「見えて来たね、あそこの街にポケウッドがあるの!?」
「ああそうだ、タチワキシティだ」
ヒウンシティから出る船に揺られる事数時間、見えてきた陸地に聳える街を見てサザレは高揚感を覚えずにはいられなかった。あの街に映画の聖地とも言われるポケウッドがある、数々のヒット作を打ち出し続けており今も栄えている。
「ラビは行った事ないの?」
「映画館に行った事あるけど態々ポケウッドにまで行こうとは思わなかったな」
少し大きめの街に行けば映画館はある、なのでラビもこの世界の映画の文化には親しんでいる。だからと言ってその元締めにわざわざ行こうと思った事はない。
「そういうもんかな」
「そういうもんさ」
そんなこんなを思っているとタチワキシティへと到着した、ポケウッドに併設されている街なだけあって極めて賑やか……というだけではない。この街にはポケモンジムが存在しているのでそちらの方面でも人気は高い。
「お前も知らないか、ザ・ドガースってバンド」
「あっ知ってる、イッシュが誇る大人気のパンクバンドだよね?」
「そう、そのバンドが本拠にしてるのがこのタチワキシティでそのバンドリーダーがジムリーダーなんだ」
「へぇ~そうなんだ」
「因みにブルベリ学園のアカマツ君の出身も此処だ」
「あっあの子此処出身なんだ」
ザ・ドガースの音楽はラビもかなり好きでラジオで流れるとテンションが上がる程度には大好きだ。ライブがあるなら見に行きたいが……今日はサザレと一緒だから自重、とポケウッドへと足を向けているとやおらに活気付いて行くのが分かる。映画の聖地に近づいているという実感が湧いてくる。
「おおっムービースターとかに会えるかなぁ……」
「それこそ運だと―――」
「それじゃあお父さん行ってくる!!」
「はいはい張り切り過ぎない程度にしてよ」
言い切る前に目の前で何やら父親らしき男性を呆れきった表情で見送るギターを担いでいる少女がいた。声色的に多少は応援しているのは分かる、見送った後に漏れているのもなんだかんだで頑張れというのを滲ませている。そんな彼女は振り向くと―――二ヤリと口角を持ち上げた。
「やっと来たねラビ、そろそろじゃないかって思ってたよ。まさかこうして出会わなかったら顔すら出さずに帰る気だったとかじゃないだろうね?」
「どうもお久、まさか会うとは思わなかったよホミカ」
其処に居たのは先程話したバンド、ザ・ドガースのリーダー兼ジムリーダーのホミカ。ポイズンライフ、ポイズンライブのキャッチフレーズ通りに毒タイプを主軸にするジムリーダーである。
「何よ何よ女連れぇ?童顔のラビ君も遂に色気づいて大人の階段上りますって奴ぅ?」
サザレを見てから妙にニヤニヤしながらも肘でラビを小突くホミカ、ホミカとは一応友人関係ではある。と言っても別段親しい訳でもないので何とも言えないのだが……ラビは此処であるネタをブッ込む事にした。
「まあそうかもな、ンでそっちはちゃんとアカマツ君を落とせてるんですかぁ?」
「バッ!!?ア、アアアアンタ、誰にも言ってないでしょうねぇ!!?というかどうやって知ったぁ!?」
「アカマツ君が普通に話してました、嬉しそうに、地元の幼馴染だって」
「あんの馬鹿ぁ……!!!」
ラビのカウンターを受けてホミカは顔を赤くしながらアカマツへの怒りやらを燃やし始めた。アカマツのタロへの好意というのは憧れが半分以上入ったような物、ある意味本命はいるのに無意識的にそこから目を背けている反応に近かった。ホミカの事を想っているのは直ぐに分かった。
「ええいっ今度ブルベリ学園に乗り込んであいつに説教してやるぅ!!」
「まあそれは任せるけどさ、今送り出したのって……親父さんか?またポケウッドに入り浸るようになったのかよ」
「なんか嫌な言い方じゃないそれ?」
「ハァッ……まあ間違ってはないかなぁ」
ホミカの父は俳優を夢見ていた、船長の仕事をしながらもその夢を捨てきれずに一念発起してポケウッドに乗り込んだのだが……結果は散々な物だった。結局船長に戻った筈だったのだが……。
「ポケウッドで海が舞台の映画があるんだよ、それで船を使うシーンがあるんだけど臨場感出す為に本当の船長を起用したいって監督の意向で親父に声が掛かったって訳」
「まあ、それなら下手に俳優目指すよりかは、いいんじゃないか?」
「私もそう思う」
この程度で満足してくれるならば自分としても安心できるんだけどなぁ……とホミカは言う。監督から直々にスカウトされて俳優になれる!!などと思わなければいいのだが……と少し心配しているらしい。
「まあ分からなくもないけど……」
「なんか張り切っちゃって必要ないオーバーリアクションとかはしちゃいそうだね……」
「それ位ならまだ可愛いもんだけどさぁ……まあいいや、ンで二人は観光にでも来た訳?」
「そんな所、アーティさんからハチクさんに並ぶような新しく女優が生まれたって聞いてさ」
それを聞いてホミカは一瞬んんっ?あれどっちだ、と呟いた。何か混ざってしまっただろうか……そして少しして話し始めた。
「いや確かにハチクさん並みに人気のある女優もいるよ、だけど新しい女優も凄い人気で将来的にはハチクさんと肩を並べるのは確定だって言われてるからどっちかなぁって……」
「へぇっそれって凄い事じゃない!?凄い女優がWで誕生って事でしょ」
「まあそうだね」
「どんな人なんだ?」
「一方は知ってると思うよ、ほらカントーのジムリーダーのナツメさん」
あの人か……カントー地方でエスパータイプのジムリーダーをしているナツメ。ラビもバトル経験がある相手だが本当に苦労した……この世界だと氷とエスパータイプは兎に角強いのだ。そしてもう一人の名前は―――
「もう一人はイッシュ出身でさ、ヒオウギシティ出身のメイって子なんだよね」