ククイ博士が業の習得を完了し、サトシも再びパルデア地方のジム巡りを再開して穏やかな時間が流れ始めようとしたラビの家―――と言いたい所だったのだが。そこに再びライジングボルテッカーズがパルデアへと帰ってきた。ラビは余りサザレとの時間が作れなかったことに釈然と出来ずにいたのだが、フリードから大真面目な相談を受ける事になった。その内容とは―――
「悪い……こっちも色々調達のために動いてはいるんだけどさ……」
「全く、もう会計責任者位スカウトしたらどうだ?旅をするならその辺りの管理をするのも必要だろうに……」
「面目ねぇ……」
ライジングボルテッカーズの財布が空になってしまったとの事。彼らは世界中を旅をしているが、その収入源は基本的に冒険以外で賄っている。フリードも論文などの発表やらで色々頑張っているが……色々と物入りらしくて大変との事。
「それでお前の方からも何か仕事を貰えないか、紹介して貰えないかと思ってな」
「いきなり来て金か仕事寄こせとは剛毅なもんだ……こっちだって色々あるんだけど」
「そう言わず頼む!!一緒にルギアに襲われた仲だろ!?」
「如何いう説得の仕方だアホンダラ」
とは言うものの、ライジングボルテッカーズには黒いレックウザの追跡とその映像記録を頼んでしまっている。形式上自分もメンバーの一員と言えない事もない……。
「ああっそうだ、これを忘れるところ、だったぜ!!」
そういうとフリードがスマホロトムに何かを転送する、映像ファイルのようなので早速開いてみると―――そこには黒いレックウザが映っていた。
「黒い、レックウザ!!」
「凄いこれがロイ君の言ってたあのレックウザ!?」
「ああそうだ、俺達が追っているレックウザだ」
半信半疑ではあったがまさか本当に……だが事実これは本物のレックウザ、色違いの個体……自分が求め続けていた黒いレックウザの姿がそこにある。
「どうだラビ、これでお前の絵も―――お、おいどうした?」
映像から目を離さず、完全に集中しているラビ。だがその目の輝き方が異常の一言だ、するとラビは立ち上がりながらもスマホロトムを操作するとフリードの方へと向けた。それに合わせてスマホを差し向ける、すると―――入金完了という音声が流れた。
「手間賃だ、受け取る筈だった報酬分をお前の口座に入れておいた」
「お、おいおい確かに提供してくれたら助かるとは言ったけど……って何だこの金額!!?一、十、百、千、万、十万百万―――幾ら何でも振り込みすぎってあれぇラビの奴何処行った!?」
フリードが振り込まれた金額の大きさに慄いていて自分の口座に釘付けになり、思わず叫びながらラビの方を見ようとしたらそこには既にラビはいなかったのだ。それにサザレは笑いながら言った。
「ラビならもうアトリエに入っちゃったよ、早速仕上げるんだってさ。後返金は受け付けない、俺が追い求めたアヴァンギャルドを達成する為の一助、その謝礼だから受け取れだって」
「俺も人の事言えないけどあいつ人の話全然聞かねぇ……!!」
だからと言ってもこれは振込過ぎ……と言ってもラビが一度決めて実行したそれを捻じ曲げるのは至難の業。これは覚悟して受け取るしかない……
「NOOOOOOOOOOOOOO!!!!!????」
と思った矢先にとんでもな爆音波な叫び声が木霊する。その声の主はラビ、そして出所はアトリエから、思わずおやつをご馳走になっていたキャプテンピカチュウことキャップも臨戦態勢に入ってしまった。
「何事だ!!?ラビに何かあったのか!!?」
とフリードが大急ぎでラビのアトリエへと入ろうとするのだが―――アトリエは厳重なロックが掛かっている為に入る事が出来ずにガンガンと扉を殴る。すると中からラビが出てきた。
「お、おい何があった!!?」
