「久しぶりだなぁラビ、またお前とこうして会う事になるとは思いもしなかったなぁ!!約束の時間、日にちにも寸分違わず良き事だな!!」
「お久しぶりです」
「おう!!サザレもお帰りな」
「ただいま~」
この日、ラビはある種の覚悟を以てサザレと共にシンオウ地方のある場所へとやってきた。それは―――サザレの実家である。
「他の皆さんは?」
「悪い緊急の用事が入っちまってな……まあ
「ヴァジ当主様だけが残されるってのもなんか変な話だね、頼りにされてない感じ半端ない」
「おぃ~久しぶりに会う当主様にそれはねぇんじゃねえのか?」
そんな実家で待っていたのは現当主たるヴァジであった。サザレの叔父にあたる人物で面倒見のいい兄貴分でせっかちでありながらもゆったりとした時間も好き、そして何より時間に厳しいそんな人物。約束の時間に遅れさえしなければ怒る事は滅多にない良い人だとラビは思っている。見た目的には髪の長いセキだと語る。
「ンでなんであんたら揃って当主様の前に顔を出したんだ?何か用か、金でも借りに来たか?」
「いきなり何を言い出すのよ……違う、違うって!!」
「それじゃあなんだよ早く言えよ時は金なりだぞ」
相変わらず言葉のペースが早い人だと思いつつもラビは話を切り出す事にする、こういう時は自分が言うのが一番な筈だ。
「コンゴウ家当主ヴァジ殿、謹んで申し上げます。私、ラビとサザレの、結婚を認めて頂きたい!!」
「えっまだしてなかったの?」
「「えっ」」
思ってもみなかった言葉が返ってきた、ラビ的には怒鳴られる覚悟で来たのだが……顔を上げてみればそこには何を言っているんだこいつら、遅すぎだろ……というのがバッチリと顔に書かれているヴァジの呆れ切った表情があったのだ。
「数年も旅を一緒にして同棲までしたって聞いたからとっくの当に色々とねんごろ、もとい進み切って時計の午前と午後が切り替わったような関係になっていたと思っていたのにお前ら奥手か」
「ちょっと叔父さん何口走ってんの!?」
「年頃の男と女が一つ屋根の下で一緒に暮らしてるとかもうそれしかねぇだろというかお前らが昔から想い合ってる事なんて分かり切っててこちとらヤキモキさせられっぱなしだったんだからな、特にレマなんてどんだけマセてこっちがどれだけ苦労した事かおいサザレ顔背けるなラビも逃げようとすんな認めてやる代わりに当主の愚痴に付き合って貰うからな大体お前らと来たらだな」
逃げ道を通せん坊で塞がれて、捲し立てられるような言葉のマシンガンが自分達を待ち構えていた。思っていた以上にアッサリしていたのだが……別の意味合いでの大変さが待ち構えていたのであった。愚痴の途中で家族が帰ってきて改めて挨拶をやり直しさせられたり、年頃の娘に自分達の同棲生活を根掘り葉掘り聞かれたりした。尚、全く反対などはされずに寧ろ大歓迎されてラビは壮絶な肩透かしを食らった気分だった。
「いやさ、嬉しいんだようん。滅茶苦茶嬉しいよ、大喜びで迎えられてさ、娘を宜しくお願いしますとか幸せにしてあげてねとか色々激励も貰えて凄い嬉しいのに何でこうも肩透かしな感じがするんだろうね」
「だから言ったじゃん、絶対に大歓迎されるって」
「結局、大宴会やっちまったな……予定に余裕作っといて正解だったわ」
今、二人がいるのは空港。イッシュ行きの飛行機の搭乗時間を待っている所である。これから二人はラビの故郷であるイッシュへと向かう……サザレの実家は楽だった、別の意味で大変ではあったがイッシュはそうはいかない事だろう。
「行きたくねぇ……マジで行きたくなぃ……サザレ、このままパルデアに帰ろう」
「私はそれでもいいけどさ、レビちゃん達になんて言い訳するの?皆が帰れるようにまず自分が帰るって言ってたじゃん」
「……やっぱり行くかぁ……」
深く椅子に座り直しながらも頭を抱えるラビ、その姿は弟妹達の兄というよりも子供を抱える父親にしか見えなくなってきた。実際、レビ達にとってはラビの方をそう見ている節すらあるのだから笑えない。改めて……どんな夫婦なのだろうか。
「ついでだ、イッシュ観光でもするか?」
「そう言えばイッシュには行った事ないかも……少なくともラビとは一緒にはいかなかったしね、なんかお薦めの所とかあるの」
「ポケウッドとかアベニューとかバトルサブウェイとか……思えば色々あるな、まあ何処行っても良いと思う」
「それじゃあのんびり配信しながら旅でもする?」
「そう長々ともしてられないけどな……流石に長期間庭を放置するのはマズい」
旅は是非ともしたいのだが……そうなるとパラドックスポケモンやら戦闘狂共のストッパー不在が長期的になってしまうので弟妹達への負担が加速してしまう。一応ダイケンキにも留守番を任せているから大丈夫だとは思うのだが……それでも不安は付き纏うのだ、
「それでもオノノクスとかゴルーグもいるし大丈夫じゃない?」
「だといいんだけどなぁ……バンギラスの奴がレベのバンギラス煽ってたからなぁ……」
「ああ、あの子……」
ラビのバンギラスはラバイの相棒たるメガバンギラスすら捻じ伏せる程の実力の持ち主ではあるが一二を争う程に気性が荒く、唯我独尊で傍若無人を地で行く文字通りの暴君。ラビの言う事には従うがそれが正当性が確保されており、状況に適している場合のみでバンギラスが間違っていると判断すれば即座に無視して独断で行動をする程の大問題児。
「でもいざとなったらレビちゃんがブリザポスで鎮めるんじゃない?」
「如何だろうな……タイプ相性で考えたらキツいぞ」
様々な不安を抱えながらも二人はイッシュへと旅立っていくのであった。
サザレの家族周りは後々詳しくやっていきます。