「見てよラビ、ポケッターのトレンドに乗ってるよ」
「見たくない」
「そう言わないでって、ほらっ新進気鋭の女優メイ、大女優のナツメ、そしてザ・ドガースのリーダーホミカが配信に登場だってさ、仮にこれTV局が再現しようとしたらどれだけ掛かるんだろって色んな所で言われてるよ」
「野暮な事考えてるなぁ……」
彼らは善意というか完全な好奇心で配信に来たので完全なノーギャラで出てくれた。世間的にスターで通っている彼女らがそんな事をした事自体が世間的には大きな衝撃になった事だろう。
「にしてもメイちゃんには随分と懐かれたね」
「子供の頃の約束を反故にしてた割にな」
『もっといましょうよ~!!私の撮影現場見ていってください~!!』
想像以上にメイに懐かれている事に驚愕してしまった、本当に10年振りに会うのかとサザレには言われるほどには懐かれていた。映画は必ず見たうえで感想を言うという事で納得してもらい、ラビはサザレと共にライモンシティへとやってきた。
「因みにどんな映画なの?」
「人工的に伝説のポケモンを再現しようとしたらその伝説を怒らせて、それを鎮めようとする話」
「それ、意味合いによっては色々とやばくない?」
「大丈夫、メカ的な意味合いだ」
これがもしもミュウツー的な意味合いだったらもう大変な事になってたことだろう、実際は機械で構成されたメカポケモンが主軸になるらしくそれが突如として本当の伝説のポケモンのように動き始めるといった感じだとメイから聞いた。どっかで聞いた事があるような映画だが、この世界だと廃棄物や宇宙ウイルスがポケモンになる事はザラになるのでそう言った事だろう……と納得しておいた。
「おやっもしや貴方は―――おおっ矢張りラビさんではありませんか!!お久しぶりです」
ライモンシティへと入り、歩き回っているととある男に声を掛けられた。黒基調のコートに帽子を被っているその男性にラビも表情を柔らかくした。
「お久しぶりですノボリさん、お元気でしたか?」
「お陰様で無病息災意気軒高で御座います、そちらもお元気そうで何より―――おや、これは失礼しましたお連れ様がいらっしゃいますのにお声掛けをしてしまって」
「いえいえ気にしないでください。サザレ、此方はノボリさん、バトルサブウェイのサブウェイマスターだ」
そう言ってサザレは紹介された男性を改めて見ながら挨拶に握手をした。イッシュ地方のバトル施設のバトルサブウェイで弟と共にサブウェイマスターを務めているノボリ。鉄道員として職務を全うしながらもそのトレーナーとしても頼られるライモンシティの顔役の一人である。
「クダリさんは御一緒ではないのですか?」
「実はバトルサブウェイの拡張工事が現在行われておりまして、その工事の立会にクダリは出ているのです。メガシンカやZワザに適応する車両の開発も順調に進んでおりまして、来月を目途に新路線がオープンする予定です」
「そう言えばタロちゃんが言ってましたね、ヤーコンさんが新しい地下鉄を作ってると」
「はい、ヤーコン様には大変お世話になっております」
タロから軽く話は聞いていたがまさかそこまでバトルサブウェイの拡張が進んでいるとは思わなかった。バトルサブウェイはその名の通りに地下を走る地下鉄の中で行われる、それ故か強力すぎるZワザや進化を超えるメガシンカには対応しきれない部分があったのだが今回それを遂に乗り越える事が出来たらしく、これで出来ないのはそもそも外でやれと言われるダイマックス位になる。
「折角来たのですし如何でしょうか、乗っていかれませんか?是非貴方様ともう一度、バトルしたいと思っているのですが」
懇切丁寧且つ紳士的な笑みを浮かべているノボリだが、その表情の裏には是非ともリベンジをしたいというトレーナーとしての熱意と闘争心が隠れている事が分かる。
「実はあなたの配信を見ながら早業と力業の特訓をしているのです、その成果を是非貴方に見て頂きたいのです」
「やっぱり早業と力業ってトレーナーからしたら垂涎の技術なんだね……」
「まあそりゃな」
「バトルサブウェイでも練習している方は見ますよ、そんな皆様の為にも私も会得しなければならないと努力しております」
故郷でもそういった事が起きていると分かると自分のやっている事は本当に効果があるのだなと実感が湧いてくる。そんな事を思っていると何やらノボリの名を呼びながらも此方へと走ってくる少年がいた。
「ノボリさんこんにちは!!今日こそ勝ちますからね!!」
「はい、何時でもお相手にならせて頂きます。しかし、スーパーシングルトレインはそう簡単ではありません故、気を引き締めてください」
「今日こそ49連勝してみせますからね!!」
そんな風に意気込む少年を見つつもサザレは首を傾げていた。
「ねぇラビ、如何いう事なの?」
「バトルサブウェイにはシングルトレイン、ダブルトレイン、複数人数のマルチトレインがあるんだけどその上にスーパートレインっていうのがあってな。まあ単純に強化版と思えばいい、シングルとかで一定数連勝してサブウェイマスターに勝てばスーパートレインへの挑戦権を獲得出来て、そこでも一定数連勝すると本気のサブウェイマスターとバトル出来る、って仕組みだ」
「成程~……ブルーベリー学園でも一定数ごとに明確にポケモンとか強くなってたものね、それをもっとはっきりさせた感じなんだ」
「そゆこと」
話を聞く限り、目の前の少年はスーパーシングルトレインに挑戦中でノボリという大きな壁にぶつかっている最中という事になるのだろう。元気があるのは良い事だが……何故スーツ姿なのだろうか、何かしらの用事を済ませてから此方に来たのだろうか……と思っていると少年は此方を見ると目を大きく見開いた。
「ラ、ラララッラビさん!?あっあの俺です分かります!?ああそうか今スーツ着てるし帽子もないから……ええっとほら、ずっと昔メイと一緒に遊んで貰った!!」
「あっもしかして―――キョウヘイ君?」
「はいそうです!ああもうちゃんと着替えて来るべきだったなぁ……すいませんこんな格好で!!」
「いやスーツ姿でそれ言われても……」
その少年はメイの兄にしてジョインアベニューを経営している元ポケウッドのスーパースター、キョウヘイであった。