「……レックウザの絵、完成できる……だけど……だけど、この色は既に俺が試した事のある色合いだった……3番目に調合した黒が、レックウザの黒だった……!!」
「だぁ!!?ンな事で騒いでたんかい!!?」
無駄に心配させるな!!と言いたげなフリードの抗議だが、サザレは何となくわかる気がした。自分でも最高だと思って撮った写真が少し前に没にした写真の方が真に求めていた物だった、という事は割とあるあるなのだ。
「俺もまだまだアヴァンギャルドさが足りんらしい……全く以て―――これだから芸術とは面白い!!芸術とは、すなわち己との対立、変質、再現、感性、精神へのアプローチ!!レックウザという伝説のポケモンへの敬意で見えていた物を見ようともせず頭ごなしに否定するだけだった。一歩引いて客観的に見る事さえ出来れば完成させる事が出来た―――フフフッ全く以て実にアヴァンギャルドな体験だった!!これもレックウザの導きなのかもしれぬな、初心を忘れずに常に自分を客観視すべしとな!!!」
「サザレ、ラビってこんな奴だったっけ?」
「こんな感じだよ、仕事の後とかこんな感じだし」
「……俺、ラビの事全然知らなかったんだな」
『なんと、なんと素晴らしい……これ程の物にお目に掛かれるとは私は幸せです……』
「という訳で、アグからの報酬は倍額されたのでフリードへの送金も増やしといた」
「もう十分すぎるのに何してんだお前ぇ!!?うわぁっ俺の口座にまたスゲェ額がぁ!!?」
ギャアギャアと騒ぐフリード、先程の金額並みかそれ以上の物が振り込まれているのだから当然と言えば当然だ。ラビも今回は随分と奮発してくれたからなぁ……と暢気に構えている。
「ラビ、お前俺が思ってた以上に金持ちだったのか……!?」
「どうやってこの家の庭にいるポケモンの世話と食費捻出してると思ってんだお前」
「ある程度は自給自足してるけど、大半はラビの描いた絵を売ったお金だからね~」
「だ、だけどこれどうやって皆に説明しよう……絶対皆驚くだろうし返してこいとか言うんじゃねえかな……?」
「返金は受け付けない、男なんだから一度受け取った金にウダウダ言ってんじゃありません」
「Oh……」
活動資金はこれで貯まったどころか過剰なレベルになってきたが、これはこれでどうするべきか……と悩んでいるフリード、そんな心配をよそにラビの元へと一匹のポケモンが寄ってくる。
「パァゴ」
「おっおはようテラパゴス、お昼寝はもういいのか?」
「パァゴッ♪」
「テ、テラパゴスだぁ!!?ラ、ラビ何でテラパゴスが此処にいるんだ!!?」
「ピカァッ!?」
起きてきたテラパゴスを見てフリードは思わず大声を張り上げた、突然の事にテラパゴスは驚いてしまいラビに抱き着いた、それを抱き上げているとフリードは謝りながらも何処かへと連絡をし始めた。
「リ、リコ俺だフリードだ!!そっちにテラパゴスいるか!?」
『えっえっ!?あっはい、今もこうしてバッグの中に、いますよ』
『パァゴッ』
「何ぃ!?いやそれは良かったけど何でテラパゴスがもう一匹いるんだ!!?」
『えっええっもう一匹!!?』
フリードの言葉、そしてスマホロトムの向こう側でテラパゴスを確かに抱えているリコ。その様子にラビとサザレはテラパゴスを見る、同族がいた……という事になるのだろうか。
『そ、それよりも大変なのフリード!!エクスプローラーズがレックウザを誘き寄せるって!!』
「レックウザを!?分かった、今ブレイブアサギ号か!?」
『うん、戻ってる!!』
「分かった俺も直ぐに行く!!ラビ、悪いが来てくれるか!?そっちのテラパゴスも一緒に!!」
「如何やら行くしかないか、サザレは?」
「私は留守番してるよ、気を付けてね」
テラパゴスをボールに収めながらラビはフリードに続くように家から飛び出していった。そして繰り出されたリザードンに続くようにサザンドラを繰り出して空へと飛び立った。