンスターボールから突然出て来たんです!!」
何とも突拍子の無い話、話ではあるのだが……妙に心が揺れる、旅で培った直感が叫んでいるのだ。これは虚言ではなく真実なのだと、加えてその古のモンスターボールとやらからも不思議な波動のようなものを感じる。
「……実は諸事情で俺も黒いレックウザを探している」
「マジか」
「ラビさんも!?」
「本当ですか!?」
「と言っても絵を完成させたいからだ、どうしてもレックウザの黒さを表現出来なくてね……もしも君達がそれを追うというのであれば記録を取って欲しい。可能であれば映像をだ、それを了承してくれるなら―――バトルの特訓は引き受けよう」
その言葉にフリードはニヤリと笑った。
「俺はこれでも博士なんだぜ、レックウザなんてポケモンの記録を取らない訳がないだろう。映像も次遭遇したら確実に撮るようにするさ」
「交渉成立、だな」
「じゃあ!!」「私達の特訓を」
「うむ、引き受けよう」
「「やったぁっ!!」」
内心不安だったのか二人は大声を出して喜んだ、何せあのラビが特訓の相手になってくれるのだからそれは興奮するのも致し方ないだろう。そこまで喜ばれていいのかと思うが……まあそう言う事にしておこう。
「それじゃあ手始めに―――バトルと行こうか、配信で」
「早速バトルですかって配信……?」
「も、もしかして―――!?」
「皆さんこんにちは、今日もポケモン育ててますか?まだまだな貴方もこれからの貴方も、此処をきっかけに一歩踏み出して行きましょう。本日ご紹介するポケモンさんは此方」
「リィヴァァ」
「オリーヴァさんです」
「な、生配信……!!?」
「す、凄い事に、なっちゃったぁ……」